カリン 収穫時期
カリンは、夏の恵みを象徴する果実として親しまれている果物です。その爽やかな香りと上品な味わいは、夏の暑さを和らげてくれる存在ともいえます。しかし、この美味しいカリンを楽しむためには、収穫のタイミングが重要になってきます。適切な収穫時期を逃してしまうと、カリンの味や食感は大きく損なわれてしまいます。今回は、カリンの収穫時期について詳しく解説していきましょう。
かりんとは
カリンは中国東部原産のバラ科カリン属の果物で、漢字では「花梨」と書かれます。その美しいピンクの5弁花や新緑、紅葉の楽しみと共に、香り高い大きな果実が特徴であり、庭園樹として人気があります。果実は350〜500gほどの大きさで、楕円形をしており、パパイヤのような形状です。皮の表面はつるりとしており、薄い黄色であり、完熟すると表面がワックスを塗ったようにベタベタとなります。果肉は薄い黄色から橙黄色で、中心部には縦に5本の空洞があり、その中に多くの種が入っています。
形が似ているマルメロとは異なり、カリンは楕円形で表面がつるりとしており、マルメロは球状でビロード状の綿毛が密集しているのが特徴です。
カリンは庭木としても人気があり、全国的に栽培されています。寒さに強い特性から、長野県や山形県などの甲信越や東北地方、また香川県や愛媛県などの四国地方が主な産地となっています。日本全国に広く分布しており、収穫される時期が長いのが特徴で、4月中旬から5月上旬に花が開花し、夏から秋にかけて実が大きくなり熟していきます。実全体が黄色く色づき、香りが立つと食べごろとなります。旬は10月から12月ごろです。
スーパーなどではあまり見かけることがないですが、地元の直売所や通販などで購入することができます。
かりんの歴史
かりんの歴史は非常に古く、中国では古代から薬用や観賞用として利用されてきました。日本には平安時代までに伝わり、同様に薬用や鑑賞のために利用されました。当時は「和木瓜(わもっか)」という生薬名で親しまれていました。一説によれば、遣唐使であった弘法大師(空海)が中国から持ち帰ったものが日本に伝わったとされており、香川県のまんのう町を訪れた際に持ち帰ったかりんの木を植えたという記録も残っています。日本に伝わった後、かりんは全国各地で庭園樹として栽培され、広く親しまれるようになりました。
また、「かりん」という名前が「借りぬ」に似ていることから、借金をしないようにという願いを込めて庭に植える習慣がある地域もあります。
かりんの味の特徴やおすすめの食べ方
完熟したかりんの実は芳しい香りが特徴で、梅や桃にも似た甘く濃厚な香りを放ちます。その香りは非常に強く、部屋に置いておくだけで芳香剤の代わりになるほどです。しかし、かりんの実はその美しい香りとは対照的に、生では食べることができません。硬い果皮と強い渋みが特徴で、口に含むと繊維質の残るじゃりじゃりした食感と強い渋みが感じられます。
かりんは生では食べることができないため、加工品にするか加熱して活用するのが一般的です。かりんを加工して楽しむ方法としては、かりんシロップやかりん酒が昔から定番です。スライスしたかりんを砂糖やはちみつに漬け込んで作るシロップ漬けは、かりんの甘い香りがシロップに移り、芳醇な香りが楽しめます。また、ホットドリンクや紅茶に混ぜて飲むと格別のおいしさが楽しめます。加熱すると渋みが消え、やわらかくなり、鮮やかなルビー色に変化します。ジャムやコンポートなどにして食べると、かりん特有の甘酸っぱい味わいが楽しめます。そのまま食べるのはもちろん、ヨーグルトやアイスなどのトッピングにしてもおいしいです。かりんの特有の香りと、やさしい甘さがクセになります。
かりんの保存方法
かりんは、秋から初冬にかけて収穫される落葉性の低木の果実です。熟すと鮮やかな赤色に染まり、自然な甘みが楽しめます。鮮度が落ちやすい性質があるため、購入時には完熟しているかどうかを確認することが重要です。
完熟のかりんを選ぶポイントは、実全体がムラなく黄色く色づき、フルーティーな芳香がしっかりと感じられることです。未熟なかりんは皮が黄緑色で香りが弱いため、直射日光を避けた涼しい場所で追熟させる必要があります。
一方、完熟したかりんは皮が傷つきにくく、ずっしりとした重みがあります。冷蔵庫に入れる必要はなく、新聞紙などで包んで常温で保存できます。ただし、鮮度が落ちやすいため、できるだけ早めに使い切ることをおすすめします。
生で長期保存するのが難しい場合は、ジャムやコンポートなどに加工するのがよいでしょう。かりんは糖度が高いため、砂糖を加えずに自然な甘さを生かせます。ジャム化すれば常温で1年以上、コンポート状にすれば冷蔵で半年ほど保存が可能です。加工品に仕立てれば、かりんの美味しさを1年中楽しめます。
かりんの皮のむき方
かりんの爽やかな香りと甘酸っぱい味わいを存分に楽しむには、丁寧な下ごしらえが欠かせません。まずは水洗いで皮の汚れを落とし、包丁で皮に切り込みを入れて剥がしていきます。薄い白い膜も一緒に取り除き、内側の白い房を指で潰しながら除去します。さらに果肉と皮の間の薄膜も取り去れば、香り高い果汁のみが残ります。丁寧にむけば美しい形を損なうことなく、料理やデザート、ドリンクにかりんの風味を存分に香らせることができるでしょう。ただし、かりんは非常に硬いので、包丁の取り扱いには十分気をつける必要があります。
まとめ
カリンの完熟期は初夏から夏にかけてと言われています。果実の色が濃いオレンジ色に変わり、軽く握ると柔らかさを感じられたら収穫の目安です。しかし、熟し過ぎると果汁が流れ出したり、酸味が強くなりすぎてしまうので注意が必要です。カリンの旬を逃さず、様々な料理で味わいましょう。