みずみずしく甘い桃は、夏の味覚の代表格。その美味しさを最大限に引き出すには、産地選びが重要です。数ある桃の産地の中でも、特に有名なのが「桃の県」とも呼ばれる、ある県です。この記事では、その県がなぜ日本一の桃の名産地になったのか、その秘密を徹底的に解剖します。気候、土壌、歴史、そして生産者の情熱。様々な要素が絡み合い、極上の桃を生み出す舞台裏に迫ります。今年の夏は、こだわりの桃を味わってみませんか?
日本の桃の生産量
日本各地には桃の栽培が盛んな地域が点在し、毎年夏にはそれぞれの産地から甘く美味しい桃が次々と届けられます。収穫量には変動があるものの、2020年には全国で約9万9千トンもの桃が収穫されました。
私たちが旬の桃を堪能できるのは、生産者の確かな技術と情熱の賜物です。各産地では、より美味しく安定した桃を収穫するために、品種改良や栽培技術の向上など、日々様々な努力が重ねられています。
桃の名産地とそれぞれの代表品種
全国各地に桃の有名な産地は数多くありますが、特に生産量が多いのは、以下の5県です。
山梨県
福島県
長野県
山形県
和歌山県
これらの5つの地域で、国内で生産される桃の約8割を占めています。ここでは、それぞれの産地における桃栽培の特徴や、代表的な品種について詳しく解説していきます。
また、この記事では桃の主要な品種についても詳しくご紹介しています。それぞれの品種の個性や産地、最も美味しい時期について知りたい方は、ぜひそちらもご覧ください。
山梨県
日照時間が長く雨の少ない山梨県は、桃の栽培に最適な環境が整っており、その生産量は日本一を誇ります。広大な桃畑が織りなす風景は「桃源郷」と称されるほど美しく、その栽培面積もまた日本一です。
山梨県では、恵まれた気候と広大な土地を活かし、多種多様な桃が栽培されています。例えば、白鳳系の中でも特に人気が高い「日川白鳳」は、6月下旬から7月中旬に収穫時期を迎え、山梨県独自の品種である「夢みずき」は、7月中旬から市場に出回ります。このように、様々な品種を時期をずらして栽培することで、長期間にわたって美味しい桃を楽しむことができる点も、山梨県が桃の名産地として知られる所以です。
福島県
桃の消費量が日本一と言われる福島県。その桃の歴史は古く、明治時代に桑折町や伊達市で栽培が始まったと伝えられています。
中でも「あかつき」は福島県を代表する桃。栽培の難しさから、その誕生の地でのみ栽培に成功した希少な品種です。現在では、皇室への献上品にも選ばれるほどの高品質を誇っています。
長野県
長野県は、昼と夜の寒暖差が大きい気候を活かし、甘みが強く高品質な桃を栽培しています。特に川中島町は、「桃の王様」と称される川中島白桃発祥の地として知られていますが、近年では黄金桃やなつっこなど、他の品種も人気を集めています。
信濃川の南に位置する川中島町は、水はけの良い土壌に恵まれています。この地で丁寧に育てられた川中島白桃は、桃のシーズン終盤となる8月中旬頃に収穫が始まり、9月下旬頃まで店頭に並びます。
山形県
山形県は、夏の涼しい気候を活かした桃栽培が盛んです。他地域よりも遅い、8月上旬から10月上旬にかけて収穫時期を迎えます。特に、さがえ西村山地域は盆地特有の気候で、雨が少なく昼夜の寒暖差が大きいため、桃はじっくりと時間をかけて育ち、大ぶりで甘い実をつけるのが特徴です。
主な品種としては、「川中島白桃」や「おどろき」といった晩生種が挙げられます。これらの品種は山形県発祥ではありませんが、涼しい気候が晩生種の育成に適しており、現在では山形県が主要な産地となっています。
和歌山県
温暖な気候の和歌山県は、桃の生産地として知られ、山形県など他の地域よりも早く収穫が始まります。その旬は6月中旬から8月中旬頃で、店先にもいち早くお目見えします。
この地を代表する品種が「白鳳」です。和歌山県産の白鳳は、丁寧に一つずつ袋をかけて育てられ、収穫前に陽光を浴びることで、上品な薄桃色に染まり、甘みとみずみずしさが際立ちます。