黒は、食品に深みと高級感を与える色として活用されています。この魅力的な黒色を作り出すには、天然由来の色素と合成色素を適切に組み合わせる必要があります。

天然色素は、生物や食材から抽出された安全な素材で、発色が柔らかく和菓子などの伝統食品に多く使われてきました。代表的なものにビーツ由来の赤色やクチナシの実から作られるクロシン、ケルセチンなどがあります。

一方、合成色素は化学的に作られた人工色素で、少量でも鮮やかに発色するメリットがあります。日本では12種類の合成色素が食品使用が認められていますが、健康への影響が懸念されており、欧米諸国では規制が厳しくなっています。

このように天然色素と合成色素にはそれぞれ長所と短所があるため、用途に応じて適切な色素と配合を選ぶ必要があります。食品に使用する場合は、食品衛生法の基準に適合していることが求められます。包装資材などの着色であれば、規制外の色素でも構いません。黒色の作り方は、こうした目的や用途によって微妙に異なるのです。

自然界から得られる黒色素材を利用すると、健康的で安全な黒色の食材を作ることができます。代表的なものとしてセピア墨汁やカラスムギなどがあります。

セピア墨汁は、イカ類の墨袋から抽出された黒色の液体です。発色が良く、防腐効果もあるため、昔から食品や化粧品の着色に使われてきました。

カラスムギは一年草のキク科の植物で、種子の外皮に含まれる黒色色素が食用に適しています。ほのかな苦みと香ばしい風味があり、パン、麺、お菓子などに深みのある色合いを与えます。

その他にも、竹炭粉末や黒大豆、黒ゴマなどの加工品を使うことで自然な黒色を出すことができます。このように天然素材ならではの風味や栄養が加わり、安心して食べられる食品作りが可能になります。

天然の食用色素"イカ墨"を使った黒一色の味わい深いパスタは、鉄分が豊富で美容やアンチエイジング効果が期待できる一品です。作り方は簡単で、生パスタ、イカ墨、オリーブオイル、にんにく、赤唐辛子、パセリを用意します。茹でたパスタを、炒めたにんにくとオリーブオイルの鍋に移し、イカ墨を入れて混ぜ合わせれば完成です。仕上げにパセリを散らせば、黒一色の中に緑の彩りが映え、一層味わい深い逸品に。

＜イカ墨とイカゲソのスパゲッティ＞

材料(1人前)

スパゲッティ100g、オリーブオイル大2、おろしにんにく小1、輪切り鷹の爪小1、イカ墨1杯分、イカゲソ1杯分、白ワイン大1、トマト水煮缶100g、塩・胡椒適量

作り方

1.パスタを茹でる。

2.ゲソの口と吸盤を取り除き3～4cm切る。

3.フライパンにオイル、にんにく、鷹の爪を入れ香りが立ったらイカ墨・ゲソ・白ワインを加える。

4.トマト水煮を加え、茹で上がったパスタも入れて混ぜ合わせる。

5.塩胡椒で味を調え、器に盛り付ける。

ワンポイント

真っ黒に仕上げたい場合はイカ墨ペーストを加えると良い。

黒い食紅は、ブドウの皮や赤ワインの搾りかす、黒ゴマ、ココアパウダーなどから作ることができます。これらの材料は身近にあり、手間もかからず、自然な色素を手に入れられます。健康と環境に配慮しながら、料理に個性的な色彩を加えることができるでしょう。ぜひ自宅で作ってみて、独自の味わいを楽しんでください。