イタリアが誇るデザート、ティラミスの魅力に迫る

イタリア料理の名品といえば、ティラミスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。その名前は「私を元気にして」という意味があり、一口食べるだけでその名の通り、心が弾むほどの幸福感に包まれます。コーヒーとマスカルポーネチーズが織り成す絶妙なハーモニーと、カカオの香り高い仕上げ。今回は、この至福のデザート、ティラミスの魅力に迫ります。イタリアが誇るスイーツの奥深い世界を一緒に探求してみましょう。

ティラミスについて

ティラミスは、北イタリア発祥のデザートで、その名はイタリア語で「私を引き上げて」や「私を元気づけて」を意味します。

このデザートは、イタリアのヴェネト州トレヴィーゾで1970年代に登場したと言われていますが、他にもいくつかの起源に関する説が存在しており、詳細な発祥については諸説あるため、正確な起源を特定することは難しいとされています。世界中で広く知られているデザートです。

ティラミス歴史

ヴェネト州のトレヴィーゾにあるレストラン「レ・ベッケリエ」でティラミスが1970年代に初めて作られたとする説が広く受け入れられています[2]が、1950年代にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州で生まれたとする異なる説も存在しており、その起源については議論が続いています[2]。アド・カンペオル氏は「ティラミスの父」として知られていますが、彼が初めて作ったかどうかは不確かです。ティラミスの主な材料であるマスカルポーネはロンバルディア州産のチーズで、ビスコッティやザバイオーネクリームはピエモンテ州の伝統的なデザートです。

アメリカでは、1970年代後半から1980年代初頭にかけてティラミスの人気が急上昇しました。

ティラミス日本

1980年代末、イタリア料理の波が日本に訪れ、1988年頃から「イタ飯」と称されるようになりました。この時期には、都心の高級イタリアンレストランのメニューにティラミスが登場していました。デニーズが1986年にティラミスを提供し始めたものの、当初はあまり注目を集めていませんでした。しかし、1990年のバブル期に雑誌『Hanako』がこのデザートを紹介したことで、一気に人気が爆発しました。この雑誌の記事をきっかけに、テレビのグルメ番組でもティラミスが取り上げられ、デパートにはマスカルポーネの代用品や業務用マスカルポーネが並ぶようになりました。その結果、ティラミスの作り方も話題となり、多くのケーキ店や企業が商品化に乗り出し、コンビニのデザートコーナーにも登場しました。ティラミスは、ショートケーキやモンブラン、シュークリームと並ぶデザートの定番として定着しました。

しかし、1980年代においては、ティラミスは都心の高級レストランや限定的な店舗のデニーズにしか見られず、大多数の人々にはその存在が知られていませんでした。インターネットが普及していない時代であり、取り寄せることも難しかったのです。バブル期にティラミスは情報として広まったものの、雑誌で紹介された店を実際に訪れる人は限られていました。そのため、多くの人がティラミスを実際に味わえるようになったのは、Hanakoの記事が出てからかなり後のコンビニ商品としてでした。

1970年代にはスポンジケーキ風のチーズケーキが流行し、80年代初期にはレアチーズケーキが一大ブームを迎えていました。チーズクリームを包んだクレープも一般のスーパーで販売され、一部の学校給食にも登場していました。この流れの約10年後、ティラミスが新たな流行となりましたが、その独自性はチョコレートパウダーとコーヒーシロップの採用によるもので、これまでチョコレートやコーヒーがチーズクリームと組み合わされることは少なかったため、新鮮な印象を与えたのです。

レ・ベッケリエ (Le Beccherie)

ヴェネト州トレヴィーゾにあるレストラン、レストラン「バルバリコ」でティラミスの起源について語られています。ティラミスは、シェフのロベルト・リングアノットがバニラアイスクリームを作る際の失敗から偶然生まれたという説があります。彼が卵と砂糖を混ぜたボウルにマスカルポーネチーズを加えたことで、その新しい味わいが非常に良かったため、この混合物をアド・カンペオルの妻アルバに紹介しました。2人は試行錯誤を経て、コーヒーに浸したビスコッティ・ザヴォイアルテを追加し、ココアをふりかけることで「ティラミス」が完成しました。

レストランのオーナーであるアド・カンペオルは2021年10月30日に93歳で亡くなり、ヴェネト州知事ルカ・ザイアは彼への哀悼の意を自身のFacebookで表明しました。

ティラミス作成手順

エスプレッソをしっかりとしみ込ませたサヴォイアルディビスケットを型に並べ、マルサラワイン(または好みの酒類)と砂糖を用いて卵黄を温めながら泡立てたカスタードソース「ザバイオーネ」を作ります。このザバイオーネとマスカルポーネチーズを組み合わせたクリームを、ビスケットの上に重ねます。この工程を2〜3回繰り返し、型を満たした後、冷やして固めます。仕上げには、表面にココアパウダーやチョコパウダー、場合によっては挽いたエスプレッソ豆を振りかけて風味を追加します。

ティラミス