京野菜の代表格「万願寺とうがらし」。その名の通り、京都府舞鶴市発祥の地で生まれた、甘みと肉厚な食感が魅力の夏野菜です。一般的なトウガラシとは異なり、辛味がほとんどなく、上品な甘さと風味は、京料理やおばんざいには欠かせません。この記事では、万願寺とうがらしの旬の時期や、その美味しさの秘密を徹底解説。選び方から、家庭で楽しめる簡単レシピまで、万願寺とうがらしの魅力を余すことなくお届けします。ぜひ、この記事を読んで、万願寺とうがらしの奥深い世界を堪能してください。
※ 健康に関する記述は、野菜の栄養成分に基づく一般的な情報であり、病気の治療や効果を保証するものではありません。
万願寺とうがらし(万願寺甘とう)とは?
万願寺とうがらし(別名:万願寺甘とう)は、ナス科トウガラシ属の大ぶりで肉厚な甘とうがらしです。京都府舞鶴市の万願寺地区で、大正末期から昭和初期に誕生したとされ、古くから京都で栽培されていた「伏見とうがらし」と、アメリカ原産の大型ピーマン「カリフォルニア・ワンダー」の自然交配がルーツといわれています。
辛味がなく甘みが強いため、子供からお年寄りまで安心して食べられる緑黄色野菜。果肉が厚くて種が少なく、ジューシーで青臭さがないのが特徴です。その美味しさと存在感から「とうがらしの王様」とも呼ばれ、今では大型甘とうがらしの代表格として知られています。

ブランド京野菜としての万願寺甘とう
本場・舞鶴市などで栽培される「万願寺甘とう」は、産地で採種される固定種を用い、厳しい品質基準を満たしたものだけが「ブランド京野菜」として出荷されます。1989年に京都府が認定する「ブランド京野菜」に指定され、2017年には「地理的表示保護制度(GI)」にも登録。舞鶴、綾部、福知山の一部地域で生産されたものだけが、本物の万願寺甘とうとして認められています。
一方、「万願寺とうがらし」の名前は、その人気とイメージから全国に広がり、さまざまな種苗メーカーから種が販売されるようになりましたが、産地の品質とは異なることがあります。家庭菜園で栽培する際は、固定種かどうかを確認することが大切です。
品種改良と栽培の進化
従来の万願寺とうがらしには、まれに辛味が出たり紫色に変色するものもありました。そこで京都府は品種改良を重ね、2007年に「京都万願寺1号」、2011年に「京都万願寺2号」を開発。2012年以降は、JA京都にのくに管内の露地栽培がすべてこの新品種に切り替えられ、辛味や変色のリスクがほとんどなくなりました。
外観と形状の特徴
本物の万願寺甘とうは、長さ13~23cmと細長く、肩の部分にくびれがあり、果皮にはわずかなシワが見られます。ピーマンのような滑らかさはなく、張りのある果肉が特徴です。色は濃い緑で、成熟すると赤くなります。果肉は中厚で、種が少なく、空洞もほとんどありません。
また、「京都万願寺2号」は、「京都万願寺1号」と比べて果実の長さと直径の比率が大きく、果皮の波打ちが強いなど、見た目にも差があります。
万願寺とうがらしの旬と出荷時期
万願寺とうがらしの旬は初夏から夏にかけての長い期間で、一般的には5月中旬から10月下旬が出荷のピークです。特に、太陽をたっぷり浴びて育った露地物は、5月上旬頃から9月下旬頃まで収穫・出荷され、6月から8月が旬の最盛期を迎えます。本場の万願寺甘とうも、例年5月20日前後から出荷が始まり、10月頃まで収穫が続きます。ハウス栽培も行われているため、一年を通して市場に出回りますが、太陽をたっぷり浴びた露地物の美味しさは格別です。
日本は気候や自然環境が多様なため、野菜や果物の旬は地域によって異なります。万願寺とうがらし全体としては、夏から秋にかけて食卓を彩る代表的な野菜と言えるでしょう。この旬カレンダーは、東京都中央卸売市場の統計情報を参考に、出荷量が多い時期を示していますが、東京への出荷量が少ない産地や品種の場合、数値が正確に反映されないことがあります。実際の生産量とは必ずしも一致しない点にご注意ください。
万願寺とうがらしとししとうの違い
万願寺とうがらしとししとうは、どちらも甘味種トウガラシの一種ですが、見た目や食感は大きく異なります。最も分かりやすい違いは大きさです。万願寺とうがらしは平均10~18cmと大きいですが、ししとうは5~6cmと小ぶりです。形も異なり、万願寺とうがらしは先端が尖っているのに対し、ししとうは丸みを帯びています。食感も異なり、万願寺とうがらしは肉厚で種が少ないですが、ししとうは肉薄で種が多いです。また、ししとうは栽培環境によっては辛くなることがありますが、万願寺とうがらしは辛味がなく、安定した甘さを楽しめます。

