フランスの美食文化を象徴するスイーツの一つに「ガレット・ブルトンヌ」があります。この素朴で奥深い味わいの焼き菓子は、見た目のシンプルさと裏腹に、バターの豊かな風味とサクサクとした食感が魅力です。ブルターニュ地方に起源を持つガレット・ブルトンヌは、長い歴史を経て愛され続けている伝統的なお菓子です。本記事では、その歴史と魅力を探り、なぜ現代でも多くの人々の心を捉え続けるのかを解説します。
「ガレット・ブルトンヌ」はどのようなものか?
「ガレット・ブルトンヌ」は、フランス発祥のバターをたっぷり使ったディスク状の厚焼きサブレで、日本でも一般的な焼き菓子となっています。「ブルトンヌ」とは「ブルターニュ地方風」を意味し、ブルターニュ地方はフランス北西部、イギリス海峡沿いに位置する半島です。かつてアングロサクソン人に追われてケルト人がイギリスからこの地に渡った際、彼らはイギリスのビスケット菓子「ショートブレッド」を持ち込みました。これをブルターニュの特産である有塩バターと共に円形に仕上げたのが「ガレット・ブルトンヌ」です。表面の模様は、太陽の光を模したデザインとされています。
ガレット・ブルトンヌの魅力とは?
バターの割合が多い焼き菓子であり、その独特な点は粉と同量のバターを使用することです(通常のサブレでは粉の約2/3程度が普通です)。豊富なバターのおかげで、濃厚な味わいに加え、サクサクした食感とほろっと崩れる食感が魅力です。
ブルターニュ地方は酪農が盛んな地域であり、バターを含むさまざまな乳製品の生産が行われています。さらに、この地域は三方を海に囲まれているため漁業も盛んで、船上でも利用可能な保存性のために、特産の塩をバターに加えるようになったと言われています(ゲランド塩田もこのブルターニュに位置しています)。この有塩バターを利用することで、より深い味わいと甘塩っぱい独特の風味がガレット・ブルトンヌの特徴となっています。
ガレットの種類とその魅力
「ガレット」とはどのような意味があるのでしょうか。もともとは「円形の物」を指す言葉です。そのため「ガレット」と言えるものは、「円盤状」であれば様々な生地から作られるのです。
例として挙げられるのが「ガレット・デ・ロワ」です。これはフランスで1月6日のエピファニーに食べられる円形のお菓子で、日本でも近年その人気が高まっています。おもちゃの王冠が飾られ、中に入っている陶器のフェーブを見つけた人は一日だけ王様や女王様として楽しむことができるのです。このガレットは、折りたたんだパイ生地にフランジパーヌというしっとりとしたアーモンド生地を詰めたものです。また、フランス南部ではブリオッシュ生地を使ったガレット・デ・ロワもよく見られます。
さらに、ブルターニュ地方では「ガレット」というと実は「クレープ」のことを指します。そば粉を利用した生地を薄く焼き、砂糖とバターだけを挟んで楽しむものから、目玉焼きやハムなどを包んで軽食として楽しむものもあります。クレープタイプのガレットと他のガレットが混同されないよう、ブルターニュ地方ではお菓子のガレットを「パレ・ブルトン」と呼ぶこともあるそうです。
また千切りジャガイモを円形に焼いた「ジャガイモのガレット」もあり、円形である限りどんな生地でも「ガレット」と呼ばれるのです。
ガレット・ブルトンヌに欠かせない基本の材料とは?
ガレット・ブルトンヌを焼くには、特に「焼き型」と「抜き型」が重要です。
「焼き型」についてですが、このお菓子の生地はバターの量が多く、厚みのある仕上がりが求められます。したがって、通常のサブレとは異なり、そのまま型抜きをして焼くと、生地が薄く広がってしまいます。そこで、生地が広がらないように焼き型を使用します。普段は金属製のセルクルやタルトリングが使われますが、手元にない場合はマフィン型でも代用可能です(ただし、一部の型ではわずかに台形になるかもしれません)。焼く前に型にバターを塗って、生地がくっつかないようにするのがポイントです。
生地が広がらないようにセルクルやタルトリングを使用します。
型の内側にはバターを塗っておきます。マフィン型でも対応可能です。
また、使い捨てカップを使う選択肢もあります。これならバターを塗る手間や後片付けが不要です。ただし、焼いたときに変形しにくいしっかりとしたタイプを選ぶことが大切です。
さらに必要なのが「抜き型」です。焼き型より一回り小さいものが理想です。焼き型のサイズでそのまま抜いてしまっては、後から焼き型にセットしにくいため、作業がしにくくなります。抜き型を小さくすることで、塗り卵や模様を描いた後でもスムーズに焼き型に合わせられます。
セルクルと一回り小さい抜き型を用意します。生地を焼き型と同じサイズで抜くと、後でうまく焼き型にはまりません。
ガレット・ブルトンヌ作りのポイント
ガレット・ブルトンヌを作る手順は簡単に見えますが、いくつかのコツがあります。生地にはバターが多く含まれているため、1の段階では非常に柔らかく、型抜きが難しいことがあります。そのため、生地をまず伸ばしてからしっかりと冷蔵庫で冷やし、固める必要があります。
やわらかい生地はすぐには型抜きできない状態です。
セロファンで挟んで広げると、ベタつきを防ぎます。効率よく型抜きするために、生地を2個分の抜き型の幅程度に広げてください。
生地が柔らかいので、持ち上げずに平らなものに滑らせるように移動させてから冷やすと良いでしょう。
生地がしっかりと冷えた状態で抜くと、きれいに型が取れます。
また、ガレットの中心までしっかりと火が通り、香ばしい味わいが得られるよう、しっかりと焼いてください。
模様が白い場合はまだ焼きが足りません。
模様にも焼き色が付き、側面にもしっかりと香ばしい色が入っていれば、焼きあがりの完成です。
作り方の手順と重要なコツは?
せっかく模様を描いたのに、綺麗に焼き上がらなかったり、平らにならなかったりすることがあります。その対策をご紹介します。
卵を塗りすぎると模様が埋まり、側面に垂れたり模様が薄くなることがあります。卵液は一方向に均一になるように塗りましょう。
フォークは寝かせて使うと、表面を深掘りしすぎずに済みます。フォークの先端は、時々ペーパーで拭くようにしましょう。
お好みで模様を楽しむのもおすすめです。インスタントコーヒーを少量の水で溶かし、色を確認しながら卵黄に混ぜ入れます。
スパイスの瓶の底をアルミホイルで覆い、10~15分焼いたところで軽く押さえ、平らに整えます。