イギリス ケーキ
イギリス、その名だけでも豪華な城や伝統的なティータイム、ロイヤルファミリーやピカデリーサーカスといったイメージが浮かびますが、イギリスと言えばなんといってもその美味しいケーキが忘れられません。バラエティ豊かなフレーバーと、お茶うけに最適な、ほのかな甘さ控えめなイギリスのケーキは、世界中の甘味愛好家に愛され続けています。今回は、その魅力を存分に引き出したイギリス・ケーキの世界に足を踏み入れ、その華麗なる歴史と多彩な種類について一緒に探っていきたいと思います。
イギリスケーキの特徴
イギリスのケーキは日本において特別有名ではありませんが、その豊かな味わいは見逃せません。共通の特徴は、見た目はシンプルながら、重厚感を感じさせつつ、甘さも十分に感じさせます。これらは全て、ふんだんに使われるバターや卵によって作り出される、しっとりとした食感と、深い甘みが特徴です。
その中でも特にイギリス伝統のケーキと言えば、ヴィクトリアスポンジ、フルーツケーキ、ショートブレッドが挙げられます。ヴィクトリアスポンジは、軽やかなスポンジケーキの間に甘さと酸味を兼ね備えたクリームやジャムが挟まれていて、エレガントな味わいが特徴です。
また、ぎっしりとドライフルーツが詰まったフルーツケーキは、数か月にわたり熟成させてから味わうもので、その深い味わいは特にクリスマスケーキとして親しまれています。洗練されたスパイスとアルコールの風味が際立つもので、イギリスの精緻なケーキ文化を味わうことができます。
シンプルでも確かな美味しさを持つショートブレッドは、サクサクとした食感と絶妙な甘さが魅力で、多くの人々を魅了しています。このシンプルながらも満足感を提供する美味しさが、世界中のケーキ愛好家に支持されています。
これらのケーキは全て、長い伝統を備えつつも現代の食のトレンドに順応し、常に新たな進化を遂げています。それぞれのケーキの個性と文化的背景が混ざり合い、イギリスケーキの独特な魅力を形成しています。そして何より、これらのケーキはたっぷりとした紅茶と共に楽しむことで、その真価を発揮します。
イギリスの定番ケーキ①ヴィクトリアサンドイッチケーキ
「ヴィクトリアサンドイッチケーキ」という名前を聞いたことがあるでしょうか。日本ではあまり耳にすることはないかもしれませんが、イギリスではその意外とシンプルな構造が親しまれている一品です。その存在は英国人にとって、私たちがイチゴのショートケーキを思い浮かべるくらいなじみ深いものなのです。
その慎ましい美味しさは、2枚のスポンジケーキの間にストロベリーやラズベリーのジャム、さらにクリームを挟み込んだ、独特のレイヤー構造から生まれます。ジャムとクリームの絶妙な組み合わせが口の中で広がり、思わず微笑むような優しい甘さを表現します。スポンジのふわりとした食感・しっとり感と、挟み込むジャムとクリームのバランスは、お店によって異なるため、そのこだわりも楽しめます。
最近ではこのクラシックなケーキがさらに進化し、色とりどりのアイシングやクリームで飾られ、3段重ねになったりと、見た目も楽しませるヴァリエーションが広がりつつあります。
「ヴィクトリア」という名は、19世紀に英国を治めたヴィクトリア女王の名前が由来となっています。彼女は夫アルバート公と大変親しい夫婦で知られ、彼の早逝後はすべての日々を喪服で過ごしたとの伝説もあります。そんな彼女の心を癒し、孤独な日々を照らしてくれたのが、このヴィクトリアサンドイッチケーキだったのかもしれません。
イギリスの定番ケーキ②レモンドリズルケーキ
「レモンドリズルケーキ」は、イギリスの家庭料理やティータイム、パーティーなどで人気の定番ケーキです。""Drizzle""とは、英語で「たらす、かける」という意味。このケーキの名前が示す通り、焼き立てのケーキにたっぷりとレモンジュースを含んだシロップやアイシングがたらりとかけられています。
レモンドリズルケーキは、ホールケーキ、パウンドケーキ、カップケーキといった様々な形状で作られ、ケーキにシロップを軽く浸透させたものから、アイシングでしっかりと覆ったものまで、その仕上がりはバラエティに富んでいます。レモンの色鮮やかなスライスをトッピングしたものや、スポンジやアイシングにレモンピューレを混ぜ込んだ、一段と豪華なバージョンもあります。
このケーキの魅力は、彩りも香りも美しいレモンが主役の一品で、その甘さと酸味が絶妙なバランスを描いています。それは一口食べればレモンの濃厚な風味が口いっぱいに広がり、ティータイムの一コマを一層楽しいものにしてくれます。甘さだけではなく、程よい酸味も欲しいときや、一般的なクリームのケーキが少し重たく感じるときには、このレモンドリズルケーキがおすすめです。
イギリスの定番ケーキ③キャロットケーキ
イギリスカフェの定番メニューといえば「キャロットケーキ」が欠かせません。ニンジンを主成分にしているため、一見すると少々意外かもしれませんが、その風味と食感には驚かされること間違いなしです。
