全粒粉は近年、健康志向の食生活に欠かせない要素として注目を集めています。その特有の栄養価は、一般的な精製された小麦粉とは一線を画し、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。これらの栄養素がもたらす健康効果は多岐にわたり、特に心臓病のリスク低減や糖尿病の管理、消化機能の改善に寄与するとされています。この記事では、全粒粉の具体的な栄養価と、それが私たちの健康にどのように影響を与えるのかを探ります。
全粒粉とは
全粒粉とは、その名のとおり、小麦全体を挽いて粉にしたもので、通常の小麦粉では取り除かれる「ふすま」や、発芽に必要な「胚芽」を含んでいます。
ふすまには外皮のため繊維質が豊富で、胚芽には発芽に不可欠な脂質やビタミンが豊富に含まれます。どちらもミネラルに富んでいるため、全粒粉を用いた食品は風味がよく、食欲を増進させます。また、繊維質のため噛みごたえがあり、咀嚼の回数を増やすことで唾液や消化液の分泌が促進され、口の中を清潔に保つ助けとなり、消化や代謝の向上も期待されます。
全粒粉に含まれる栄養
全粒粉は、一般的な強力粉に比べて、ビタミン、ミネラル、脂質が豊富なのが特徴です。特に日本人が不足しやすいと言われるビタミンB1やカリウム、鉄分は通常の小麦粉の3倍以上、さらにマグネシウムと食物繊維に関しては4倍以上含まれています。
全粒粉と一般的な小麦粉の違い
小麦は主に外皮、胚芽、胚乳の3つの部分に分かれます。これらの部分が小麦全体に占める割合は以下の通りです。
外皮には、食物繊維やタンパク質、カルシウムなどが含まれています。また、胚芽には脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンといった多くの栄養素が含まれています。通常の小麦粉は製粉の過程でこの外皮と胚芽が取り除かれるため、白く輝く反面、多くの栄養素を失います。
全粒粉は小麦全体を使用して製粉するため、その色合いは茶色がかっていますが、小麦粉よりも栄養価が高いのが特徴です。
全粒粉の味わいとテクスチャー
全粒粉は、その硬い外皮を含んでいることから、独特でしっかりとした食感が楽しめます。香ばしい風味が特徴で、パン、クッキー、パスタなどの材料に広く用いられています。
しかし、小麦粉に比べてグルテンの量が少ないため、パンや焼き菓子の生地がまとまりにくいという欠点があります。このため、通常の小麦粉(薄力粉や強力粉)と組み合わせて使用することで、加工しやすいように工夫された商品も多く見られます。
全粒粉を使った食品の摂取による期待されるメリット
全粒粉とは、小麦全体を利用することで、外皮や胚芽の栄養をそのまま保持しています。この特性により、全粒粉を用いた製品を摂取することで、多くの健康面での利点が期待できます。
便秘の解消
全粒粉にはさまざまな栄養素が含まれており、特に注目されるのが食物繊維です。不溶性食物繊維が豊富で、野菜類や玄米に多く含まれています。
全粒粉の食物繊維含有量は、ゴボウの約2倍、玄米の約4倍であることが知られています。不溶性食物繊維は水分を吸収して体積を増やし、腸を刺激することで蠕動運動を活発にし、便通を促進します。
全粒粉を用いたパンやパスタを日常の食事に取り入れることで、より良い消化機能が期待できるでしょう。
体重を増やしにくい
全粒粉は、小麦粉と比較して体重増加を抑える効果があるとされています。それは、全粒粉のGI値が低いために血糖値の急上昇を防ぐ効果があるからです。
GI値とは「グライセミック インデックス」の略で、食後の血糖値の変化を示す指標です。食品を摂取後2時間までの血糖濃度の測定結果に基づいています。
異なる食品にはそれぞれ異なるGI値があり、GI値が低い食品は血糖値の上昇を抑制することができます。GI値は食品を分類する際に用いられ、70以上を高GI食品、56~69を中GI食品、55以下を低GI食品としています。
普通の小麦粉と比べて全粒粉のGI値は低く、消化吸収の速度もゆっくりです。これによって血糖値の上昇が緩やかになり、空腹感を感じるまでの時間が延びます。
そのため、摂取量が自然と抑えられ、体重が増えにくくなるとされています。
疲れを癒す方法
ビタミンB群は、疲労回復を促進する栄養素として広く認識されています。特に全粒粉にはビタミンB1、B2、B6が豊富に含まれており、これらがエネルギー代謝をサポートし、疲れた体を回復させるのに役立つことが知られています。
これらのビタミンは、疲れを感じる体を効果的にサポートするため、日々の生活において重要な役割を果たしています。
高血圧予防・改善
カリウムやマグネシウムは、積極的に摂取することで高血圧の予防や改善が期待される栄養素です。カリウムは、ナトリウムの排出を促進し血圧を下げ、また過剰な塩分摂取によるむくみの軽減にも寄与します。
一方で、マグネシウムは血管を拡張させることで血圧を下げる働きを持ちます。これらの栄養素は全粒粉に豊富に含まれており、特に全粒粉は強力粉と比べると、マグネシウムの含有量が約6倍、カリウムが約4倍です。普段のパンを全粒粉のパンに切り替えることで、血圧管理やむくみの改善に寄与するかもしれません。
貧血の予防と改善
鉄分は貧血の予防や改善に不可欠な栄養素です。普通の小麦粉(強力粉)には、鉄分が100gあたりわずか0.9mgしか含まれていません。
これに対して、全粒粉には100gあたり3.1mgの鉄分が含まれており、これは強力粉の3倍以上です※2。18~64歳の女性で月経のない場合の1日に必要な鉄分の推奨量は6.5mg、18~74歳の男性では7.5mgです。
日本人は鉄分が不足しがちですが、全粒粉を使用した食品を意識して摂取することで、必要な鉄分の多くを補えるでしょう。
全粒粉製品を選ぶ際の重要ポイント
全粒粉を使った食品は、その健康面でのメリットから多くの人々に好まれており、パンや麺類といったバリエーションも多彩です。全粒粉の選び方について見ていきましょう。
全粒粉を多く含む食品を選択する
全粒粉を活用した食品の中でも、パンはその代表例です。市販の全粒粉パンの多くは、製造のしやすさやコストを考慮して強力粉とブレンドされています。
健康面を重視する方は、豊富な栄養素を持つ全粒粉の含有量に注目してみましょう。理想的には、全粒粉を100%使用しているものを選ぶと良いでしょう。
添加物なしの食品を選択する
全粒粉を取り入れた食品を選ぶ際には、できるだけ添加物が入っていないものを選ぶことが望ましいです。食品添加物の安全性については、厚労省が食品安全委員会の評価を基に、人の健康にリスクがない場合のみ使用を許可しています。
しかし、少量ずつでも食品添加物を摂取し続けることによる将来的な影響については、まだ不明な点が多いです。無添加で全粒粉を使った食品は市場にあまり出回っておらず、価格もやや高めとなっています。手軽に入手するのは少し難しいかもしれません。
それでも、栄養豊富で健康に良い影響を求めるのであれば、無添加の選択が最善と言えるでしょう。