グリオットチェリーとは?お菓子作りの名脇役、その甘酸っぱい魅力に迫る

お菓子作り好きなら一度は目にしたことがあるであろう、グリオットチェリー。タルトやケーキの彩りに、チョコレートのアクセントに、その甘酸っぱさが絶妙なバランスを生み出します。でも、その正体は意外と知られていないのではないでしょうか?グリオットとはフランス語でサクランボを意味し、特に酸味が強い品種を指します。生食には向きませんが、加工することでその風味は格段にアップ。お菓子作りの世界では、まさに名脇役として欠かせない存在なのです。この記事では、グリオットチェリーの魅力に迫り、お菓子作りにどのように活かせるのかを徹底解説します。

グリオットの語源、さくらんぼの分類とグリオットチェリーの位置付け

グリオットという言葉は、フランス語でサクランボを指し、その名前が示す通り、サクランボの一種です。一般的に、サクランボは大きく分けて3つの種類があり、それぞれ特徴と用途が異なります。まず、そのまま食べることが多く、ジャムなどにも加工される、甘みが強く美味しい「スイートチェリー(甘果桜桃)」があります。これは、日本の佐藤錦などに代表される、一般的に私たちが「さくらんぼ」と聞いて想像する品種です。次に、生食にはあまり向かず、主にジャムやシロップ漬け、お菓子や料理のソースとして利用される「サワーチェリー(酸果桜桃)」があります。グリオットチェリーは、まさにこのサワーチェリーの一種であり、その程よい酸味が、加熱調理や加工によって奥深い風味に変化します。そして最後に、強い酸味を持ち、中には渋みや苦味があるものもあり、主にジビエ料理などに用いられる「ワイルドチェリー(野生桜桃)」があります。ワイルドチェリーは、食用だけでなく、抽出成分がお肌に良いとされ、石鹸やボディケア用品にも使われることがあります。このように、グリオットチェリーはサワーチェリーとして、お菓子作りの世界で特別なポジションを確立しているのです。

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さくらんぼの歴史と世界の生産状況:意外な原産国トルコ

サクランボの歴史を調べてみると、原産地が現在のトルコであるという意外な事実に気づかされます。紀元前7000年以上前からトルコで栽培されていたと考えられており、その後、シルクロードを通ってアジアへ、そしてローマ帝国時代にはヨーロッパへと広がり、新大陸発見後にはアメリカ大陸にも伝わりました。日本には江戸時代に中国(清)を経由して伝わり、当初は薬用として用いられましたが、明治時代以降に本格的な栽培が始まりました。現在、世界のサクランボ生産国として、アメリカが最も有名ですが、実は原産国であるトルコが、圧倒的な生産量で世界第1位を誇っています。2020年のデータによると、トルコの生産量は約70万トンで、これは世界の総生産量の約25%に相当します。一方、日本は高品質なサクランボを生産していますが、生産量では世界で20位となっています(これらの情報はWikipediaを参照しています)。このように、サクランボはトルコを起源とし、長い歴史と広がりを経て、世界中で様々な形で親しまれ、栽培されている果物なのです。

グリオットチェリーの代表的な加工と活用法:シロップ漬けとキルシュヴァッサー

シロップ漬けに使われるシロップは、ただの砂糖水ではなく、「キルシュヴァッサー」という蒸留酒をベースに作られることが多く、グリオットチェリーの風味を最大限に引き出すための重要な要素となっています。キルシュヴァッサーとは、ドイツ語で「Kirsche(キルシュ)」がサクランボを意味し、種子ごと砕いたサクランボを醗酵させ、6週間ほど寝かせた後に蒸留して作られる、無色透明のスピリッツです。その製法から、「サクランボをサクランボに漬けたサクランボ」と表現できるほど、サクランボを贅沢に使った食材と言えるでしょう。アルコール度数は一般的に38%から45%程度と高く、その芳醇な香りは、お菓子作りの風味付けだけでなく、カクテルの材料や、チョコレートの香りづけにも用いられます。グリオットチェリーのシロップ漬けは、キルシュヴァッサーの香りとチェリーの酸味、砂糖の甘さが一体となり、お菓子や料理に深みと複雑な風味を加える、優れた加工食品なのです。

グリオットチェリーの代表的な活用例:ドイツ生まれの「フォレノワール」

グリオットチェリーを使ったお菓子としてよく知られているのが、「フォレノワール」です。この名前はフランス語で「黒い森」を意味し、そのルーツはドイツ南西部のシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)地方にあると言われています。シュヴァルツヴァルトは、針葉樹が生い茂る山岳地帯で、上から見ると森が黒く見えることが名前の由来とされています。また、この地域はさくらんぼの名産地であり、良質なチェリーが豊富に採れることが、フォレノワールの誕生に大きく影響しました。ドイツで生まれたこのお菓子は、フランスとの国境に近いアルザス地方にも広まり、フランス語で「フォレノワール」と呼ばれるようになったと考えられています。チョコレートスポンジ、生クリーム、そして甘酸っぱいグリオットチェリーとキルシュヴァッサーという組み合わせが特徴で、その奥深い味わいは世界中で愛されています。グリオットチェリーの酸味、チョコレートのほろ苦さ、キルシュヴァッサーの香りが絶妙に調和し、「黒い森」の魅力を表現しているかのようです。

