よもぎ餅は、春の訪れを告げる伝統的な和菓子です。鮮やかな緑色と爽やかな香りが魅力的な一品で、米粉生地によもぎの粉を練り込み、丸めて形作られています。しんなりとした食感とほのかな苦みが独特の風味を生み出しています。

昔から薬用としての役割も担ってきたよもぎ餅は、春の新芽のような味わいで冬の間おいしさを求めていた味覚に優しく働きかけます。淡い緑色も新緑の草原を思わせ、目にも心にも安らぎを与えてくれます。洋菓子に押されがちな中、風情ある日本の味を代表する存在と言えるでしょう。

奄美ではクマタケランの葉で包まれた「かしゃ餅」なども珍しいよもぎ餅として知られています。よもぎは食用の他、団子のつなぎ材料としても活用されてきた万能な草花です。よもぎ餅の歴史は古く、桃の節句の催しと深い関わりを持っていました。

よもぎ餅は、長い歴史の中で変遷を遂げながらも、京都の伝統として今に継承されている和菓子です。その起源は、中国の春季行事「上巳の節句」にあり、当初は「御形」の草を使った餅でした。しかし、日本に伝わった際に御形が縁起の良くない語感だと受け止められ、代わりによもぎが使用されるようになりました。よもぎには子孫繁栄や健康祈願の意味が込められていたことも、広く親しまれた理由の一つでしょう。

時代とともに、よもぎの香りは控えめになり、餡が主役へと変化しましたが、よもぎの風味は残されています。また、草餅との違いはあまり見られなくなった一方で、地域によっては御形を使い分ける例も残っています。長い歴史の中で味わいは変化しながらも、京都の風情を色濃く残す和菓子として、よもぎ餅は愛され続けているのです。

春の香り漂うよもぎ餅は、日本人に愛される伝統的な和菓子です。その作り手順は簡単ながら、ポイントを押さえることで本格的な味わいを堪能できます。

まずは新鮮なよもぎを厳選し、香りを逃がさぬよう丁寧に下準備を行います。そして小麦粉と上白糖を合わせた生地に、よもぎの風味を存分に移すべく時間をかけてよく練り込みます。生地を丸め、蒸し器で適度に蒸した後は、香り高いよもぎ団子に小豆の甘みを加えて味わえば、春の訪れを体感できる上品な一品に仕上がるでしょう。

手軽に作れるよもぎ餅は、ヘルシーな食物繊維も豊富に含む栄養価の高い和菓子です。暖かな春の日差しに恵まれたこの時期、ぜひ自らの手で香る一品を作り上げ、よもぎの芳香に癒されてみてはいかがでしょうか。