万願寺とうがらし、その旬の味を堪能!おすすめの食べ方とレシピ
辛味がほとんどなく、ほんのり甘みのある「万願寺とうがらし」は、さまざまな料理に活躍する万能野菜です。特に、素焼きにして生姜醤油やだし醤油をかけるシンプルな食べ方は、素材の風味を一番引き立ててくれます。
そのほかにも、天ぷらや煮物、炒め物など、さまざまな調理法で美味しくいただけます。細長い形を活かして、豚肉を巻いて焼いたり、ひき肉を詰めて焼いたり揚げたりするのもおすすめです。
京都のおばんざいでは、焼いたり揚げたりした万願寺とうがらしをだしに浸す「焼き浸し」や、ちりめんじゃこと一緒に炒め煮にする「ジャコとたいたん」が定番料理。肉厚で食べ応えがあり、夏の暑さで食欲が落ちたときにも、ヘルシーで満足感のある一品として重宝されます。
お盆など家族が集まる食卓にもぴったり。アレンジ次第で幅広く楽しめる夏の味覚です。
万願寺とうがらしの素焼き(生姜醤油がけ)
材料
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万願寺とうがらし … 適量
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醤油 … 少々
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おろし生姜 … 少々
作り方
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万願寺とうがらしは洗って水気をふき取る。
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フライパンや魚焼きグリルで、表面に焼き目がつくまで焼く。
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器に盛り、おろし生姜と醤油をかけていただく。
万願寺とうがらしの調理のコツ
万願寺とうがらしは、肉厚で柔らかく、種も食べられるので、ヘタを切り落とせば丸ごと調理できます。その存在感から、一品料理としても主菜としても活躍できる食材です。ピーマンと同じように油との相性がとても良く、炒め物や揚げ物に向いています。また、ししとうのようにシンプルに焼くだけでも、その独特の甘みと香ばしさが引き立ち、特別な味わいを堪能できます。京都のおばんざいでは、素焼きにしたものにかつお節と醤油をかけたものが定番です。
種の上手な扱い方
万願寺とうがらしの種は、ピーマンやししとうと同様に食べられますが、種やわたの食感が気になる場合は、取り除いて調理することも可能です。種はヘタの下についているので、ヘタの周囲に切り込みを入れてわたごとくり抜くか、ヘタを切り落として縦半分に切って取り除くことができます。このちょっとした工夫で、より滑らかな口当たりになります。
保存方法と冷凍後の活用法
万願寺とうがらしは夏野菜なので、寒さに弱い性質があります。常温で保存する場合は、なるべく早く使い切るようにしましょう。すぐに使い切れない場合は、品質を保つために冷蔵庫の野菜室で保存するのがおすすめです。その際は、乾燥を防ぐためにラップで包んだ上から新聞紙で包むと、3~4日程度は日持ちします。さらに長く保存したい場合は、冷蔵よりも冷凍保存が適しています。ヘタを残したまま冷凍用保存袋に入れれば、約3週間ほど品質を保つことができます。冷凍した万願寺とうがらしを調理する際は、解凍すると水っぽくなることがあるため、冷凍のまま使うのがポイントです。冷凍することで繊維が柔らかくなり、火の通りが早くなるだけでなく、調味料も染み込みやすくなるというメリットもあります。切って使ったり、串に刺して使う場合は、さっと水洗いをするだけでも半解凍状態になり、調理しやすくなります。
赤万願寺とうがらしの特別な味わい
一般的に万願寺とうがらしは緑色の状態で食卓に並びますが、完熟させると美しい赤色に変化します。この完熟したものは「赤万願寺とうがらし」として珍重され、市場で見かけることもあります。見た目から辛さを想像するかもしれませんが、実際にはパプリカのような自然な甘みがあり、料理に華やかさを添える魅力的な存在です。ただし、栽培期間が長くなることや、収穫に手間がかかることから、価格はやや高めに設定されています。
