春の訪れを告げる柑橘「はるみ」は、みかんの手軽さとデコポンのような食感を持ち合わせた、まさにいいとこ取りのフルーツです。最大の特徴は、口の中で弾けるプチプチとした果肉。その食感とともに、広がるのは穏やかで上品な甘さです。清見とポンカンの交配から生まれた「はるみ」は、不知火(デコポン)とも親戚関係にあたります。春の陽光を浴びて育った、ジューシーでフレッシュな「はるみ」の魅力をたっぷりご紹介します。
はるみ:デコポンの姉妹品種、その食感と甘さ、希少な魅力
はるみは、手軽なみかんとデコポンのような食感を持ち合わせた柑橘です。特徴は、果肉の食感と、広がる甘み。柑橘ファンを魅了しています。清見とポンカンを交配して育成されたもので、デコポンとは姉妹品種。1999年11月に品種登録され、旬を迎える時期から「はるみ」と名付けられました。漢字では「春見」と表記されることもあります。
はるみの生い立ちと歴史:デコポンの姉妹品種誕生まで
はるみは、農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所興津支場(旧:農業・生物系特定産業技術研究機構興津支場)で、清見にポンカンの花粉を交配して育成。育成には、清見とポンカンの特性を掛け合わせる目的がありました。清見は、果肉が柔らかく果汁も豊富ですが、外皮がむきにくいのが特徴。ポンカンは甘みが濃厚で手で簡単にむけますが、種が多いという課題がありました。両品種を掛け合わせることで、育成者は「早熟で甘みがあり食べやすい」「手で皮がむけて種の少ない」柑橘の実現を目指しました。同じ交配から生まれたデコポンとは兄弟品種。それぞれの親品種の特徴を受け継ぎつつ、消費者が手軽に楽しめる柑橘として「はるみ」が誕生しました。
はるみの特徴:食感と甘み
はるみの魅力は、食感と甘さ。果実の大きさは180~200グラム程度で、手触りはややごつごつしていますが、外皮は柔らかく手で簡単にむけます。内皮も薄いため、そのまま食べても気になりません。特徴的なのは、大粒な果肉の張りと、口の中で弾けるような食感。「プリプリ」とした歯ごたえのある味わいです。噛むたびに果汁と甘みが溢れ出し、満足感を与えます。糖度が高く適度な酸味があり、果汁も多めで香りも豊か。デコポンと比較すると、デコポンが濃厚な甘みを持つ一方、はるみはよりマイルドな甘さが特徴です。また、種は比較的少ないため、食べやすさも兼ね備えています。
はるみの旬
はるみは「初春」に店頭に並ぶことと、「清見」の血を引いていることが名前の由来。「春見」と書かれることもあります。収穫期は主に1月中旬から下旬にかけてで、1月頃から店頭に出荷が始まります。最も美味しく食べられる旬は2月から3月上旬頃。この時期に食感と上品な甘さを楽しめます。
はるみの選び方(見分け方)
美味しいはるみを選ぶには、まず全体を観察し、新鮮でみずみずしいものを選びましょう。手に取った際に、見た目よりもずっしりとした重みを感じるものがおすすめです。また、果皮と果肉の間に隙間ができ、皮が浮いている状態(浮き皮)になっていないかを確認することも大切です。はるみは比較的皮が浮きやすい柑橘ですが、皮がフカフカしているものは味が落ちている可能性があるため、避けるのが賢明です。時折、デコポン(不知火)のように、ヘタの部分に特徴的な突起(デコ)があるものが見られますが、これは品質に影響するものではありません。
はるみの保存方法
はるみは、比較的日持ちが短い柑橘類ですので、購入後はできるだけ早く食べるようにしましょう。保存する際は、直射日光を避け、風通しの良い涼しい場所で保管してください。保存状態によって異なりますが、美味しく食べられる目安は約5日から1週間程度です。冷蔵庫で保存する場合は、乾燥を防ぐために新聞紙などで包み、野菜室に入れるのがおすすめです。
はるみの召し上がり方と活用レシピ
はるみは、その美味しさはもちろん、手軽に食べられる点も魅力です。外側の皮が柔らかいため、手で簡単にむくことができ、包丁を使う手間がありません。内側の薄皮(じょうのう膜)も薄いため、そのまま房ごと口に入れてもほとんど気になりません。みかんのように手軽に、はるみならではの豊かな風味と、プチプチとした食感を楽しめます。ただし、まれに種が含まれていることがあるので、食べる際は少し注意してください。はるみ本来の美味しさを味わうには、生のまま食べるのが一番です。また、その甘みと香りを活かして、ジャムやマーマレードにしたり、ケーキやタルトのトッピングとして使用するのもおすすめです。
栽培の難易度と希少価値:隔年結果性と市場での流通状況
