クラフトチョコレートとは
チョコレート作りの世界には、今やひとつの新しい潮流が生まれています。それがクラフトチョコレートと呼ばれる、職人技とストーリーを大切にした、質の高いチョコレートです。従来のチョコレートとは一線を画す、こだわりの味と香りに魅了される人が増えています。
クラフトチョコレートとは何か
クラフトチョコレートは、職人が手作業で丁寧に製造した小規模な専門店による高品質なチョコレートです。一般的な既製品とは異なり、カカオ豆の選別から製造工程まで、カカオの産地や品種、発酵方法などによるフレーバーの違いを熟知し、最適なブレンドを見つけ出す技術が光ります。カカオ液をそのままバニラやナッツなどの上質な素材と合わせ、人工的な香料や着色料は使わずに作られるため、風味が濃厚で奥行きのある味わいが特徴です。近年、高級食材としても注目を集めているのがクラフトチョコレートなのです。
クラフトチョコレートとは、職人が手掛けるカカオ豆からチョコレートまでの一貫した製造工程にこだわり、独自の個性を追求したチョコレートと言えます。パッケージやコンセプト、ストーリーにも注目が集まり、これまでにない新しいチョコレート文化が生まれつつあります。食のプロだけでなく、IT系やエンジニア出身者など、様々な分野から参入する人々が増えているのも特徴的です。
ビーントゥバーとクラフトチョコレートの違いは
ここでは、「ビーントゥバー」と「クラフトチョコレート」の違いについて、わかりやすく説明しています。
「ビーントゥバー」は、カカオ豆から直接チョコレートを作る製造プロセスを指します。大手メーカーでも、カカオ豆からチョコレートを一貫して作れば「ビーントゥバー」と呼ばれます。一方、「クラフトチョコレート」は、比較的小規模なメーカーが、ビーントゥバーの高品質な素材を使って、職人技で丁寧に作ったチョコレートのことを指します。
つまり、「ビーントゥバー」はチョコレート製造のプロセスを表す言葉で、「クラフトチョコレート」は、そのプロセスで作られた高品質なチョコレートの一種だと整理できます。製造規模や量の違いはあれど、両者は本来のチョコレートの価値を追求する点で共通しています。チョコレートの可能性を広げる、お互いに刺激し合う動きだと言えるでしょう。
ビーントゥバーチョコレートとは
ビーントゥバーチョコレートとは、原料のカカオ豆から直接チョコレートバーを一貫製造するスタイルのチョコレートです。従来のチョコレート製造では、複数の業者を経由して加工が行われますが、ビーントゥバー製法では、カカオ豆の受け入れから発酵、焙煎、粉砕、精製、コンシングまで、すべての工程を一つの工場で行います。そのため、カカオ豆本来の風味を最大限に引き出したチョコレートが生み出されるのが特徴です。一方で、高度な技術と手間がかかるため、価格が高めに設定されています。
クラフトチョコレートは、職人が小規模なアトリエで手作業により少量生産することが特徴的です。一方、ビーントゥバーチョコレートは、製造工程にフォーカスした概念で、カカオ豆から一貫してチョコレートが製造されていることを指します。つまり、カカオ豆を仕入れ、自社または個人でカカオ豆からチョコレートを作れば、ビーントゥバー製法と言えます。古くから存在する大手チョコレートブランドでも、自社でカカオ豆からチョコレートを作っている場合は、ビーントゥバーの範疇に入ります。
クラフトチョコレートとビーントゥバーとのニュアンスのちがい
クラフトチョコレートとビーントゥバーは、それぞれ独自の製造方法と歴史を持っています。ビーントゥバーは1800年代からヨーロッパの老舗チョコレート工房で作られてきた伝統的な製品で、カカオニブやカカオマスを使い、砂糖やミルクなどを加えて作られます。一方、クラフトチョコレートは比較的新しい動きで、高品質のカカオ豆を丁寧に焙煎し、石臼で丁寧に砕いて作られ、添加物を極力控えてカカオ本来の風味を引き出すことが重視されています。
私はジャーナリストとして、ヨーロッパの老舗チョコレート工房を取材する中で、アメリカ発のクラフトチョコレートムーブメントとは異なる、ビーントゥバーの伝統的な製法を垣間見ました。その違いに違和感を覚えながらも、クラフトチョコレートとビーントゥバーの区別を意識するようになりました。
クラフトチョコレートはカカオ豆の産地や品種によって味や香りに個性が現れ、ワインのようにテロワールの特徴が感じられる一方、ビーントゥバーはミルクやナッツ、ドライフルーツなどの素材を組み合わせることで、バラエティに富んだ味わいが楽しめます。製造工程の違いから、クラフトチョコレートはなめらかでコクのある食感が特徴的ですが、ビーントゥバーはサクサクした食感やカリカリとした歯ごたえも魅力のひとつとなっています。
ビーントゥバーでありクラフトチョコレートである店もある
カカオの魅力に取り憑かれた人々がいる。東京の下町に佇む小さな店「ココアベアーズ」の店主、田中さんはその一人だ。彼は産地の異なるカカオ豆を使い分け、発酵や焙煎の工程にもこだわり、カカオ豆の持つ繊細な味わいを最大限に生かしている。
店内に足を踏み入れると、カカオの芳香が漂う。ショーケースには個性的な板チョコが並ぶ。ラズベリーの酸味と甘味のバランスが絶妙なチョコや、カカオの苦味とナッツの香ばしさが魅力のチョコなど、多種多様だ。
「お客様に、チョコレート作りへの想いを味わっていただきたい」と田中さんは言う。この小さな店には、カカオ農家から運ばれた思いと、職人の心意気が詰まっている。ビーンツリーの葉陰で育った高級カカオ豆から作られたクラフトチョコレートの魅力に、多くの人が虜になっている。
まとめ
クラフトチョコレートは、素材そのものの味と香りを大切にし、手作業の技で個性的な味わいを生み出す職人魂溢れる逸品です。こだわりの製法から生まれる極上のチョコレートは、従来のチョコレートとは一線を画す魅力的な味わいで、本物を知る人々を虜にしています。チョコレート文化の新時代を切り開くクラフトチョコレートの興隆は、止まるところを知りません。