万願寺とうがらしの栽培方法
万願寺とうがらしは、苗が広く販売されており、種から育てることも比較的容易な野菜です。広い畑がなくても、プランターを利用して手軽に栽培できます。寒さが苦手なため、種まきは3月から5月に行い、気温が十分に上がる5月以降に植え付けを行うのが理想的です。育苗には種まきからおよそ65~80日程度かかります。高温には強く、30~35℃の環境でよく育ち、7月から11月にかけて長期間の収穫を楽しむことができます。
種まきと育苗
万願寺とうがらしの種まきに最適な時期は、3月から5月にかけてです。育苗箱を使う場合は、深さ1cmほどの溝を作り、種を1~2cm間隔で丁寧に筋状にまきます。その後、5mm程度の土を薄く被せ、たっぷりと水を与えます。発芽を促すために、水やり後は夜間の温度を25~30℃に保つと、およそ5~7日で発芽します。発芽後は、夜温を25℃程度に下げて管理し、本葉が1~2枚になった段階で、育苗ポットに優しく移植し、夜温20℃で引き続き管理します。育苗ポットに直接種をまく場合は、12cmポットに深さ1cmの穴を3箇所作り、それぞれの穴に2~3粒ずつ種をまき、軽く土を被せてから十分に水やりを行います。本葉が1~2枚になったら、最も元気な苗を1本残して間引き、温度管理は育苗箱の場合と同様に行います。
土作りと苗の植え付け
苗の植え付け時期は、霜の心配がなくなる5月頃が適しています。畑に苗を植え付ける場合は、植え付けの2週間前に苦土石灰を均一にまき、土壌を丁寧に耕します。さらに、1週間前に堆肥と元肥を施して、再度しっかりと耕します。畝は幅70cm、高さ15〜20cmを目安に作り、可能であれば黒マルチシートを張ることで、地温を保ち雑草の抑制にもつながります。苗を選ぶ際は、茎が太く、節間が詰まっていて、健康な状態のものを選びましょう。本葉が10枚程度に育った苗が植え付けに最適です。鉢の根を傷つけないように注意しながら、浅めに植え付け、植え付け後はたっぷりと水を与えます。定植後、苗が倒れないように支柱を立てて優しく誘引してあげましょう。プランターで栽培する場合は、市販の野菜用培養土を使用すると、手軽に栽培を始めることができます。
整枝と日々の手入れ
整枝は、主枝に最初の花(一番花)が咲いた後に行います。一番花の下から勢い良く伸びてくる側枝の中から、元気の良いものを2~3本選び、主枝と合わせて合計3~4本仕立てにします。こうすることで、株全体の風通しと日当たりが改善され、より健康な生育を促進することができます。肥料が不足しないように、9月頃までは月に2~3回を目安に、液肥などの追肥を施します。万願寺とうがらしは乾燥に弱い性質があるため、特に夏場はこまめな水やりが欠かせません。土の表面が乾いたらたっぷりと水を与え、敷きワラなどを活用して土壌の乾燥を防ぎ、保湿に努めるのも効果的です。
収穫のタイミング
万願寺とうがらしの果実が約10cmほどの長さに成長したら、実が鮮やかな緑色をしている新鮮なうちに収穫を行います。収穫の際は、ハサミを使って果梗(実と枝をつなぐ部分)を丁寧に切り取ることで、株への負担を軽減し、次の実の生育を促進します。適切なタイミングで収穫することで、長く美味しい万願寺とうがらしを収穫し、食卓で楽しむことができます。
まとめ
万願寺とうがらしは、甘みが強く辛くないとうがらしで、焼く・煮る・揚げるなど幅広い料理に使える人気の夏野菜です。肉厚で種も少なく、調理しやすいのも魅力。家庭菜園でも育てやすく、スーパーや直売所でも手に入ります。旬の今こそ、シンプルな素焼きから京都のおばんざい風まで、いろんなレシピで楽しんでみてください。
万願寺とうがらしが辛くないのはなぜ?
万願寺とうがらしは、唐辛子の仲間でありながら、辛み成分であるカプサイシンをほとんど含んでいない甘味とうがらしの一種です。特に「万願寺甘とう」は、京都府が品種改良に取り組み、「京都万願寺1号」「京都万願寺2号」といった品種が開発されたことで、稀に辛いものが混ざる可能性がほぼなくなりました。その結果、安定した甘さを楽しめるようになりました。
「万願寺甘とう」と「万願寺とうがらし」は同じもの?
