ビタミンAは、視力の維持や皮膚の健康を保つために欠かせない脂溶性ビタミンです。レチノール、レチナール、レチノイン酸などの化合物の総称であり、動物性食品に含まれるレチノールと、植物性食品に含まれるβ-カロテン(プロビタミンA)の形で摂取されます。本記事では、ビタミンAの働き、効果的な摂取方法、1日の推奨摂取量、不足や過剰摂取の影響について詳しく解説します。
ビタミンAの吸収と働き
ビタミンAは、脂溶性であるため、脂質と一緒に摂取すると吸収率が高まります。小腸で吸収された後、肝臓に蓄積され、必要に応じて血中へ放出されます。
ビタミンAの主な働き
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視覚機能の維持:
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ロドプシンという視覚に関わるタンパク質の生成に関与し、暗い場所での視力維持を助ける。
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不足すると暗順応障害や夜盲症を引き起こす可能性がある。
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皮膚や粘膜の健康維持:
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上皮細胞の分化を助け、肌や粘膜のバリア機能を強化。
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不足すると皮膚の乾燥や炎症を引き起こしやすくなる。
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免疫力の向上:
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免疫細胞の機能を高め、感染症予防に貢献。
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ビタミンA不足は免疫低下を引き起こす要因の一つ。
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抗酸化作用と発がんリスクの抑制:
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β-カロテンには抗酸化作用があり、細胞の酸化ダメージを軽減。
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一部の研究では、上皮細胞のがん化リスクを抑制する可能性が示唆されている。
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ビタミンAの1日の推奨摂取量
ビタミンAの摂取量は、レチノールとプロビタミンAカロテノイドを考慮した「レチノール活性当量(RAE)」で表されます。
レチノール活性当量(RAE)の計算式
RAE(μg)= レチノール(μg)+ β-カロテン(μg)×1/12 + α-カロテン(μg)×1/24 + β-クリプトキサンチン(μg)×1/24
厚生労働省の食事摂取基準(2020年版)
年齢 | 男性の推奨量(μgRAE) | 女性の推奨量(μgRAE) |
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18~49歳 | 850 | 650 |
50~64歳 | 900 | 700 |
65歳以上 | 850 | 650 |
※ 推定平均必要量は男性650μgRAE、女性500μgRAEです。
ビタミンA不足の影響
ビタミンAが不足すると、以下のような健康リスクが生じます。
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視力低下(夜盲症):暗順応障害を引き起こし、夜間視力が低下。
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皮膚・粘膜の乾燥と免疫低下:皮膚が乾燥しやすくなり、風邪や感染症にかかりやすくなる。
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成長障害(特に子供):骨や臓器の発達が遅れ、発育に影響。
ビタミンAの過剰摂取の影響
ビタミンAは脂溶性のため、過剰に摂取すると体内に蓄積され、健康被害を引き起こす可能性があります。
急性過剰症(短期間で大量摂取)
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頭痛
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吐き気
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めまい
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肝機能障害
慢性過剰症(長期間の過剰摂取)
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皮膚の剥離
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骨粗しょう症
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胎児への悪影響(妊娠中の過剰摂取は注意)
※ β-カロテンはビタミンAに変換される量が調整されるため、過剰症のリスクは低いとされています。

ビタミンAを多く含む食品
動物性食品(レチノールが豊富)
食品 | 100gあたりのビタミンA(μgRAE) |
鶏レバー | 14,000 |
豚レバー | 13,000 |
牛レバー | 1,100 |
うなぎ | 1,500 |
卵黄 | 500 |
バター | 700 |
植物性食品(β-カロテンが豊富)
食品 | 100gあたりのβ-カロテン(μg) |
にんじん | 8,600 |
ほうれん草 | 4,200 |
かぼちゃ | 3,400 |
モロヘイヤ | 6,900 |
小松菜 |
3,100 |
効果的な摂取方法
脂質と一緒に摂る
ビタミンAは脂溶性のため、油を使った調理(炒める・揚げる)で吸収率が向上。
例:にんじんのバターソテー、ほうれん草のごま和え。
ビタミンC・Eと組み合わせる
抗酸化作用が相乗効果を発揮。
例:緑黄色野菜+ナッツやフルーツ。
過剰摂取に注意
サプリメントを利用する場合は、推奨量を超えないよう注意。
妊娠中の女性はレチノールの摂取に気をつける。
まとめ
ビタミンAは、視力や皮膚の健康維持、免疫力向上に不可欠な栄養素です。バランスの取れた食事から適量を摂取し、過剰摂取には注意しましょう。特に、脂質と一緒に摂ることで吸収率が向上するため、調理方法も工夫することが大切です。健康的な生活のために、日々の食事にビタミンAを上手に取り入れましょう!