春の訪れを告げる、甘酸っぱい宝石「イチゴ」。スーパーに並ぶ姿を見るだけで、心が躍る方も多いのではないでしょうか。実はイチゴには、驚くほどたくさんの品種があり、それぞれに個性豊かな甘さ、香り、形、そして食感があります。この記事では、そんなイチゴの多様な魅力を深掘りし、知っておくとよりイチゴ選びが楽しくなる品種図鑑をお届けします。お気に入りのイチゴを見つけて、至福のひとときを味わってみませんか?
個性豊かないちご、栽培品種は約300種!新品種も続々登場
いちごの品種は、驚くほど多岐にわたります。農林水産省の情報によると、日本国内だけでも約300種もの品種が存在するそうです。昭和中期から始まった品種改良は今もなお盛んで、その数は増え続けています。近年、地域ごとの特色を活かした「ブランドいちご」が注目を集めています。例えば、栃木県の「スカイベリー」(品種名「栃木i27号」、2014年品種登録)や三重県の「かおり野」(2010年品種登録)は、市場に出回るとすぐに人気となりました。2022年にも、滋賀県初のオリジナル品種「みおしずく」(品種名「滋賀SB2号」として品種登録出願中)や、福島県が開発した「ゆうやけベリー」(品種名「福島ST14号」として2022年品種登録出願中)といった新しい品種が登場しています。なお、いちごの名前と品種名は必ずしも一致せず、「あまおう」の品種名が「福岡S6号」であるように、一般的に知られている名前とは異なる正式な品種名を持つものも多くあります。
いちごの味は「甘味」と「酸味」!品種ごとの味わいを比較
いちごは、その外観、形状、そして口にした時の感触に至るまで、多種多様なバリエーションがあります。しかし、何よりも気になるのはやはりその味でしょう。「甘酸っぱさ」は、いちごの魅力の根幹ですが、甘みが際立つ品種もあれば、酸味をより堪能できる品種もあり、その個性は様々です。例えば、甘さが際立つ品種としては、「章姫」や「やよいひめ」、「レッドパール」、そして独特の香りが特徴の「桃薫」などが挙げられます。一方で、しっかりとした酸味を求めるのであれば、「とちおとめ」や「よつぼし」などがおすすめです。さらに、「紅ほっぺ」や「さちのか」のように、甘味と酸味のバランスが取れた品種も広く栽培されています。
採れる時期は品種によって異なり、1月から5月頃まで
品種によって、いちごの収穫時期は大きく異なります。ハウス栽培が中心となった現代でも、その差は顕著で、冬から春にかけて様々な品種が旬を迎えます。一般的にいちごのシーズン開始は1月。この時期から5月上旬頃まで長く楽しめるのは、「紅ほっぺ」や「よつぼし」といった品種です。また、「とちおとめ」「もういっこ」「あまおとめ」なども、1月から4月上旬頃までが旬とされています。一方、「おいCベリー」は1月から2月、「さちのか」は1月から2月中旬と、旬が短い品種も存在します。これらはシーズン初めが狙い目です。いちごは寒い時期に甘味を増すため、1月頃から甘いものが楽しめますが、2月以降に旬を迎える品種もあります。「章姫」「やよいひめ」「桃薫」などが代表例です。もちろん、いちごは自然の産物なので、栽培方法や場所、気象条件によって収穫時期は変動します。東北地方では6月、北海道では7月上旬頃までいちご狩りが楽しめます。また、気温が高くなるにつれて果肉が柔らかくなるため、食感の好みで時期を選ぶのも良いでしょう。
代表的なイチゴ品種19選!特徴と旬な時期を紹介
様々な品種があるいちごですが、好みに合うものを見つけるのは難しいものです。そこで、全国各地で栽培されている定番の19品種を厳選し、それぞれの特徴をまとめました。
章姫(あきひめ) 縦長の円錐形が特徴で、果肉は柔らかく、果汁が豊富です。酸味が少なく、しっかりとした甘さが楽しめます。主な産地:静岡県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は2~4月頃。
あすかルビー 「アスカウェイブ」と「女峰」を掛け合わせた品種で、丸みのある円錐形をしています。果皮はツヤのある赤色で、果肉も赤みを帯びています。果肉はやや硬めで果汁が多く、高糖度と程よい酸味が特徴です。主な産地:奈良県、収穫時期:12月~5月頃。
あまおう 大粒で丸みのある可愛らしい形が特徴です。果肉は硬めで果汁が多く、甘味と酸味のバランスが良い、風味豊かな味わいです。主な産地:福岡県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は3~4月頃。
