芳醇な香りと独特の風味で多くの料理を引き立てるスパイス、シナモン。その起源は古代に遡り、世界中で長く愛用されています。シナモンと言えば香辛料棚に一本ある程度かもしれませんが、その世界は実に多彩です。本記事では、シナモンの種類と、それぞれの特徴について詳しく解説いたします。シナモンの奥深い世界を探索し、日常の料理に新たなひと振りを加えてみませんか?
シナモンとは
シナモンは、クスノキ科のニッケイ属から得られる樹皮を原料とした香辛料です。これは世界で最も古い香辛料のひとつとされ、古代エジプトや聖書にもその存在が記されており、アーユルヴェーダの伝統医学では循環器の強化にも利用されてきました。
シナモンは乾燥した樹皮を使った「スティック」や粉末状の「パウダー」として流通し、パンやスイーツから肉料理、スープまで幅広い料理で風味を引き立てるのに使用され、今や世界中の家庭で不可欠な存在です。
日本にシナモンが伝来したのは8世紀頃で、中国から薬草として輸入されました。国内ではニッキと呼ばれることもありますが、実際には異なる種類のものです。
また、日本国内ではあまり見られませんが、シナモンの葉もお茶や料理に使うことが可能で、樹皮とは異なる爽快で甘い香りが人気を博しています。
シナモンとニッキの相違点
一般に、「シナモン」は英語での呼称で、「ニッキ(肉桂)」は中国語の呼称とされることが多いですが、実際には異なる種類のものを指しています。
「シナモン」として市場に出回る品には複数の異なる種類が存在し、それぞれの原料は異なる木から得られます。主にスリランカ特産のセイロンシナモンと、中国特産のシナニッケイが知られており、その中国特産のシナニッケイが日本に移入されたものが「ニッキ」です。
「ニッキ」は日本産のシナモンで、その香りは甘さよりも爽やかさやハッカに似たすーっとした風味が特徴的です。八つ橋に使用される香りがニッキであり、シナモンクッキーの香りと比べることでその違いを感じることができるでしょう。
なお、価格の高価な順に並べると「ニッケイ」、「セイロンシナモン」、「シナニッケイ」となり、現在市場に流通しているシナモンの多くは「シナニッケイ」です。
シナモンの種類について
シナモンは、大きく分けてスリランカ産のセイロンシナモンと中国産のカシア(シナニッケイ)の2種類があります。それぞれ異なる香りと風味を持っており、原産地も異なります。
加えて、カシアにはクマリンという成分が含まれており、多量に摂取すると肝臓に影響を与えることが知られています。一方、セイロンシナモンにはクマリンの含有量が非常に少なく、カシアの約1/200以下です。
シナモンの栄養素とその働き・効果
多くの健康効果を持つことで知られるシナモンは、多様な薬効を持ち、さまざまな生薬と組み合わせて漢方薬に用いられています。
シナモンが含む主な栄養成分には、マグネシウムやカルシウム、カリウム、ビタミンA、鉄分などがあります。これらの成分について、その効果や効能とともに詳しく見ていきましょう。
①酸化を防ぐ作用
シナモンに含まれるプロアントシアニジンは、数あるポリフェノールの中でも非常に高い抗酸化力を持つとされています。26種類のスパイスを対象に行われた比較実験では、シナモンが際立った抗酸化効果を示しました。これにより、アンチエイジングや生活習慣病の予防に対する期待が高まっています。
②抗炎症作用
慢性的な炎症は体に悪影響を長期間与え、がんや動脈硬化、アルツハイマーといった疾患を引き起こす恐れがあります。シナモンには、複数の抗炎症成分が含まれており、自然な抗炎症剤としての活用が期待されています。
③コレステロールの改善
シナモンは、HDLコレステロール(良いコレステロール)を維持しながら、LDLコレステロール(悪いコレステロール)を減少させる役割があるとされています。動物モデルでは血圧低下が確認されており、心臓病の予防にも効果が見込まれます。
④血糖値調整
シナモンは血糖値を低下させる効果があると広く認識されています。様々な研究で糖尿病への有効性が確認されており、特に空腹時の血糖値を減少させることが判明しています。
⑤血流を促進
シナモンの主要成分であるシンナムアルデヒドは、毛細血管の形成を促進する能力があるとされています。毛細血管の健康を保つことは、全身の健康をサポートする重要な要素であり、冷え性の改善だけでなく、体全体に酸素や栄養を供給することで健康維持に役立つと期待されています。
⑥シナモンのさらなる効能について
シナモンは、消化の助けや発汗および解熱の効果、抗菌特性など、他にもさまざまな効能が期待されています。今後の研究でさらにその健康効果が解明される可能性があります。
ただし、シナモンの効果に関する多くの研究はヒトを対象にしたものではなく、詳しい情報が得られる日を待つ必要があります。
シナモンにはどんな副作用がある?
シナモンは古くから薬として使用されていますが、副作用についてはどうなのでしょうか。また、子どもや妊婦が摂取して問題がないのかも気になるところです。
シナモンの影響
シナモンには多くの健康上の利点がありますが、過剰な摂取は避けるべきです。クマリンという成分がシナモンに含まれており、多量に取ると肝臓へ負担をかける恐れがあります。特に、シナニッケイはクマリン含有量が高いため、種類選びが鍵となります。また、シナモンは血糖値を下げる効果があり、糖尿病治療薬を使用中の方には低血糖の危険性が高まることがあります。さらに、ある人々はシナモンによって胃腸の不調やアレルギー反応を起こすこともあります。
妊婦さんはシナモンを摂取しても良い?
シナモンは血液循環を促進し、体を温める効果がありますが、妊娠中には避けるようにと言われることもあります。たまにシナモンが入ったスイーツや料理を楽しむ程度であれば、過度に心配する必要はないでしょうが、心配であれば医師に相談することをお勧めします。
毎日の健康を意識して大量に摂取したり、サプリメントを通じて摂取することは、ホルモンバランスに影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中は控えるべきです。
シナモンの摂取可能年齢は?
シナモンは幅広い年齢層で摂取が可能ですが、小さな子供に与える際は慎重さが求められます。一般的には、1歳以上から少しずつシナモンを試すことが推奨されており、これは新しい食物に対するアレルギーの可能性を考慮したものです。特にシナモンに含まれるクマリンには注意が必要で、過剰な摂取は肝機能に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、小さい子供に対しては適切な量を守りつつ、最初に与える際には少量から開始し、アレルギーや体調の変化に備えて注意することが推奨されます。
シナモンの1日あたりの適切な摂取量
「クマリン」は桜餅に使用される桜の葉などにも含まれている化合物で、「シナニッケイ」の健康への影響は、大量に、しかも長期間摂取しない限り心配されません。しかし、「シナニッケイ」を長く摂取する場合は、以下の量を守ることが推奨されています。
体重60kgの成人…1日当たり2g未満(小さじ1弱程度)
体重15kgの子供…1日当たり0.5g未満
反対に、「セイロンシナモン」に含まれるクマリンは非常に微少で、一般的にスパイスとして使われる量では特に問題ないようです。
シナモンはその強い香りがあるため、実際には小さじ1杯も使用することは滅多にないでしょうが、シナニッケイの摂取には注意が必要です。