秋の味覚として人気の高いラ・フランス。芳醇な香りととろけるような舌触りは、まさに「洋梨の女王」と呼ぶにふさわしい上品な味わいです。ゴツゴツとした独特のフォルムからは想像もできない、なめらかでジューシーな果肉は、一度食べたら忘れられない特別な体験を与えてくれます。この記事では、ラ・フランスがなぜ「洋梨の女王」と呼ばれるのか、その理由を徹底的に解説。その魅力に迫ります。ラ・フランスの知られざる秘密を解き明かし、その奥深い世界へとご案内しましょう。
山形が誇る「果物の女王」ラ・フランスとは?洋梨との関係性を深掘り
山形県の秋の味覚を代表するフルーツといえば、やはり「ラ・フランス」でしょう。口にした瞬間、広がる豊かな香りと、とろけるようにジューシーな果肉は、まさに「果物の女王」の名にふさわしい風格です。その特徴は、少し不揃いな形で、お尻の部分がふっくらとしていること。そして、果皮は黄緑色に茶色が混ざった色合いをしています。一般的なサイズは200~250g程度。きめ細やかな果肉は、果汁をたっぷり含んでおり、なめらかな舌触りが特徴です。上品な甘さと、穏やかな酸味、そして心地よい香りが口の中に広がり、さわやかな風味を楽しむことができます。ここで、少し質問です。ラ・フランスと洋梨の違い、あなたはご存知でしょうか?「え?ラ・フランスって洋梨のことじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、そんな疑問を解消するために、ラ・フランスと洋梨の違い、そしてラ・フランス以外の洋梨の種類について詳しく解説していきます。結論を先に申し上げると、ラ・フランスは数ある洋梨の品種の一つであり、日本で最も多く生産されている品種なのです。国内の洋梨栽培面積の半分以上を占めているため、洋梨とラ・フランスを同じものとして捉えている方もいるかもしれません。この記事を通して、洋梨の奥深い世界と、ラ・フランスがなぜ特別な存在なのか、その関係性を一緒に探っていきましょう。
ラ・フランスの歴史と発展:なぜ「フランス生まれ」が山形で花開いたのか
それでは、具体的な品種である「ラ・フランス」について、さらに詳しく見ていきましょう。「ラ・フランス(ラフランス/lafrance)」は、数多くの洋梨の品種の中の一つで、名前が示す通りフランスが原産の洋梨です。正確な親品種は特定されていませんが、1864年にクロード・ブランシュ氏によって発見され、その美味しさに感銘を受けたブランシュ氏は、フランスを代表する果物として「ラ・フランス」と名付けたと伝えられています。日本への導入は1903年(明治時代)。山形県へは大正初期に持ち込まれましたが、ゴツゴツとした見た目と栽培の難しさから、当時の洋梨生産の中心だった「バートレット」の受粉樹として細々と栽培されるに留まり、一般市場に出回ることはほとんどありませんでした。かつては、追熟の難しさや見た目の悪さから注目されなかったラ・フランスですが、生で食べた時の美味しさが知られるようになり、昭和60年代(1980年代)以降、需要が大きく伸びました。特に追熟技術の進歩によって、その美味しさが広く知られるようになり、人気品種としての地位を確立しました。長い歴史を持つラ・フランスですが、その価値が認められ、広く愛されるようになったのは、比較的最近のことなのです。洋梨は一般的に、冷涼で降雨量の少ない地域での栽培に適していると言われています。山形県の内陸部は、夏の昼夜の寒暖差が大きく、水はけの良い土壌に恵まれ、冬は雪に覆われるという気候条件が、洋梨栽培に最適なのです。そのため、100年以上前から洋梨栽培が盛んに行われてきました。その結果、山形県はラ・フランスの生産量で日本一となり、全国生産量の約80%を占めるまでになりました。さらに、山形県は「洋梨」全体の生産量でも日本一であり、日本で栽培されている洋梨の約65%が山形県産です。この圧倒的な生産量こそが、山形県が「洋梨王国」と呼ばれる理由なのです。
