犬がチョコレートを食べることは、愛犬家にとって非常に心配な事態です。チョコレートにはテオブロミンという成分が含まれており、犬にとっては中毒症状を引き起こす可能性があります。愛犬の健康を守るためには、チョコレートの危険性を理解し、緊急時の対策を知っておくことが重要です。本記事では、犬とチョコレートの関係について詳しく解説し、愛犬がチョコレートを摂取した際の適切な対応方法についても紹介します。
犬がチョコレートを摂取した際の症状と応急処置について獣医が説明
チョコレートは犬にとって有害で、中毒症状を引き起こすリスクがあります。もしも愛犬が誤ってチョコレートを口にした場合、どのような症状が現れるか、そして適切な対処法について獣医師が詳しく説明します。
犬に中毒症状をもたらすチョコレート含有成分「テオブロミン」
チョコレートの主要成分であるカカオ豆には、「テオブロミン」という化合物があります。これはチョコレートの苦味を作り出す成分であり、人間にとってはリラックス作用やダイエット効果をもたらすことが知られています。
しかし、犬はテオブロミンを効率的に体内で処理できないため、中毒症状を引き起こす危険性があります。この物質はカカオ豆に存在するため、チョコレートに限らず、カカオパウダーを使用した菓子やアイスクリーム、飲み物などにも含まれ、これらが原因でチョコレート中毒を誘発する可能性があるため、注意が求められます。
中毒症状は数時間から半日後に現れることがあります
チョコレートによる中毒の症状は、摂取後すぐには出現せず、通常は食べてから4時間から12時間経過した後に現れます。
犬がチョコレートを少し口にした場合の影響は?
犬がチョコレートを摂取したからといって、必ずしも毒性が現れるわけではありません。チョコレートの種類や犬の性格によって、中毒の症状が現れることもあれば、全く問題がないこともあります。したがって、犬がチョコレートを少しなめたり、少量食べたりした場合、問題ないことが多いです。24時間経過しても犬に異常が見られない場合は、通常は特別な治療は必要ありません。
犬が摂取すると危険なチョコレートの量
ASPCA APCC(アメリカ動物虐待防止協会 動物中毒管理センター)の統計(参考文献:Chocolate intoxication S Gwaltney-Brant - Vet Med, 2001 - aspcapro.org)によれば、テオブロミンが犬にとって致命的になる量は、その体重1kgあたり100から200mgとされています。
しかし、致死量に達しない場合でも、体重1kgあたりテオブロミン20mgの摂取で軽症が、40から50mgで重症の症状が発生し、摂取量が60mgに達するとけいれんを起こす可能性があると報告されています。
犬の体重1kgごとのテオブロミンの摂取量が引き起こす症状
なお、テオブロミンの量はチョコレートの種類ごとに異なります。商品ごとに1gあたりのテオブロミン量は変わりますが、おおよその目安は以下の通りです。
小型犬がミルクチョコ1枚を食べると深刻な中毒症状を引き起こす恐れ
これらを考慮すると、重さ3kgの小型犬がミルクチョコレートの板チョコ(50〜60g)を1枚、またはビターチョコレートの板チョコを半分食べてしまうと、深刻な症状が出る恐れがあります。
ペットが口にしたチョコのタイプと分量を調べ、直ちに動物病院へ
犬がチョコレートを食べてしまった際、自宅での応急処置は難しいです。まず、食べたチョコレートの種類と量を確認することが重要です。もしテオブロミンの摂取量が犬の体重1kgあたり20mgを超える場合は、症状が出ていなくてもすぐに動物病院を訪れるべきです。
最低24時間、愛犬を注意深く観察すること
犬が少量のテオブロミンを摂取した場合、中毒の兆候が現れるリスクは低いですが、症状の発現には時間がかかることがあります。したがって、愛犬の状態を少なくとも24時間注意深く観察することが重要です。
家庭内でチョコレートを無理に吐かせるべきではありません
犬がチョコレートを食べてしまった際、食塩やオキシドールで吐かせようとすることがありますが、これらの方法は犬の健康を損なう恐れがありますので避けてください。
嘔吐誘発や胃内容除去を実施する
犬がチョコレートを食べてから時間があまり経っていない場合、病院では吐かせる処置が施されます。もし吐かせることが困難であったり、大量に摂取して中毒症状が出る可能性がある場合には、胃洗浄が検討されます。
テオブロミンには特定の解毒剤がないため、中毒の兆候が現れた際には、点滴や吐き気止めといった対症療法に頼ることになります。
催吐処置には1万円程度、また、胃洗浄を行う場合の費用は約2万5,000円が必要となることがあります。
※上記の診療費は一例であり、実際の費用は病院によって異なる場合があります。
まとめ「犬にチョコレートを与えてはいけない理由」
チョコレートは私たちの日常に溶け込んでいる食品で、そのため家庭内で犬が誤って摂取し、チョコレート中毒に陥ることがしばしばあります。犬種や体重、そしてチョコレートの種類によっては、ほんの少しの摂取でも深刻な中毒症状を引き起こすことがあるので、十分な注意が求められます。