餅 種類

餅 種類

餅 種類

日本の美食文化の一つである「餅」。その存在は古く、古事記や日本書紀などの歴史文献にもその名が記されています。収穫を祝う行事や特別な節目では神々に捧げられる特別な食べ物とされ、また日常の食卓でも欠かせない存在として、我々日本人の生活と深く結びついてきました。そしてまた、その餅一つに見ても、地域や季節によってさまざまな種類や味が存在します。美味しく、豊かな文化背景を持つ「餅」の魅力について、何種類もの形や風味を持つその種類を題材に、掘り下げて見ていきましょう。

お餅とは

お餅とは、もち米を加工して作る「餅」のことを丁寧に表現した言葉です。一般的には、もち米を蒸して杵と臼でついて作られますが、最近ではもち米の粉やくず粉、あるいはうるち米などを用いた加工餅も「お餅」と呼ばれます。形もさまざまで、丸いものや平たいものなどがあり、地域や家庭によっても作り方や食べ方に違いがあります。昔から日本の食文化に深く根付いており、特にお正月や祝い事などの特別な日に登場することが多い、伝統的な食品です。

お餅の種類 :「もち米」

お餅の原材料である「もち米」にも、品種によって味や粘りが異なります。特に新潟県は良質なもち米の産地として知られ、代表的な品種には「こがねもち」「ヒメノモチ」「峰の雪もち」「〆張りもち」などがあります。中でも「こがねもち」はもち米の王様とも称され、味・コシ・粘りの三拍子が揃った人気品種です。「ヒメノモチ」は病害に強く全国的に栽培されており、なめらかな口当たりが特徴です。「峰の雪もち」は比較的新しく誕生した品種で、早生で味も良いとされています。希少な「〆張りもち」はなめらかさと強い粘りが魅力で、現在では一部の農家でのみ栽培される貴重な存在です。このほか、黒米や赤米を使った古代米の餅もありますが、こちらは粘りが少なく歯切れの良い食感です。

もち米の新米は、うるち米と同じく8月下旬から10月上旬にかけて収穫されます。新米は香りや味わいが豊かで、つきたての餅にすると特にその違いが際立ちます。ただし、スーパーで通年販売されているお餅は、いつ収穫されたもち米が使われているかは表示されないことが多く、見分けるのは難しいのが現状です。産地によって味の傾向も異なり、特に魚沼地方など水がきれいで寒暖差の大きい地域のもち米は、粘りや風味に優れているとされています。ラベルに「水稲もち米」としか記載がない商品もありますが、中にはもち米の代わりに加工でん粉が使用されていることもあるため、購入時には成分表示の確認も大切です。

お餅の種類 :「味」

お餅はシンプルな素材ながら、練り込む材料によってさまざまな味を楽しむことができます。例えば、あんこを入れると和スイーツに、黒豆やごま、よもぎを加えると栄養価の高い健康志向のお餅になります。玄米を使用した「玄米餅」は、玄米特有の香ばしさと食感が楽しめるため、玄米好きな方に人気です。さらに近年ではチーズを練りこんだ「チーズ餅」も注目されており、和と洋の融合を楽しむことができます。このように、お餅は素材やアレンジ次第で無限の味わいが広がる、自由度の高い食品です。

餅 種類

お餅の種類 :「形」

お餅にはいろいろな形があり、形によって用途や意味が異なります。代表的なものに「切り餅」「鏡餅」「丸餅」「のし餅」があります。切り餅は長方形で、焼いても煮ても使いやすく、日常的に最もよく食べられている形です。鏡餅は年神様へのお供えとして使われる正月飾りで、近年では現代風のデザインも増えてきました。丸餅は関西などで親しまれ、雑煮や鍋料理にぴったりの形状です。のし餅は、板状に伸ばした餅を自分で切って食べるもので、年末年始に家族で楽しむ定番の一品です。こうした形の違いも、お餅の奥深さを感じさせてくれます。



餅菓子の種類

餅菓子とは、もち米やうるち米、くず粉やわらび粉などから作られる和菓子の一種で、主にあんこと組み合わせたものが多いです。代表的なものに「大福」「柏餅」「桜餅」「おはぎ」「ちまき」などがあり、それぞれ季節や行事に合わせて食べられています。あんこを使わない「ういろう」や「素甘(すあま)」といった例もあり、種類は非常に多彩です。


大福・フルーツ大福

大福は、もち生地であんこを包んだシンプルながら人気のある和菓子です。その歴史は室町時代の「鶉餅(うずらもち)」にさかのぼります。砂糖が貴重だった当時は塩あんが主流で、食べ応えがあることから「大腹餅」とも呼ばれていました。江戸時代に入り、砂糖を使った甘いあんこが使われるようになると、「大福餅」として広く親しまれるようになりました。1980年代には、いちごを丸ごと包んだ「いちご大福」が登場し、フルーツと餅の相性の良さが話題に。今ではマスカット、みかん、メロンなど多種多様なフルーツ大福が登場し、和菓子の新しい定番となっています。


柏餅

柏餅は、端午の節句に食べられる伝統的な和菓子です。特徴は、もち生地であんこを包み、それを柏の葉で包んであること。柏の木は、新しい芽が出るまで古い葉が落ちないため、子孫繁栄の象徴とされ、縁起の良いものとされています。そのため、男の子の成長と健康を願う行事である端午の節句に食べる風習が根付いています。地域によっては味噌あんやこしあんを使うなど、味や製法にもバリエーションがあります。


桜餅

桜餅は、塩漬けにした桜の葉で包まれた、春を感じる和菓子です。実は、関東風と関西風の2つのタイプが存在し、それぞれ材料や見た目が異なります。関東風は小麦粉で作った生地にあんこを巻くスタイルで、長命寺桜餅とも呼ばれます。一方、関西風は道明寺粉を使用し、もちっとした食感が特徴です。現在では関西風が全国的に主流になっていますが、地域や好みによってどちらも楽しめます。桜の香りと優しい甘さが春の訪れを感じさせてくれる一品です。


おはぎ・ぼたもち

おはぎは、もち米を軽くついて形を整え、あんこで包んだ和菓子です。似たものに「ぼたもち」がありますが、実は両者は同じ菓子で、季節によって名前が変わるのです。春には「牡丹(ぼたん)」の季節にちなんで「ぼたもち」、秋には「萩(はぎ)」の季節に合わせて「おはぎ」と呼ばれます。食べ方にも若干の違いがあり、春はこしあん、秋はつぶあんが使われることが多いといわれています。季節の風物詩として、年中親しまれる和の味わいです。


ちまき

ちまきは、餅を笹の葉などで包み、蒸すまたは茹でて調理する餅菓子で、中国から伝わったものとされています。日本では、端午の節句に食べる習慣があり、甘く味付けされた餅が一般的です。一方、中国や台湾では、もち米に肉や卵、ナッツなどを加え、軽食や主食として親しまれています。もちもちとした食感と香り高い笹の風味が魅力で、地域や家庭によって中身や味付けが異なるのも楽しみの一つです。

まとめ

それぞれの地域に息づく餅の文化を通じて、日本人の歴史や精神を深く知ることができます。甘さ控えめなわらび餅から独特の風味が魅力の草餅まで、その種類は豊富で、1年を通して楽しむことができます。大小様々な形状や味の違いを楽しみながら、多種多様な餅の美味しさとともにその背後にある文化や風習に触れていただければ幸いです。