猫を飼っていると、知らず知らずのうちに日常の中でさまざまなリスクが潜んでいることに気づくことがあります。その中でも注意すべきなのが「猫のチョコレート摂取」です。チョコレートは犬だけでなく猫にとっても有毒で、場合によっては命に関わる危険性が伴います。この記事では、なぜチョコレートが猫にとって危険なのかを解説し、その後に猫が誤ってチョコレートを食べてしまったときに取るべき正しい対処法をご紹介します。
獣医が教える、猫がチョコレートを口にした際の症状と緊急対応
チョコレートは、多くの人々に愛されるスイーツですが、猫にとっては中毒を引き起こす危険な食べ物です。もし愛猫がチョコに触れてしまった場合、どのような症状が現れ、どのように対応すればよいのか、獣医師が詳しく説明します。
猫に中毒症状をもたらすチョコレート中のカフェインとテオブロミン
―猫がチョコレートを口にすると、何が要因で、どういった症状が出るのでしょうか?
チョコレートに含まれるテオブロミンやカフェインといったキサンチン誘導体が原因で、比較的短時間で猫に影響が現れることがあります。これらの成分は高濃度になると、中枢神経系を刺激し、猫が落ち着きを失ったり、呼吸が速まったり、神経過敏な状態になる可能性があります。
猫がチョコレートを口にしたかもしれない!? こんな兆候が現れたら病院へ急ごう
―猫がチョコレートを食べた場合、時間の経過とともに出てくる症状や危険性について教えてください。
猫がチョコレートを誤って摂取してしまうと、2~6時間ほどで以下のような症状を示すことがあります。
それに続いて、時間の経過とともに深刻な症状が現れることがあり、最悪の場合、命を落とすことすらあります。
症状の現れ方や進行速度には個体差がありますが、時間とともに現れる症状はどれも注意が必要なので、すぐに診療を受けるべきです。
―チョコレートと同じ成分を含む食品について教えてください。
コーヒーや紅茶、ウーロン茶、抹茶、ココア、コーラ、エナジードリンクなどが例に挙げられます。また、これらのフレーバーを持つアイスクリームやその他のスイーツ類にも注意が必要です。加えて、カフェインを含む人間用医薬品(鎮痛剤や風邪薬など)、眠気覚ましのドリンク、キャンディ、ガムなどにも気をつけましょう。
猫がチョコレートをなめたり、少し食べた場合の影響は?
―猫がチョコレートをなめたり少量を食べたりした場合、どのような影響がありますか? 様子を見るだけで問題ないでしょうか?
一般に、猫は甘さを感じにくい動物とされています。しかし、最近では甘いものを好む猫も珍しくないようです。猫にとって有害な物質の中でも、カフェインは特に迅速に症状が現れることがあります。そのため、少量でも誤って摂取した場合は、様子を見るだけでなく、すぐに病院での診察を受けるべきです。
危機的な規模
―どのくらいの摂取で中毒症状が出現するのでしょうか?