ラ・フランスの主な産地と旬の時期
ラ・フランスの出荷最盛期は、10月下旬頃から12月頃。主な産地は山形県です。農林水産省の統計データによれば、ラ・フランスの作付面積が最も広いのは山形県で、その面積は約708ヘクタールにも及び、全国の9割以上を占めています。次いで、2位は青森県で約31.5ヘクタール、3位は長野県で約21ヘクタールとなっています。これらのデータからも、ラ・フランスが山形県にとって非常に重要な特産品であることがわかります。統計データが公表されていない都道府県はランキングに含まれていませんが、山形県の圧倒的な生産量が、「洋梨王国」と呼ばれる所以となっています。
日本で栽培される主要な洋梨品種:ラ・フランスが圧倒的シェアを誇る理由と多様な味わい
日本国内では約20種類の洋梨が栽培されていると言われていますが、その中でも群を抜いて栽培されているのが「ラ・フランス」です。国内の洋梨総栽培面積に占めるラ・フランスの割合は、56.8%にも達しており、多くの人が「洋梨=ラ・フランス」というイメージを持つのは当然と言えるでしょう。では、ラ・フランス以外には、どのような洋梨が日本で栽培されているのでしょうか?また、それぞれの品種にはどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、日本国内の栽培面積順に、主要な洋梨品種を詳しく見ていきましょう。
栽培面積第2位「ル・レクチェ」:芳醇な香りが際立つ新潟の洋梨
「ル・レクチェ」は、新潟県を中心に栽培されている、ラ・フランスと同じくフランス原産の洋梨です。明治時代に日本へ渡来しましたが、栽培の難しさから長らく地元でのみ消費される希少な存在でした。近年、栽培技術の進歩により生産量が安定し、市場でも見かける機会が増えました。ラ・フランスよりもやや大きく、何よりも芳醇で強い香りが特徴です。口にした瞬間に広がる甘さと香りは、「幻の洋梨」と呼ぶにふさわしいでしょう。市場に出回るル・レクチェの8割以上が新潟県産であり、その品質は確かです。清川屋では、ラ・フランスとの食べ比べセットもご用意しており、日本を代表する2つの洋梨の組み合わせは、贈り物にも最適です。
栽培面積第3位「バートレット」:世界で愛される万能な洋梨
イギリス生まれの「バートレット」は、日本国内での栽培面積は3位ですが、世界で最も多く栽培されている洋梨です。甘さは控えめでほどよい酸味があり、果肉がしっかりしているため、加熱しても煮崩れしにくいのが特徴です。そのため、生食はもちろん、洋梨の缶詰としても広く利用されています。独特の風味と香りは、加工後も損なわれにくく、さまざまな料理やお菓子作りに活用できます。日本では主に北海道や青森県で栽培されており、その安定した美味しさで多くの人々に親しまれています。
栽培面積第4位「オーロラ」:旬は9月上旬、濃厚な甘さと滑らかな舌触り
「オーロラ」は、アメリカ・ニューヨークでマルゲリット・マリーラとバートレットを交配して生まれた品種です。1980年代に日本に導入され、その優れた特性から広く栽培されるようになりました。濃厚な甘さと、しっとりとなめらかな食感が特徴で、酸味が少ないため、口の中でとろけるような味わいを楽しめます。9月上旬頃に旬を迎える早生品種であり、洋梨シーズンの始まりを告げる品種として人気があります。国内では山形県が生産量日本一を誇り、全国シェアの6割以上を占めています。清川屋では夏頃から予約を受け付けており、果皮の色が緑色から鮮やかな黄色へと変化するため、食べ頃がわかりやすく、初めて洋梨を味わう方にもおすすめです。
栽培面積第5位「ゼネラル・レクラーク」:大玉で果汁たっぷり、特別な味わいの高級品種
