ウィーン菓子

ウィーンは古く由緒ある歴史を誇る首都であり、その伝統と格式が菓子にも色濃く反映されています。豊かな皇室文化が育んだウィーン菓子は、気品ある味わいと見た目の美しさで世界中の人々を魅了しています。甘美な香りと上品な味わいが特徴的なこれらの菓子は、ウィーンを訪れた旅人の心に永遠の思い出を残すことでしょう。

ザッハトルテ

ザッハトルテは、ドイツの伝統的な味わいを凝縮した絶品のチョコレートケーキです。シンプルな見た目とは裏腹に、ナッツやドライフルーツを練り込んだ生地とたっぷりのチョコレートが織りなす複雑で奥行きのある味わいが魅力です。シュヴァルツヴァルト地方の家庭で長く親しまれ、今やドイツを代表するお菓子の一つとして知られています。 ザッハトルテは、チョコレートのバターケーキにアプリコットジャムのナパージュとチョコレート入りのフォンダンをかけて仕上げられます。スポンジにアプリコットジャムを挟むものもあり、生クリームを添えて提供されることが一般的です。表面のつやつやとしたフォンダンの仕上げには、テンパリングなど熟練の技が必要とされています。 フォンダンには砂糖の量が多いため、甘みが強く日本人の一部では味が合わないケースもあります。そのため、日本向けにフォンダンをチョコレートに変更するなどの改良品も販売されています。 ザッハトルテは1832年にフランツ・ザッハーが考案し、その後ホテル・ザッハーで提供されるようになりました。レシピが外部に知られたことから、ウィーンの老舗デメルとの間で販売権をめぐる「甘い七年戦争」が起きました。その結果、双方がザッハトルテを販売できることになり、ホテル・ザッハーではスポンジにアプリコットジャムを挟む一方、デメルでは挟まないという違いがつくられました。

アプフェルシュトゥルーデル

ウィーンを代表する伝統的なお菓子、アップルシュトゥルーデル。その美しい姿と芳醇な風味は、まさに芸術品そのものです。リンゴとレーズン、シナモン、砂糖が詰まった層状の薄い生地は、一口ごとにほんのりとカラメル風味が広がります。ザクザク感と甘酸っぱいリンゴの味わいが絶妙に調和しています。 この名品の起源は、トルコのバクラヴァにあるといわれています。ハンガリー人がバクラヴァの薄い生地にリンゴを包んだことから生まれたと考えられています。シロップをかけないため、甘みは控えめで食べやすいのが特徴です。 職人技が光る調理工程が、アップルシュトゥルーデルの魅力を生み出しています。新聞紙が透けるほどの薄さを実現するため、生地にサラダ油を加え、グルテンを生成させ、休ませることが重要なポイントとなります。 ウィーンのカフェでは、バニラアイスクリームと一緒に提供されることが多く、温かいシュトゥルーデルと冷たいアイスの相性は抜群です。ドイツやオーストリア由来のお菓子ですが、日本でも入手可能です。ぜひ一度、この伝統の味をご堪能ください。

カーディナルシュニッテン

ここでは、ドイツ発祥の伝統的な冬の家庭料理「カーディナルシュニッテン」をご紹介します。この名物料理は、豚肉の切り身をバターで焼き、白ワインビネガーを加えて煮込んだ上品な一品です。薄切りした玉ねぎスライスと香り高いブイヨンで味付けされ、香草を加えることで風味が一層引き立ちます。 寒い季節に家族やゲストとこの濃厚なメインディッシュを囲むのは、ドイツの恒例の風習です。肉汁とスパイスのあふれる香りに包まれながら、昔ながらの洗練された味わいを堪能できるでしょう。マッシュポテトやナゲット、赤キャベツなどの付け合わせと共に供されるこの豪華な一品は、ドイツの家庭料理を代表する名物として広く愛されています。 本場の味わいを求める際は、メレンゲ生地と卵黄生地を交互に絞り上げてふんわり焼き上げた生地の間にコーヒー風味のクリームを挟んだお菓子「カーディナルシュニッテン」をお試しください。細長い棹状に仕上げられ、一切れずつ切り分けて販売されることが多いこのお菓子は、日本でも手に入りやすくなっています。フワフワの生地とくどくない甘さのコーヒークリームが調和した、日本人の口に也合う一品です。

