日本では、古くからお祝いの際に餅を食べる風習がありました。この習慣は、稲が古くから神聖視されていたことに由来します。稲からとれるお米は生命力を強めるとされ、大切に扱われていました。特に、米をついて固めた餅はその力が強いとされ、お祝い事や特別な日には餅つきを行うようになったと伝えられています。鏡餅を神様にお供えして感謝し、新しい命や力を授かると考えられていました。

餅つきは、お正月に向けた準備として行われます。年末に行う場合は鏡餅を作ることが目的で、新年に行う場合はその餅を食べることが目的です。作った鏡餅を神様にお供えし、感謝しながらいただくことで、新しい命や力を授かるとされています。一般的には12月25日から28日に餅つきを行うのが通例で、29日は「苦」を連想するため避けられ、31日は「一夜飾り」となるため行わないことが多いです。ただし、保育園などでは年明けに餅つきをすることもあります。

お正月のお餅には特別な意味があります。古来より、新年を司る「年神様」が元日にやってきて、新年の魂（年魂）を授けてくれると考えられていました。この魂とは、生きる気力を意味します。昔は、年齢を数えるために「数え年」が使われており、新年の魂を受け取ることで年齢が決まっていました。

この新年の魂の象徴として、丸い形をした「鏡餅」が使われるようになりました。鏡は神様の象徴とされ、鏡餅は神聖なものと見なされました。年神様が鏡餅に依り付くとされ、その餅には年神様の魂が宿ると信じられていました。これが「お年玉」のルーツであり、年魂を意味します。家族分の小さな丸餅を神棚に供え、そこからお年玉を分ける習慣がありました。また、お餅を使った「お雑煮」は、新年の力を得るための料理であり、鏡餅を雑煮にして食べることがその名残です。

「鏡開き」には「歯固め」という意味もあり、丈夫な歯で長生きすることを祈って固い餅を食べる習慣があります。神聖なものに刃物を使わず、「鏡開き」と呼ぶのも、日本人の神聖な感性を反映しています。鏡餅や年魂、お年玉、お雑煮、鏡開きなど、お餅が重要な役割を果たしていることがわかります。

お正月に向けた餅つきでは、縁起を担ぐことが一般的です。基本的には、12月29日は「二重苦」や「苦餅」「苦持ち」といった縁起が悪いとされるため避けられます。しかし、「29」を「ふく」と読み、「福餅」として福を呼ぶ意味で飾ることもあります。また、12月31日は葬儀と同じ「一夜飾り」になるため、鏡餅などの正月飾りは30日までに飾る習慣があります。したがって、餅つきも31日に行うのは縁起が悪いとされています。

保育園で餅つきを行うことには、以下のようなねらいがあります。

寒さに負けずに行事を楽しむ

冬の寒さに負けず、元気に餅つきを行うことで、子どもたちに季節の変化を感じさせるとともに、楽しむことの大切さを教えます。

協力しながら餅つきをし、協調性を育む

友だちと一緒に杵を使って餅をつくことで、協力する喜びを体験し、協調性やチームワークを育むことができます。

日本の伝統行事の雰囲気を感じる

餅つきは日本の伝統行事の一つであり、実際に体験することで日本文化への理解を深めることができます。

保育園によっては、戸外で餅つきを行うところもあり、冬の寒さを楽しむ一環として行われることもあります。

餅つきはただの食べ物を作る行事ではなく、地域のつながりを深め、共有文化を継続する伝統であることが分かります。餅つきの歴史や意義を理解することで、私たちの食生活がどのようにコミュニティと深く結びついているかを再認識し、日本の長い伝統が込められた餅の味わいがさらに深まることでしょう。