サバランとは
サバランと聞いて、どういったイメージが浮かぶでしょうか? フレンチカフェのメニューに載っている気高く、そして味わい深いデザート、そんな風景を思い描く人も多いかもしれません。しかしながら、この美味しいメニューの背後には、実は凝縮されたフランスの歴史や文化が隠れています。今回は、そのエッセンスを凝縮したフレンチデザート、"サバラン"に焦点を当て、その魅力や起源、そして作り方や楽しみ方について深堀りしていきましょう。一緒にフランス菓子の不思議な世界へとお越しいただければ幸いです。
サバランとは
「サバラン」は、フランス産の伝統的なスイーツで、リング型の発酵生地にアルコール入りのシロップがたっぷり染み込んだ魅力的なケーキを指します。その表面には生クリームやカスタードクリーム、色とりどりの果物が添えられ、大人向けの独特な風味と美しさがあるために支持を受けています。
使用されるアルコールはラム酒を始め、ブランデー、キルシュ、グランマルニエなど多種多様です。日本では控えめに香りを楽しむ傾向があるのに対し、フランスではそのアルコールの風味が強調され、深みのある味わいが追求されます。パリの実際のレストランでは、サバランを頼むと、たっぷりとアルコールを注ぎ、その圧巻の一瞬を目の当たりにすることができるそうですよ。
サラバンとババとの違いは?
サバランとババは、似たようなケーキですが、いくつかの違いがあります。これらの違いを具体的に見てみましょう。
ブリオッシュの形:
最も顕著な違いは、ブリオッシュの形です。サバランはリング型のブリオッシュをベースにしており、その中央にクリームやフルーツを詰めることが一般的です。一方、ババは円柱型のブリオッシュを使用し、通常はレーズンが混ぜ込まれています。
洋酒の種類:
ババは正式には「ババ・オ・ロム」と呼ばれ、これを日本語に訳すと「ラム酒風味のババ」となります。ババにはラム酒が欠かせない特徴です。一方で、サバランに使われる洋酒の種類は特に決まっておらず、さまざまな洋酒が使用されることがあります。
トッピング:
サバランは生クリームやカスタードクリーム、フルーツなどをトッピングして飾られることが一般的です。これにより、見た目にも華やかさが加わります。一方で、ババは生クリームのみのシンプルなトッピングで仕上げられることが多いです。
しかしながら、近年はこれらの違いが曖昧になってきており、ババにもレーズンを加えずに作るバリエーションや、サバランにもカスタードクリームやフルーツをトッピングするケースも見られます。
伝統的な特徴にとらわれず、創造的なアプローチによって両方のケーキがアレンジされていることも事実です。どちらのケーキも独自の魅力を持ち、食べる楽しみを提供しています。
サバランの由来
サバランという名の由来については、いくつかの異なる説が存在します。18世紀フランスの人気デザート「ババ」をもとにして作られたこのケーキは、元々はフランスの宮廷で楽しまれていました。ババを創り出したと言われるパティシエはその後、パリでストレーという自身の店を開業し、そこでババを進化させて新たなケーキ「サバラン」を生み出した、という説が一つあります。
また、他の説では、ストレーで修行していた別のパティシエがババを改良し、ラム酒を加えた特徴的なデザートを開発したとされています。
このサバランという名前は、フランスの著名な美食評論家「アンセルム・ブリヤ=サバラン」から名づけられました。この名前を付けた背景には、彼に対する敬意と、彼の料理に対する情熱を讃える意図があったと思われます。
サバランの発祥の地であるストレーの店は、現在もパリで営業を続けており、ここではシンプルで洗練された味わいのババが堪能できます。また、サバラン自体も、その独特の風味・形状・背後に隠された魅力的な物語により、世界中のデザート好きに愛され続けています。サバランの魅力を実感するためには、ぜひ一度試してみてください。
ババの由来
ババの起源は、サバランよりも古く、1700年代前半にポーランドからフランスに伝わったとされています。初期のババは、現在のようなシロップ漬けのケーキではなく、ブリオッシュ生地にレーズンを混ぜて焼いたパン菓子として存在していました。
しかしながら、ババの由来には複数の説が存在します。
一つの説によれば、王がポーランドからフランスへブリオッシュを持ち込む際に、固くなってしまったためにラム酒入りのシロップに浸して柔らかくしたとされています。また別の説では、王の歯が悪くなり硬い食べ物が噛めなくなったため、シロップに浸して食べやすくしたというものもあります。この頃には既に、ババにシロップを浸して柔らかくする方法が取られていたようですが、詳細ははっきりしていません。
どちらの説も一概に証明されているわけではありませんが、共通して言えるのは、この菓子が王の好みに合い、彼の愛読書であった「アラビアン・ナイト(一千一夜物語)」の登場人物「アリ・ババ」から名前を取って「ババ」と名付けられたという点です。ババはフランス王室に愛され、その美味しさと独特の食感が多くの人々に広がりました。その後、シロップ漬けのケーキとして進化し、現代のババが広まっていきました。
まとめ
さまざまなフレンチデザートの中でも、その風味、歴史、作り手の技巧が凝縮されているサバランは、フランス菓子の魅力を最も深く味わえるオプションの一つです。その香り高い風味とともに、フランスの歴史や文化も一緒に味わってみてはいかがでしょうか。グラスの中のシャンパーニュとともに楽しむサバラン、それは一層味わい深い時間へと誘ってくれます。