あまりん 2019年に登録された新しい品種です。「やよいひめ」と「ふくはる香」の交配種で、比較的大玉で円錐形をしています。甘味が強く、酸味がおだやかなのが特徴です。主な産地:埼玉県、収穫時期:12月~5月頃。
おいCベリー ビタミンCなどの栄養価を高めることを目指して開発された品種です。サイズは比較的大玉で、甘味と酸味のバランスが良く、ビタミンCが豊富です。生で食べるのがおすすめです。主な産地:佐賀県、長崎県、収穫時期:12月~5月頃。
かおり野 2010年に登録された品種で、香りの良さが特徴です。甘い香りの成分を多く含み、果肉は硬めで、甘味が強く、酸味が穏やかな味わいです。カットした時の色のコントラストも美しいです。主な産地:三重県、収穫時期:11月下旬~5月頃。
恋みのり 2016年に登録出願された品種です。やや丸みのある果実は鮮やかな淡赤色~赤色で、ツヤがあり、大玉です。果肉は基本的に白色で、甘味と酸味が調和した香り豊かな味わいです。主な産地:長崎県、佐賀県、収穫時期:12月~4月頃。
さがほのか 「大錦」と「とよのか」を掛け合わせた品種で、円錐形でサイズが大きく、ツヤのある紅色と白い果肉が特徴です。果肉はしっかりとして甘味が強く多汁で、酸味はおだやかです。日持ちが良いのも特徴です。主な産地:佐賀県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は3月頃。
さちのか 香りが強く、甘味と酸味のバランスが良い品種です。果実が硬く、輸送や保存にも適しています。主な産地:長崎県、千葉県、佐賀県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は2~3月頃。
スカイベリー 2014年に登録された品種です。きれいな円錐形で大玉です。果皮は硬く日持ちに優れ、糖度と酸味のバランスが良く、果汁も豊富でジューシーな味わいです。主な産地:栃木県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は2~3月頃。
桃薫(とうくん) 桃のような香りが特徴的な晩生種です。果肉は柔らかく、甘味と酸味が調和しており、ココナッツやキャラメルのような風味も楽しめます。主な産地:長崎県、茨城県、収穫時期:12月下旬~5月頃。
とちおとめ 長年愛されている定番の品種です。糖度が高く、ほどよい酸味があり、果汁も豊富です。果実がしっかりしており、比較的日持ちが良いのも特徴です。主な産地:栃木県、愛知県、茨城県、収穫時期:11月~6月頃。
とよのか 主に西日本で親しまれてきた品種ですが、近年はあまり流通していません。甘味と酸味のバランスが良く、香りが豊かで、果汁も多く、日持ちが良い高品質ないちごです。主な産地:熊本県、収穫時期:12月~5月頃 ※近年はほとんど流通せず
女峰(にょほう) かつて人気を博した品種です。サイズはあまり大きくなく、果皮が濃い赤色で美しく、香りが良く多汁です。甘味と酸味をしっかり感じられ、深みのある味わいです。主な産地:香川県、収穫時期:12頃~4月頃。
紅ほっぺ(べにほっぺ) 「章姫」と「さちのか」の交配種です。鮮やかな紅色の果皮と淡赤色の果肉が特徴で、甘味が強く酸味もやや強めです。いちご本来の甘酸っぱさを堪能できます。主な産地:静岡県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は3月頃。
もういっこ 宮城県生まれの品種で、甘酸っぱいすっきりとした甘さが特徴です。果実は大きめの円錐形で、果皮は鮮やかな紅色です。果肉はしっかりしていて日持ちも良好です。主な産地:宮城県、収穫時期:12月~5月頃。
やよいひめ 群馬県生まれの品種で、サイズが大きめです。果皮は少しオレンジがかった明るめの赤色です。果肉は硬く日持ちに優れ、甘味が強くまろやかな酸味と合わさった風味が楽しめます。主な産地:群馬県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は2~3月頃。
ゆめのか 愛知県生まれの品種で、名前には「みんなの夢が叶うおいしいいちご」という意味が込められています。果実は円錐形で大きめです。果肉はほどよい硬さがあり、甘味と酸味が調和した風味の良い甘酸っぱさと、豊富な果汁でジューシーさが味わえます。主な産地:愛知県、収穫時期:12月~5月頃、最盛期は2~4月頃。
よつぼし 2017年に登録された新しい品種です。中程度の硬さの果肉に濃厚な甘酸っぱさが味わえるのが特徴で、人気が高まっています。光沢のある鮮やかな赤色の円錐形の果実も美しいです。主な産地:情報なし、収穫時期:11月下旬~5月頃。