柑橘界に突如現れた「せとか」。その濃厚な甘みととろけるような食感は、まさに柑橘の大トロと称されるほど。清見オレンジ、マーコット、アンコールという、選りすぐりの品種を掛け合わせることで生まれた、まさに柑橘のサラブレッドです。一口食べれば、そのジューシーさと芳醇な香りに魅了されること間違いなし。今回は、そんなせとかの秘密に迫ります。
せとかとは?基本情報と特徴
せとかは、「清見オレンジ」「マーコット」「アンコール」という選りすぐりの柑橘を掛け合わせて誕生した、2001年に品種登録された新しい柑橘です。それぞれの親の良い部分を受け継ぎ、濃厚な甘さ、とろけるような口当たり、あふれるほどの果汁が特徴で、まさに「柑橘のトロ」と呼ぶにふさわしい高級柑橘です。生まれた場所である長崎県口之津町から見える「早崎瀬戸」の風景と、瀬戸内地域での栽培への期待、そして豊かな香りにちなんで「せとか」と名付けられました。
せとかの品種と生い立ち
せとかは、温州みかんの代表的な品種「宮川早生」とオレンジの「トロビタオレンジ」を交配させた「清見」に、「アンコール」と「マーコット」を掛け合わせたものをさらに交配して育成されました。「清見」からは独特のゼリーのような食感を、「アンコール」からはとろけるような甘さを、「マーコット」からは食べやすさを引き継いでいます。アメリカ生まれのアンコールやマーコットは、糖度が高く品質も優れていますが、日本の気候での露地栽培ではそのポテンシャルを十分に発揮できませんでした。そこで、日本でも露地栽培が可能で、アンコールやマーコットよりも早い時期に収穫でき、種が少なく、糖度が高い品種を目指して開発されたのがせとかなのです。
せとかの見た目の特徴
せとかは、外皮が非常に滑らかで、濃いオレンジ色をしているのが特徴です。カットした時の断面は、薄い皮の中に濃いオレンジ色の果肉がぎっしりと詰まっており、その見た目の美しさも魅力の一つです。また、せとかの姉妹品種として「麗紅(れいこう)」という柑橘も存在します。
せとかの魅力:柑橘の大トロと呼ばれる理由
せとかは、その圧倒的な甘さとコクから「柑橘の大トロ」という異名を持っています。薄くて手で剥きやすい皮の中には、みかんを思わせる甘い香りと、たっぷりの果汁、そしてとろけるように柔らかい果肉が詰まっており、味も見た目もまさに最高級品です。甘さ、食感、ジューシーさなど、あらゆる面で頂点を目指した完成度の高さが、せとか最大の魅力と言えるでしょう。
芳醇な甘みと滑らかな舌触り
せとかの最も際立った魅力は、何と言ってもその芳醇な甘さと、とろけるように滑らかな舌触りです。高い糖度を持ちながら、酸味は穏やかなため、ダイレクトに甘さを堪能できます。さらに、果肉が極めて柔らかく、口の中でとろけるような食感を味わうことができます。
薄皮で手軽に味わえる
せとかは、外側の皮が非常に薄く、手で容易に剥くことが可能です。内側の薄皮(じょうのう膜)も薄いため、そのまま食べても全く気になりません。種もほとんど存在しないため、非常に手軽に食べられる柑橘です。
せとかの産地と最盛期
せとかは、瀬戸内エリアを中心として栽培されており、特に愛媛県が全国の収穫量の約7割を占めています(令和3年産)。愛媛県は、年間を通して温暖な気候、階段状の地形、豊富な日照時間といった、柑橘類の栽培に適した環境が整っています。それゆえ、せとかをはじめとする多様な柑橘類が積極的に栽培されています。
せとかの旬
せとかが最も美味しい時期は、2月上旬から4月中旬頃です。春の訪れと共に旬を迎えるせとかは、まさに「柑橘のトロ」と呼ぶに相応しい、至高の味覚を堪能することができます。

極上のせとかを見極める秘訣
せとかを味わうなら、誰もが最高の品質のものを選びたいと願うでしょう。ここでは、特に美味しいせとかを選ぶための秘訣をご紹介します。
色の濃さと輝き
果皮の色は深みのあるオレンジ色で、表面に自然な輝きがあるものを選びましょう。せとかは、色が濃いほど成熟が進んでいます。また、光沢があるものは新鮮さの証です。表面にしわが目立つものは、鮮度が落ちている場合があります。
ヘタの繊細さ
ヘタが細いものを選びましょう。ヘタが細いということは、光合成によって生成された栄養分が果肉に豊富に行き渡っていることを示唆します。ヘタが太いものは、水分が多く、味が薄い可能性があります。
形状のポイント
やや平たい形状のものを選びましょう。せとかは、真ん丸なものよりも、少し平べったい形状の方が甘みが強く、より美味であると言われています。
せとか、至福の味わい方
せとかは、そのままでも十分な美味しさですが、少し工夫を加えることで、さらに豊かな味わいを堪能できます。
手で剥く?それともカット?
