温州ミカン 種類

甘くてジューシーな温州ミカンは、日本の冬の風物詩として多くの人々に愛されています。家族団らんでこたつに入りながら楽しむミカンは、心も体も温めてくれる存在です。しかし、一口に温州ミカンと言っても、その種類や特徴はさまざまです。本記事では、温州ミカンの魅力をさらに理解し、正しく選ぶために、種類ごとの特徴やおすすめの食べ方について詳しく解説します。温州ミカンの世界にどっぷり浸り、あなたの冬の楽しみを一層味わい深いものにしましょう。

ニュー日南

ニュー日南は、1995年に宮崎県日南市の古澤勝氏の園で発見された品種です。この品種は興津早生に日南1号を高接ぎした際に現れた強勢で着色が早い枝が元になっています。「日南1号」N系などと呼ばれていたこの種は、後に「日南の姫」として知られるようになりました。「日南1号」は樹勢が強い極早生系統の一つですが、「日南の姫」の樹勢は同等かやや弱い場合もあります。それでも、開花後も樹勢が衰えることはありません。葉は宮本早生より大きく、結実率も良好で、隔年の不作は少ないです。果実はM玉を中心に揃い、色付きが早いのが特長です。9月上旬には色付きが始まり、9月下旬には完全に色付きます。9月に入ると糖度は高まり、酸度は早い段階で減少する傾向にあります。シートマルチ栽培を採用すると、果皮や果肉の色がより赤くなります。ただし、浮皮が発現しやすいため、適切な灌水管理が必要です。シートマルチによる栽培法が推奨される一方で、一般的な露地栽培では糖度の向上が遅くなるため、質の低下を招く可能性があります。したがって、硬質土壌でのシートマルチ栽培が求められます。「日南の姫」は極早生の品種で、収穫は「日南1号」のマルチ栽培の7~10日前から可能です。この品種は売り急ぎを抑える役割をも果たしています。暖地では露地栽培でも9月10日頃から収穫でき、完全に色づくのは9月20日頃です。商標権が取得されているため、取り扱いに注意が必要です。

日南1号

1979年、宮崎県日南市東郷町において野田明夫氏が「興津早生」の枝変わりとして発見し、1989年に品種登録がされた日南1号。温州ミカンとしては中程度の樹勢ながら、極早生温州としては高い樹勢を持っています。果実の大きさは「興津早生」と似た中程度で、果形はやや扁平で、玉揃いも良いです。果皮は9月中旬から色づき始め、10月中旬には完全に着色し、「興津早生」よりも2~3週間早く色づきます。9月中旬の果汁糖度は9度以上、10月中下旬には10~11度に達します。クエン酸の含量は8月には2%と高いものの、9月には急速に減少し、9月中旬には1.2~1.5%程度に、10月上旬には1%を切ります。その後は比較的緩やかに減酸し、味が損なわれにくいのが特徴です。果肉が早熟型のため、果皮に青みが残っていても出荷が可能で、夏の季節感を持った味わいを求めるにはこの時期が最適です。また、糖度が高まった状態での出荷も可能です。「ニュー日南」や「日南の姫」の親品種であり、古いながらも毎年多くの苗木が販売されるなど、補植需要のみならず新規導入も続いている品種です。

岩崎早生

1978年に長崎県の西海町で発見された「岩崎早生」は、興津早生の枝変わりとして登場しました。温州ミカンの中でも極早生温州に分類されるこの品種は、樹勢がやや強めです。苗木からの初期結実は遅れることがあるものの、結果性は良好で着花数も豊富です。果実は中くらいの大きさで形が整っており、興津早生よりも平たい形をしています。脱緑は9月中旬から始まり、9月下旬に着色が進みます。成熟は興津早生より約2週間早く、10月に入ると橙色が目立ちはじめます。果皮は滑らかで薄く、油胞が小さく密集しています。9月中旬の糖度は約8度で、下旬には9度に達し、10月上旬には10度に達します。クエン酸濃度は9月下旬に1%程度に達し、10月上旬には0.9%とやや酸味が和らぎ、果実は良好な風味となります。10月中旬には糖度が10〜11度となり、クエン酸は0.8%に、10月下旬には糖度11度前後、クエン酸は0.7%となり、果実の風味が優れたものになります。10月下旬から浮皮が見られることがあり、特に降雨量が多い年に発生し、品質に影響を及ぼします。温暖な地域では着色が遅く、浮皮が発生しやすいため適していませんが、その他の地域では高品質の果実を生産できます。樹勢が強く、無結実の期間には樹冠が良好に成長しますが、結実が始まると枝の数が減り、樹冠の拡大が緩慢になります。収量を安定させるためには、無結実期間に樹冠を拡大することが重要です。この品種は、甘さが特徴の極早生ミカンとして「日南1号」よりも早く結果期に入り、現在でも乾燥した条件での栽培に人気があります。