1950年代にフランスで発見された「ゼネラル・レクラーク」は、その大きさが際立つ洋梨です。一般的な洋梨が250g前後であるのに対し、ゼネラル・レクラークは400~600gと一回り以上大きいです。果汁が非常に豊富で、シャリシャリとした食感ととろけるような舌触りが同時に楽しめ、食べ応えのあるジューシーな味わいが魅力です。日本では1977年に青森県に初めて導入され、現在では青森県が生産量日本一、山形県が第2位となっています。上品な甘さと、ほどよい酸味のバランスが、洋梨愛好家から高く評価されています。清川屋では秋口から予約を承っており、甘みと酸味が調和した奥深い味わいをお届けします。
栽培面積第6位「マルゲリット・マリーラ」:由緒あるフランス原産、風格漂う大玉品種
フランスをルーツとする「マルゲリット・マリーラ」は、1913年にベルギー経由で日本へ伝来した、長い歴史を持つ大玉の洋梨です。その名は、発見者であるマリーラ氏に敬意を表して付けられました。別名「マリゲット・マリラ」とも呼ばれています。実はこの品種、「オーロラ」の親にあたり、その優れた性質を受け継いでいます。9月から10月にかけて旬を迎える、シーズン初期を飾る品種として知られています。特筆すべきは、その芳醇な果汁と、熟成とともに舌の上でとろけるような、なめらかな食感です。大玉ながらも繊細な風味を堪能できるのが特徴で、国内のマルゲリット・マリーラの栽培面積の約半分を、山形県が占めています。独特の芳香と、気品あふれる甘さが、多くの人々を魅了し続けています。
栽培面積第7位「メロウリッチ」:山形県のみで栽培される、とろける甘さの日本生まれ品種
洋梨といえばヨーロッパ原産というイメージがありますが、「メロウリッチ」は、意外にも日本生まれ。山形県で誕生した、非常に価値の高い西洋梨です。2009年に品種登録されたばかりの新しい品種であり、現在、山形県内でのみ栽培されているため、他県ではなかなか目にすることができない、珍しい西洋梨といえるでしょう。メロウリッチの最大の魅力は、他の洋梨と比較して、その糖度が非常に高いこと。平均して16~17度にも達します。親品種であるラ・フランスの糖度が平均12~13度と言われているため、その甘さの違いは一目瞭然です。とろけるような舌触りと、濃厚でありながらも上品な甘さが口いっぱいに広がる、まさに至福のひとときを味わえるでしょう。日本国内、そして山形県内でのみ栽培されている、この特別な西洋梨を、ぜひ清川屋でお試しください。
栽培面積第8位「シルバーベル」:ラ・フランスから生まれた晩生種。ギフトにも最適な大玉品種
「シルバーベル」もメロウリッチと同様に、山形県で生まれた西洋梨です。ラ・フランスの枝変わり(突然変異)として、ラ・フランスの畑から偶然発見されました。ラ・フランスと比較すると非常に大きく、1玉のサイズがラ・フランスの2倍ほどになることも珍しくありません。大玉でありながら、繊細な味わいが特徴で、甘みと酸味のバランスが絶妙で、奥深い味わいを堪能できます。洋梨シーズンの終盤、特にクリスマスシーズンに食される洋梨として、山形県内では高い人気を誇っています。また、貯蔵性にも優れているため、冬の贈り物としても重宝されています。清川屋では秋口より予約販売を開始しており、毎年多くの洋梨愛好家の方々から、変わらぬご支持をいただいております。
栽培面積第9位「マックスレッド・バートレット」:目を奪われる深紅の果皮が美しい希少品種
「マックスレッド・バートレット(レッド・バートレット)」は、アメリカ・ワシントン州で、バートレットの枝変わりとして発見されました。大きさや形、果肉の質は通常のバートレットと変わりませんが、際立っているのは、やはりその果皮の色です。レッド・バートレットの名前が示す通り、果皮が鮮やかな赤色に染まり、非常に美しい外観をしています。この鮮烈な赤色は、贈り物としても喜ばれること間違いありません。栽培面積が限られており、栽培地域も限られているため、市場に出回る量が少ない希少な品種です。国内では秋田県で全体の6割が栽培されており、その希少性から、なかなか見かける機会はないかもしれませんが、もし見つけたら、ぜひ味わってみていただきたい洋梨です。