せとかの皮は柔らかく、手軽に手で剥けます。もし薄くて剥きにくいと感じたら、ナイフで放射状にカットするのがおすすめです。内側の薄皮は非常に繊細で、口にしても全く気になりません。どちらの方法でもお好みで良いでしょう。放射状にカットすると、せとか特有のとろけるような果肉の食感をよりダイレクトに感じられるかもしれません。
おすすめはスマイルカット
せとかをより美味しく味わうために推奨したいのが、「スマイルカット」です。まず、せとかの上部と下部を切り落とします。次に、縦半分にカットし、さらにそれを3~4等分にします。果肉と皮の間に軽く切り込みを入れると、食べる際に皮がスムーズに剥がれます。果肉がデリケートなせとかは、包丁で丁寧にカットすることで、形を崩さずに美味しくいただけます。
広がるアレンジレシピ
せとかは、そのまま味わうだけでなく、様々なアレンジにも適しています。ここでは、せとかを使ったおすすめのアレンジレシピをご紹介いたします。
せとかジュース
せとか本来の風味を存分に味わうには、ジュースが最適です。手軽に作れて、せとかをカットし、ミキサーにかけるだけで完成します。甘さが足りない場合は、お好みでハチミツを加えると、より一層美味しくいただけます。
せとかジャム
せとかを贅沢に使った自家製ジャムも格別です。細かくカットしたせとかと砂糖、少量の水、レモン汁を鍋に入れ、じっくりと煮詰めます。とろみがついてきたら火を止め、粗熱を取れば出来上がりです。パンやヨーグルトに添えてお楽しみください。
せとかサラダ
せとかは、サラダの材料としても優秀です。ベビーリーフやルッコラ、ほうれん草、アボカドなど、様々な食材との組み合わせを楽しめます。せとかの鮮やかなオレンジ色が加わることで、食卓を彩る美しいサラダになります。
せとかの保存方法
せとかは生ものですので、なるべく早めにお召し上がりください。保存する際は、冷蔵庫の野菜室を利用するのがおすすめです。乾燥を防ぐために、新聞紙やキッチンペーパーなどで包んでから保存すると、鮮度を保ちやすくなります。
結び
「柑橘の大トロ」と称されるせとかは、芳醇な甘みと滑らかな舌触りが特徴の、まさに至高の柑橘です。主に愛媛県で栽培され、旬は2月から4月にかけて。選び方のポイントを参考に、ぜひ一度、そのとろけるような風味を堪能してください。そのまま食すのはもちろん、ジュースやコンフィチュール、サラダなど、様々な調理法で味わうのも良いでしょう。
せとかが「柑橘の大トロ」と呼ばれる理由は何ですか?
せとかは、凝縮された甘さと、口の中でとろけるような食感が際立っており、その風味がまるでマグロの大トロを連想させることから、「柑橘の大トロ」という異名を持つようになりました。
せとかの最も美味しい時期はいつですか?
せとかが最も美味しく味わえる旬の時期は、2月上旬から4月中旬頃です。
美味しいせとかを選ぶためのコツはありますか?
良質なせとかを見分けるためには、果皮が濃い橙色をしていて光沢があり、へた(軸)が細く、そして平たい形状をしているものを選ぶと良いでしょう。