ゆら早生 

近年注目を集めているミカン品種「ゆら(由良)早生」は、浮皮しない特性が評価され、人気が高まっています。特に「小ぶりな方が甘い」という風潮が広がり、大手スーパーでも好調に販売されています。「ゆら早生」は贈答品としての需要もありますが、若年層には家庭消費がメインとなっており、見た目よりも味わいが重視されます。1985年に和歌山県で山口寛二氏が発見したこの品種は、品質の高さから1995年に品種登録され、現在では和歌山県以外でも栽培が可能となっています。10月に出荷されるこのミカンは糖度が高く、じょうのう膜が薄いことから、特に甘さと風味に優れています。栽培条件としては、温暖な気候と良好な日照がある地域が適しています。また、元気な成長を支えるために、肥沃な土壌と水管理が重要です。育苗期には、適切な潅水と摘果が樹冠の拡大を手助けし、結実し始めた際には、樹勢の管理が求められます。「ゆら早生」はその高品質と安定した市場価値で毎年高単価を維持しています。果実が小さいことを除けば欠点はほとんどなく、特に若い木の段階では樹勢を強化する手入れが重要です。初めて実をつける際には、十分に育った樹体から始めるのが良いでしょう。

ゆらフリー

先祖還りで樹勢が強くなる可能性があるため、苗木の品質に懸念があった「石地フリー」苗が、2008年から慎重に販売され始めました。2011年の試験栽培結果からの確信により、普通の石地苗木の生産を停止し、「石地フリー」専用に切り替えました。そして、2023年度からは「ゆらフリー」苗の販売を開始します。佐賀県と長崎県での試験栽培により、「ゆらフリー」の成長についての良好な結果が得られました。特に長崎県では前年に初めて果実が収穫され、結果の多さは普通ゆらに劣ったものの、作業の効率化が図れました。果実の味は良好で、今後、生殖生長試験が本格化します。従来のゆらの課題に新たな可能性をもたらす次世代のゆらになるかもしれません。

上野早生

上野早生という品種は、1970年に佐賀県東松浦郡浜玉町で上野寿彦氏により、宮川早生の枝変わりとして発見されました。この極早生温州は、1985年に品種登録されました。樹勢は宮川早生と同程度かやや強く、他の極早生温州よりも無結実期間の生育が旺盛であり、結実を始めても良好な成長を続けます。苗木の成長も良好で、枝が充実して栽培しやすい品種です。開花期や花の様子、結実特性は宮川早生に似ています。果実は扁平で薄く滑らかな果皮を持ち、色は濃い橙色です。果実は中程度の大きさで、着色が9月中旬に始まり、10月上旬から完全に色づきます。糖度は9月中旬には8~9度、10月には10.5度以上になり、クエン酸は9月下旬から急激に低下し、10月には1.0%前後になります。この品種は完熟しても味が変わりにくく、食味が良好です。浮皮の発生は少ないですが、10月中旬以降に気温が高くなると浮皮が生じることがあります。上野早生は早期から完熟まで出荷可能で、マルチ栽培やハウス栽培にも適しています。良質な果実を生産するには、日当たりと排水が良く、気温が16℃程度の場所が適しています。栽培は宮川早生と同じ方法で行え、剪定や特別な土壌管理を必要としません。この品種は発見された時から全国で広く栽培され、強い樹勢と豊かな収穫量で評価されています。

肥のあけぼの 

肥のあけぼのは、1983年に熊本県農業研究センター果樹研究所で開発された品種で、楠本早生と川野ナツダイダイの交配による珠心胚実生個体から選抜され、1995年に正式に品種として登録されました。この柑橘は樹勢が旺盛なため結果がやや遅めですが、枝や葉の発生が豊富で、安定した生産が見込めます。果実は興津早生と同じくらいの大きさで、形状は平べったく、果頂部には独特の鼻のような突起があります。果皮はなめらかで色は濃い赤橙色、糖度は高く、育成地では10月中旬に1%の酸度とバランスの取れた味を持ちます。栽培には温暖な地域が適しており、糖度の高い果実を実らせるには排水良好な南面の斜面が理想的です。樹冠が容易に広がる特性を生かし、枝を適切に管理し、落果後には摘果を行うことで品質向上が期待できます。果皮の色を生かし、完熟まで樹上で育てることで、優れた食味の果実が生産可能です。この品種は他の極早生品種を凌ぐ存在とされています。

