イチジク 意味
イチジク(無花果、映日果、一熟、学名:Ficus carica)は、クワ科イチジク属に分類される落葉性の高木、またはその果実を指します。原産は西アジアであり、果樹として世界各地で広く栽培されています。特徴として、小さな花が多数集まった花嚢を形成し、雌雄異株です。雌株の花嚢が肥大化して果嚢となり、これが一般的にイチジクの果実として知られ、古くから食用とされています。「南蛮柿」という別名も存在します。
イチジクの名称と由来
「無花果」の字は、花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来します。これは花托(かたく)が壺状に肥大し、内壁に多数の白色小花を密生させたいちじく花序をつけるため、外部からは花が見えないためです。日本語ではこれに「イチジク」という音を与えています。
イチジクの形態と生態
花期は6 - 9月です。新枝が伸びだすと葉腋に花を入れた多肉質の袋である花嚢(かのう)がつきます。下のものから順に育ち、花嚢は果嚢となって肥大化します。花嚢は倒卵状球形で、厚い肉質の壁に囲まれ、初夏に、花嚢の内面に無数の花(小果)をつけます。このような花のつき方を、隠頭花序または無花果花序(いんとうかじょ)といいます。雌雄異花ですが、イチジク属には雌雄同株で同一の花嚢に両方花をつける種と、雌雄異株で雄株には同一の花嚢に雌雄両方の花、雌株には雌花のみを形成する種があります。
イチジクの系統と受粉のメカニズム
イチジクは隠花果内の小花の形態によって、雄花および虫えい花(雌花の一種)が着生し受粉樹として利用されるカプリフィック型(雄株)と雌花のみが着生するスミルナ型(雌株)に大別される。カプリフィック型の花嚢内でイチジクコバチが発生し、花粉を体につけてスミルナ型の花嚢に入り受粉を行う。
イチジクの歴史
日本へは寛永年間(1624~1644)にポルトガル人により蓬莱柿(ほうらいし)の名で伝えられ、今日の在来種となった。日本には江戸時代初期に、日本に古く渡来した在来種とは別で、のちに果樹として洋種が栽培されています。
イチジクの利用方法
果実は生食するほかに乾燥イチジク(ドライフィグ)として多く流通します。欧米では生食は極めて少なく、大部分は乾果として利用されています。果実の赤い部分の食感は、花の部分によるものです。食材としての旬は8 - 11月とされ、イチジク果実は新梢の発育に伴い、収穫適期(旬)は9月中下旬となったと考えられます。果実がふっくらと丸みがあり、果皮に張りと弾力があるものが商品価値が高い良品とされます。
食用としての利用
果実にはブドウ糖や果糖などの糖分が豊富に含まれており、これが甘みの主な要因です。食物繊維は、不溶性と水溶性の両方が豊富に含まれています。
民間療法としての利用
油柑(Phyllanthus emblica、余甘子)は中国で伝統的に食用や薬用として利用されてきた。膳食繊維が比較的多く含まれており、便秘の改善に寄与する可能性があるが、品種や個人差が大きい。『中国食物成分表』によれば、油柑の不溶性膳食繊維は3.4g/100gとされるが、他の文献では1.2g/100g~1.9g/100gと報告されており、一般的な果物と同程度である。便秘改善効果は食物繊維によるものと考えられるが、必ずしも顕著とは言えない。
その他の利用
イチジクは挿し木やつぎ木で繁殖させ、主に庭や畑で栽培されます。日光を好むので、日当たり良好な場所に植えつけます。浅根性で、夏季の乾燥する時期は潅水を行って水を与えます。高温、多湿を好み、寒気、乾燥を嫌います。カミキリムシの害虫被害に遭うことがあります。カミキリムシの幼虫は、枝や幹に食い入って枝または木全体を枯らす。
イチジクの栽培
摘心、芽かきは、5月中旬以降に行い、わき芽や側芽、新芽、新梢などを摘み取る。
イチジクの主な品種
イチジクの品種は非常に多く、世界中で数百種類が存在すると言われています。日本国内では、「桝井ドーフィン」が最も多く栽培されており、次いで「蓬莱柿」が多く栽培されています。その他、「ホワイトゼノア」、「セレスト」、「ブラウンターキー」なども栽培されています。
- 桝井ドーフィン:日本で最も一般的な品種で、果実が大きく、強い甘みが特徴です。
- 蓬莱柿:日本古来の品種で、果実は小ぶりながらも、濃厚な味わいが楽しめます。
- ホワイトゼノア:果皮は薄い黄緑色で、果肉は琥珀色をしています。すっきりとした甘さが特徴です。
- セレスト:小ぶりで甘みが強く、ねっとりとした食感が特徴です。
