こしあん つぶあん
こしあんとつぶあんは、和菓子の定番の具材です。上品な味わいと風味が特徴的で、様々な和菓子に使われています。おはぎ、大福、どら焼き、まんじゅうなど、代表的な和菓子を思い浮かべると、必ずこしあんかつぶあんが使われていることがわかります。今回は、こしあんとつぶあんの違いや特徴、作り方について詳しく解説していきます。
こしあんとつぶあんの歴史について
「餡子(あんこ)」の語源は、もともと餅や饅頭などに詰める具材を指していました。この「詰め物」が本来の「あんこ」の意味です。
餡子の代表的な材料である小豆は、3世紀頃に中国から伝わったとされています。小豆はその赤い色から、古代より魔除けや厄除けの効果があると信じられており、栄養価が高いことから薬としても利用されていました。
縄文時代には小豆が栽培されており、推古天皇の時代には「あんこ」として食されていたようです。当初、日本では砂糖がなかったため、塩で味付けして食べたり、煮汁を飲んだりしていました。その後、植物から採れる汁を煮詰めた甘味料「アマヅラ」を使って甘味を加えたとされています。
現在のように砂糖を使って甘くした餡子が普及したのは室町時代からで、それ以前は甘味がない小豆が主流でした。砂糖を使った餡子は、高貴な身分の人々に限られた特別な食べ物だったと言われています。
こしあんとつぶあんの比較
こしあんとつぶあんは、日本の伝統的な和菓子の餡として広く親しまれていますが、それぞれに異なる特徴があります。
まず、カロリーに関しては、こしあんが約155 kcalなのに対し、つぶあんは約244 kcalとやや高めです。栄養素の面では、こしあんは糖質が20.3g、食物繊維が6.8g、たんぱく質が9.8g含まれています。一方で、つぶあんは糖質が48.3g、食物繊維が6.8g、たんぱく質が5.7g含まれています。
地域によっても好まれる餡の種類は異なり、こしあんは富山県、長野県、静岡県より東の地域で主流です。つぶあんは石川県、岐阜県、愛知県より西の地域で主に親しまれています。
食感においても大きな違いがあります。こしあんは小豆の皮を取り除いているため、なめらかな舌触りとサラッとした口当たりが特徴で、クリームのような印象を受けます。つぶあんは小豆の粒感が残っているため、なめらかな食感の中に時折くる粒感がアクセントとなります。
甘さはどちらの餡も砂糖の量によって変わりますが、一般的にはこしあんの方が甘みが抑えられていることが多いです。これは、こしあんが小豆の皮を取り除くことで、素材そのものの風味が際立つためと言われています。
こしあんとつぶあんの製法の違い
「こしあん」は、小豆を煮てから布巾で裏ごしして皮を取り除き、砂糖を加えて練り上げた餡のことを指します。別名「小倉あん」や「ねりあん」とも呼ばれ、表面に餡をつける和菓子、例えば団子やおはぎなどによく使われます。この方法で作るこしあんは滑らかな舌触りで、落ちにくいので扱いやすいという特徴があります。
こしあんとつぶあんのカロリーの違い
こしあんとつぶあんのカロリーの違いについて比較すると、以下の通りです。
こしあん:約155 kcal(100gあたり)
つぶあん:約244 kcal(100gあたり)
カロリー数だけで見ると、つぶあんの方が高カロリーであるため、太りやすいイメージを持たれがちです。しかし、これはこしあんとつぶあんのカロリー表示が異なる点にも注意が必要です。具体的には、こしあんのカロリーは砂糖を含まないものとして計算されているのに対し、つぶあんのカロリーは砂糖を含むものとして計算されています。
同じ量の小豆を使用している場合、砂糖の添加量によってカロリーが大きく変わるため、実際のカロリー差は砂糖の量に起因するものが大きいです。したがって、使用する砂糖の量によっては、こしあんとつぶあんのカロリーはほぼ同じになる可能性もあります。
こしあんとつぶあんの味の違い
「こしあん」と「つぶあん」の味の違いについて説明します。
こしあんとつぶあんは同じ小豆から作られていますが、味わいには違いがあります。つぶあんの方がより甘く感じられるのは、一般的に砂糖が多く含まれているためです。つぶあんは小豆の粒が残っているため、噛むことで甘さを感じる味蕾(味覚の受容器)にしっかりと届きます。このため、つぶあんは甘さをより強く感じることができます。
一方、こしあんは粒がなく、クリーミーでなめらかな口当たりが特徴です。噛む必要が少ないため、甘さを感じる時間が短くなり、つぶあんに比べると甘さを控えめに感じることが多いです。そのため、こしあんは甘さが穏やかに広がると感じられることがあります。
また、つぶあんは小豆の粒の食感を楽しむことができるため、食べごたえがあります。こしあんはそのなめらかな食感から、口当たりの良さを重視する人に好まれます。
こしあんとつぶあんの地域ごとの違い
「こしあん」と「つぶあん」の好みは、地域によっても異なります。一般的に、関西地方ではつぶあんが好まれる傾向が強く、関東地方ではこしあんの人気が高いとされています。この地域的な嗜好の違いは、製菓業者や食品メーカーが商品展開に反映させることもあり、例えば「あずきバー」で知られる井村屋では、地域によって使用する餡子の種類を変えて販売しています。
このような嗜好の違いの境目は愛知県付近とされており、名古屋の名物である小倉トーストがこの分かれ目に位置しています。小倉トーストには粒あんが使用されており、つぶあん文化が根付いている地域を代表する食べ物の一つとなっています。このように、こしあんとつぶあんの好みは、地域の文化や歴史とも深く結びついているのです。
こしあんとつぶあんはどっちが人気?
「こしあん」と「つぶあん」の人気については、2021年に全国1,000人を対象に行われたあんぱんに関するアンケートの結果、「つぶあん派」が58%で「こしあん派」が37%と、つぶあんの方が人気が高いことがわかりました(https://imgur.com/2Bp1NIx)。
年齢層ごとに見ると、若い世代では「こしあん派」が多く、年齢が上がるにつれて「つぶあん派」が増える傾向が見られました。性別による違いでは、男性は「つぶあん派」、女性は「こしあん派」が多いという結果が出ています。この違いは、つぶあんの食感や食べごたえが男性に好まれる一方で、こしあんは鉄分が豊富で貧血予防にもなることから、女性に支持されていると考えられます。
まとめ
こしあんとつぶあんは、両者とも小豆をベースに作られていますが、加工方法が異なります。こしあんは小豆を煮た後、滑らかに擦り潰して作られるのに対し、つぶあんは小豆の形を残した状態で作られます。こしあんは滑らかな舌触りが特徴的で、上品な味わいがあり、つぶあんは小豆の食感が楽しめるのが魅力です。和菓子作りでは、それぞれの特性を生かして使い分けられています。