栽培面積第10位「バラード」:山形が生んだ、至高の甘さを誇る新星品種
1999年に品種登録された「バラード」は、バートレットとラ・フランスを両親に持つ、山形県生まれの西洋梨です。現在、日本で栽培されている西洋梨の中でもトップクラスの糖度を誇り、平均して16~18度にも達します。特徴として、酸味が穏やかで果汁が非常に豊富なため、その甘さが際立ち、濃厚でありながらも洗練された味わいが楽しめます。品種名の「バラード」は、親品種であるバートレットの「バ」とラ・フランスの「ラ」を組み合わせて命名されました。完熟すると果皮が緑色から鮮やかな黄色へと変化するため、初めての方でも食べ頃のタイミングを容易に見極めることができ、贈り物としても最適です。清川屋では秋口から販売を開始し、その極上の甘さを毎年心待ちにしているファンも多い人気の品種です。
まとめ
本記事では、「果物の女王」と称されるラ・フランスと西洋梨全体の関係性、その歴史、山形県における発展、日本国内で栽培されている多彩な洋梨品種、そしてラ・フランスの選び方から保存方法、おいしい食べ方まで詳細に解説しました。ラ・フランスは、フランス原産でありながら、栽培の難しさから本国ではほとんど見ることができなくなり、今日では世界で唯一、日本、特に山形県でその価値が最大限に引き出された特別な洋梨です。山形県が全国のラ・フランス生産量の約80%、作付面積約708ヘクタールを占有するという事実は、この土地の栽培環境への適合性と、長年にわたる農家の方々の熱意とたゆまぬ努力の賜物と言えるでしょう。ル・レクチェ、バートレット、オーロラ、そして希少なゴールド・ラ・フランスなど、日本ではラ・フランス以外にも、個性豊かな約20種類の西洋梨が栽培されており、それぞれが独自の風味、食感、そして旬の時期を持っています。これらの品種について知ることで、洋梨の奥深い魅力をより一層堪能できます。また、西洋梨を美味しくいただくためには、重さや形状、軸の周囲のしわ、果肉の柔らかさといった熟成度合いを示すサインを見分け、適切な温度管理による追熟と保存が不可欠です。ぜひ、これらの情報を参考にして、日本の豊かな大地で育まれた多様な西洋梨の魅力を存分に体験し、その至福の味わいを心ゆくまでお楽しみください。
ラ・フランスと洋梨は同じものですか?
はい、ラ・フランスは西洋梨の一種です。西洋梨とは、ヨーロッパ原産のバラ科ナシ属の果実の総称であり、ラ・フランスはその中の特定の品種名です。日本国内で栽培されている西洋梨の中で、ラ・フランスが最も多く、栽培面積のおよそ56.8%を占めているため、「西洋梨=ラ・フランス」というイメージが広く浸透している一面があります。
ラ・フランスはどこの国で生まれたのですか?
ラ・フランスは、その名前が示す通りフランスで誕生しました。正確な親品種は特定されていませんが、1864年にクロード・ブランシュ氏によって偶然発見され、その卓越した美味しさから「フランスを代表する果物」という意味を込めて「ラ・フランス」と名付けられたと伝えられています。
なぜラ・フランスは山形県で多く栽培されているのでしょうか?
ラ・フランスの栽培には、冷涼かつ降水量の少ない気候が適しています。山形県の内陸部は、まさにこの条件に合致する地域です。加えて、昼夜の気温差が大きいことや、水はけの良い土壌であることも栽培を後押ししており、100年以上も前から洋梨の栽培が盛んに行われてきました。現在、山形県はラ・フランスの国内生産量の約8割を占めており、その作付面積は約708ヘクタールにも及びます。まさに「洋梨王国」と呼ぶにふさわしい状況です。青森県や長野県でも栽培されていますが、山形県が圧倒的な生産量を誇っています。