健康志向の高まりとともに、ベジタリアンやヴィーガンという言葉を耳にする機会が増えました。どちらも菜食中心の食生活を送るスタイルですが、その違いはご存知でしょうか？ベジタリアンは一般的に肉や魚を避ける一方、ヴィーガンはそれに加え、卵や乳製品、蜂蜜といった動物由来の食品も一切摂取しません。この記事では、食生活だけでなくライフスタイルにも及ぶ、ベジタリアンとヴィーガンの違いを徹底解説。それぞれの定義や種類、歴史、そして日本における現状まで、幅広くご紹介します。多様な食の選択肢がある現代において、それぞれの違いを理解することは、互いを尊重し、より豊かな食生活を送るための第一歩となるでしょう。
ヴィーガンとベジタリアンの根本的な違いと、広がるライフスタイル
ヴィーガン（ビーガン）とベジタリアンという言葉をよく耳にするようになりましたが、その違いをはっきりと理解しているでしょうか？一般的なベジタリアンは肉や魚を口にしませんが、ヴィーガンはそれに加えて、卵、乳製品、蜂蜜も摂取しない、よりストイックな菜食主義を指します。ヴィーガンは、日本ではまだ広く知られていませんが、海外では健康や美容、心のケアのために生活に取り入れる人が増えています。ベジタリアンとヴィーガンは、どちらも菜食が基本である点は共通していますが、定義や特徴には違いがあり、同じものとは言えません。特にヴィーガンの中には、動物由来の素材を使った衣類や日用品を避けるなど、食生活だけでなくライフスタイル全体を徹底する人もいます。多様性が尊重される社会になりつつある現代、食事についても個人の考えをオープンにする機会が増えています。会食の相手がベジタリアンやヴィーガンの場合、それぞれの食の特性を尊重するためにも、その違いや背景を理解しておくことが大切です。この記事では、ベジタリアンとヴィーガンの違い、それぞれの歴史、多様な種類、現在の人口、そして日本での状況などを詳しく解説します。
ベジタリアンとは？語源、歴史、現代における多様性
ベジタリアン（Vegetarian）という言葉は、ラテン語の「vegetus（ベジェトゥス）」に由来し、「健全な」「活き活きとした」「元気な」という意味を持ちます。1847年にイギリスでベジタリアン協会が設立された際に、初めて使われ始めました。この頃から近代ベジタリアン運動が始まり、「肉や魚を食べないこと」、そして「卵や乳製品の摂取は個人の判断に任せること」が基本的な考え方として広まりました。穀物、野菜、豆類を中心に食べることで、宗教的な信念や生命に対する考え方を尊重するライフスタイルとして発展したのです。21世紀の現代では、近代ベジタリアン運動の頃よりもさらに広い意味で使われるようになっています。菜食を中心とし、卵や乳製品の摂取は個人が選択するという基本的な考え方は変わっていませんが、ベジタリアンの種類は細分化され、「肉は食べないが魚は食べる」、「鶏肉は食べる」といった柔軟なスタイルも存在します。多様性が重視される現代において、ベジタリアンの定義が柔軟になることも、多様性の一つとして受け入れられています。
ベジタリアンに向いているのはどんな人？
ベジタリアンというライフスタイルは、完全に菜食のみで生活するというわけではなく、柔軟な考え方を受け入れられる人にとって取り組みやすい選択肢の一つです。現代では様々な種類のベジタリアンが存在しており、厳格すぎず、ある程度の基準の中で、宗教的な理由や肉食に対する考え方を考慮し、自分の意思で菜食を中心とした食生活を送れる人が向いています。それぞれのタイプに合わせた柔軟な食生活を送ることで、健康や倫理観に基づいた食の選択を続けやすくなります。
多様なベジタリアンの種類と食事内容
ベジタリアンといっても、その食生活や許容される食材によって多くのタイプに分けられます。アレルギーや病気などの健康上の理由、自身の考え方、環境問題への配慮、宗教、スピリチュアルな理由など、ベジタリアンになる背景は様々であり、それに応じて多様なカテゴリーが存在します。
ラクト・ベジタリアン
