さくらんぼ「高砂」:150年の歴史を持つ古参品種の魅力
初夏の訪れを告げる、鮮やかなルビー色の宝石「さくらんぼ」。その中でも「高砂(たかさご)」は、150年以上の歴史を持つ、日本さくらんぼ界の古参品種です。アメリカ生まれの「高砂」は、明治初期に海を渡り、日本各地で栽培されるようになりました。佐藤錦とは異なる、独特の甘酸っぱさと風味は、今も多くの人々を魅了し続けています。今回は、長い歴史の中で愛され続ける「高砂」の魅力に迫ります。

さくらんぼ「高砂」とは

さくらんぼの一品種である「高砂(たかさご)」は、実はアメリカ生まれ。オハイオ州で生まれた品種で、アメリカでは「ロックポート・ビガロー」という名前で親しまれています。日本にやってきたのは明治初期の1872年(明治5年)。それから時を経て、1911年(明治44年)に「高砂」という名が与えられました。日本での歴史は150年近くになり、さくらんぼの代表格である佐藤錦とはまた違った個性を持つ、歴史ある品種です。

高砂の特徴:甘さと酸味の調和と愛らしい姿

高砂の大きな特徴として、一粒あたり約6gと、比較的小ぶりであることが挙げられます。果肉は淡いクリーム色をしており、やわらかいのが特徴です。そして何と言っても、可愛らしいハート形の見た目が魅力。糖度は16~18度程度と、さくらんぼの中では平均的な甘さですが、同時に酸味もしっかりと感じられるため、甘酸っぱく、さっぱりとした味わいが楽しめます。濃厚な甘さの佐藤錦とは異なり、この高砂ならではの風味を好む人も少なくありません。熟すと果皮が鮮やかな紅色に染まる美しい色合いも魅力の一つです。また、種が比較的大きいことも、高砂ならではの特徴と言えるでしょう。

高砂の旬と選び方のポイント

高砂が旬を迎えるのは、6月中旬頃。佐藤錦よりも少しだけ早く収穫時期を迎えます。美味しい高砂を選ぶためには、まず全体が均一に紅色に染まっているかを確認しましょう。傷や黒ずみがないことも重要です。果皮に自然なツヤがあり、ピンと張りがあるもの、そして軸が鮮やかな緑色をしているものは、鮮度が高い証拠です。高砂は果肉が比較的やわらかいため、購入後はなるべく早く食べるようにしましょう。

高砂の保存方法とおすすめの食べ方

すぐに食べきれない場合は、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。キッチンペーパーなどで優しく包み、ポリ袋に入れて乾燥を防ぐのがおすすめです。ただし、高砂は非常にデリケートで傷みやすい果物なので、できるだけ早く食べるように心がけてください。食べる際は、軽く水洗いしてそのまま味わうのが一番です。たくさん手に入った場合は、ジャムやコンポートにして、ケーキやヨーグルトのトッピングとして楽しむのも良いでしょう。ジャムを作る際は、煮詰めすぎないことと、丁寧にアクを取り除くことが、美味しく仕上げるための秘訣です。また、冷凍した高砂を半解凍すれば、シャーベットのような感覚で楽しむことができます。

高砂の栽培:受粉と品種の組み合わせ

さくらんぼは、基本的に自分の花粉では実を結びません。そのため、受粉を手助けする別の品種を近くに植える必要があります。高砂は、受粉がうまくいけば比較的実がつきやすい品種として知られています。受粉樹を選ぶ際には、相性の良い品種を選ぶことが大切で、佐藤錦やナポレオンなどが推奨されます。一般的に、佐藤錦と高砂の組み合わせは良好であると考えられています。受粉の相性を考える上で最も重要なのは、開花の時期が同じであることです。もし開花時期が重なれば、人の手で受粉作業を行うことで、結実の可能性を高めることができます。自然に任せるよりも、確実な方法と言えるでしょう。ただし、栽培する場所の気候条件によって、佐藤錦や高砂の開花時期は変動するため、山形県での相性が良くても、北九州で同じ結果が得られるとは限りません。実際に栽培してみるまで、その難しさを知ることは難しいでしょう。

高砂の栽培:庭植えと鉢植え

サクランボは、冬の寒さを経験することで花を咲かせ実をつける落葉樹です。一定期間の休眠が必要で、冬に寒さを経験することで春に花が咲き実をつけるようになります。温暖な地域では、休眠期間が不足しやすく、実の数が減るなどの問題が起こりえます。東北地方から九州北部にかけての広い地域で栽培が可能と考えられています。高砂は比較的丈夫な品種であり、剪定などの手入れを行うことで、鉢植えや庭、花壇、プラスチックのポットなど、様々な場所で栽培を楽しむことができるでしょう。

