メキシコは世界第8位のコーヒー生産大国で、日本のコーヒーファンの間ではその名が広く知られています。昼夜の寒暖差が激しく、豊富な雨量が降り注ぐ高地で栽培されるメキシココーヒーの特徴的な風味はその魅力となっています。

主な生産地であるチアパス州は、赤道に近い高地という地理的特性により、コーヒー豆の成熟が均一に行われます。製品となったコーヒーはそのため、芳醇な風味と独自の味わいを持つことが特徴となっています。また、オーガニック栽培を積極的に行う農家が多いのも特徴で、その結果自然の恵みを全うに受けたコーヒー豆からは、バランスの取れた酸味と甘味が得られます。

さらにメキシココーヒーの魅力として挙げられるのがその華やかな香りで、特にチアパス州産のコーヒーからはチョコレートやナッツ、黒糖を思わせるような風味が広がりますが、一方で余韻はスッキリとしており、それが求められています。

その美味しさの秘密は、暑さと寒さが際立つ気候、美観であり、そして農家の情熱が一杯のコーヒーに詰まっているからです。それが日本でも楽しまれており、その心地よい余韻に浸りながら、ほんの少しの旅行気分を味わうことができるかもしれません。これらの魅力が認知されることで、メキシココーヒーは今後日本の朝を彩る存在となることでしょう。

メキシココーヒーの生産環境や収穫から加工までの工程を解説します。メキシコで良質なコーヒー豆が生産されている秘密を学びましょう。

メキシココーヒーの生産環境

メキシコの国土は大部分が標高1,000m以上に位置しており、この標高の高さが美味しいコーヒー豆の生産に大きく寄与しています。標高が高いと、日中と夜の気温差が大きくなり、コーヒー豆がゆっくりと成熟します。さらに、メキシコの年間降水量は1,400mm～2,000mmほどで、コーヒーノキを栽培する地域の平均気温は約19度です。この気候条件に加え、肥沃な土壌とシェイドツリー（日よけの木）による日射量の調整が行われ、コーヒーノキの栽培に最適な環境が整っています。

メキシココーヒーの実の収穫から加工まで

メキシコでは、コーヒーノキの栽培の多くが南部の山岳地帯で行われています。これは、北部が乾燥地帯であり、コーヒーノキの栽培には不向きなためです。南部の急斜面の多い地域では、コーヒーの実の収穫が手摘みで行われます。手摘み収穫により、熟したコーヒーの実だけを丁寧に収穫できるため、品質が保たれます。

収穫されたコーヒーの実は、まず水洗処理が行われ、その後天日乾燥されます。これらの工程が丁寧に行われることで、欠点豆が少なく、高品質なコーヒー豆が生産されるのです。

メキシココーヒーの魅力はその独特の風味にあります。全体的なバランスが良く、酸味と甘みが見事に調和しています。その風味の源は、生産地の豊かな風土と気候、その地で栽培されるコーヒー豆にあります。メキシコは高地と火山地帯が広がり、これらの地で生育するコーヒーは独自の甘みとコクを持つことから、ワインに喩えられることも少なくありません。

この地のコーヒー豆は労力をかけて栽培され、完熟したコーヒーチェリーから収穫されるため、まろやかな口当たりと清潔な後味を持っています。その風味は、赤ワインを彷彿とさせる深みと広がりがあります。

メキシココーヒーの品質は標高により評価されます。最高品質のコーヒー豆は「High Grown（HG）」または「Altura」などと呼ばれ、900～1,200ｍの地域で生産されます。次いで評価の高いのは600～900mで生産される「Prime Washed（PW）」または「prima lavado」です。

特に、プレミアムクラスのものとして関心を集める「Chiapas」や「Oaxaca」といった銘柄は、他のどの銘柄とも違う風味を生み出し、世界のコーヒー愛好家から絶賛されています。豊かなボディと酸味が同居するChiapasは、その美味しさから高い評価を得ています。一方、甘みとフルーティな香りが長けるOaxacaは、フレーバーコーヒーとして愛されています。

更に、メキシコ産コーヒーはオーガニック生産に努めていることで注目されています。農薬や化学肥料を使用しないこの生産方法は、自然との調和を保ちつつ、飲む者だけでなく、環境や生産者へも配慮した方式として高く評価されています。

品質、風味、そして環境への配慮、これらが一体となるメキシコ産コーヒーの魅力を、ぜひ一度お試しください。

「カフェデオーラ」と呼ばれる、土鍋でコーヒーを抽出するのが、メキシココーヒーの伝統的な方法です。まず、芳醇なアラビカ種のコーヒー豆を深く煎り、細かく挽きます。その豆を土鍋に入れる際、シナモンスティックと、未精製の黒砂糖「ピロンシージョ」を一緒に加えます。これらをじっくりと煮込みます。

シナモンと黒砂糖の風味は、コーヒーと絶妙に調和し、一口飲むと口いっぱいにその甘さとコーヒーの深みが広がりますよ。メキシココーヒーはまるでデザートのような独特な感覚で、優雅な甘さを長く楽しむことができます。

日本でも人気を博すメキシコ産コーヒーは、その風味の秘密が深い歴史や特殊な農法にありました。メキシコの驚くべき地理と文化が、コーヒー一杯に結実し、我々に特別な味わいを届けてくれます。一度だけでも試してみる価値はあり、その深い味わいは忘れられないでしょう。