和菓子 冬
冬の寒さが厳しくなるにつれ、体の芯から温まるような和菓子が恋しくなります。季節の移ろいとともに変化する和菓子は、日本の文化や自然美を繊細に表現しています。冬ならではの素材を使った、味わい深い和菓子の数々。それらを眺めるだけで、心が癒されていくようです。今回は、冬の和菓子の魅力について探っていきましょう。
冬の和菓子は?
冬の寒さが身に染みる季節、温かくて優しい和菓子が恋しくなるのは必然とも言えましょう。冬の和菓子の世界には、陰と陽のコントラストが鮮やかに表れています。
陽の象徴とも言えるのが、バラエティ豊かな餅菓子の数々。花びら餅、いちご大福、うぐいす餅、椿餅、切山椒など、個性溢れる餅菓子が一堂に会します。中でも、冬の果実であるいちごを贅沢に使ったいちご大福は、まさに冬ならではの逸品と言えるでしょう。
一方、冬の和菓子には、陰を担う存在もあります。その代表格が「おしるこ」です。あずきの風味が染み込んだお餅が、体の芯から温めてくれる一品。他にも、「福梅」や「ぜんざい」など、甘さ控えめながらも上品な味わいが特徴の和菓子が並びます。冬の和菓子は、職人の技が冴え渡る季節限定の逸品揃い。寒い冬には、温かくて優しい和菓子を味わって、心も体も温まるのが何よりの贅沢ではないでしょうか。
冬の和菓子一覧
冬の訪れとともに、季節限定の和菓子が店頭に並び始める。寒さに負けない温かな甘みが特徴の「ぜんざい」は、小豆に砂糖や塩を加えて炊き上げ、餅や白玉を添えた冬の定番和菓子だ。小豆本来のコクのある味わいと香りを堪能できるほか、食事をしたような満腹感が得られる。古代日本神話の宝庫、出雲地方に伝わる「神在祭」に供した「神在餅」に由来する神聖な和菓子でもある。
早春の訪れを感じさせる一品「花びら餅」は、京都を中心に全国各地で毎年お正月に食べられる餅菓子だ。求肥に味噌あん・ごぼうを乗せ、二つ折りにして半月型に整えた華美な姿と独特の味わいに魅力がある。平安時代の宮中行事「歯固めの儀」で食された本膳料理を由来とし、のちに儀式をはなれて民間の和菓子として作られるようになった。
石川県金沢市の正月の縁起菓子「福梅」は、梅の花を象った最中種にあんと水飴を詰め、皮の表面に砂糖をまぶして作る。梅花型の華麗なデザインと素材をいかした伝統の味わいが特徴だ。明治7年、金沢で藩主庭園の「兼六園」が一般開放した際にふるまわれた祝菓子に由来している。
冬に多く出回る「苺」を用いたフルーツ菓子の定番「いちご大福」は、求肥のお餅にあんといちごを包んで作る。安心感のある素朴な風貌と、甘み・酸味がほどよく溶け合う贅沢な味わいが魅力ポイントだ。1980年代後半に誕生したといわれているが、詳細は不明である。
冬から春にかけて食べられる餅菓子「うぐいす餅」は、うぐいすを模した生き生きとしたデザインや、あざやかなウグイス色などのヴィジュアルの要素が際立つ。豊臣秀吉がうぐいす餅と名付け、その後、お城を出てすぐの場所に開店した店で売られたことから、「御城之口餅」とも呼ばれるようになった。
道明寺粉を練って作ったお餅を椿の葉っぱで挟んで食べる「椿餅」は、古くから椿がピークを迎える冬〜早春にかけて食されてきた。もっちりした食感とあんこの甘み、椿の葉っぱが醸し出す艶やかな雰囲気が魅力ポイントだ。中国伝来の唐菓子を由来とし、平安貴族で流行した蹴鞠の際のおやつに用いられた。
山形県や山梨県など各地で食されている冬の縁起菓子「切山椒」は、上新粉に山椒の汁または粉を混ぜて作った生地でお餅を作り、短冊形に切り分ける。
冬の和菓子の楽しみ方
冬ならではの素材を活かした和菓子は、見た目も味わいも格別。香ばしく焼き上げた栗を使った「栗きんとん」や、柚子の爽やかな香りが魅力の「柚子羊羹」など、季節感あふれる和菓子が冬の茶席を彩ります。また、「おしるこ」や「ぜんざい」といった温かいお汁粉は、体の芯から温まると同時に、優しい甘さが心までほぐしてくれます。
お正月もあることから、ほかの季節よりも鮮やかな色合いの和菓子がたくさん出回るのも冬ならでは。松竹梅や鶴など、おめでたいモチーフも目を楽しませてくれます。
人が集う機会の多いこの時期、冬の和菓子を楽しむなら温かいお茶との組み合わせがおすすめ。番茶や黒豆茶、ほうじ茶など、香ばしい風味のお茶が和菓子の味をさらに引き立ててくれるでしょう。
友人を招いてのお茶会や、家族団らんのひとときに、みんなで和菓子を囲んでみてはいかがでしょうか。和菓子の歴史や由来に思いを馳せるのも楽しいですね。ほっこりとした温かな時間が過ごせるはずです。
まとめ
冬の和菓子は、季節の素材を巧みに取り入れ、目でも舌でも楽しませてくれる芸術作品です。寒い冬に和菓子を味わうことで、日本の伝統と季節の移ろいを感じ、心身ともに温かくなれるのです。