高砂の栽培:鉢植えのポイント

高砂を鉢植えで栽培する際には、8号以上の大きめの鉢を用意しましょう。剪定を定期的に行うことで、コンパクトな樹形を維持することができます。水はけの良い土を使用し、日当たりの良い場所で管理することが重要です。植え付ける場所の環境や土壌の状態、日照条件は、その後の生育に大きく影響します。栽培を始める前に、これらの点をしっかりと確認しておきましょう。鉢植えの場合は、鉢底ネットと軽石を敷き、市販の培養土、または赤玉土7:腐葉土3の割合で配合した土を鉢の半分ほどまで入れ、そこに苗を植え付けます。植え付けの適期は、12月から3月の落葉期です。植え替えは、2~3年に1度を目安に行いましょう。鉢植えでの栽培に慣れてきたら、庭に地植えすることで、より長く栽培を楽しむことができるでしょう。

高砂の栽培:庭植えのポイント

さくらんぼは、根を広く張り巡らせて成長する果樹です。庭がある場合は、地植えの方が育てやすいでしょう。土中に行き止まりのない地植えであれば、さくらんぼはより大きく成長することができます。暑さや寒さにも比較的強いため、特別な対策は必要ありません。ただし、東北地方が主な産地であるように、温暖な地域よりも寒冷な地域での栽培に適しています。温暖な地域で栽培する場合は、その地域でも育ちやすい品種を選ぶようにしましょう。地植えの場合は、日当たりと風通しの良い場所に、幅と深さが共に50cmほどの植え穴を掘ります。掘り出した土に腐葉土と堆肥を混ぜ合わせ、穴に戻しながら、苗木を深く植えすぎないように注意して植え付けます。植え付け後は、たっぷりと水を与え、根と土をしっかりと密着させましょう。

高砂の観賞価値

高砂は、その美しい姿から庭木や鉢植えとして愛されています。春には可憐な花を咲かせ、初夏には愛らしい実を結びます。通常、サクランボはアオバザクラやコルトといった台木に接ぎ木することで増やします。稀に、異なる品種のサクランボを接ぎ木し、一本の木で二種類の異なる実を実らせることも可能です。しかし、これは専門的な知識と技術が必要なため、接ぎ木済みの苗木を購入するのが一般的です。ホームセンターなどでも、高砂、ナポレオン、佐藤錦といった品種はよく見かけますが、より確実なのは苗木専門店で購入することでしょう。サクランボは、実がなるまでに3~5年程度の時間を要します。しかし、苗木店では、すでに接ぎ木された2年生や3年生の苗木も販売されています。趣味として楽しむのであれば、多少高価にはなりますが、3年生の苗木を選ぶと比較的早く実がなる可能性が高まります。高砂を庭などに鉢植えで置いて観賞用として育ててみれば、きっとその魅力を感じられるでしょう。

高砂の産地と品種構成

高砂の主な産地は山梨県で、作付面積は約107ヘクタールと、全体の7割以上を占めています。次いで多いのが山形県で、約38.9ヘクタールの作付面積があり、全体の2割強を占めています。近年、高砂は佐藤錦など、より甘みが強い品種に人気が集まっているため、生産量は減少傾向にあります。山形県におけるサクランボの品種構成を見ると、佐藤錦が7割以上を占めています。高砂の品種構成は全体の1.4%と、同じく酸味のあるナポレオンと比較しても半分程度であり、市場に出回ることは稀です。

高砂と佐藤錦の違い

高砂と佐藤錦の大きな違いは、甘さと酸味のバランスにあります。佐藤錦は糖度が高く、強い甘みが特徴ですが、高砂は甘みの中に程よい酸味が感じられます。また、収穫時期も高砂の方がやや早く訪れます。外観も異なり、高砂はハート型に近い形をしているのに対し、佐藤錦は丸みを帯びた形状をしています。

高砂の贈り物としての価値

佐藤錦の陰に隠れがちですが、可愛らしいハート型の高砂は、その縁起の良い名前から贈り物として選ぶ人も少なくありません。甘さを追求して改良された佐藤錦などのサクランボとは異なり、本来の甘酸っぱさを求める人には、ぜひ高砂をおすすめしたいです。

結び

さくらんぼ高砂は、その甘みと酸味の絶妙なバランス、そして愛らしい姿で、多くの人々を魅了する品種です。比較的育てやすい品種であり、庭植えはもちろん、鉢植えでも気軽に楽しむことができます。ぜひ、高砂を栽培して、その奥深い魅力を体験してみてください。

質問1:高砂とはどのようなサクランボですか?

回答:高砂はアメリカ原産のサクランボで、明治時代に日本にやってきました。甘酸っぱい風味が特徴で、ハート形のかわいらしい果実が魅力です。

質問2:高砂の受粉に適した品種は何ですか?

回答:高砂は自家受粉しないため、受粉を手助けする品種が必要です。佐藤錦やナポレオンなどが相性の良い品種として知られています。

質問3:高砂を育てる際に気をつけるべき点はありますか?

回答:高砂は比較的栽培しやすい品種として知られていますが、成功の鍵は日当たりと水はけの良い場所を選ぶこと、そして適切な手入れ(特に剪定)を欠かさないことです。さらに、鳥による被害を防ぐ対策も講じるようにしましょう。



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