このキャロットケーキ、名前の通りに主な原料はニンジンですが、ただニンジンを使っているだけでなく、細かくすりおろし、生地に練り込んで焼き上げます。それにシナモンやナツメグの香りを加えることで、ニンジン特有の甘さを最大限に引き立てています。さらに、口溶けの良いシュガーコーティングで包み、クリームチーズをトッピングすることで、甘さのバランスを絶妙に取っています。
このキャロットケーキは、イギリスではホームパーティーや誕生日会、そして何よりもティータイムに頻繁に楽しまれています。アメリカでも非常に人気があり、日本でもそう遠くないうちに食べられる機会が増えそうです。
蓋を開けてみれば、「ニンジンのケーキ?」と驚くかもしれませんが、その独特な甘さと食感は、一度食べたら忘れられない体験となるでしょう。ぜひ温かい紅茶と共に、キャロットケーキでイギリス風のティータイムを楽しんでみてください。
イギリスの定番ケーキ④コーヒー&ウォルナッツケーキ
「甘さ控えめ、とびきりシックなケーキをお探しのあなた。ぜひとも試してほしい、イギリスの魅力的な一品、「コーヒー&ウォルナッツケーキ(Coffee & Walnut Cake) 」。ウォルナッツとは一般には「くるみ」を指し、豊かな香りとしっかりとした食感が特長。それがふんだんに練り込まれたこのケーキは、コーヒー風味のきめ細かなスポンジと共に口中で広がります。
もしかすると、過去にご案内したヴィクトリアサンドイッチケーキのように、2層のスポンジにクリームが挟まれたスタイルをイメージする方もいるかもしれません。しかしこちらのケーキは、甘さ控えめのスポンジとクリームが合わさり、香ばしいウォルナッツとユニークなコーヒーの深い風味が極めて繊細に調和しています。
イギリス国内では、普通のレストランやケーキショップで見つけられるだけでなく、多くの大手スーパーマーケットでも、きちんとパッケージされたホールケーキとして売られています。多様な味覚を追求するコーヒーブレイクの時間を、一段と楽しむために最適な一品。ぜひ、このクラシックテイストをお楽しみください。
イギリスの定番ケーキ⑤バッテンバーグケーキ
英国流のティータイムに欠かせない存在、それが「バッテンバーグケーキ」です。パステルピンクと白色の2色のスポンジケーキが美しいチェック柄を描き、その全体をアーモンドペーストでコーティングしたこのケーキは、見た目の魅力と共に素朴で上品な味わいが特徴です。
私が最初にバッテンバーグケーキに出会ったのは、日本でも名高い英国紅茶専門店「フォートナム&メイソン」のアフタヌーンティータイム。華麗なスウィーツが並ぶ中で一際目を引くチェック柄のケーキがあり、そこで初めてバッテンバーグケーキという名前を聞きました。
このケーキは、19世紀のバッテンバーグ家というイギリス王室から名前を得ているとされ、チェック柄は家の家紋を象徴しています。非常に古くからイギリスで愛されている伝統的なケーキですが、詳しい起源についてははっきりとは分かっていません。
手作りに挑戦するには少々手間がかかるため、ティールームやケーキ屋での販売はそれほど多くありませんが、スーパーマーケットでは市販のものを手に入れることができます。見た目の美しさと独特な風味が日本でも注目を集め、自宅での作り手も増えています。飾らずに素朴で上品なバッテンバーグケーキは、日常のティータイムを一層華やかに演出します。
紅茶と相性抜群のイギリスケーキ
今回は、イギリスのティータイムに欠かせない美味しいケーキのお楽しみ方についてご紹介いたします。
日本ではいちごのショートケーキやモンブランといった繊細なデコレーションが華々しく登場しますが、イギリスケーキはその独特の味わいで紅茶と一緒に楽しむのが鉄則。美しい見た目以上に素材の味を大切にし、シンプルながらも上品なティータイムを演出します。
まず味わって頂きたいのは、ビクトリア・スポンジケーキ。国名を冠したこのケーキは、ジャムとホイップクリームを挟んだシンプルでありながらも味わい深い一品で、それだけでイギリスの雰囲気を感じていただけます。紅茶との相性も抜群で、口あたりの良さと後からくる紅茶の味わいが楽しめる一品となっております。
また、ミルクティーと一緒に頂きたいのがフルーツケーキ。ドライフルーツがたっぷりと使用され、見た目からも贅沢さが伝わります。クリーミーなミルクティーとフルーツケーキが組み合わさることによって、まさに極上の味わいが引き立てられます。
いずれのケーキも、その風味を最大限に引き立てる紅茶との相性が優れています。日本でも少しずつ認知度が上がってきているこれらのケーキですが、シンプルな作り方なためお家で挑戦するのも一つの手です。
これらのケーキを一度ご賞味いただければ、確実にイギリスらしい素敵なティータイムを体験できることでしょう。ベーキングがお好きな方は、ぜひ自宅での手作りにチャレンジして、さらにイギリスのティータイムを堪能してみてはいかがでしょうか。
まとめ
イギリスのケーキはその幅広い種類と繊細な味わいで、甘党たちを惹きつけて止まない。ヴィクトリアスポンジからエクレアまで、その文化を感じることのできる深い歴史と伝統が詰まったイギリスのケーキは、お茶うけとしてだけでなく、人々の心を幸せにする美食として世界中で愛され続けています。