独特の香りが食欲をそそるミョウガは、日本料理に欠かせない薬味の一つ。実はショウガの仲間で、古くから日本人に親しまれてきました。食用とするのは地下茎から顔を出す花穂の部分で、「花みょうが」とも呼ばれます。本州から沖縄まで広く自生し、栽培も盛んですが、食用として栽培されているのは日本以外では台湾と韓国の一部地域のみ。今回は、そんなミョウガの旬、栄養、驚くべき効能、そして鮮度を保つ保存方法まで、徹底的に解説します。
茗荷とは:基本情報と歴史
茗荷(ミョウガ)は、ショウガ科の植物で、ショウガの仲間です。本州から沖縄にかけて広く自生し、日本では昔から馴染みのある香味野菜として親しまれてきました。栽培は日本各地で行われていますが、食用として栽培されているのは、台湾と韓国の一部地域に限られています。地下茎から伸びる花穂を食用とし、「花みょうが」とも呼ばれます。清涼感あふれる香りは食欲をそそり、夏の食卓に欠かせない薬味として、夏バテの予防にも効果が期待できます。
茗荷の歴史:古代の書物にも登場
茗荷は、日本を含む東アジア地域が原産と考えられています。驚くべきことに、3世紀に編纂された中国の歴史書『魏志倭人伝』にも茗荷が登場しており、当時すでに日本に存在していたことが記録されています。ただし、その頃はまだ食用としては一般的ではなかったようで、平安時代に編纂された『延喜式』に、茗荷を食べたと思われる記述が見られます。江戸時代後期になると畑での栽培が盛んになり、その独特な風味が江戸の人々にも愛されるようになりました。古代から日本人に親しまれてきた、歴史ある野菜なのです。
茗荷の種類:花茗荷と茗荷竹
茗荷には、主に「花茗荷」と「茗荷竹」の2つの種類があります。
- 花茗荷:花が咲く直前のつぼみを食用とします。赤色から紫紅色をしており、特有の爽やかな香りと、シャキシャキとした食感が特徴です。
- 茗荷竹:20~30cmほどに成長した、茗荷の若い茎を食用とするものです。日光を遮断して軟白栽培を行い、収穫前に日光に当てることで美しい紅色に染まります。花茗荷と同様に使えますが、旬の時期は花茗荷よりも早く、3月から7月頃です。
茗荷の旬:夏茗荷と秋茗荷
茗荷の旬は、初夏から秋にかけて。6~8月頃に収穫されるものは夏茗荷、8~10月頃に収穫されるものは秋茗荷と呼ばれます。一般的に、秋茗荷の方がやや大きめであるとされています。
茗荷の栄養と効能
茗荷には多様な栄養素が含まれており、健康維持に役立つ様々な効果が期待されています。
α-ピネン:特徴的な香りと健康への貢献
茗荷に含まれるα-ピネンは、森林浴で感じるヒノキの香りにも含まれる成分です。森林に入った際に最初に感じる香りの一つが、このα-ピネンであると言われています。鼻から吸い込まれた香りの成分は、鼻腔内の粘膜を通じて脳に働きかけます。さらに、呼吸を通じて血管に入り込み、体内を巡ることで、ごくわずかな量でも全身に影響を与えます。α-ピネンには、血流を促進する作用、うっ滞を取り除く作用、睡眠の質を改善する効果、そして免疫力を高める効果などが期待されています。清涼感あふれる香りはアルファピネンという精油成分によるもので、食欲を刺激する作用があります。発汗や消化を助けるだけでなく、血液の循環や呼吸機能を向上させ、眠気を覚ます効果も期待できます。夏バテ対策にもおすすめです。
アントシアニン:鮮やかな色彩と健康増進効果
茗荷の美しい赤紫色を作り出しているのは、アントシアニンという色素成分です。ポリフェノールの一種であるアントシアニンは、抗酸化作用、血小板の凝集を抑制する作用、視機能の改善効果、さらにはがん予防効果などが期待されています。
薬膳としての活用:生理痛、更年期症状、口内炎予防
茗荷は、体にこもった余分な熱を取り除き、血行を促進する効果があるため、生理痛や月経不順、更年期障害などの症状緩和に役立つと考えられています。また、解毒作用により、口内炎や風邪の予防にも効果を発揮すると言われています。

新鮮な茗荷の選び方と保存テクニック
美味しい茗荷を選ぶための秘訣と、長持ちさせる保存方法をご紹介します。
茗荷の選び方:色、形、そして締まり具合をチェック
花茗荷を選ぶ際は、鮮やかな色合いと光沢があり、ふっくらとした丸みを帯び、身がしっかりと締まっているものを選びましょう。傷がなく、花が開いていないものが理想的です。花が咲いてしまうと、内部がスカスカになり、風味が損なわれます。茗荷竹は、茎が白く、淡い紅色を帯びているものがおすすめです。一般的に茗荷は、鮮やかな紅色で、つややかなものが新鮮です。ふっくらと張りがあり、身が締まっているものを選びましょう。先端から花が顔を出しているものは、繊維が硬くなっていることがあるので注意が必要です。また、一部が透明になっているものは、収穫から時間が経過している可能性があるため、避けるようにしましょう。
