秋の味覚の代表格、栗。一口に栗と言っても、実は様々な種類があり、それぞれに風味や食感が異なります。この記事では、代表的な栗の種類についてご紹介します。今年こそ、栗を味わい尽くしてみませんか?
栗について
秋の味覚として親しまれる栗には、主に4つの種類が存在します。日本でよく見かける「ニホングリ」、甘栗でおなじみの「チュウゴクグリ」、マロングラッセに使われる「ヨーロッパグリ」、そして日本では珍しい「アメリカグリ」です。外見は似ていますが、それぞれの地域に合った特性を持っています。
ニホングリは、野生のシバグリを改良したもので、実が大きく風味豊かなのが特徴です。ただし、甘みがやや控えめで、渋皮が剥がれにくいという側面もあります。
対照的に、チュウゴクグリは甘みが強く渋皮も剥きやすいのですが、実が小さく、クリタマバチによる被害を受けやすいため、日本では栽培されていません。よく「天津甘栗」の原料として使われるのは、「板栗」という品種です。
ヨーロッパグリは、小ぶりながらも渋皮が剥きやすいという特徴があります。しかし、病害虫に弱いため、こちらも日本では栽培されていません。
アメリカグリは、実の品質が良く、丈夫な木は木材としても利用されていましたが、20世紀初頭に発生した「栗胴枯病」によってほぼ全滅しました。現在でも一部地域で栽培されていますが、病気に弱いため、日本での栽培は困難です。
栗の種類
栗の品種についてご紹介します。
筑波
栗の代表的な品種として知られる「筑波」は、「岸根」と「芳養玉」を掛け合わせたもので、昭和34年にその名が与えられました。その実は甘みが強く、上品な香りと良質な味わいが特徴です。果皮はつややかな赤褐色で、20~25gと比較的大きな実をつけます。貯蔵にも適しており、加工品の原料としても重宝されています。収穫時期は、9月中旬から10月にかけてです。
丹沢
8月下旬、お店に顔を出す早生みかんの「丹沢」。これは「乙宗」と「大正早生」を掛け合わせた品種で、昭和34年にその名が登録されました。北海道と沖縄以外なら、日本全国どこでも育てられています。重さは20~25gと、みかんとしては大きめ。皮の色は薄い茶色です。果肉は粉っぽく、甘さや香りは控えめながらも、早生種の中では特に美味しいと評判です。
銀寄(ぎんよせ)
大阪府、とりわけ豊能郡能勢町歌垣地区倉垣がルーツである、由緒正しい栗の品種、銀寄。「銀由」や「銀善」という名でも親しまれていましたが、現在は「銀寄」の名で広く知られています。その実は大きく、20~25g程度。口に含むとほっくりとした食感で、上品な甘さと豊かな風味が広がります。ただし、貯蔵にはやや難があり、加工にはあまり向きません。旬は9月下旬頃から。名高い「丹波栗」を代表する品種の一つです。
石鎚(いしづち)
晩生品種である石鎚は、10月上旬頃から市場に出回ります。これは「岸根」と「笠原早生」を掛け合わせたもので、昭和43年にその名が付けられました。特徴的なのは、赤褐色で艶やかな果皮。重さは約25gとやや大きめで、風味豊かな甘さと香りを持つ粉質の果肉が楽しめます。保存性に優れ、煮崩れしにくいことから、加工品の材料としても重宝されています。旬は11月上旬頃までです。
利平(りへい)
和栗と中国栗の血を引く「利平」は、9月中旬から下旬に旬を迎える中生品種です。昭和25年に品種登録され、その実は粉質で甘みが強く、蒸し栗に最適です。ただし、果肉が崩れやすいため、シロップ漬けなどの加工には向きません。光沢のある濃い褐色の果皮に包まれた実は、20~25gほどの重さがあります。
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国見
「丹沢」と「石槌」を親に持つこの品種は、1983年に登録されました。お彼岸の頃に旬を迎える早生種で、早いものでは9月初旬から味わえます。褐色の光沢がある果皮を持ち、重さは約25g。果肉はやや粉っぽく、甘みや風味は控えめなので、甘露煮など加工に適しています。
岸根(きしね)
山口県美和町で生まれた「岸根」は、長い年月をかけて育まれた栗の品種です。その実は約30gと大きく、上品な甘さとほくほくとした食感が特徴です。また、保存がきくため、様々な用途に利用されています。旬は10月中旬以降となる晩生種です。
伊吹(いぶき)
重さ約20gの栗、「伊吹」は早生品種として知られています。「銀寄」と「豊多摩早生」を掛け合わせ、昭和34年に品種登録されました。実は粉質で、ほどよい甘さが特徴。香りは穏やかですが、品質は良好です。旬は9月上旬から中旬にかけて。早生栗としては他に「出雲」や「森早生」、「日向」などが知られています。
ぽろたん
従来の日本栗は調理時の渋皮剥きに手間がかかるものでしたが、近年、渋皮が容易に剥ける新品種として「ぽろたん」が注目されています。調理前に鬼皮に切れ目を入れることで、加熱後に渋皮だけを簡単に取り除くことが可能です。茹でるだけでなく電子レンジでの加熱も可能な手軽さも魅力です。一粒約30gとやや大きめで、果肉は鮮やかな黄色。栗本来の甘さと、ほくほくとした食感をお楽しみいただけます。品種登録は2007年(平成19年)。「550-40」と「丹沢」を親に持ちます。