貧血は現代社会でよくみられる栄養不足の一つです。原因は鉄分が豊富な食材の摂取不足が大きな要因となっています。鉄分が不足すると、赤血球が作られにくくなり、全身に酸素を運ぶことができなくなります。鉄分は血液中のヘモグロビンやミオグロビンの構成成分として重要な役割を果たしています。そのため、疲労感や頭痛、めまいなどの症状が出ます。ところが、鉄分を意識的に摂取することで、簡単に貧血を予防することができるのです。
一部の食品には即効性がありますが、他の食品は継続的な摂取が必要です。今回は、鉄分豊富な食材を使った簡単な料理をご紹介します。ぜひ毎日の食事に取り入れて、健康的な生活を送りましょう。
貧血とは
貧血とは、赤血球やヘモグロビンの量が正常より少なくなった状態を指します。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ重要な役割を果たしており、その量が不足すると、体内の酸素供給が不十分になります。これにより、疲労感、めまい、息切れなどの症状が現れることがあります。貧血は緩やかに進行することが多く、初期段階では自覚症状がないこともあります。しかし、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたすことがあります。貧血の予防には、鉄分を含む食材をバランスよく摂取することが重要です。
貧血はなぜ起きる?健やかな生活を送るための鍵、体内の赤血球
血液中のヘモグロビン濃度が低下し、組織への酸素供給が不足した状態を貧血といいます。頭痛、息切れ、疲労感などの症状が現れやすくなります。貧血にはさまざまな種類がありますが、最も多いのが鉄欠乏性貧血です。
鉄の食事摂取基準に関する推奨量は年齢や性別ごとに異なり、特に成長期の若者や月経のある女性における鉄の必要量が高いことが強調されています。
食事から十分な鉄分が摂取できず、体内の鉄分が失われることで起こります。鉄分の需要が高まる思春期や妊娠中、月経や消化管出血などで鉄分が失われると、貧血状態に陥りやすくなります。適切な食事と栄養素の摂取は貧血予防に非常に重要です。鉄欠乏性貧血以外には、ビタミンB12や葉酸の欠乏、赤血球の破壊によるものなどがあります。慢性的な貧血が続くと、さじ状爪、舌炎、嚥下障害などの症状が現れる可能性もあります。
鉄分豊富な食材で貧血対策
貧血を改善するためには、日々の食事で必要な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。さらに、鉄分を豊富に含む食材を積極的に取り入れることが推奨されています。
成人男性の1日の鉄分摂取推奨量は7.0〜7.5mg、成人女性(月経がある場合、妊娠・授乳をしていない場合)は10.5〜11.0mgです※。※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
鉄分には吸収率の高いヘム鉄と、吸収率の低い非ヘム鉄の2種類があります。日本人の鉄分摂取量は非ヘム鉄の割合が高いと報告されていますが、貧血の改善や予防のためには、ヘム鉄を豊富に含む食材を適切に組み合わせた、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
また、香辛料類も鉄分の供給源として見逃せません。普段の食事に取り入れることで、栄養素のバランスを考慮することができます。
また、植物性食品も鉄分の供給源として重要であり、小松菜やがんもどき、豆乳などが具体例として挙げられます。植物性食品と動物性食品をバランスよく摂取することが、貧血対策において重要です。
鉄分を効率よく吸収できる食材
鉄分の吸収を促進する食材として、野菜、果物、そして牛乳が挙げられます。
野菜や果物に豊富に含まれるビタミンCやクエン酸は、体内での鉄の吸収率を高める働きがあります。さらに、小松菜、がんもどき、豆乳などの植物性食品も鉄分の供給源として重要です。
一方、牛乳やチーズなどの乳製品に含まれるカゼインというタンパク質は、消化の過程でCPPと呼ばれる物質に変わります。CPPはミネラル質と結びつきやすい性質があり、鉄分の吸収を助ける働きがあります。また、タンパク質自体がヘモグロビンを構成する重要な栄養素でもあるため、積極的な摂取が推奨されます。
