現代社会において、食物アレルギーはますます一般的な健康問題として認識されています。確定的な原因を特定するのは難しいものの、遺伝や環境要因、免疫システムの過剰反応など、様々な要素が影響していると考えられています。この記事では、食物アレルギーの原因に迫り、そのメカニズムを理解すると共に、どのような対策を講じればより安全に日常生活を送れるかを探求していきます。アレルギーへの正しい知識と対策は、私たちの生活の質を高めるための重要な鍵です。
食物アレルギーについて
食品に対するアレルギーについて詳しく見ていきます。
食物アレルギーの特徴
食物アレルギーは、特定の食物を摂取したり触れたりした際にアレルギー反応を引き起こす病気です。このアレルギーの原因となるアレルゲンは、主に食材内のタンパク質です。乳幼児の約５〜10％、学童期以降では約１〜３％が食物アレルギーを持つとされています。子どもの場合、成長とともに多くのケースで原因となる食物を摂取できるようになることがあり、これを「耐性の獲得」と呼びます。しかし、大人の食物アレルギーは耐性を獲得しにくいため、特定の食品を避け続ける必要があることが多いと考えられています。
症状
食物アレルギーの症状は、皮膚、呼吸器、消化器を含む体のさまざまな部分に現れることがあります。約90％が皮膚の症状で、約30％が呼吸器や粘膜の問題を示します。具体的には、皮膚にはかゆみやじんましん、むくみ、赤み、湿疹などの症状があります。呼吸器症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、呼吸困難、ゼーゼー・ヒューヒュー（喘鳴）が挙げられます。粘膜に影響する症状としては、目の充血や腫れ、涙、かゆみや、口や唇、舌の違和感、腫れなどがあります。また、消化器系には下痢、吐き気や嘔吐、血便が見られます。神経症状では、頭痛や元気がなくなる、意識がもうろうとすることがあります。これらの症状は単独で出ることもあれば、急に複数の臓器に同時に現れることもあります。これを「アナフィラキシー」と言い、更には血圧低下や意識障害を伴う「アナフィラキシーショック」に至ると、命に関わる危険もあります。
特殊な食物アレルギーについて
特定の食品を摂取した後に運動を行うとアナフィラキシーが発症することがある食物依存性運動誘発アナフィラキシーという状態があります。単独で特定の食品を食べた場合には症状は現れませんが、その食品を摂取してから運動をすると、症状が出ることがあります。しかし、常に発症するわけではなく、周囲の環境や体調、さらにはストレスも影響するものと考えられています。食後30分～4時間以内に運動した場合に、呼吸困難やめまい、吐き気・嘔吐、じんましんなどのアナフィラキシー症状が見られることがあります。
口腔アレルギー症候群は、特定の果物や野菜を口にしたときに、口の周りが赤くなったり口内が腫れたり、喉に違和感を感じる病気です。多くの場合、これらの症状は時間が経てば自然に治まります。この反応は、果物や生野菜に含まれるアレルゲンが口腔内の粘膜に触れることで発生し、体内のIgE抗体がこれに関与しています。アレルゲンは植物が自身を感染やストレスから保護するためのタンパク質であり、小腸に到達する前に分解されるため、主として口腔内での反応が引き起こされます。花粉症やラテックスアレルギーを持つ人は注意が必要です。
重症度
食物アレルギーでは、症状が現れる部位や重さによって重症度が分類されます。「軽症」は皮膚の一部に軽い発疹が現れ、消化器の症状も軽微で、多少の倦怠感がある程度です。「中等症」の場合、皮膚の広範囲にかゆみが広がり、軽い息苦しさや眠気が出ることがあります。「重症」では、全身に症状が現れ、強い腹痛や嘔吐が続き、場合によっては意識を失ったり、便失禁が起きることもあります。この重症の場合、生命の危険があるため、アドレナリンの注射が必要です。
診断
食後に何らかの異常が現れた場合、食物アレルギーを考えることが重要です。特に初めて摂取した場合に症状が現れやすく、その後も同じ食品で繰り返されることがあります。原因となる食品を特定する方法の一つには、医師による実際の食事内容の調査と、特異的IgE検査での確認があります。この検査は、「アレルギーの検査について」や下記の※を参照し、推測に役立ちます。ただし、確定診断には、医療機関にてごく少量の食品を摂取して反応を見る「食物経口負荷試験」が必要とされます。この試験は重篤な症状のリスクも伴うため、病院で万全の体制の下、安全を確保して実施する必要があります。したがって、すべての医療機関で行えるわけではないため、専門医に相談して対応可能な施設を紹介してもらうことが大切です。自宅でこのような試験を行うことは非常に危険であり、絶対に避けてください。
※血液検査のみで食物アレルギーの確定診断は不可能です。特異的IgE抗体が陽性であっても、食物経口負荷試験で問題なく摂取できれば食物アレルギーとは言えません。そのため、特異的IgE抗体検査だけでは確実な診断はできず、症状が出ない場合は食品の排除は不要です。
治療に関して
食物アレルギーでは、原因食材の排除による「除去療法」と、発症時の症状緩和を目指した治療があります。
（１）除去療法原因となる食品を排除する手法です。例えば、卵アレルギーでは卵を摂取しない手段を取ります。加工食品には卵が含まれていることがあるため、食品表示をチェックして卵不使用のものを選びます。アレルギー持ちでも特定の場合で少量摂取しても大丈夫な人や、加熱処理で影響がない場合もいます。これらは食物経口負荷試験で確認し、必要最低限の除去が可能です。また、除去により栄養バランスが崩れることがありますので、管理栄養士に相談して調整しましょう。
（２）症状があらわれたときの治療各臓器の症状に応じて治療が行われます。じんましんやかゆみには抗ヒスタミン薬、喘鳴には気管支拡張薬の吸入を行います。アナフィラキシーの重篤な症例では、アドレナリンの筋肉注射が必須です。過去に経験がある方は、エピペン®の処方を受け、正しい使用法を医師に確認しておきましょう。
（３）食品表示について
加工食品にはアレルギー表示が必要です。必須表示の8品目は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生です。推奨表示の20品目も確認が望ましいです。しかし、量り売りやその場で包装される食品には表示されず注意が必要です。また、「卵」は魚卵など対象外、「小麦」は大麦等対象外、「乳」は山羊乳が対象外など、特定例外があります。