お菓子作りに活用!おすすめのグリオットチェリー加工品

グリオットチェリーは、そのデリケートさから生のまま入手するのは難しいこともありますが、加工品であれば一年を通してさまざまなお菓子に利用できます。特に、シロップ漬け、フリーズドライ、ピューレなどは製菓材料として重宝されています。ここでは、特に本格的なフォレノワール作りに最適なグリオットチェリー加工品をご紹介します。

フォレノワールにおすすめのグリオットシロップ漬け

フォレノワールをはじめとする本格的な洋菓子には、高品質なグリオットシロップ漬けが不可欠です。たとえば、ドイツの「オデンワルドのグリオットシロップ漬け」は、厳選されたグリオットチェリーをキルシュヴァッサー風味のシロップに浸しており、その芳醇な香りと甘酸っぱさがデザートの風味を飛躍的に向上させます。しっかりとした果実の形が美しさを保ち、ケーキの飾りやムースの層に最適です。製菓材料店やオンラインストアで簡単に入手でき、常備しておけばプロのような仕上がりのお菓子を気軽に作れます。

家庭で楽しむグリオットチェリー:手作りスイーツへの応用と魅力

ご自宅でチーズケーキやタルトなどを作る際に、グリオットチェリーを加えてみてはいかがでしょうか。以前ご紹介した手作りのチーズケーキのように、いつものお菓子にチェリーの甘酸っぱさが加わることで、新たな味覚を発見できるかもしれません。瓶詰めのシロップ漬けやフリーズドライのグリオットチェリーは手軽に入手でき、生のチェリーの旬を気にせず風味を楽しめます。ムース、サブレ、ブラウニーなど、様々なスイーツに展開できます。お店で買うものとは違う、手作りならではの温かさと、グリオットチェリーの豊かな風味をぜひご家庭でお楽しみください。

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まとめ

グリオットチェリーは、フランス語でサクランボを意味する、甘酸っぱいサワーチェリーの一種で、その独特の風味からタルト、アイス、チョコレートなど、様々なお菓子に欠かせません。原産は意外にもトルコで、長い歴史を経て世界中に広まりました。特に、キルシュヴァッサーという香り高い蒸留酒に漬け込んだシロップ漬けは、お菓子に深みと豊かな香りをもたらし、プロの現場から家庭のお菓子作りまで広く利用されています。代表的な例は、ドイツ生まれの「フォレノワール」で、チョコレートとグリオットチェリー、キルシュヴァッサーの調和が世界中の人々を魅了しています。フォレノワールをベースにしたアントルメ、ボンボン、サブレ、ヴェリーヌ、ムース、ブラウニーといった様々なレシピは、グリオットチェリーの可能性を広げ、お菓子作りの楽しさをさらに深めます。ぜひご自宅でのスイーツにグリオットチェリーを取り入れ、その特別な風味と無限の応用性を体験して、いつものおやつを特別なものに変えてみてください。

グリオットチェリーと一般的なさくらんぼ(甘果桜桃)は何が違うの?

グリオットチェリーは、サワーチェリー、つまり酸味の強いさくらんぼの一種です。そのため、そのまま食べるよりも、ジャムやシロップ、お菓子の材料、料理のソースといった加工品として利用されることがほとんどです。一方、佐藤錦などに代表される一般的なさくらんぼは、甘果桜桃と呼ばれ、甘みが強く、生で食べられるのが特徴です。グリオットチェリーは、加熱や加工によって酸味がまろやかになり、独特の香りと風味が増し、濃厚なデザートに奥深さを与えます。

キルシュワッサーってどんなお酒?お菓子以外にも使える?

キルシュワッサーは、ドイツ語でさくらんぼを意味する「Kirsche」が語源の蒸留酒です。種子ごと砕いたさくらんぼを発酵させ、約6週間熟成させた後、蒸留して作られます。無色透明でアルコール度数が高く、豊かな香りが特徴です。お菓子作りによく使われるのはもちろん、カクテルの材料としても重宝され、特にチョコレートとの相性が抜群です。少量であれば、肉料理やソースに加えて風味を豊かにすることもできます。

グリオットチェリーってどこで買えるの?

生のグリオットチェリーは、国内での流通量が限られており、旬の時期である夏に、一部の高級スーパーやオンラインストアでのみ手に入る場合があります。しかし、シロップ漬け、フリーズドライ、ピューレなどの加工品は、製菓材料店や大手スーパーの製菓コーナー、オンラインショップなどで比較的簡単に見つけることができます。フォレノワールのような本格的なお菓子を作るには、品質の良いシロップ漬けがおすすめです。

グリオットチェリーを使ったおすすめのレシピは?

グリオットチェリーは、タルト、クラフティ、マフィン、パイといった焼き菓子によく合います。その他、パンケーキやヨーグルトのトッピング、アイスクリームやシャーベットの材料としても人気があります。チョコレートとの相性が特に良いため、フォンダンショコラやガトーショコラ、ボンボンショコラやブラウニーフォレノワールなど、様々なチョコレート菓子に加えるのがおすすめです。

フォレノワールとは?名前の由来

フォレノワールは、フランス語で「黒い森」を意味する、ドイツ生まれのケーキです。チョコレートのスポンジ、ホイップクリーム、そしてグリオットチェリーと、風味づけにキルシュ酒を使った伝統的なお菓子で、濃厚な味わいと甘酸っぱさが特徴です。名前は、生まれた場所であるドイツ南西部のシュヴァルツヴァルト(黒い森)地方の、上から見ると黒く見える針葉樹林と、この地域がチェリーの産地であることに由来します。

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