太陽が燦々と降り注ぐ愛媛県は、まさに柑橘の楽園。伊予柑やみかんなど、多種多様な柑橘が一年を通して実り、その豊かな香りと甘酸っぱさは、訪れる人々を魅了します。温暖な気候と豊かな自然が育む愛媛の柑橘は、長い歴史の中で培われた栽培技術と、生産者の情熱によって磨き上げられてきました。さあ、太陽の恵みをたっぷり浴びた愛媛の柑橘を巡る、贅沢なフルーツ紀行へ出発しましょう。
柑橘王国 愛媛の歴史と恵み
愛媛県は、伊予柑を筆頭とする様々な柑橘類の名産地として知られています。特に宇和島市や瀬戸内の島々では、柑橘栽培が盛んであり、伊予柑やポンカンの生産量は日本トップクラスです。その歴史は古く、江戸時代後期に伊勢参りや四国遍路の旅人が持ち帰ったみかんの苗木が宇和島市に植えられたのが始まりとされています。現在では、約50種類もの多種多様な柑橘類が栽培され、「柑橘王国」の名にふさわしい地域となっています。さらに、愛媛県では年間1000種類近い新品種が開発され、厳選された次世代の柑橘類が次々と生まれています。
愛媛の自然が育む柑橘の味わい
愛媛県産の柑橘が美味しい理由は、その恵まれた自然環境にあります。愛媛県、中でも瀬戸内地域は年間平均気温が15℃を超える温暖な気候です。この温暖な気候に加え、栽培に用いられる段々畑は南向きの傾斜地に位置しているため、太陽光が均等に当たりやすく、水はけが良いという理想的な条件が整っています。また、目の前に広がる穏やかな瀬戸内海は、太陽の光を反射し、みかん畑に降り注ぐことで、日照時間を増やしています。さらに、段々畑の石垣も重要な役割を果たしています。日中に太陽光を浴びた石垣は、夜間も温度を保ち、みかんの木に安定した環境を提供します。これらの要素(太陽光、海面からの反射光、石垣からの輻射熱)が、柑橘の甘みと酸味のバランスを引き出します。愛媛県では品種ごとに収穫時期が異なり、一年を通して様々な柑橘を楽しめるのも魅力です。

愛媛を代表する柑橘:温州みかん
温州みかんは、一般的に「みかん」として広く知られている品種で、令和2年産の生産量において愛媛県は全国2位です。江戸時代初期に日本で生まれた固有種で、種がなく、手で簡単に皮が剥けるのが特徴です。その美味しさと手軽さから海外でも人気があり、アメリカやカナダでは「テーブルオレンジ」などと呼ばれています。愛媛県内では、糖度12度以上を誇るしまなみ海道産の「サンエース」、同じく糖度12度以上で県を代表するブランド「道後温泉」、糖度12.5度以上でとろけるような食感の「味ピカ」、そして糖度12.5度以上で長期出荷される「美柑王」など、厳しい基準をクリアした高品質なブランドみかんが多数存在します。中でも「真穴みかん貴賓」は、真穴みかんの中でも特に厳しい基準をクリアした最高級品として出荷されています。
愛媛の顔:伊予柑とブランド「弥生紅」
愛媛の顔とも言える伊予柑。その旬は1月から3月で、古くから愛媛を代表する果物として親しまれてきました。伊予柑の皮は厚めですが柔らかく、手で比較的簡単に剥くことができます。「色よし、味よし、香りよし」の三拍子が揃った品質が特徴です。爽やかな香りと、ほんのりとした甘みと上品な酸味のバランスが魅力です。特に、1月に樹上で完熟させたものを収穫し、3月まで専用の貯蔵庫で熟成させることで糖度を高めたものが「弥生紅」というブランド名で出荷されます。「弥生紅」は糖度11.5度以上という基準をクリアした、伊予柑の中でも高品質な逸品です。
愛媛生まれの期待の星:甘平(かんぺい)と至高の「愛媛Queenスプラッシュ」