ラクト・ベジタリアンは、肉や魚、卵は口にしないものの、野菜や果物に加えて乳製品を摂取する食生活を送る人々のことを指します。「ラクト」はラテン語で「ミルク」を意味し、牛乳、ヨーグルト、チーズといった乳製品が食事に取り入れられます。この食スタイルは世界各地で見られますが、特にインドにおいては、牛を神聖な存在として敬う文化が根強く、乳製品を神からの恵みとして積極的に食す人が多いという文化的背景があります。ラクト・ベジタリアンは、動物性の食品を避ける一方で、乳製品から良質なタンパク質やカルシウムといった栄養素を補給できるため、比較的バランスの取れた食生活を維持しやすいと言えるでしょう。
オボ・ベジタリアン
オボ・ベジタリアンは、肉、魚介類、乳製品は食べない一方で、卵と植物性食品を食べるベジタリアンのことです。「オボ」はラテン語で「卵」を意味します。卵が許容される背景には、鶏を傷つけずに得られるという考え方があります。しかし、魚卵は親魚を傷つけるため、摂取しない傾向にあります。卵は、植物性食品だけでは不足しがちな必須アミノ酸やビタミンDなどの栄養素を補うことができるため、完全菜食主義と比較して栄養面での選択肢が広がります。
ラクト・オボ・ベジタリアン
ラクト・オボ・ベジタリアンは、肉や魚介類は避けるものの、乳製品と卵は食べるベジタリアンを指します。オボ・ベジタリアンと同様に、一般的に魚卵は食べません。食事が比較的制限されないため、植物性の食品に加えて、乳製品や卵からタンパク質、カルシウム、ビタミンB群といった栄養素をバランス良く摂取でき、栄養管理がしやすいのが特徴です。このタイプはベジタリアンの中でも比較的取り組みやすく、多様な食材を選べるため、ベジタリアンへの移行を考えている方や初心者にもおすすめです。
ペスコ・ベジタリアン（ペスカタリアン）
ペスコ・ベジタリアンは、肉類は食べませんが、魚介類を食べるベジタリアンであり、「ペスカタリアン」とも呼ばれます。乳製品や卵の摂取は可能です。特に日本では、魚をよく食べる食文化に馴染みやすく、多くの人に受け入れられています。ただし、動物の命を奪うという点では、厳格なベジタリアンの定義からは外れると考える人もいます。魚介類からは、良質なタンパク質や健康に良いとされるオメガ3脂肪酸を摂取できるため、健康面でのメリットも期待できます。
ポーヨー・ベジタリアン（Pollo-Vegetarian）
ポーヨー・ベジタリアンは、赤身の肉（牛肉、豚肉、羊肉など）や魚介類は食べないものの、鶏肉や七面鳥といった家禽類、そして卵や乳製品は摂取するベジタリアンスタイルです。動物性食品を一部取り入れるため、厳密なベジタリアンの定義からは外れるという見方もあります。赤身肉を避けることは意識しつつも、完全に肉食を断つのが難しいと感じる方や、健康上の理由から鶏肉を積極的に摂りたいと考える方に選ばれる傾向があります。
オリエンタル・ベジタリアン（Oriental-Vegetarian / オリエンタル・ヴィーガン）
オリエンタル・ベジタリアン、またはオリエンタル・ヴィーガンは、肉、魚、乳製品、卵といった動物性食品を一切摂取しないという点ではヴィーガンと同様です。しかし、仏教における「五葷」と呼ばれる、独特の強い香りを放つ野菜（ニンニク、ニラ、ラッキョウ、タマネギ、ネギ）とアルコール飲料を避けるという特徴を持ちます。これは、これらの食品が禅やヨガなどの修行の妨げになると考えられているためで、精進料理のルーツとも言える食生活です。心身の清浄化や精神的な修養を目的とした、より厳格な菜食主義の一形態と捉えられます。
セミ・ベジタリアンまたはフレキシタリアン（Semi-Vegetarian / Flexitarian）
セミ・ベジタリアンは、「フレキシブル（柔軟な）」と「ベジタリアン」を組み合わせた「フレキシタリアン」とほぼ同じ意味合いで用いられるスタイルです。可能な限り肉や魚を避ける生活を送りながらも、状況や体調に応じて、これらの食品を摂取する場合があります。基本的には菜食中心としつつ、時折、動物性食品を口にするというタイプです。健康志向や環境問題への意識の高まりから、パートタイム・ベジタリアンとして世界的に広がりを見せています。完全な菜食主義には抵抗があるものの、肉の摂取量を減らしたいと考える人々にとって、取り組みやすく継続しやすい現実的な選択肢として注目されています。
ヴィーガンとは？ 完全菜食主義の定義とライフスタイル