リンツァートルテ

リンツァートルテは、アーモンドの香り高いナッツ生地にレッドカレントジャムを挟み込んだ伝統的なオーストリア菓子です。シンプルな見た目とは裏腹に、甘酸っぱい味わいの奥深さが魅力的です。 この菓子の原型は13世紀の修道院に遡り、当初はクリスマス期間限定の貴重な贈り物でした。18世紀以降は宮廷で人気が高まり、ウィーン郊外の町リンツから名前が付けられました。 今や世界中で愛されるリンツァートルテは、ウィーン旅行の必食メニューのひとつ。老舗店では伝統の技とレシピを守りながら、新しい風味の提案にも力が注がれています。この歴史あるお菓子に、いつまでも新鮮な魅力が宿り続けることでしょう。

クーゲルフプフ

クーゲルフプフ、この不思議な言葉は一聞するとニヤリとさせられる魔力を秘めています。ドイツ語で「丸いパン」を指す名称ですが、日本では発音の面白さからユーモア溢れる存在として親しまれています。 この言葉の魅力は、発音する際の唇の動きにあります。まるで赤ちゃんが無邪気に口を動かすかのように、クーゲルフプフを発音するたびに顔がほころんでいくのです。ストレス社会を生きる現代人にとって、思わずニヤリとさせてくれるこの魔法の言葉は、癒やしの存在と言えるでしょう。 更に驚くべきは、クーゲルフプフの発音が顔の筋トレにもなるという効果です。発音時に口周りの小さな筋肉を動かすことで、肌のたるみを防ぐ働きがあるのだとか。楽しみながら無理なくエクササイズができる、まさに一石二鳥の素晴らしい言葉なのです。 日常にそっと溶け込んだクーゲルフプフ。この独特な言葉に出会えたことに、心から感謝したいと思います。ストレス発散にも、自然な筋トレにも、そして何より楽しい時間を過ごすための魔法の存在として、これからも大切にされていくことでしょう。

バニラキプフェル

バニラキプフェル、それは三日月の形をした上品な香りが特徴的なドイツ生まれの伝統菓子です。バニラビーンズの芳香が口いっぱいに広がり、サクサクとしながらもしっとりとした食感が堪能できます。 この菓子は、クリスマスシーズンの定番スイーツとして親しまれています。クリスマスという祝福の季節に、幸運をもたらす馬蹄形を思わせる三日月の形が選ばれたのだとか。バニラの甘い香りに包まれながら、家族や友人と過ごす時間はまさに冬の醍醐味です。 バニラキプフェルは、生地を棒状に捏ね上げた後、三日月型に丸めて焼き上げます。バター分が多く抜き型には向かないため、手作業で形作られるのが特徴的です。適度な厚みが、おいしいホロホロ感を生み出しているのです。焼きたての香ばしい香りが家中に広がる瞬間、幸せな時間が訪れます。

インペリアルトルテ

インペリアルトルテは、ウィーンを代表する伝統的なチョコレートケーキです。ミルクチョコレートのグラサージュがかかっており、内側にはマジパン、チョコレート、アーモンドのガナッシュが何層にも重なった贅沢な味わいが特徴です。 ビターアーモンドの香り高い風味が魅力で、ザッハトルテやリンツァートルテとともに、ウィーンの"三大トルテ"の一つとして知られています。 1873年、ホテル・インペリアルのオープン時に誕生したこのケーキは、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が愛したお気に入りで、当初は皇室関係者のみに振る舞われていたことから、日本ではあまり知られていません。 ザッハトルテが甘み豊かなのに対し、インペリアルトルテはアーモンドの香りが濃厚で、しっかりとしたチョコレート風味が魅力的です。ミルクチョコレートのグラサージュはザッハトルテのようなフォンダンではなく、なめらかな口当たりが特徴的です。ビターアーモンドの独特の香りに最初は驚かれるかもしれませんが、杏仁を思わせる上品な甘い香りがアクセントとなっています。

ウィーン菓子 まとめ

ウィーン菓子は日本ではあまり知られていませんが、魅力溢れるお菓子が数多くあります。フランス菓子やウィーン菓子は本場で食べてみたいものですね。イタリア菓子も素晴らしいと言えます。ホテルザッハーのザッハトルテやインペリアルトルテは、本場の味わいを日本でも楽しめる貴重な存在です。高価ではありますが、ぜひ一度お試しいただきたい逸品です。

まとめ

ウィーンの伝統と格式が込められたこれらの菓子は、一口食べれば懐かしい風味と共に優雅なウィーンの街並みを想起させてくれます。歴史ある都市の文化がひとつひとつの菓子に宿り、気品溢れる味わいはまさに芸術品そのものです。ウィーンの旅の醍醐味は、菓子を味わうことで極まるでしょう。

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