ラフランスという名称は、日本では洋梨全体を指す言葉のように使われることがありますが、実際には洋梨の中でも特定の品種名です。原産はフランスで、正式には「ラ・フランス」と表記されることもあり、その名の通り気品のある香りと柔らかな果肉が特徴です。現在では、日本で栽培される洋梨のうち約6割をラフランスが占めており、人気の高さがうかがえます。

洋梨にはラフランスのほかにも、「洋梨の貴婦人」と称されるルレクチェや、果肉がしっかりしたバートレット、上品な甘さを持つマルゲリット・マリーラなどさまざまな品種があります。これらはバラ科ナシ属に分類され、冷涼で日照時間が長く雨が少ない地域での栽培に適しているため、主に東北地方で生産されています。

和梨や中国梨と比べると、洋梨は追熟させてから食べる必要があるため、収穫から流通までに多くの手間がかかります。そのため価格は高めで、1個あたり400円から800円ほどになることも珍しくありません。

洋梨が日本に導入されたのは明治時代のこと。その後、東北地方を中心に栽培が広がり、現在では山形県が国内生産の中心地となっています。2018年の出荷統計によると、国内で出荷された洋梨の約65％が山形県産でした。次いで新潟県、青森県、長野県などが主要な産地となっています。

山形で洋梨が広く栽培されるようになった背景には、気候条件の適性だけでなく、熟すことで美味しくなる特性をいち早く理解したことがあるとされています。ラフランスなどの洋梨は収穫時には固く、常温での追熟を経て甘みと香りが引き立ちます。

また、洋梨のもう一つの一大産地である新潟県では、ルレクチェの栽培が盛んです。フランスから持ち込まれた苗木が新潟の土壌と好相性を示し、現在では贈答品としても重宝される高級果実となっています。

洋梨の旬は主に10月下旬から12月にかけてで、店頭に並ぶ頃には適度に熟しており、なめらかな食感と芳醇な甘みを楽しめます。

ラフランスはもともとフランス生まれの品種ですが、病害への弱さや栽培の難しさから、本国では20世紀初頭にほぼ絶滅してしまいました。現在では日本のみで栽培されており、その約8割を山形県が占めています。日本の気候や栽培技術がラフランスに適していたことから、今では世界的にも貴重な存在となっているのです。

毎年11月11日は「ラフランスの日」とされており、果実がちょうど食べごろを迎える時期にあたります。この時期になると、贈答用としてラフランスが市場に多く出回り、その芳醇な香りととろけるような果肉が多くの人々に喜ばれています。

日本では洋梨だけでなく和梨も多く栽培されており、果物の中でも人気の高い存在です。しかし世界全体で見ると、梨の最大の生産国は中国です。2019年の統計では、世界で生産された梨のうち約70％以上を中国が占めており、その量はおよそ1700万トンにも上ります。

2位のアメリカとは大きな差があり、日本は年間約23万トンで12位にランクインしています。日本の梨は主に国内で消費されていますが、輸出先としては香港が最も多く、日本産の梨の人気がうかがえます。

梨を食べる文化が広く根づいている中国では、食事の一部としても日常的に取り入れられています。果物としてだけでなく、料理や薬膳にも用いられることが多く、その消費量と生産量の多さは圧倒的です。

ラフランスは、洋梨の中でも特に日本で人気の高い品種であり、そのなめらかな果肉と芳醇な香りで多くの人に愛されています。現在では日本がほぼ唯一の生産国となっており、特に山形県が大きな役割を担っています。世界に目を向ければ、中国を筆頭に梨の生産は多岐にわたりますが、日本の洋梨文化は独自の進化を遂げています。贈り物や季節の味覚として、ぜひこの貴重な果物を楽しんでみてはいかがでしょうか。