「果物の王様」と称されるドリアン、その豊かな味わいとクリーミーな食感は、一度味わえば忘れられません。しかし、その特異な香りは、初めて出会う人々を戸惑わせることも多いです。東南アジアでは愛され続けるこの果物には、なぜ愛好家が後を絶たないのでしょうか?ドリアンの香りの向こうには、どんな魅力が隠されているのかを探るべく、ドリアンの知られざる秘密に迫ります。
ドリアンとは
ドリアンは東南アジアのマレー半島を原産地とするアオイ科の常緑多年生木です。その木の高さは10メートルから30メートルですが、中には50メートルに達するものもあります。果物の形状は品種により円形か卵形で、直径は15センチから30センチ、重量は通常1キロから3キロまでですが、大きなものは5キロにも達します。
頑丈で厚みのある殻は鋭いとげで覆われています。内部のクリーム色からオレンジ色の果肉が食用部分ですが、大きな種が含まれているため、食べられる部分はわずかです。殻の色は熟する前は緑色で、熟すにつれて薄茶色に変わります。
ドリアンといえばその特有の強い香りが有名で、ドリアンが手に入る国々ではホテルや地下鉄、飛行機内への持ち込みが禁止されているほどです。
木の幹から巨大な果実が数多くぶら下がる光景は圧巻ですが、落下して頭に当たると危険なので注意が必要です。
ドリアンの香りとは
ドリアンのにおいに関して、耳にしたことがある方は多いでしょう。ホテルや飛行機では、ドリアンの持ち込みを禁止している場合があります。嗅いだことのない人にとって、その独特の香りや味わいは興味深いものでしょう。
ドリアンのにおいは、腐敗したものを連想させるとよく言われます。2018年には、インドネシアのある旅客機でそのにおいが原因で一時的に出発が遅れる事態がありました。原因は貨物室のドリアンでした。原産国でもそのにおいが警戒されることがあるのです。
また、ガスのようなにおいだと指摘されることもあります。2019年には、オーストラリアでガス漏れ騒ぎが起き、発見されたのがゴミ箱に捨てられたドリアンだったというニュースもありました。そのにおいが騒動を引き起こすほどだったのですね。
近年、においを抑えた品種が人気ですが、ドリアン愛好者の中には、においがなければドリアンではないと嘆く声もあるようです。
ドリアンの香りの秘密とは
臭いという評判を持つドリアンですが、ファンにとってはこの匂いが何とも言えない魅力です。
ドリアンの香りが不思議に感じるのは、それがいかに複雑であるかを示しています。香りの成分には、タマネギやカリフラワーのような硫黄臭が含まれ、それがキャラメルやパイナップルのような甘い香りと絶妙に混ざり合っています。
解明されていない部分もあるものの、確認されているだけで26の揮発成分と8種の硫黄化合物が存在します。これらの揮発性硫黄化合物は成熟過程で生成され、熟すと同時に香りがピークに達します。
ドリアンの風味とは
多くの人がその味を、「濃厚で甘く、まるでクリーミーなカスタードのようだ」と表現します。濃厚さはあるものの、味が重過ぎることはなく、滑らかで上品です。
何度か食べるうちに、その独特の匂いも気にならなくなり、次第に夢中になることでしょう。ドリアンは、一度食べるともっと食べたくなる不思議な魅力を持つ果物なのです。
ドリアンの栄養
ドリアンが「果物の王様」と称される理由は、そのユニークな外観や匂いの強さ、そして味わいだけでなく、栄養価の高さにもあるとされています。
果肉は水分が少なく、ミネラルが豊富で、特にビタミンB1を多く含む点が際立っています。
貧血対策と疲労解消に効果的
ドリアンには、身体機能を維持するために重要なマグネシウムやリン、銅などの多くのミネラルが豊富に含まれています。葉酸やナイアシンの含有量も、果物の中では非常に高いレベルです。
葉酸は血液の生成を助け、貧血を予防します。一方、ナイアシンは代謝を高め、血行を改善し、冷え性の緩和に寄与します。
ビタミンB1
ビタミンB1は、エネルギー生成を助けるために糖を分解する重要な栄養素です。この栄養素は疲労回復に有効で、不足すると疲れがたまりやすくなります。水溶性ビタミンであるため、熱に弱く調理中に失われやすいので、果物などの生ものから摂取することがおすすめです。
ドリアンはビタミンB1を豊富に含む理想的な果物です。
果物が王者と称される理由とは
ドリアンが「果物の王様」と称される理由は多岐にわたります。その外観が男性的で力強いイメージを持つことが一因です。また、かつては高価であり、庶民が簡単には手に入れることができない特別な果物でした。
加えて、ドリアンは栄養価が非常に高いため、国王が滋養強壮を目的として好んで食していたと言われています。そのため、「王が食する果物」や「王の果物」として知られるようになったのです。このような背景から、いつしか果物の世界で「王様」と称されるようになったとも言われています。