鉄分豊富な食材で貧血を予防しよう
貧血の予防と改善には、鉄分を豊富に含む食材を積極的に摂取することが重要ですが、同時に食べる食材によっては鉄の吸収率が低下するリスクがあります。貧血対策において注意を払うべき主な食材を紹介します。
即効性は期待できないかもしれませんが、これらの食材を継続的に摂取することが貧血予防には重要です。
コーヒー、紅茶、緑茶などには、鉄の吸収を阻害する作用を持つ「タンニン」が含まれています。これらの飲み物を多量に摂る習慣がある人は、食事の前後に飲む分を水などに代えるのが賢明かもしれません。
玄米に含まれるフィチン酸、また、芋類、ごぼう、キノコ類に含まれる不溶性食物繊維は、鉄と一緒に摂取すると吸収率が低下するとされています。過剰摂取でない限り深刻な影響はありませんが、貧血が気になる場合は控えめな摂取に留めることをおすすめします。
鉄分は食べ物によって吸収率が異なる!「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違いを理解しよう
食品に含まれる鉄分には、動物由来の「ヘム鉄」と植物由来の「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は体内への吸収率が10~30%と高く、同時に摂った他の食品の影響を受けにくいのが特徴です。一方、非ヘム鉄は吸収率が5%以下と低めですが、食べ合わせによって吸収率を上げることができます。しかし、吸収を阻害する食品も存在するため、適切な知識と工夫が必要です。例えば、植物性食品である小松菜やがんもどき、豆乳などは、ビタミンCを含む食品と一緒に摂取することで吸収率が向上します。鉄分は2種類のバランスが大切であり、ヘム鉄の吸収率が高いからと言って、動物性食品のみを選んではいけません。
鉄分を効率よく摂取できる「ヘム鉄」豊富な食材とは?
ヘム鉄が豊富に含まれる食品は、レバー類(豚レバー、鶏レバー、牛レバー)、赤身の肉(牛もも肉など)、赤身の魚(かつお、まぐろなど)、赤貝などです。ただし、魚の血合いにはヘム鉄が多く含まれていますが、メチル水銀の含有量も高いため、妊活中の女性には控えめにした方が賢明です。ヘム鉄を多く含む主な食品と、可食部100gあたりの含有量は以下の通りです。
・豚レバー(生)…13.0mg
・鶏レバー(生)…9.0mg
・赤貝(生)…5.0mg
・牛レバー(生)…4.0mg
・牛肉(生・赤身)…2.8mg
・めざし(生)…2.6mg
・砂肝(生)…2.5mg
・まいわし(生)…2.1mg
・かつお(生)…1.9mg
・まぐろ(生・赤身)…1.8mg
※出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
ヘム鉄は非ヘム鉄に比べ、吸収率が2~3倍以上高く、他の食品との組み合わせを気にする必要もありません。しかし、ヘム鉄を豊富に含む食品は日常的に食べ続けるのが難しいという課題があります。レバーは苦手な人が多く、好んで毎日食べられる人は少ないでしょう。赤身の肉や魚、貝類も毎日の食事に取り入れるのは現実的ではありません。ヘム鉄は積極的に摂取したい栄養素なので、工夫して継続的に摂取できるよう心がけましょう。これらの食品は貧血予防にも役立ちます。
鉄分の豊富な食材と上手な摂り方で、鉄欠乏症を予防しよう
レンズ豆、小豆、枝豆などの豆類、納豆などの大豆加工品、小松菜やほうれん草などの野菜、ひじきなどの海藻類は、非ヘム鉄を多く含む食品です。特に、レバー、小松菜、サバ缶、枝豆などの鉄分が豊富な食材を積極的に摂取することが重要です。
主な非ヘム鉄の含有量は、
・レンズ豆(全粒・ゆで)4.3mg
・納豆3.3mg
・小松菜2.8mg
・枝豆2.7mg
・ひじき(鉄釜・ゆで)2.7mg
・厚揚げ2.6mg
・サラダ菜2.4mg
・そら豆2.3mg
・水菜2.1mg
・ほうれん草2.0mg(可食部100gあたり)です。