愛媛県独自の品種として注目されるのが甘平(かんぺい)です。主に2月頃に旬を迎え、県内のみで栽培されています。「西之香」と「ポンカン」を交配して誕生しました。特筆すべきは、その薄くて剥きやすい外皮と、薄皮ごと食べられる果肉です。口に含むと、芳醇な甘さとジューシーな果汁、そして独特のサクサクとした食感が楽しめます。甘平の中でも、特に高品質なものは「愛媛Queenスプラッシュ(愛媛クイーンスプラッシュ)」という特別なブランド名で販売されます。この称号を得るためには、「糖度13度以上」、秀でた「外観と形状」、「2L~4Lのサイズ」といった厳しい基準を満たす必要があります。まさに、愛媛が誇る最高級柑橘の名にふさわしい逸品です。
柑橘のトロと称される美味:せとか
柑橘のトロとまで称される『せとか』の魅力は、薄皮が非常に薄いので、そのまま丸ごと食べられることです。2月から3月が旬で、「清見」と「アンコール」、そして「マーコット」という三種類の柑橘を掛け合わせて生まれました。せとかの大きな魅力は、薄皮が非常に薄いので、そのまま丸ごと食べられることです。口に入れると、あふれる果汁と濃厚な甘みが広がり、とろけるようななめらかな食感が楽しめます。この上質な口当たりと味わいが、「柑橘のトロ」と形容される所以です。芳醇な香りと絶妙な甘酸っぱさのバランスが、一度味わうと忘れられない印象を与えます。
まるでゼリーのような食感と甘さ:愛媛果試第28号(紅まどんな)
愛媛果試第28号は、愛媛県でのみ栽培が認められているオリジナルの人気品種で、主に12月頃に収穫期を迎えます。「南香」と「天草」を交配して開発されました。際立った特徴は、薄い皮と、ゼリーのようにとろける果肉です。口の中でとろけるような舌触りと、たっぷりの果汁が堪能できます。愛媛果試第28号の中でも、JA全農えひめが定める厳格な品質基準(糖度や酸度など)をクリアし、県内のJAを通じて出荷されたものだけが、「紅まどんな」というブランド名で販売されます。この徹底した品質管理体制が、「紅まどんな」を高級柑橘としての地位を確立させています。
誰もが親しめる人気品種:ポンカン
ポンカンは、平成30年産の収穫量で全国1位を記録した、愛媛県を代表する柑橘です。1月から3月頃が旬で、手で簡単に皮が剥け、手頃な大きさであることから、多くの人に親しまれている「愛され柑橘」です。外皮は手で簡単にむくことができ、内側の薄皮も薄いため、袋ごと食べられます。ポンカンは収穫後、一定期間貯蔵することで果皮の水分を程よく飛ばしてから出荷されます。この貯蔵期間を経ることで、果肉の甘みが凝縮され、より濃厚な甘さと独特の香りが生まれます。酸味が穏やかなため、甘みを存分に味わいたい方におすすめの品種です。
愛媛が誇る柑橘:河内晩柑
愛媛県は、河内晩柑の生産量で全国トップクラスを誇り、「和製グレープフルーツ」とも呼ばれています。河内晩柑は、甘さとさっぱりとした風味が見事に調和した味わいが特徴です。旬の時期は3月から8月中旬までと長く、特に夏の時期にその美味しさを堪能できます。また、収穫時期によって食感が変化するのも魅力の一つ。シーズン初期の3月頃は果汁が豊富でみずみずしい味わい、シーズン終盤の8月頃には水分が少なくなり、シャキシャキとした食感を楽しめます。地域によって「宇和ゴールド」や「愛南ゴールド(旧名:美生柑)」といった異なる名称で親しまれています。
柑橘だけじゃない!愛媛が誇る多彩な恵み
高い生産量と技術力:愛媛県産キウイフルーツ

キウイフルーツといえばニュージーランドを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、愛媛県もキウイフルーツの栽培が盛んな地域で、全国でも有数の生産量を誇ります。最盛期には30年以上連続で生産量日本一を記録したこともあり、その栽培技術は高く評価されています。愛媛県の温暖な気候と豊かな自然が、美味しいキウイフルーツを育むのに適しています。