テオブロミンのLD50は猫の場合、体重1kgあたり200mgです。ただし、個体差があり、100~200mgと記載される場合もあります。
軽い中毒症状は猫の体重1kgあたり20mgで見られ、重度の症状は40~50mg、発作は60mgで引き起こされることが多いです。
チョコレートに含まれるテオブロミンとカフェインの量は、カカオの含有率に依存し、板チョコ1枚(50g)あたり以下の量になります。
カカオの含有量に応じたテオブロミンおよびカフェインの含有量
テオブロミン:550mg カフェイン:60mg
テオブロミン:495mg カフェイン:46.5mg
テオブロミン:135mg カフェイン:18mg(国産ミルクチョコレート)
※これらの数値は、独立行政法人 国民生活センターによる「高カカオをうたったチョコレート(結果報告)」(2008-02-06)に基づき、板チョコ1枚分に換算されています。
以上のデータからわかるように、高カカオチョコレートは通常のミルクチョコレートと比較して、テオブロミンおよびカフェインの含有量が高いことが特徴です。このため、特に注意が必要であり、例えば、体重が2kg未満の子猫が少量でも誤食または誤飲してしまうと、初期の中毒症状が出る可能性があることを意味します。
猫に中毒症状を引き起こすカカオの含有量に応じたチョコレートの摂取量
ホワイトチョコレートがテオブロミンやカフェインをほとんど含まないことが多いとされていても、猫の健康管理のために与えないことが大切です。
家庭でできる緊急時の対処法と応急処置
―愛猫がチョコレートを食べてしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
もしチョコレートを食べてしまったことがわかったら、すぐに動物病院に連絡することが大切です。診療時間外の場合は、夜間救急に連絡し、猫がチョコレートを食べたことを伝えましょう。自分で吐かせることは控えてください。危険を伴うため、専門家の指示に従うことが重要です。
また、誤食の詳細がわかる場合、「いつ」「何を」「どのくらい食べたか」をメモに残すと良いです。嘔吐や下痢がある場合は、それをビニール袋などに入れて持参することもあります。
常日頃から、緊急時に備えてかかりつけの医師の連絡先、休診日の場合の連絡先、夜間救急の連絡先をまとめておくことがおすすめです。ペット保険「PS保険」では、24時間365日、獣医師による電話相談サービスが利用可能で、困った時に迅速に対応できます。病院での対応について―愛猫が大量にチョコレートを食べた場合には、病院でどのように対応されるのでしょうか?誤食したチョコレートが胃の中にある場合、静脈に薬を投与し、催吐処置を行います。その後、必要に応じて皮下点滴や胃薬を使用することもあります。診療費は病院によって異なりますが、少なくとも1万円ほど用意しておくと安心です。チョコレートを摂取した場合、体内での吸収は遅いため、誤食に気づくのが遅れた場合や症状が出た場合には、対症療法(点滴や活性炭、精神安定剤など)を行うこともあります。この場合、数日の入院が必要なこともあります。※診療費は参考例であり、平均的な額を示すものではありません。
まとめ「猫にチョコレートは厳禁」伝統的に猫は甘いものに興味を示さないとされてきましたが、最近では好きな猫もいます。「猫だから大丈夫」と油断せず、危険な食品は猫が届かない場所に保管し、しっかりと蓋をしましょう。また「ホワイトチョコレートは安全」と誤解しがちですが、高脂肪食品であり、猫に膵炎のリスクがあるため、与えないようにしましょう。チョコレート以外にも、包装や銀紙を誤食し、腸に詰まることがありますので注意が必要です。
医療施設での対応方法
―愛猫が大量のチョコレートを摂取した場合、病院での対応はどのようになるのでしょうか?
まだ胃に残っている場合は、静脈から薬を投与し、吐かせる処置を施します。追加の対処として、必要に応じて皮下点滴や胃薬を処方することがあります。費用は動物病院によって異なりますが、このような処置であっても、最低でも1万円以上の準備をしておくと安心です。
また、誤って食べたものはゆっくり体内で吸収されます。気づくのが遅れ、症状が出た場合には、点滴や活性炭の投与、精神安定剤などによる対症療法が行われます。このときは、数日間の入院が必要になることもあります。
※診療費の例は一例です。平均や基準を示すものではなく、病院によって費用は異なります。
総括「猫にチョコレートを与えるのは避けるべき」
昔から、猫は甘い物には興味を持たないとされてきました。しかし最近では、甘い物に魅力を感じる猫が増加しているようです。そのため、「猫だから問題ない」という安心感を持たず、猫が中毒症状を起こすかもしれない危険な食品は、しっかりした蓋の付いた容器や、猫が開けられない棚に保管しましょう。
さらに、「ホワイトチョコレートやその派生製品は安全」と誤解している飼い主もいますが、これらは非常に高脂肪で、猫が食べると膵炎を引き起こすリスクがあります。与えないよう気をつけてください。加えて、チョコレート自体を食べなくても、包装や銀紙を誤って飲み込み、腸に詰まることも考えられますので、その点にも十分注意しましょう。