糖尿病と体重減少、一見すると相反する現象ですが、実は密接な関係があります。糖尿病患者の中には、意図せず体重が減少してしまう方が少なくありません。体重減少の背景にある血糖コントロールの重要性や、食事療法、運動療法など、具体的な対策を知ることで、より健康的な生活を送るための一歩を踏み出しましょう。
糖尿病と肥満の関係
糖尿病とは、血液中のグルコース濃度が異常に高い状態が慢性的に続く病気です。通常、血糖値は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによってコントロールされています。ところが、インスリンの分泌が不十分であったり、その働きが鈍くなったりすると、血糖値の高い状態が続いてしまい、糖尿病を発症するリスクが高まります。過剰な脂肪はインスリンの感受性を低下させるため、糖尿病患者には肥満体型の方も少なくありません。一時的に膵臓を酷使してインスリン分泌を促進できても、それは一時しのぎに過ぎず、最終的にはインスリンが枯渇してしまいます。
糖尿病にダイエットは効果があるのか?
減量することは、インスリン抵抗性の改善に繋がります。体脂肪が減少することで、血糖コントロールが改善され、膵臓への負担も軽減されます。計画的なダイエットは、糖尿病治療薬の減量や休薬を可能にするかもしれません。具体的な減量目標はありませんが、月に1kg程度の緩やかなペースが理想的です。1日あたり約240kcalの消費を心がけることで、月に約1kgの減量が期待できます。これは、1時間のウォーキングに相当し、筋肉量の増加にも貢献します。食事面では、例えば晩酌のビールを1杯控えることでも、同様の効果が期待できます。
糖尿病の食事療法
食後の血糖値が急激に上がると、それを抑えるために大量のインスリンが分泌されます。この状態が続くと、インスリンが脂肪を蓄積する働きが活発になり、体重増加につながる可能性があります。したがって、食事の内容を工夫し、血糖値の上昇を穏やかにすることが重要です。
1.GI値の低い食品を選択する
食品が血糖値を上昇させるスピードを示す指標がグリセミック・インデックス、通称GI値です。GI値が高い食品の例としては、白砂糖、うどん、食パンなどが挙げられます。一方、雑穀米、ライ麦パン、玄米などは食物繊維が豊富で、GI値が低い食品とされています。
2.ベジファーストとは
食事の最初に食物繊維を摂ることは、血糖値の急激な上昇を防ぐ効果が期待できます。野菜やタンパク質を最初に食べることで、その後の栄養吸収にも良い影響を与えると言われています。
3.PFCバランスの最適化
ラーメンとチャーハンの組み合わせに代表されるように、糖質過多な食事や、頻繁な間食による糖質摂取は、血糖値上昇の大きな要因となります。しかし、それ以上に問題なのは、栄養バランスの偏りです。糖質に偏らず、多種多様な栄養素をバランス良く摂ることが重要です。
糖尿病の薬で痩せるって本当?
糖尿病治療薬の中には、体重減少を促す可能性があるものが存在します。全ての薬に同様の効果があるわけではありませんが、一部の薬剤にはその作用が期待されています。ただし、これらの薬剤が保険適用となるのは、糖尿病と診断された患者様に限られます。
GLP1受容体作動薬
GLP-1は、体内でインスリン分泌を促進する役割を担うホルモンです。このホルモンの作用を高めることで血糖値をコントロールしやすくします。さらに、脳の視床下部に働きかけて食欲を抑制したり、胃の動きを緩やかにして満腹感を持続させたりする効果も期待できるため、体重減少に繋がる可能性があります。
SGLT-2阻害薬
SGLT2阻害薬は、過剰な糖を尿として排泄することで血糖値を改善します。同時にカロリーも排出され、1日に約300~400kcalのエネルギー損失が見込めるため、体重減少に繋がる可能性があります。比較的新しい薬剤ですが、腎臓や心臓を保護する作用も期待されています。
糖尿病は痩せたら治る?
糖尿病と診断された後、体重減少によって「治癒」したと感じる方がいますが、それは誤解です。糖尿病は基本的に完治しない病気であり、血糖値を適切に管理しながら、うまく付き合っていく必要があります。もし、以前肥満だった方が痩せて薬が不要になったとしても、それは血糖コントロールが改善し、生活習慣の見直しが奏功した結果に過ぎません。重要なのは、体重減少後も油断せず、良好な生活習慣を維持し、リバウンドを防ぐことです。