原口早生 

1969年、長崎県西彼杵郡西海町の原口誠司氏が営む原口果樹園で、宮川早生の変異樹「原口早生」が発見されました。この品種は、地域の人々と良質な果樹を共有するために、種苗法による品種登録が行われませんでした。原口早生は、成長初期から旺盛でありながら、苗木や高接ぎの状態でも早期に実をつけ始め、隔年結果性が少なく、多産性です。極早生温州に似て、初期から実の生産が多くても著しく衰弱することはありません。9月中旬には濃い橙色に熟し、果肉先熟タイプの特徴を持っています。果肉は既に熟して糖度が高くなり、酸味が減少しているため、果皮の完全着色前に収穫することが可能です。そのため、浮皮果の問題もほとんどありません。比較的旺盛な樹勢と優れた結実性により、安定した生産が可能な系統です。着色期にはじょうのう膜が薄くなるため、減酸が早く、甘味が増すことから、マルチ栽培で高品質な果実を生産するのに適しています。親品種と比べ、果肉先熟で糖度が高く、10月下旬には糖度11以上、11月には12度を超えます。酸含量も1%以下と優れた食味を持ち、大きな果実でも出荷が可能です。甘味を特徴とするこの温州みかんは、長崎県を代表する品種で、市場でも高評価を受けており、佐賀県など全国各地で栽培が広がっています。「ゆら早生」、「上野早生」、「肥のあけぼの」などと並んで、甘いみかんのリレー出荷が可能です。

宮川早生(持丸系)

宮川早生(持丸系)は、その発祥が福岡県柳川市とされ、大正初期に宮川謙吉氏の宅地内で発見されました。1923年には、田中長三郎博士によって「宮川早生」と名付けられ、広く知られることとなりました。この品種は結実性が高く、隔年結果がほとんどないため栽培が比較的容易です。ただし、果実を長く樹上に残しておくと翌年の着花が減少する可能性があります。果実は扁球形で、玉揃いが良好ですが、若木では大型果となりやすいです。果皮は中程度の厚さで、裂果や日焼けによる病害に強いのが特徴です。また、気温による着色の違いがあります。宮川早生からは多くの派生品種が生まれ、今日の早生品種の礎となっています。持丸系宮川は、コンパクトな樹形が特徴で、生産効率が高いとされていますが、気象災害には注意が必要です。

宮川早生(八丁系)

宮川早生(八丁系)の特徴は、温州みかん苗木の中で最も生産量が多く、依然として高い需要を持っています。この品種は福岡県柳川市で明治42年ごろに、在来系温州みかんの突然変異として発見され、大正12年に田中長三郎博士によって「宮川早生」と名付けられました。宮川早生からは上野早生、原口早生、興津早生、山下紅早生、させぼ温州といった直系品種が生まれています。さらに、これらの品種から日南1号、岩崎早生、田口早生といった孫品種が育成され、日本の極早生、早生、中生の基礎品種となっています。このように優れた品種ですが、逆に言えば、しばしば枝変わりを起こす特性もあるため、苗木の採取には特に注意が求められます。いずれにせよ、宮川早生は100年以上にわたって愛され続けるロングセラー品種です。当社が提供する八丁系宮川および持丸系宮川も、柳川市で見つかった宮川早生から選抜、または枝変わりで生まれたものです。八丁宮川は、特に原木の宮川に近い特性を持ち、果形が扁平で、持丸系よりも熟成期が遅いのが特徴です。また、木の勢いが強く、寒さに対する耐性も高いため、露地栽培においては持丸系よりも優れた点があります。

興津早生

興津早生は、1940年代にカラタチの花粉を宮川早生に交配して選抜された珠心胚実生個体から開発され、1963年にミカン農林1号として公式に登録されました。この早生温州みかんは、樹勢が強く育成が良好で、幹の太さや樹冠の広がりが宮川早生より優れています。葉は大きく、初期には多くのとげが見られましたが、接ぎ木による処理により最終的には減少しました。開花時期は宮川早生とほぼ同じで、着花性と結果性に優れ、豊産で隔年結果性はほとんどありません。果実は大きめで、適正な結果量であれば形も整います。樹勢が強いため、若木時には枝が徒長しやすいですが、浅い耕土の園地に適しています。若木の剪定は控えめにし、肥料は窒素を少なめにしてリン酸やカリを多く施します。糖度は9月下旬から急上昇し、10月下旬から11月上旬ころには11.0度前後に達し、クエン酸濃度は宮川早生とほとんど変わりません。糖酸比が高く美味で、収穫期以降も糖度が増え続けます。浮皮発生には注意が必要ですが、収穫のタイミングは幅が広く、1月上旬までの樹上完熟も可能で豊産性を誇ります。