厳密には異なります。「万願寺甘とう」は、京都府の舞鶴市、綾部市、福知山市で栽培され、一定の品質基準を満たし、「地理的表示保護制度(GI)」に登録された特定のブランド品を指します。一方、「万願寺とうがらし」は、その品種特性を受け継いだ、より広範囲な甘味とうがらしを指し、全国各地の種苗メーカーから種子が販売され、さまざまな地域で栽培・出荷されています。本場の「万願寺甘とう」とは、似て非なるものとして区別されることがあります。
万願寺とうがらしの旬の時期は?
万願寺とうがらしは、一年を通して市場に出回ることがありますが、これはハウス栽培によるものです。露地栽培された万願寺とうがらしの旬は、主に5月上旬から9月下旬にかけての期間です。特に、6月から8月にかけての夏場が最も美味しく、市場への出荷量もピークを迎えます。本場である京都の「万願寺甘とう」も、通常は5月20日前後から収穫が始まり、10月頃までその期間が続きます。
万願寺とうがらし、おすすめの食べ方は?
シンプルながらも素材の味を堪能できる食べ方として、素焼きがおすすめです。焼いた万願寺とうがらしに、かつお節と生姜醤油、またはだし醤油をかけるだけで、万願寺とうがらしならではの甘さと香ばしさを最大限に引き出せます。その他、天ぷらや煮物、炒め物、肉巻きなど、様々な料理に活用できます。ひき肉を詰めて焼いたり揚げたりするのも美味しくいただけます。京都のおばんざいとしては、出汁に浸したシンプルなものや、ちりめんじゃこと一緒に炒め煮にした「ジャコとたいたん」が人気です。
「赤万願寺とうがらし」とは?
「赤万願寺とうがらし」は、通常緑色の状態で収穫される万願寺とうがらしを、収穫せずにそのまま畑で完熟させたものです。赤く色づくことで、パプリカのようなほのかな甘みが加わり、料理に鮮やかな彩りを添えることができます。緑色の万願寺とうがらしに比べて栽培期間が長くなるため、手間がかかり、価格もやや高めに設定される傾向があります。
万願寺とうがらしとししとうの違いは?
万願寺とうがらしとししとうは、どちらもナス科トウガラシ属の甘味種に分類されますが、大きさ、形、肉厚、種の量、そして辛みの有無といった点で違いが見られます。万願寺とうがらしは、長さが10~18cm程度と大きく、先端が尖った形をしています。肉厚で種が少ないのが特徴です。一方、ししとうは5~6cm程度と小ぶりで、先端が丸みを帯びています。肉薄で種が多めです。また、ししとうは栽培環境によっては辛味を持つことがありますが、万願寺とうがらしは基本的に辛味がなく、安定した甘みがあります。
万願寺とうがらしは自宅の庭でも栽培可能ですか?
はい、万願寺とうがらしは家庭菜園でも比較的容易に育てられる野菜です。種苗店で販売されている種や苗を活用すれば、プランター栽培も可能です。寒さに弱い性質を持つため、種まきは3月から5月に行い、霜の心配がなくなる5月以降に植え付けを行うのがおすすめです。適切な温度管理(夜間の温度を20~30℃に保つ)、夏の間の水やり、定期的な肥料の追加を行うことで、7月から11月にかけて長期間にわたり収穫を楽しめます。
万願寺とうがらしの種は食べることはできますか?
はい、万願寺とうがらしの種は、ピーマンやししとうと同様に食用可能です。果肉が厚く柔らかいため、ヘタを切り落とすだけで、種も丸ごと調理できます。もし種やワタの食感が気になるようでしたら、ヘタの周りに切り込みを入れてワタごと取り除くか、ヘタを切り落として縦半分にカットし、種を取り除いてください。
万願寺とうがらしはどのように保存するのが適切ですか?
万願寺とうがらしは夏野菜であり、寒さに弱いため、常温での長期保存には向きません。すぐに使い切れない場合は、乾燥を防ぐためにラップで包み、さらに新聞紙で包んで冷蔵庫の野菜室で3~4日程度保存するのが望ましいです。長期保存を希望する場合は、冷凍保存が適しています。ヘタをつけたまま冷凍保存用の袋に入れれば、約3週間程度は品質を維持できます。ただし、冷凍した万願寺とうがらしは解凍すると水分が出やすくなるため、凍ったまま炒め物や揚げ物などの加熱調理に利用するのがコツです。