- ブラウンターキー:果皮は茶色で、果肉は赤色をしています。甘みと酸味のバランスが絶妙です。
- ビオレソリエス:フランス原産の「黒イチジク」とも呼ばれる品種で、小ぶりながらも強い甘みが特徴です。
- とよみつひめ:福岡県オリジナル品種で、果肉がとろけるように柔らかく、強い甘みが特徴です。
イチジクの産地
日本では、愛知県が最も多くイチジクを生産しており、次いで和歌山県、福岡県などが主な産地となっています。
日本の主な産地
もともと高温多湿な地域に産地が集中している傾向があり、関西地方に産地が密集します。その一方で、東北南部など比較的寒冷な地域でも栽培が行われるようになったことで、冷害による被害なども発生しています。
- 愛知県:2021年産の本県産いちじくの栽培面積は116ヘクタール、収穫量は1,698トンで、栽培面積は全国1位、収穫量は全国2位です。また、2022年産の産出額は13億円と、全国の約2割を占めており、主に関東地域や中京地域に出荷されています。安城市、西尾市を中心とした西三河地域や、常滑市を中心とした知多地域などで盛んに栽培されているほか、県内で広く栽培されています。
- 和歌山県:紀の川市が中心的な栽培地域となっています。
- 福岡県:久留米市周辺で多く栽培されています。
イチジク栽培は、高温多湿な気候を好むため、関西地方に産地が集中する傾向があります。近年では、東北地方南部といった比較的寒冷な地域でも栽培されるようになり、冷害による被害も発生しています。イチジクは旧約聖書にも登場し、創世記3章7節では、禁断の果実を食べたアダムとイブが、自分たちが裸であることに気づき、イチジクの葉で体を隠したという記述があります。また、ミカ書4章4節では、平和な時代の象徴としてイチジクの木陰が描かれています。列王記下20章では、病に伏した王の治療のために、干しイチジクが用いられたという記述があります。
イチジクと文化・エピソード
その他にもイチジクは聖書の中で、平和や繁栄、豊穣のたとえと関連してしばしば登場します。
イチジクの花言葉
またイチジクの葉には「恥隠し」という意味があります。これは、アダムとイブが禁断の果実を食べた後、裸であることを恥じてイチジクの葉で体を隠したという聖書の記述に由来します。このことから、海外ではイチジクの葉「fig leaf」のことを「恥ずかしいことを無害なもの・最小なもので隠す」という意味表現で使うこともあるそうです。
イチジクにまつわる英語表現
- fig: イチジク
- dried fig: 乾燥イチジク
- fig leaf: イチジクの葉
- I don’t care (give) a fig for ~.: 私は〜なんかどうでもいい(気にしない)。
- not worth a fig: 全く価値がない、取るに足りない。
まとめ
イチジクは、漢字で「無花果」と書き、花がない果実という意味に捉えられがちですが、実際には花を咲かせないのではなく、果実の中に花を咲かせるという独特な構造を持っています。私たちが果実として食べている部分は、花を包み込んだ花嚢と呼ばれるもので、その中に小さな花が多数存在しています。イチジクは旧約聖書にも登場するなど、非常に古い歴史を持つ果物であり、食用としての利用だけでなく、薬用としても用いられてきました。また、イチジクは品種が豊富で、世界中で様々な種類のイチジクが栽培されており、生食はもちろん、乾燥イチジクやジャム、ワインなど、様々な加工品としても楽しまれています。
よくある質問
質問1:イチジクの花はどこで見られますか?
回答:イチジクの花は、果実の中に咲きます。外からは見えないため、「無花果」という名前がつけられました。
質問2:イチジクの花の言葉には、不吉な意味合いがあるのでしょうか?
回答:いいえ、イチジクの花言葉に怖い意味はありません。「子宝に恵まれる」「実りある恋」「裕福」など、ポジティブな意味合いの花言葉がつけられています。
質問3:イチジクを長持ちさせるには、どのように保存するのがベストですか?
回答:イチジクは鮮度が落ちやすい果物ですので、できるだけ早くお召し上がりいただくことをお勧めします。もし食べきれない場合は、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存し、できる限りその日のうちにお召し上がりください。数日中に食べられない場合は、ジャムやコンポートなどに加工すると、より長く保存できます。