田口早生

和歌山県有田郡吉備町で1978年に田口耕作氏が栽培していた興津早生の中から、特に樹勢の強い一本を発見し、後に果実の品質の優れた点に気が付きました。それを受けて、植物体と果実の詳細な調査を行い、その結果を基に1995年9月に品種登録を申請しました。この新しい品種は、定植直後の成長期には着花量がやや少ないものの、結実期に入ると着実に花が付き豊かな収穫が期待できる特性があります。その隔年結果性は興津早生に類似しています。果実は扁平な形で、重量は約120g、果皮はオレンジ色で外観は興津早生に酷似しています。果実の成熟期は11月上旬からで、糖度は11月で11~12度に達し、時間と共に増加します。酸味も9~10月に減酸が興津早生より早く進むため、10月末までには1%以下に減少し、その後はゆっくりとした減少を見せます。収穫は11月上旬から可能で、11月末には食味が向上しますが、遅い収穫では浮皮が発生する可能性もあるため、注意が必要です。栽培適地は一般的な温州ミカンの栽培地域で問題はなく、やや強めの樹勢を持つため排水性の良い浅い耕土が適しています。栽培方法は宮川早生や興津早生に類似し、品質向上のため、適切な結果量を維持し、地力管理を行うことが重要です。また、高温でも安定した収穫が可能で耐寒性にも優れていることから、多くの栽培者から評価されています。糖度が高く、減酸の進行が早いことが特長として挙げられ、宮川や興津に代わりつつある新たな品種です。

山下紅早生

山下紅早生は糖度の数値自体はそれほど高くありませんが、酸度が非常に低く、0.5~0.7%であるため、甘味を強く感じることができます。濃い紅色が特徴的で、目を引く存在です。果実は「越冬紅」とも称され、その人気はメディアにおいても毎年取り上げられるほどです。ただし、栽培が非常に難しく、収量がなかなか上がらないことから、生産者が限られており、希少な品種とされています。

小原紅早生

1973年、香川県坂出市の小原幸晴氏によって発見された小原紅早生は、宮川早生の枝変わりとして登場し、1993年に品種登録されました。このミカンの樹勢は中庸で、宮川早生とほぼ同等ですが、若干力強い印象です。樹姿は開放的で、葉の角度はやや直立性を持ち、宮川早生に似ています。葉の形状と大きさはほぼ同じですが、葉柄が長く、やや立ち気味です。この品種は実がよくつき、毎年多くの有葉花が育ちます。隔年結果性は少なく、発芽や開花のタイミングも宮川早生とほとんど変わりません。果実は中程度の大きさで、色付きは10月上旬から始まり、11月上旬に完全に紅橙色に染まります。果皮は滑らかで、油胞が多いのが特徴で、果肉の色は非常に濃く、他のミカンとは一線を画しています。成熟時期は宮川早生よりやや遅く、11月上旬が目安です。糖度や酸味ともに優れ、栽培しやすいことも魅力です。この奇跡の赤いみかんは元々香川県限定の品種でしたが、種苗登録の満了により全国で栽培可能になりました。糖度によって「金時紅」や「さぬき紅」と呼ばれることもあり、国内の温州ミカンの中でも特に紅色が際立つと高く評価されています。

菊間中生

菊間中生は、愛媛県越智郡菊間町で開発されたみかんで、南柑20号の優れた特徴を受け継いでいます。山崎遥氏が1957年に着色が早く、果形が良好で豊産性に優れた3本の木から穂木を取り、800本の苗木を育てて1966年に定植しました。1978年には、特に品質の良い10本の木を選び抜き、原木としました。翌年、農協が30aの母樹園を設け、穂木の供給を始め、現在では菊間町を中心に広く栽培されています。樹姿や樹勢が南柑20号に似ており、葉はやや大きめです。結実性は安定していて、豊富な収量が期待できます。果実は南柑20号と同じ大きさと形状で、着色は約10日早まり、11月中旬には完熟し、果皮は濃い紅色になります。糖度は高く、12~13度以上が期待されますが、排水の悪い土壌では食味が劣ることがあります。

させぼ(尾崎)

特異な気象に適応し、浮皮が発生しにくいことで再度注目される品種である佐世保(尾崎)。1975年に長崎県佐世保市で‘宮川早生’の15年ものの樹から発見されました。この枝は糖度が高く、着色が優れる一方、浮皮の発生も抑えられていました。専用のマルチ栽培で糖度が13~16度以上になることが可能であり、樹勢を保ちつつ結実を確保するには技術を要します。「出島の華」はこの品種から選ばれた規格果実です。