はるみは、その美味しさにも関わらず、栽培が非常に困難な品種として知られ、市場に出回る量も限られているため、希少な柑橘として扱われています。栽培における大きな課題は、極めて強い「隔年結果性」です。これは、果実が多く実る「表年」と、ほとんど実らない「裏年」が交互に訪れる性質で、収穫量が年によって大きく変動します。表年には、果実が過剰に着果するため、適切な摘果を行わないと樹の勢いが弱まり、酸味が強く品質の低い小玉の果実が増える傾向があります。一方、裏年には着果不足になりやすく、糖度が低く品質の良くない大玉の果実が増えることがあります。また、隔年結果性以外にも、鳥による被害、浮き皮、水腐れといった問題が発生しやすく、これらの要因が、はるみの商業栽培を困難にしています。しかし、はるみは成熟が早く、寒さによる被害を受けにくいという長所も持っており、広島県、愛媛県、和歌山県、静岡県、愛知県など、比較的広い範囲の柑橘栽培地域で栽培されています。
はるみの年間収穫量と栽培面積の変遷
はるみの栽培は難しく、市場に出回る量が限られているため、希少価値が高い品種です。日本国内の収穫量を見ると、2010年には合計4586トンと比較的少量であり、地域ごとの内訳(30%、22%、14%)も特定の産地に集中していることがわかります。近年の農林水産省の統計によると、2021年のはるみの栽培面積は約446ヘクタール、収穫量は約5237トンに増加していますが、依然として大規模な生産ではありません。特に2021年の収穫量では、広島県が最も多く、次いで愛媛県が約1103トン、和歌山県が約971トンと続き、特定の県が主要な生産を担っている状況が続いています。これらの状況が、はるみを市場でなかなか目にすることができない、貴重な柑橘にしています。
はるみの整枝・剪定:早川式坊主枝剪定による樹勢維持
はるみや、その姉妹品種である不知火の栽培においては、樹の勢いを適切に維持し、安定した収穫と品質を確保するために、神奈川県で考案され普及している「早川式坊主枝剪定」という特殊な剪定方法が用いられています。この整枝・剪定は、基本的に自然な樹形を尊重しつつも、主枝を途中で切り戻し、約20~30センチメートルの長さに切り詰めた「坊主枝」と呼ばれる状態にすることで行われます。この坊主枝剪定には、いくつかの目的があります。まず、樹の内部に発生しやすい枯れ枝を取り除くことで、樹全体の健康を保ちます。次に、新しい枝の発生を促し、樹勢の低下を防ぎ、果実生産のための活力を維持します。さらに、坊主枝の上に二年枝を予備枝として残すことで、継続的な樹勢維持と翌年の安定した着果につなげるという、計画的な剪定管理が行われます。このような専門的な剪定技術が求められることも、はるみ栽培の難しさの一因であり、高品質な果実を安定して生産するための重要な作業となっています。
まとめ
はるみは、清見とポンカンの交配から生まれたデコポン(不知火)の姉妹品種であり、その大きな特徴は、大粒の果肉が弾けるような独特の食感と、まろやかで優しい甘さです。糖度が高く、程よい酸味と豊かな香りも持ち合わせており、手で簡単に皮がむけ、薄い内皮は、みかんのように手軽に楽しめる点も魅力です。1999年に品種登録されたこの柑橘は、初春に旬を迎え、漢字では「春見」と表記されることもあります。収穫は1月中旬から始まり、2月から3月上旬が最も美味しい旬とされています。はるみを選ぶ際は、みずみずしく重みがあり、浮き皮がないものが良く、風通しの良い冷暗所で5日から1週間程度を目安に保存するのがおすすめです。そのまま生で食べるのが一番美味しく、ジャムやケーキの材料としても利用できます。しかし、隔年結果性が非常に強く、鳥害や浮き皮、水腐れといった栽培上の課題も多いため、市場への流通量は限られており、希少価値が高い品種とされています。高品質なはるみを育てるためには、「早川式坊主枝剪定」のような専門的な管理が欠かせません。ぜひ、この貴重な「はるみ」を見かけたら、その独特の食感と上品な甘さを味わってみてください。
質問:はるみってどんな味?
回答:はるみは、穏やかでやわらかな甘さが持ち味です。親戚にあたるデコポン(不知火)が濃密な甘さであるのに対し、はるみは、さっぱりとした上品な甘さが口いっぱいに広がります。さらに、果肉がはじけるような独特の食感と、心地よい歯ごたえも人気の秘密です。
質問:はるみとデコポン(不知火)って何が違うの?
回答:はるみとデコポン(不知火)は、どちらも清見とポンカンを両親に持つ親戚関係ですが、いくつかの違いが見られます。デコポンは「不知火」という名前で知られ、頭のコブが特徴的な見た目をしています。一般的に、甘みが非常に強いのが特徴です。それに対して、はるみはコブがなく、デコポンに比べて甘さは控えめで、さっぱりしています。また、はるみの方が、より粒々とした食感が際立っていると言えるでしょう。
質問:はるみの旬な時期はいつ?
回答:はるみの収穫時期は、主に1月中旬から下旬にかけてで、1月頃からお店に並び始めます。一番おいしく食べられる旬の時期は、2月から3月上旬頃と言われており、この時期に、はるみならではの食感と甘みを最高の状態で味わうことができます。