ヴィーガンはベジタリアンの一種であり、数ある菜食主義の中でも特に厳格な基準を持つスタイルで、「完全菜食主義」とも呼ばれます。ヴィーガンという言葉は、1944年11月にイギリスで設立されたヴィーガン協会（The Vegan Society）によって提唱されました。（出典: The Vegan Society公式サイト『History』, URL: https://www.vegansociety.com/about-us/history, 2024-06-01）ヴィーガンは、肉や魚はもちろんのこと、卵や乳製品、さらにはちみつといった、あらゆる動物性食品を一切摂取しません。調理に使う油も植物由来のものに限定し、動物性の成分が含まれる出汁なども避けるのが一般的です。さらに、ヴィーガンのライフスタイルは食生活だけに留まりません。「エシカル・ヴィーガン」と呼ばれる人々は、動物の権利を尊重する考えから、動物由来の素材を使った衣類（革製品や毛皮など）や日用品の使用も避けるなど、徹底したアニマルライツと環境保護の精神に基づいた生活を送る傾向があります。これは、動物の搾取を可能な限り減らし、動物の命と権利を尊重することを目的としたものであり、単なる食事制限に留まらず、より包括的な生き方を追求するものです。
ヴィーガンという生き方に向いているのはどんな人？
徹底した菜食主義を特徴とするヴィーガニズムは、動物の権利擁護や環境保護の思想と深く結びついています。したがって、あらゆる生命を尊重する価値観を持つ人や、ヴィーガンの生活様式が環境保護に貢献すると信じる人にとって、それは有意義な選択肢の一つとなり得るでしょう。さらに、動物由来の食品や製品を避けることで、宗教的な理由や健康上の懸念が軽減されることもあります。例えば、乳製品や卵にアレルギーを持つ人や、特定の食生活を検討している人にとって、ヴィーガンは選択肢の一つとなり得ます。個人の信念に基づき、食生活のみならず、ライフスタイル全体を通して動物福祉や環境問題に積極的に関わりたいと願う人にとって、ヴィーガンは非常に意義深い選択肢となるでしょう。
多様な広がりを見せるヴィーガンの世界
ヴィーガンは、動物性食品を一切摂取しないという点で共通していますが、その実践方法や重視するポイントによって、さまざまな種類が存在します。それぞれのヴィーガンが大切にする価値観や、具体的な取り組み方によって、多種多様なスタイルが生まれています。
エシカル・ヴィーガンという選択
エシカル・ヴィーガンは、単に食事から動物性食品を排除するだけではありません。動物の倫理的な取り扱いと福祉を最優先に考え、生活の中で可能な限り動物由来の製品を避けることを徹底します。具体的には、肉、魚、卵、乳製品、蜂蜜などの食品はもちろんのこと、革製品、毛皮、ウール、シルクなどの衣料品、動物実験を経て開発された化粧品、動物由来の成分が含まれる日用品なども対象となります。動物の搾取をできる限り減らし、動物の命と権利を尊重することを目的としており、動物愛護の精神を日々の生活のあらゆる側面に反映させようとする姿勢が特徴です。
ロー・ヴィーガンという食スタイル
ロー・ヴィーガンは、生の野菜、果物、ナッツ、種子などを中心に摂取し、食品を加熱する場合でも48℃以下に温度を抑える食生活を指します。食品を48℃以上に加熱しないことを重視し、食品に含まれるビタミンや酵素といった栄養素を最大限に摂取することを目指します。そのため、基本的には加熱しなくても（あるいは低温での加熱でも）安全に食べられる食材を選ぶことが多く、中には一切加熱せずに生のまま食べるロー・ヴィーガンも存在します。動物性食品や加工食品を避け、健康や美容への意識が高い人々に支持される傾向があります。食品が本来持つ栄養価を最大限に引き出すことを目的とした食スタイルです。
ホールフード・ヴィーガン
ホールフード・ヴィーガンは、できる限り加工されていない、自然なままの植物性食品を積極的に摂取するヴィーガンの形態です。精製された砂糖や小麦粉、加工食品、精製油などの摂取を極力避け、未精製の穀物、新鮮な野菜、果物、豆類といった食品をまるごと食べることを重視します。医学的なエビデンスに基づいた健康的な食生活として注目されており、その考え方が日本でも広まりつつあります。主な目的は、病気の予防や健康増進であり、食品添加物や人工的な成分を避けることに重点を置いています。
ダイエタリー・ヴィーガン