南柑20号

1937年から愛媛県立果樹試験場の村松春太郎氏は、温州ミカンの優良系統を探る研究を開始し、多くの種を集め、特性を比較しました。1939年、宇和島市にある今城辰男氏の果樹園で、成熟期の早い高品質な果実を産する系統が見つかり、「南柑20号」として選ばれました。この品種は戦後、南予地方を中心に広がり、栽培が続いています。「南柑20号」は普通温州と早生温州の中間的な樹形を持ち、やや小型で、葉は中型です。結実性に優れ、収量も豊富で、隔年の結果が少ないのが特徴です。果実は少し大きく、形は扁平、果皮がやや厚いため剥きやすく、濃厚な色合いが特徴です。糖度は11~12度と高糖系温州には及びませんが、非常に美味しく食べられると評価されています。愛媛県では「南柑20号」が中生温州として重要な品種であり、水はけのいい斜面など、立地条件によって果実の品質が左右されます。不適地では品質の低下が見られるため、他の品種への転換が検討されることもあります。また、「南柑20号」は耐寒性にも注目され、寒冷地での栽培が可能です。かつての昭和40年代には防寒措置が必要でしたが、今ではそのような対策は不要です。とはいえ、温暖化の影響を考慮しつつも、大寒波の発生を視野に入れる必要があります。100年以上も支持され続けてきた品種の価値は、未来に向けても大いに期待されています。

石地フリー

石地フリーは、苗木の生産過程で長期間にわたる穂木のエイジングが特等苗木の比率を低下させる要因となっていたため、今年は佐賀県で育てられた新しい穂木に切り替えることにしました。この品種は1967年に広島県で杉山温州の苗木から発見され、浮皮の発生が少なく、食味が優れた温州ミカンとして登録されました。健康には、栄養成分である糖度が12度ほどで、クエン酸含量が1.00%以下であることが確認されています。また、糖度計の示す数値以上に甘味が感じられるのが特徴で、特に多雨の夏でも極端な糖度の低下が見られないことが強みです。

川田温州

地球温暖化で発生する浮皮の問題を克服した新しい品種、川田温州を紹介します。この品種は、薄い果皮やじょうのう、独特な食味が特徴で、酸が自然に下がるため、どんな年でも味が劣化せず完熟出荷が可能です。しかし、これまで普及しなかった理由の一つは、根域が浅いことです。果実が多く生る翌年には土中の根が少なくなるこの欠点を補うため、苗木が実をつける前に3年間は樹を大きくすることが重要です。愛媛県果樹試験場岩城分場では「無剪定斜幹植え法」により、慣行区の2倍以上の成長を記録しています。この方法では、苗木を斜めに植え、太い枝を主幹から伸ばしていきます。さらに、土の深い園地に植えることで、直根を深く張らせ、品種の浅根性の弱点を克服できます。「田口早生」より浮皮が少なく、高品質な果実が得られるこの品種は、宮川早生の枝変わりで、薄い果皮とじょうのう、独特の味わいを持ち、同時期の他のミカンより優れています。根域が浅いため、苗木は果実づくりよりも樹体作りを優先し成長させる必要があります。酸が自然に減るので、毎年味を保つことができ、完熟出荷に適しており、大きめのサイズでも美味しさが際立ちます。

古田温州 ふるたうんしゅう

古田温州という品種は徳島県勝浦郡勝浦町の古田源一氏の農園で、杉山温州の枝変わりとして1959~1960年頃に発見されました。1981年10月に種苗法に基づき品種登録が行われました。樹形は中間型で、杉山温州に比べて強めの樹勢があります。節間はやや短く、枝は込み合い、葉は小型です。若木でも実をつけやすく、栽培が比較的容易です。果実は大きめで、扁平な形状が特徴で、均一性も優れています。果皮はやや厚く、じょうのう膜も杉山温州に比べてやや厚く硬いです。しかし浮皮の問題が少なく、十万温州よりも長期間の保存が可能です。育成地の徳島県勝浦郡勝浦町では11月下旬から12月上旬に熟し、糖度は12度前後、酸度は1~1.2%程度で、貯蔵の後期にかけて濃厚な味わいを楽しめます。適した出荷時期は2月下旬から3月上旬です。小果であることから、当初はそれほど植えられませんでしたが、最近の傾向として、小果や食味が重視され、扁平な果形が好まれています。この嗜好の変化により古田温州が再び注目を集め、当社でも取扱いを始めました。長崎のお客さんからも好評価を得ており、古田温州は古いながらも新たな人気を獲得しています。果形が非常に扁平で、食味良く、保存に適した晩生品種です。