愛媛県生まれの特別な苺:紅い雫と至高の紅い雫

紅い雫は、愛媛県でのみ栽培されている希少なオリジナル品種の苺で、11月から6月頃までと比較的長い期間楽しめます。「あまおとめ」と「紅ほっぺ」を掛け合わせたもので、その名の通り、雫のような可愛らしい形と、果肉まで鮮やかな赤色に染まる美しい見た目が特徴です。高い糖度と程よい酸味のバランスが絶妙で、一口食べればその美味しさに魅了されます。さらに、紅い雫の中でも特に厳選された「至高の紅い雫」は、寒じめという特別な栽培方法で育てられ、シャキッとした食感と芳醇な香りが特徴です。まるでミルクシェイクのような濃厚な風味は、まさに究極の味わいです。
とろける舌触り:愛媛農試V2号(伊予美人)
愛媛農試V2号は、愛媛県が独自に開発した里芋のオリジナル品種で、「伊予美人」というブランド名で広く知られています。「伊予美人」と名乗ることができるのは、愛媛農試V2号の中でも、県内のJAを通じて出荷されたものに限られています。最大の特徴は、そのなめらかな舌触り。強い粘り気と濃厚な甘みも持ち合わせており、里芋の中でも特に食味に優れています。旬は9月から4月頃までと長く、様々な料理でその美味しさを楽しむことができます。
まとめ
愛媛県は、温暖な気候と地形を活かし、50種以上の柑橘を育てる「柑橘王国」。温州みかんや紅まどんななどのブランド品に加え、キウイや苺「紅い雫」など多彩な農産物も魅力です。自然の恵みと生産者の工夫が生んだ味わいを、ぜひ一度味わってみてください。
愛媛県で最も有名な果物は何ですか?
愛媛県を代表する果物と言えば、やはり「伊予柑」でしょう。長年にわたり生産量日本一を誇り、愛媛県の「顔」として広く知られています。近年では、「紅まどんな」や「甘平」といった独自の高級柑橘も高い人気を集めています。
愛媛県の柑橘類はなぜ美味しいのですか?
愛媛県の柑橘類が美味しく育つ理由は、主に三つの太陽(空からの太陽光、瀬戸内海の海面からの反射光、段々畑の石垣からの輻射熱)に恵まれた温暖な気候と、水はけの良い急傾斜の段々畑という理想的な栽培環境にあります。これらの要素が組み合わさることで、柑橘類はたっぷりと太陽の光を浴び、甘みが凝縮されるのです。
「紅まどんな」と「甘平」の違いについて
愛媛県が誇るオリジナル柑橘、「紅まどんな」と「甘平」。どちらも贈答用としても人気の高い高級品種ですが、その食感には顕著な差があります。「紅まどんな」は、まるでゼリーのような、とろけるようななめらかな口当たりが特徴。非常に薄い皮の中に、たっぷりの果汁が詰まっています。一方、「甘平」も皮は薄く、手軽に剥けるのが魅力ですが、果肉はシャキシャキとした食感で、独特の歯ごたえを楽しむことができます。
愛媛県産キウイフルーツの入手方法
愛媛県産のキウイフルーツは、日本各地のスーパーや八百屋さん、百貨店などで手に入れることができます。さらに、愛媛県内の農産物直売所、オンラインストアなどでも産地直送で購入可能です。シーズンによっては、大型スーパーなどでも「愛媛県産」として販売されていることがあります。
愛媛のイチゴ「紅い雫」の魅力
愛媛県生まれのイチゴ、「紅い雫」は、その名の通り、果実全体が鮮やかな紅色に染まるのが特徴です。可愛らしい雫のような形状も魅力で、高い糖度と程よい酸味が調和した、絶妙なバランスの味わいを楽しむことができます。また、特別な栽培方法で育てられた「至高の紅い雫」は、シャキッとした食感と芳醇な香りが格別です。