巨峰は1942年に静岡県の大井上理農学研究所で誕生し、1955年に「巨峰」として商標登録されました。開発者である大井野上康氏が、日本の品種「石原早生」と欧州系の「センテニアル」を交配して作り出したもので、品種名は「石原センテニアル」とされています。登場当時は、他のぶどうに比べて粒が非常に大きく、しかも甘味が強かったことから、驚きをもって迎えられました。

1粒は10〜12gと非常にボリュームがあり、1房は600gを超えることもあります。ただし、大きいほど良いというわけではなく、粒の数が少ないほど甘味が凝縮される傾向があり、栽培時には摘粒（まびき）を行ってバランスを調整します。糖度は18〜20度と高く、果肉は引き締まり、たっぷりの果汁と豊かな香りを持ちます。現在では、種なし巨峰も普及し、幅広い年代から支持されています。また、「ナガノパープル」や「ピオーネ」などの人気品種も、巨峰を親に持つことからも、その存在感は不動といえるでしょう。

巨峰の美味しい旬の時期は、露地物で8月から10月ごろが中心です。さらにハウス栽培されたものは5月下旬から7月頃に出回るため、初夏から秋まで長く楽しむことができます。選び方のポイントは、果皮がしっかりと濃い紫黒色になっていて、「ブルーム」と呼ばれる白い粉が均一に付いているもの。この粉はぶどう自身が出す天然の保護膜で、新鮮さの証です。

また、軸が青くしっかりしていて、果粒が大きくハリがあるものを選ぶと良いでしょう。時間が経つと粒のハリが失われ、味や香りも劣化してしまうため、購入後はなるべく早く味わうのがおすすめです。

巨峰はもともと静岡県の伊豆で誕生しましたが、商業的に初めて成功したのは福岡県久留米市田主丸町です。「巨峰」という名前も、伊豆から見える富士山にちなんで命名されたといわれています。現在では、日本全国の多くの地域で栽培されていますが、特に有名な名産地は、長野県、山梨県、福岡県の3つが挙げられます。

長野県と山梨県は、気候や土壌がぶどう栽培に適しており、巨峰に限らず多くの高品質なぶどうを産出している地域です。一方、福岡県は巨峰栽培の発祥地としての歴史があり、今でも根強い支持を集めています。その他にも、和歌山県や栃木県、三重県、宮崎県などでも盛んに栽培されており、地域ごとに異なる風味を楽しむことができます。

巨峰はその大粒で濃厚な甘味、芳醇な香りと食べ応えから「ぶどうの王様」と称されることもあるほど、高い評価を受けています。糖度は18〜20度と非常に高く、果肉はコクがありながらも優しい酸味があり、全体としてバランスのとれた味わいが魅力です。また、見た目のインパクトもあり、贈答用としても非常に人気があります。

特に高齢の方にもよく知られており、安心感のある味として親しまれている点も見逃せません。さらに、巨峰はぶどう狩りでも人気の品種。1950年代には福岡県田主丸町の果樹園が観光バスを利用したぶどう狩りを始め、全国的なブームを巻き起こしました。現在でも7月から10月の間に各地で巨峰狩りを楽しめ、食べ応えのある巨峰は観光農園でも大きな魅力となっています。

巨峰は甘みが強く果汁も豊富なため、そのまま食べても十分に美味しいフルーツですが、アレンジ次第でさらに楽しみが広がります。皮は比較的厚いため、ヘタとは反対側に切れ目を入れると剥きやすくなります。食べ方の工夫としておすすめなのが「巨峰のコンポート」。煮崩れしにくく、香りも残るため、シロップ煮にするのに適した品種です。

また、生ハムを巻いて前菜風に仕上げると、塩味と甘味の絶妙なバランスが楽しめる一品になります。ほかにも、ミキサーにかけて炭酸水と合わせれば、砂糖なしで爽やかな巨峰スカッシュが完成。冷凍巨峰を氷代わりに加えれば、見た目にも涼しげな夏のドリンクになります。巨峰の魅力は、そのまま食べるだけでなく、様々な料理やデザートに活かせるところにもあります。

巨峰を美味しく長持ちさせるには、保存方法にも工夫が必要です。基本的には冷蔵庫の野菜室で保存しますが、乾燥しないようにラップや保存袋でしっかり包むのがポイントです。常温でも涼しい場所であれば数日保存可能ですが、なるべく早めに食べる方が風味を損なわずに済みます。

もっと長く楽しみたい場合は、冷凍保存がおすすめです。粒を一つずつ房から外して、保存容器や冷凍用バッグに入れて冷凍庫で保管します。その際は手でちぎるのではなく、ハサミで軸ごとカットすることで、果皮の傷みを防げます。冷凍巨峰はシャーベット感覚でそのまま食べられ、夏場のおやつやドリンクにも活用できます。

巨峰は、その名にふさわしく風味や甘さ、見た目の豪華さまで兼ね備えた「ぶどうの王様」です。旬は7月から10月までと長く、ハウス栽培のものを含めれば5月下旬から楽しむことができます。ジューシーで食べ応えがあり、そのままでもアレンジしても美味しさは変わりません。

長年愛され続けているのは、ただ美味しいだけではなく、記憶に残る味わいと安心感があるからこそ。これからも巨峰は、多くの人の暮らしの中に寄り添い、四季を楽しむ一つの楽しみとして存在し続けることでしょう。