大津4号 

大津4号は、1964年に神奈川県の湯河原町で大津祐男氏が十万温州の種子から育てた個体がもとで、1977年9月に品種として登録されました。この品種は非常に強い樹勢を持ち、若いころにはとげが見られましたが、今ではほとんどなくなっています。苗木も活発に成長し、樹の形や結果のタイミングは他の系統とあまり変わりません。大津4号は果実が多く取れる豊産性がありながら、隔年で結果が異なる特性を持ちます。 その果実は大きく、扁平な形で一様にそろっています。11月中旬から12月上旬にかけて完全に色づき、表面は滑らかで光沢がありますが、やや淡い黄色を帯びています。果皮は比較的厚く密度があり、浮きにくいのが特徴です。しかし、完全に色づいた後に樹上に置き続けると皮が浮いてくる傾向があります。 さらに大津4号は高い糖度を誇り、果汁の糖度は完全に色づく時期で約12度、クエン酸濃度は約1%で、風味が良く濃厚な味わいです。肉質は柔らかく多汁で、じょうのう膜は青島温州ほどではないもののやや硬いです。高糖度系みかんとして年内に出荷が可能で美味しさを維持できますが、隔年結果性が強く、表裏年が顕著です。特に、土が深く直根が深く入る場所では果実の着果が良くないため栽培に適していません。

伊木力

伊木力地区では、1974年8月号の「農業と科学」に特集されたように、200年にわたる歴史と伝統を誇るみかんの生産が行われています。地域の先人たちは優れた品種の選定に注力し、この土地に最適な伊木力系を確立しました。普通温州が伊木力系で統一されており、優良な系統を維持するための選別が続けられています。旧伊木力村では、みかん以外の農作物での暮らしは難しく、現在も農協の99%がみかんの生産に依存しています。こうした環境の中で、隔年結果性が少なく連年で安定した収穫が得られる「伊木力」が選抜され、「長崎県の伊木力」ブランドとして市場に出されています。この品種は、大津4号の出荷時期と一致しながらも、隔年結果性を克服した画期的な品種です。そのため、特に裏年でも安定した収穫と高収入が見込まれますが、糖度は大津4号の方が高いです。

青島4号 

青島4号の特性は、早生品種の青島温州として知られています。青島温州よりも1~2週間早く収穫・出荷が可能で、青島の欠点である着色の遅れが少ないのが特徴です。果実の形が揃いやすく、熟成期間も短いため、管理が容易です。苗木の需要は高まりを見せており、青島に匹敵するほどの注文数に成長しています。一方、温州みかんの中で比較的かいよう病に強いとされているものの、青島と同様にかいよう病の発生リスクがあるため、注意が必要です。

青島

青島(あおしま)は、静岡市福田ケ谷の青島平十氏が1950年以前に自身の尾張温州の枝の変化から発見した品種で、品種登録はされていません。果実は大型で非常に扁平な形をしており、表面は滑らかで油胞が小さいため見栄えが良いです。果皮はやや厚く、浮皮になりにくく、果肉はやわらかい一方でじょうのう膜がやや厚めです。糖度が高い品種で、酸味は他のものと大きな違いはないものの、風味が濃厚で美味しいです。樹勢は旺盛で、隔年結果を防ぐためには施肥を多めにし、夏肥の割合を増やす必要があります。また、適切な排水対策と有機物の投入を行い、細根を増やすことが推奨されます。糖度が高い一方で、着色が遅いため、12~1月の出荷の際には高温予措を行って色づきを促進させます。「青島」といえば、静岡県のJA三ケ日みかんが思い浮かびますが、そうか病に対する特効薬「ダイホルタン」が使用禁止となり、早生温州への品種転換を考えざるを得ない状況もあると言われています。しかし、できる限りこの問題に対処していくことが望まれます。温州みかんの中でもっとも甘い晩生品種である青島は、JA三ケ日の代表でもあり、3月まで保存・出荷が可能です。隔年結果性を強化しないためには、適した土地の選定が重要で、浅い土壌の園では飛竜台木の使用が推奨されます。