ダイエタリー・ヴィーガンは、食生活において動物性の食品を一切摂取しないヴィーガンのことです。具体的には、肉類、魚介類、卵、乳製品、蜂蜜などを排除します。ただし、衣類や生活用品に関しては、必ずしも動物由来のものを避けるとは限りません。多くの場合、健康や美容への意識が高い人が、食事が身体に与える影響を重視してヴィーガン食を選択します。倫理的な側面よりも、食事がもたらす効果に焦点を当てている点が特徴です。
フルータリアン
フルータリアンは、果実食主義者とも呼ばれ、主に果物や種子類を食べて生活するスタイルを指します。動物の命を尊重するだけでなく、植物の命も極力奪いたくないという考えから、この食生活を選ぶ人が多くいます。果実であれば、植物本体の生命を奪うことなく収穫できるという考え方も、その背景にあります。数ある菜食主義の中でも、特に厳格な食生活であり、自然との調和を大切にするライフスタイルと言えるでしょう。
パートタイムヴィーガン
パートタイムヴィーガンは、特定の時間帯や期間だけヴィーガン食を取り入れるという柔軟なスタイルです。例えば、1日の中で1食だけをヴィーガンにしたり、週に数日、月に数日だけヴィーガン食にするなど、自身のライフスタイルに合わせて自由に調整できます。「基本は雑食、時々ヴィーガン」というように、無理のない範囲で菜食を取り入れたい人や、ヴィーガン初心者にとって取り組みやすい方法です。完全にヴィーガンに移行するための準備段階としても有効です。
ベジタリアンとヴィーガンの世界の人口と日本の割合
近年、世界中でベジタリアンやヴィーガンを選択する人が増えています。国土交通省のデータによれば、2018年時点で世界のベジタリアン人口は約6.3億人に達し、特に欧米諸国を中心に年間約1％の割合で増加しています。ヴィーガンに関しても、「Veganuaryキャンペーン」という世界的な取り組みにおいて、2019年には56万人以上、2020年にはさらに40万人近くが参加登録し、ヴィーガンの実践を試みました。これらのデータから、少なくとも100万人規模の人々がこのキャンペーンを通じてヴィーガンの生活を経験したことがわかります。背景には、動物愛護や環境保護への意識の高まり、そして健康志向の強まりが考えられます。
日本におけるベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアンの人口
Vegewelが2023年1月に実施した調査「第4回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査」によると、ベジタリアンの食生活を送る日本人は4.5%、ヴィーガンは2.4％という結果が出ています。過去のデータと比較すると、ベジタリアンの食生活を送る人の割合は、2017年の3.8％から2019年には4.8％に増加したものの、2021年には3.8％、2023年には4.5％と変動しています。一方、ヴィーガンの割合は2017年の1.0％から2019年には2.1％、2021年には2.2％、2023年には2.4％と、緩やかな増加傾向にあります。ベジタリアンやヴィーガンを自認する人はまだ少数派ですが、意識的に動物性食品を減らす「フレキシタリアン」は約20％を占めており、日本国内でも植物性食品への関心が高まっていると考えられます。日本には伝統的に精進料理といった菜食中心の食文化があり、無意識のうちにベジタリアンに近い食生活を送っている人もいるかもしれません。
日本の食文化とベジタリアン・ヴィーガン：精進料理の歴史と現代的価値
精進料理とは、原則として肉や魚介類などの動物性食材を使わず、野菜、穀物、海藻、豆類、木の実、果物といった植物性食材のみを用いて調理された料理です（様々な解釈があります）。「精進」とは、仏教の教えに基づき、修行に励むことを意味し、修行僧がその生活を支えるための食事として発展しました。今日では、その質素でシンプルな味わいが、健康的な食事として国内外から注目されています。また、日本の食文化との深い結びつきも特徴の一つです。およそ150年前の明治維新を迎えるまで、日本の一般的な食事は、ご飯に一汁一菜という簡素なもので、特別な日に魚を食べる程度でした。これはまさにベジタリアンの食生活に近く、日本人が古くから植物性の食品を中心とした食生活を送ってきたことを示唆しています。精進料理は、東洋のベジタリアニズムの原点とも言える食文化であり、現代のヴィーガンやベジタリアンにとっても、その歴史的背景と精神性において共感できる要素を多く含んでいると言えるでしょう。