体内に吸収されにくい非ヘム鉄も、ビタミンC、クエン酸、たんぱく質などと一緒に摂れば吸収率が上がります。例えば、酢を使った小松菜のスープや、豚肉とひじきを一緒に煮るなどの調理法が良いでしょう。ひじきは鉄鍋で煮ると鉄分が豊富になりますが、ステンレス鍋では0.3mg(100gあたり)と1/9になってしまうことがわかっています。牛乳に含まれるカゼインから生じるCPP(カゼインホスホペプチド)と一緒に摂ると、鉄分の吸収を促進できます。一方、コーヒー、紅茶、煎茶のタンニン、玄米のフィチン酸、芋類、ゴボウ、キノコ類の非水溶性食物繊維などと一緒に摂ると吸収率が下がる可能性がありますが、通常の食事であれば過剰摂取でなければ気にする必要はありません。貝類のあさり(缶詰水煮:30.0mg/100g可食部)、しじみ(水煮:15.0mg/100g可食部)は、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方が含まれた鉄分の多い食品です。
鉄分の1日の摂取目安量
鉄分の1日の摂取目安量は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づいています。鉄の推奨量は年齢や性別によって異なります。例えば、成長期の10~17歳では、体の発育に伴い鉄分の需要が高まるため、他の年代に比べて推奨量が高く設定されています。また、月経のある女性は、月経による鉄分の損失を補うために、鉄の推奨量が高くなります。具体的には、成人男性の1日の鉄分摂取推奨量は7.0〜7.5mg、成人女性(月経がある場合、妊娠・授乳をしていない場合)は10.5〜11.0mgです。これらの数値を参考に、日々の食事で適切な鉄分を摂取することが、貧血予防に繋がります。
以上のように、新しいセクションを追加することで、読者に対してより包括的な情報を提供し、貧血予防に役立つ知識を深めることができます。
貧血に即効性のある食事とは?
貧血に即効性のある食事は、鉄分が豊富な赤身肉やレバー、ほうれん草などの緑黄色野菜、牡蠣などの貝類を中心に構成されます。これらに加え、鉄分の吸収を促進するビタミンCを含むオレンジやレモンなどの柑橘類、キウイ、イチゴも効果的です。さらに、ビタミンB12を含む魚介類や卵、乳製品、葉酸を含む枝豆やアボカドも貧血改善に役立ちます。これらの食品を組み合わせて摂取することで、より効率的に栄養を吸収できます。例えば、ほうれん草のサラダにレモン汁をかけたり、レバーとブロッコリーを一緒に調理したりするのが良いでしょう。ただし、重度の貧血の場合は食事療法だけでなく、医師の診断と適切な治療が必要不可欠です。
豊富な鉄分源を日常に取り入れよう
青春期、生理前後、妊娠中、授乳期は、身体の鉄分需要が高まるため、鉄欠乏症になりやすい時期です。食事から十分な鉄分を摂取できない場合は、サプリメントを活用することをおすすめします。日常の食事に簡単に取り入れられる植物性食品として、枝豆や小松菜などがあります。これらは鉄分の供給源として優れており、バランスの取れた食事に役立ちます。鉄分サプリメントは、粒剤だけでなく、ドリンクタイプやゼリータイプの製品もあります。体質や嗜好に合わせて、最適なサプリメントを選んでみてください。
貧血についてのよくある質問
日々の食生活において適切な栄養分を取り入れるだけでなく、貧血の予防に関する知識も持っておくことが重要です。ここでは、貧血を防ぐための有益な情報をご紹介します。さらに、貧血予防には鉄分、ビタミンB12、葉酸が豊富に含まれる食品を積極的に摂取することが効果的です。
ライフステージに応じた女性の貧血対策
女性の貧血は、ライフステージに応じて原因が異なるため、それぞれの時期に適切な対策をとることが重要です。思春期は鉄分の需要が増えるため鉄欠乏性貧血が起こりやすく、20~40代は月経に伴う鉄欠乏や婦人科系・消化器系疾患による出血が原因となります。妊娠中や授乳中は赤ちゃんへの栄養供給のため貧血リスクが高まります。更年期では月経異常、閉経後は加齢による造血機能低下や他の疾患が要因となるため、早期発見と適切な対処が必要不可欠です。即効性は期待できないかもしれませんが、長期的な貧血予防のためには継続的な対策が重要です。
鉄分の適切な摂り方とは?
ライフステージによっては、鉄分不足が女性の貧血の原因となりがちです。しかし、鉄分を意識して食事から適切に摂取することで、貧血を予防・改善できます。貧血予防には、鉄分、ビタミンB12、葉酸などの栄養素を含む食品を積極的に摂取することが重要です。ただし、貧血の原因は鉄分不足だけとは限らず、症状が気になる場合は医師に相談することをおすすめします。