十万温州 

十万温州は、高知県香美郡香我美町で十万可章氏によって発見された尾張系温州の枝変わりで、1953年に品種登録されました。樹勢は強く、表年には豊富な着花が見られ、結実性も優れていますが、裏年になると着花が極端に少なくなり、隔年結果性が非常に強いです。果実は大きめで形は扁平、果皮はやや厚めですがしまりが良く、浮皮しにくい特性があります。ただし、着果量が少ないと果面が粗くなり、見た目が悪くなります。着色は遅く、完全に色づくのは12月中旬ごろです。果汁の糖度とクエン酸濃度はともに高く、果皮が弾力性を持ち長期間の貯蔵に適しています。3~4月まで保存しても美味しさは損なわれません。隔年結果性が課題であるため、密植を避け、独立した樹木の維持が必要です。樹冠内部にも日光が入るように間引きを行い、水平に配置された下垂枝に果実が付きやすくなるようにします。施肥は多めに行い、夏肥の割合を増やすのがポイントです。このミカンが植えられる理由は、その味が非常に良いからで、貯蔵しても味と香りが保持されます。熟成で甘みとコクが引き立ち、3月中まで出荷されることもあります。栽培の難しさから希少な品種です。

今村温州

1945年、福岡県久留米市草野町吉木で、今村芳太氏が尾張系温州の変異種として発見したのが今村温州です。この品種は、温州ミカンの中でも特に強い樹勢を持ち、初期の頃は直立生ですが、成熟期には開張します。長い節間と少ない枝梢が特徴で、特に若木の成長は急速で樹冠が早く広がります。若木期にも花をつけますが、結実率が低く、初期の収穫量は少ないです。樹木が密植されると、枝が直立し、花付きが悪くなります。夏には枝から新芽が出やすくなり、その結果果実が多く落ちてしまいます。しかし、樹木が安定し春に細かい枝が見られるようになると、豊かな収穫が見込めますが、果実がたくさん実ると隔年結果の傾向があります。果実は中くらいの大きさで形が整っています。果形は扁平で、果皮は薄く、浮皮になりにくいのが特徴です。熟期は遅く、12月に完熟します。外皮は濃い橙黄色で、完熟するととても美しいものに。糖度と酸味のバランスが非常に良く、保存性に優れています。12月中旬に収穫した果実を貯蔵すると、風味がさらに良くなり、濃厚な果汁で非常に美味しいです。甘みと酸味が絶妙なこの今村温州は、最高級の温州みかんとされていますが、栽培している農家が少ないため非常に希少です。ジュースは手に入れやすいので、その濃厚な味わいを楽しむことができます。栽培は難度が高いですが、こだわりのある農家の方にとって挑戦しがいのある品種といえるでしょう。特に、盤の浅い園におすすめですが、技術に自信がない方には飛龍台木を試すことを提案します。

寿太郎温州

寿太郎温州は、「日本一の高級みかん」として名高い果物で、静岡県沼津市で見つかった青島みかんの変種です。このみかんはMからSサイズまでの小さな実ですが、その味は非常に凝縮されています。発見者である山田寿太郎氏は、青島温州のみかん園で独特の枝と果実の甘さを見分け、それを接ぎ木した結果、「3年後には50個の実がなり、その糖度は驚きの17度に達した」と報告しています。1984年には、寿太郎温州として正式に品種登録されました。果皮は12月上旬には完全に着色が進み、果実自体の品質も優れており、糖度が12〜13%で青島温州よりも安定して高いです。酸度は12月初旬には1%前後となり、味わいは非常に濃厚です。果皮が浮きにくく、貯蔵によって2月から3月には食味のピークを迎えます。このみかんは、青島温州の枝変わりとして誕生し、やや薄い果皮と豊かな貯蔵性を持ち、糖度・酸度ともに優れています。出荷は一般的な温州みかんのシーズンが終わる2月上旬から始まり、4月初旬まで続きます。青島温州より市場では約100円高く評価されることもあるこの品種は、今後もそのポテンシャルを発揮し続け、期待が寄せられています。

飛龍台木 大津4号

飛龍台木、大津4号の特徴は、低い樹高で作業がしやすく、枝や葉にトゲが少ないため風による損傷を受けにくいことです。この台木は、夏秋梢の発生率が低いため、かいよう病のリスクが低いとされています。1本当たりの収量は多くないですが、樹冠容積あたりの収量と果実の品質はカラタチ台と同じレベルです。適切な栽植間隔や整枝を考慮することで、低農薬栽培や省力化に適した選択肢になると考えられます。1977年に登録されたこの品種は、高糖度系のミカンであり年内出荷が可能ですが、隔年結果性が強いため、農園の土壌が深すぎると栽培が難しいことも。そんな中で「飛龍台木大津4号」は、土壌が深くてもおいしい温州ミカンを育てる可能性を広げます。隔年結果性も改善され、初期には樹冠の成長に注力する必要がありますが、強い支柱を立てて風害を防ぐと良いでしょう。

飛龍台木 白川(金峰)