ヴィーガンが避ける特定の食品：白砂糖とその代替品
ベジタリアンやヴィーガンの中には、意外かもしれませんが、白砂糖を避ける人もいます。主な理由としては、白砂糖の精製過程において、「骨炭」という牛の骨を焼いたものが使用される場合があるためです。これは動物由来の成分であり、ヴィーガンの考え方にはそぐわないと判断されます。そのため、白砂糖の代わりに、黒糖、メープルシロップ、甜菜糖など、動物性の成分を含まない植物性の甘味料がよく用いられます。ヴィーガン向けの食品を選ぶ際には、このように普段見過ごしがちな原材料まで確認することが大切です。食品表示を丁寧に確認することで、自身のライフスタイルに合った選択をすることが可能になります。
ヴィーガン食材選びのポイントと注意点
ヴィーガンは、動物に由来する食品を一切口にしません。これは、直接的な食品だけでなく、製造過程で動物性のものが使われている場合も同様です。植物性の食材であれば基本的に何でも食べられますが、特に加工食品を選ぶ際には注意が必要です。ヴィーガン認証マークがあれば安心ですが、そうでない場合は原材料表示をしっかりと確認しましょう。メーカーの公式サイトで詳細情報を調べるのも有効な手段です。例えば、出汁や調味料、パン、お菓子などには、動物性のエキスや乳製品、卵などが含まれていることがあります。外食時には、お店の方に原材料について質問することも大切です。最近はヴィーガンメニューを提供するレストランが増えていますが、事前に情報を集めておくことをおすすめします。
ヴィーガン生活がもたらす影響：メリット、デメリット、栄養、環境への貢献
ヴィーガンという生き方は、自身の健康だけでなく、地球環境や動物愛護の観点からも注目されています。しかし、実践する上では、注意すべき点もいくつか存在します。
ヴィーガン生活のメリットとデメリット
ヴィーガン生活を送ることで、様々な健康上の利点が得られる可能性があります。植物性食品が中心の食生活は、食物繊維が豊富で、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量を減らすことができるため、心臓血管系の疾患リスクを軽減したり、体重管理を助けたりする効果が期待できます。さらに、抗酸化物質やフィトケミカルを多く摂取できるため、免疫力の向上や慢性的な病気の予防にもつながる可能性があります。一方で、動物性食品を完全に排除することにこだわりすぎると、誤って口にしてしまった際に罪悪感を抱いたり、自分を責めたり、他者を批判したりする気持ちが生じ、精神的な負担になることもあります。ヴィーガン生活を前向きに続けるためには、正しい知識を持ち、自分の体と心の声に耳を傾け、バランスを意識して食事をすることが大切です。柔軟な考え方で、無理のない範囲で取り組むことが、持続可能なライフスタイルにつながります。
ヴィーガン食における栄養不足のリスクとその対策
ヴィーガン食では、特に栄養バランスと摂取量に注意が必要です。動物性食品を摂取しないことで、ビタミンB群（特にB12）、鉄分、カルシウム、ビタミンD、亜鉛、オメガ３脂肪酸、そしてタンパク質が不足しがちになります。これらの栄養素は、穀物、野菜、豆類、果物、海藻、ナッツ、きのこなどをバランス良く食べることで、ある程度補うことができます。例えば、ビタミンB12は栄養酵母や強化食品、サプリメントで補給できます。鉄分はレンズ豆やほうれん草、カシューナッツなどから、カルシウムは強化植物性ミルクや豆腐、小松菜などから摂取するのがおすすめです。植物性のオメガ3脂肪酸は、亜麻仁やチアシード、クルミなどに豊富に含まれています。しかし、場合によっては、サプリメントで不足しがちな栄養素を補うことも、健康的なヴィーガン生活を送る上で必要な選択肢となります。専門家のアドバイスを参考にしながら、自分の健康状態に合わせた栄養管理を行うことが重要です。
ヴィーガン食が環境へ与える影響と貢献
植物性食品中心の食生活は、地球環境の保護に大きく貢献すると考えられています。ある研究によれば、菜食主義者の二酸化炭素排出量は、肉食中心の人に比べて約半分に抑えられ、石油や水の消費量は約1/11、土地の使用量は約1/18に過ぎないとされています。畜産業は、温室効果ガスの排出、大量の水資源消費、森林破壊、生物多様性の損失など、深刻な環境問題の主要因の一つです。私たちが食生活を植物性中心にシフトすることで、これらの問題解決に大きく貢献できる可能性があります。2024年のパリ五輪では、プラントベースの食事オプションを増やし、環境負荷の高い動物性食品の消費を抑制する方針が掲げられています。これは、プラントベースの食スタイルが、環境保護において重要な役割を果たすという世界的な認識の高まりを示しています。
