ブドウは、古代から続く豊かな歴史を持つ果実であり、その小さな粒に秘められた健康効果と美味しさが、多くの人々を魅了し続けています。世界各地で親しまれるブドウは、ただのフルーツを超えた栄養素の宝庫。この記事では、ブドウとその美味しさの秘密について詳しく探っていきます。
葡萄とは
ブドウ(英語ではgrape、学名はVitis spp.)は、ブドウ科に属するつる性の落葉低木で、その果実も同じくブドウと呼ばれています。原産地は中近東とされ、古代にはヨーロッパや中国へと伝播し、現在では温帯地域を中心に世界中で広く栽培されています。食用としてのブドウは房状に成長し、多数の実が垂れ下がる形で付きます。栽培されているブドウには、ヨーロッパ種、アメリカ種、そしてそれらの交雑種があり、果皮の色によって赤系、黒系、緑系に分類されます。
紀元前2世紀頃には中央アジアのフェルガナ地方で「budaw」と呼ばれていたものが、中国語の「蒲陶」と音写され、それが変化して現在の「葡萄」という呼称が生まれたとされています。
葡萄の特徴
葉は両側に切れ込みがあり、長さは15〜20センチメートルほどです。穂状に花を付ける特性があります。野生の種は雌雄異株ですが、栽培されたブドウは一つの花に雄しべと雌しべが揃っており、自家受粉が可能です。このため、他の木がなくても一つの木で実をつけます。果実は果柄を通じて房状になり、果皮は緑色から濃紫色で、果肉は淡緑色です。果皮に自然に現れる白い粉状の物質はブルームと呼ばれ、水分蒸発を防ぐ蝋物質です。
通常、熟した果実が食用にされます。果実は子房が肥大化した真果で、外果皮が果皮、中果皮と内果皮が果肉になります。この果実は漿果の一種に属しており、一般的な大きさは2〜8センチメートル程度です。ブドウの実は枝に近いところから熟し始め、房の上部ほど甘く、下に行くにつれて甘さが減少します。果皮の紫色はアントシアニンというポリフェノールの一種によります。甘味成分は、ブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれ、酸味成分には酒石酸とリンゴ酸がほぼ等量含まれています。
ブドウ属の植物は約数十種あり、北アメリカや東アジアに多く分布し、インド、中東、南アフリカにも自生しています。日本ではヤマブドウ、エビヅル、サンカクヅルなどがブドウ属に含まれます。
現在栽培されているブドウには、ワイン用や干しぶどう用、生食用があります。これらはペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種と、北アメリカ原産のラブルスカ種に分かれています。
栽培されているブドウは、生食用と加工用に分類できます。加工用の品種は、ワイン、干しぶどう、ジュースなどに利用され、生食用はテーブルグレープ、酒造用はワイングレープと呼ばれています。
葡萄の生産量
2004年におけるブドウの総生産量は6, 657万トンであり、その生産量はバナナ(1億394万トン)やかんきつ類(1億273万トン)に次いで多い果物となっています。1980年代初頭までは、世界で最も生産量が多い果物の座にありましたが、20世紀の中頃から生産量はほぼ変わらず、急増したバナナやかんきつ類に追い抜かれました。さらに、同じく生産量が増加傾向にある4位のリンゴ(6,192万トン、2004年)にも追いつかれつつあります。国際連合食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界のブドウ園の総面積は75,866平方キロメートルに達しています。そのうちの71%はワイン生産に、27%は生食用に、そして残りの2%はレーズン用に使用されています。世界最大のブドウ生産国は中国であり、それに次ぐのがイタリア、アメリカ、スペイン、フランスとなっています。