飛龍台木 白川(金峰)は、1974年に熊本県の農業研究センター果樹研究所で生まれました。この品種は、青島温州にヤラハタンゼロの花粉を受粉して得られた珠心胚実生個体から1989年に選抜され、品種登録されました。青島温州よりも樹勢が旺盛で、高接ぎ樹では特に樹冠の拡大が早くなります。若木でも徒長枝が少なく、整枝が必要ですが、トゲの発生はありません。果実は青島温州と同サイズで、均一な玉揃いが特徴です。果皮が薄く、果面が滑らかで、着色が早く、糖度が高いのが特徴です。しかし、11月中下旬以降に収穫しないと浮皮が発生します。飛龍台木は、低樹高で作業しやすく、トゲも少なく、風による傷もつきにくいとされています。壊疽病の発生が少なく、低農薬栽培に向いていると考えられますが、矮性の台木のため、風害の地域では倒れやすいという注意点があります。この品種は1989年に熊本県で登録され、糖度13以上のものは「金峰」というブランドで販売されます。青島以上の樹勢で、隔年結果性が強いが、見事な果実を育むことから、幣社ではこの台木を樹勢のコントロール手段として採用しています。

飛龍台木 青島4号

飛龍台木「青島4号」は樹低くて作業しやすく、トゲが小さく少ないため風の影響を受けにくいです。夏秋に新しい枝の成長が少なく、潰瘍病が発生しにくい特性を持ちます。この台木は収量が少ないものの、樹冠容積あたりの収量や果実の質はカラタチ台木と同等です。そのため、適切に植栽間隔や整枝法を工夫することで低農薬栽培や省力化に向きます。飛竜台木は矮性のため樹冠拡大に注意が必要で、風が強い地域では倒れる可能性があることに注意が必要です。一方、「青島」は早生系であり、収穫出荷のタイミングが「青島」より1〜2週間早くなります。特に色付けが遅れる欠点が少なく、果実の揃いも良好で管理しやすいとされています。比較的潰瘍病に強い温州みかんの中でも、「青島」と同様に注意が必要です。糖度が高いため、特に高地の園での栽培に適しており、「飛竜台木青島4号」は樹勢が弱くても糖度が1度以上高まる報告もあります。

飛龍台木青島

飛龍台木青島には、樹高が低くて作業がしやすく、トゲが小さく少ないため、風による枝や葉の損傷を防止する特性があります。加えて、夏秋に芽生える梢の比率が低いことから、栽培中に問題となるかいよう病が起こりにくいと考えられています。飛龍台は他の台木と比べて1樹当たりの収量が少ないですが、樹冠容積あたりの収量や果実の質はカラタチ台と変わらないため、栽植間隔や整枝法を調整することにより、低農薬や省力化栽培に適していると考えられます。しかし、飛龍台木は矮性台木であるため、樹冠の拡大が重要です。また、浅根性のため、風が強い地域では倒木の危険性があるかもしれません。温州みかんの中で最も甘い晩生品種である「青島」は、3月まで保存と出荷が可能です。盤のある土地を選ぶことが崖年結果性を避けるために重要で、糖度が高く、酸味とバランスが取れているため、糖酸バランスが良い品種です。盤の深い土地では飛龍台木が特にその力を発揮します。

飛龍台木今村

飛龍台を使用すると、樹高が低くなるため作業がしやすく、トゲも少なくなるため、風による枝や葉の損傷が軽減されると考えられます。この台木はまた、夏秋に新しい枝が出にくい特性があり、栽培上問題となるかいよう病の発生を抑えられる樹相であるとされています。1本あたりの収量は他の台木より劣るものの、樹冠容積に対する収量や果実の品質はカラタチ台と同等なので、栽培間隔や整枝法を工夫すれば、低農薬栽培や作業の省力化に適した選択肢となるでしょう。ただし、飛竜台木は矮性の特性があり、樹冠の拡大をその主目的とし、残根性があるため風害の多い地域では倒木の危険が考えられます。さらに、久留米市で発見された希少品種の今村温州は、栽培が難しいものの、その果実は糖度が高く、甘みと酸味のバランスが絶妙です。この品種は非常に希少で、手に入れるのは困難ですが、濃厚な味わいのジュースがその特長を物語っています。実が実りにくい問題もありますが、土が深い地域では、ヒリュウを台木として使用すると樹がまとまり、生産が安定して果実の品質が向上することが期待されます。ぜひ、このおいしいミカンに挑戦してみてください。

まとめ

温州みかんは、日本の気候に合った最も重要な柑橘類で、広く栽培されています。和歌山県、愛媛県、静岡県が特に有名ですが、最近では地球温暖化の影響で、茨城県や新潟県でも生産されています。収穫は、極早生から晩生まで多様な品種があり、長い期間楽しむことができます。ぜひ、お好みのものをお選びください。

温州ミカン