茗荷の保存方法:冷蔵、冷凍、酢漬けの活用
湿らせたキッチンペーパーで丁寧に包み、冷蔵庫の野菜室で保存すると、約10日間新鮮さを保つことができます。刻んでから冷凍保存することも可能です。また、酢漬けにすることで長期保存が可能になり、美しい赤色を保つことができます。
茗荷の調理法:風味を引き出す切り方とアクの抜き方
茗荷本来の香りを最大限に引き出す調理方法を詳しく解説します。
茗荷の切り方:縦と横で変わる食感の妙
茗荷は、その繊維の方向に沿って縦に切るか、あるいは繊維を断ち切るように横に切るかで、口にした時の印象が異なります。
茗荷のアク抜き:風味を活かすためのコツ
茗荷の持ち味である香りは、揮発しやすい性質を持っています。そのため、できる限り調理の直前に刻むのがおすすめです。時間が経過すると、あの独特の清涼感が失われてしまいます。アク抜きのために水にさらす場合も、手早く済ませるように心がけましょう。
茗荷を使ったレシピ:定番からアイデア料理まで
茗荷を主役にした多彩なレシピをご紹介します。薬味としての使い方にとどまらず、立派な一品料理としてもお楽しみいただけます。
ミョウガのレシピ例1:茗荷とマグロの柚子胡椒風味
新鮮なマグロに、茗荷をはじめとする旬の夏野菜をたっぷりと添え、ピリッと刺激的な柚子胡椒を使った特製だれでいただきます。じめじめとした季節にも手軽に作れて、さっぱりといただけるおすすめの一品です。
ミョウガのレシピ例2:ミョウガのグリーンサラダ
ミョウガの清涼感が際立つ、彩り豊かなグリーンサラダです。
ミョウガのレシピ例3:ミョウガの天ぷらとかき揚げ
【材料】(2人分)・ミョウガ 4個・新鮮なバナメイエビ 150g程度・薄力粉 適量・片栗粉 適量・冷たい炭酸水 適量・揚げ油(サラダ油) 適量
【作り方】
1.バナメイエビは丁寧に殻を剥き、背ワタを取り除きます。流水で軽く洗い、しっかりと水気を拭き取ります。大きければ半分にカットしてください。
2.ミョウガ2個は縦半分にカットし、残りの2個は少し厚めの小口切りにします。
3.天ぷら衣を作ります。片栗粉、薄力粉、炭酸水を1:4:6の割合で混ぜ合わせます。粉類を先に混ぜ合わせ、炭酸水は揚げる直前に加えてください。
4.揚げ油を170~180℃に加熱します。
5.まずは縦に切ったミョウガから揚げます。混ぜておいた衣を軽く混ぜ、ミョウガにまとわせて油に入れ、カリッと揚げてください。
6.ミョウガが揚がったら、次にかき揚げを作ります。バナメイエビに薄く片栗粉をまぶします。ビニール袋に入れて振ると、均一にまぶせます。残りの衣に小口切りのミョウガと、片栗粉をまぶしたエビを加えて混ぜます。衣が固い場合は、炭酸水を少しずつ足して調整してください。
7.小さめのレードルなどを使い、形を整えながら油に入れます。厚みがあるとエビに火が通りにくいので、平らに成形しましょう。エビが赤くなり、カラッと揚がれば完成です。
※エビは冷凍でも代用可能です。※揚げ衣には、炭酸水の代わりに冷水も使用できます。粉類に水分を加えたら、混ぜすぎないのがサクサクに仕上げる秘訣です。小麦粉と片栗粉の割合はおおよその目安で、片栗粉がなければ小麦粉だけでもOKです。
結び
ミョウガは、その独特な風味と優れた栄養成分により、日本の食文化に深く根付いています。旬の時期には、ぜひ色々な調理法でミョウガの美味しさを堪能してみてください。爽やかな香りと心地よい食感が、食欲を増進させ、夏バテ対策にも効果的です。選び方や保存方法を参考に、新鮮なミョウガを積極的に活用し、毎日の食卓に取り入れてみましょう。
ミョウガは冷蔵庫でどのくらい保存できますか?
湿らせたキッチンペーパーで丁寧に包み、野菜室で保存すると、約10日程度鮮度を保つことができます。
ミョウガを食べると、本当に記憶力が悪くなるのでしょうか?
ご安心ください。そのような事実は科学的に証明されていません。むしろ、ミョウガ特有の香り成分であるα-ピネンは、集中力を向上させる効果があると言われています。
ミョウガには、どのような種類があるのでしょうか?
主に、花ミョウガとミョウガタケという種類が存在します。花ミョウガは、その名の通り花のつぼみを食用とし、ミョウガタケは、まだ若い茎の部分を美味しくいただくことができます。