日本でリンゴが最初に記録されたのは平安時代中頃の918年であり、これは中国から伝わった「和リンゴ」と呼ばれる小さな野生種でした。北信濃（現在の長野県）では「高坂りんご」として知られ、盆の時期には善光寺で売られ、仏前に供えられていました。この和リンゴは観賞用として主に存在し、江戸時代にはお菓子としても食べられていたとされていますが、当時の味わいは現在のリンゴに比べて酸味が強かったと考えられています。和リンゴは、中国由来の品種が基になっており、味や外観において特有の特徴がありました。本格的なリンゴ栽培が日本で始まったのは1871年、北海道開拓使次官がアメリカから75品種の苗木を持ち帰ったことがきっかけです。このように、日本でのリンゴ栽培はヨーロッパやアメリカに比べてかなり遅れて始まったと言えますが、その後の発展により、日本のリンゴ栽培も活発化しました。

りんごの原産地は、中国の天山山脈やコーカサス地方であると考えられています。りんごの栽培は有史以前から始まっており、8000年前の炭化したリンゴがトルコで発見されたことからもその歴史の深さがわかります。また、紀元前1300年にはエジプトのナイル川デルタ地帯に果樹園が存在し、リンゴ栽培が行われていたことが示されています。ギリシャ時代には、リンゴの野生種と栽培種を区別し、接ぎ木を用いた栽培技術が文書として記録されていました。ローマ時代には、リンゴの品種に関する書籍が出版され、さまざまな用途に応じて使い分けられていたことが伺えます。このように、リンゴは古代から多様な文化や地域で栽培され、重要な果物としての地位を確立してきました。

リンゴは古代から現代に至るまで、広範囲で栽培され、品種改良も重ねられ、また神話や伝説にも登場する等、人類との深いかかわりを持つ一方で、その甘酸っぱさやビタミンCの豊富さから健康食品としての需要も高いフルーツです。このようにリンゴの歴史は深く、その一つ一つが今日のリンゴの普遍的な人気を生んできたと言えるでしょう。