まとめ
ベジタリアンとヴィーガンはしばしば混同されますが、その定義、実践内容、そして背景にある思想は異なります。ベジタリアン、ヴィーガンそれぞれの食生活を選ぶ動機は、個人の価値観や信念によって異なり、健康、倫理観、動物愛護、環境保護など多岐にわたります。ヴィーガンになる人は、最初から厳格なヴィーガン生活を送るよりも、ベジタリアンから段階的に移行するケースが多いようです。個人の価値観やライフステージに合わせて食のスタイルを柔軟に選択できることが重要です。大切なのは、どの食スタイルが優れているかを議論することではなく、食の選択が宗教、健康、動物の権利、環境保護など、多様な理由に基づいていることを理解し、互いを尊重することです。パリ五輪の組織委員会がプラントベースの食事オプションを推進しているように、プラントベースの食生活は世界的に広がりを見せており、単なるトレンドに留まらず、持続可能な未来への貢献という重要な側面を持っています。このような食の多様性を積極的に取り入れ、誰もが楽しく食事を共有できる社会を目指しましょう。
ヴィーガンとベジタリアンの最も大きな違いは何ですか？
ヴィーガンとベジタリアンの最も大きな違いは、摂取を避ける動物性食品の種類にあります。ベジタリアンは一般的に肉や魚介類を避けますが、卵や乳製品は摂取する場合があります。一方、ヴィーガンは肉、魚介類に加え、卵、乳製品、蜂蜜など、動物に由来する食品を一切摂取しない「完全菜食主義者」です。さらに、ヴィーガンの中には、動物由来の衣類や日用品の使用も避ける人もいます。
ベジタリアンにはどのような種類がありますか？
ベジタリアンには様々なタイプが存在します。代表的なものとしては、乳製品を摂取する「ラクト・ベジタリアン」、卵を摂取する「オボ・ベジタリアン」、乳製品と卵の両方を摂取する「ラクト・オボ・ベジタリアン」、魚介類を食べる「ペスコ・ベジタリアン」、鶏肉などの家禽類を食べる「ポーヨー・ベジタリアン」、特定の刺激の強い野菜やアルコールを避ける「オリエンタル・ベジタリアン」、そして状況に応じて動物性食品を摂取する柔軟な「セミ・ベジタリアン」（または「フレキシタリアン」）などが挙げられます。
ヴィーガン食で栄養が偏る可能性は？ 対策をご紹介
ヴィーガン食は、周到な計画なしに進めると、特定の栄養素が不足する懸念があります。特に注意が必要なのは、ビタミンB12、鉄分、カルシウム、ビタミンD、亜鉛、オメガ3脂肪酸、そしてタンパク質です。栄養バランスを考慮した食事を心がけることが重要で、全粒穀物、豆類、ナッツ、種実類、緑黄色野菜、海藻などを積極的に摂りましょう。ビタミンB12は植物性食品からの摂取が難しいため、サプリメントや添加された食品からの摂取が推奨されます。鉄分はビタミンCと一緒に摂取することで吸収率が向上します。
なぜ白砂糖はヴィーガンではないと言われることがあるのですか？
白砂糖がヴィーガンではないとされる理由の一つは、製造過程に動物性のものが使用される場合があるためです。一部の白砂糖は、精製時に牛の骨を炭化させた「骨炭」をフィルターとして使用することがあります。骨炭は動物由来であるため、完全菜食主義であるヴィーガンの考え方とは相容れません。そのため、ヴィーガンの方は、骨炭を使用していない砂糖（オーガニックシュガーやビート糖など）や、メープルシロップ、アガベシロップなどを代替品として選ぶことがあります。
精進料理はヴィーガン食と言えますか？
日本の伝統的な精進料理は、肉や魚介類を一切使わないため、基本的にはベジタリアン向けの料理です。多くの場合、乳製品や卵も使用しないため、ヴィーガンの食事としても適しているものが多いです。ただし、一部の精進料理では、出汁に鰹節が使われていたり、植物性ではない油が使用されている場合があり、完全にヴィーガン対応とは言い切れません。しかし、現代のヴィーガン食は、精進料理から着想を得て、その原則を参考に調理されることも多くあります。