冬の味覚として親しまれる温州みかん。誰もが知る名前ですが、その読み方は「うんしゅうみかん」が正しく、「おんしゅうみかん」と誤読されることも少なくありません。さらに、なぜ「温州」という名前が付けられたのか、その由来を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。実は、温州みかんの名前には、遠い異国の地、中国との深いつながりが隠されているのです。この記事では、温州みかんの名前の由来となった場所、そして日本で広く親しまれるようになるまでの歴史を紐解きます。
温州みかんの正しい読み方と名称の起源
温州みかんは、日本を代表する柑橘類の一つですが、その読み方を「おんしゅう」と間違える人が少なくありません。正しくは「うんしゅう」と発音します。読み方だけでなく、「温州」という名前の由来に疑問を持つ人もいるでしょう。温州みかんのルーツは日本ではなく、遠く離れた中国にあります。名前は、中国の浙江省にある柑橘の有名な産地、温州市(現在の温州府)にちなんで付けられました。古くからみかんの名産地である温州府のように「素晴らしいみかんになるように」との願いを込めて「温州みかん」と名付けられたと言われています。この名称が広く使われるようになったのは明治時代以降で、それ以前は各地で様々な名前で呼ばれていました。例えば、江戸時代末期に長崎を訪れたドイツ人医師シーボルトが作成した温州みかんの標本には「Nagashima(長島)」と記されており、当時の温州みかんが地域名で呼ばれていたことが分かります。このように、温州みかんの名称は、その歴史の中で変化し、中国の地名に由来しながらも、日本での普及とともに現在の呼び名が確立されました。
温州みかんの日本における発祥の地と伝来の軌跡
温州みかんの名前が中国の温州市に由来する一方で、原産地は中国から直接持ち込まれたものではなく、日本の鹿児島県だとされています。温州みかんの起源には様々な説がありますが、有力な説の一つは、約500年前に中国から伝わったみかんの種が日本で偶然発芽し、現在の温州みかんの祖先となった「偶発実生」であるというものです。「偶発実生」とは、親が特定できない状況で、その土地の気候や土壌に適応し、美味しい果実が自然に生まれた現象を指します。温州みかんを日本に持ち込んだ人物は特定されていませんが、当時中国の黄岩県に留学していた天台宗の僧侶が持ち帰ったという説が有力です。また、温州みかんの発祥の地が鹿児島県、特に長島であるという証拠もあります。江戸時代末期に長崎に滞在したドイツ人医師シーボルトは、日本の植物研究として温州みかんの標本を作成し、そこに「Nagashima(長島)」と記載しました。これは、当時の長島が温州みかんの主要な産地であり、発祥の地であることを示す重要な証拠とされています。このように、温州みかんは中国に名前の由来を持ちながらも、日本の地で独自に進化し、現在の形になった珍しい品種と言えるでしょう。
世界で「サツマ(Satsuma)」と呼ばれる温州みかん:その名の由来
温州みかんは日本国内で広く親しまれていますが、海外では「サツマ(Satsuma)」という名前で呼ばれることが一般的です。「サツマ」という名称の由来もまた、温州みかんの歴史と深く関係しています。明治時代の初め、日本に駐在していたアメリカ大使館員の夫人が、日本の柑橘類に魅了され、当時まだ名前が定まっていなかった温州みかんの苗木を薩摩国(現在の鹿児島県)で購入しました。彼女はその苗木をアメリカに送り、これがきっかけで温州みかんはアメリカをはじめとする海外へ広まることになります。苗木が購入された地名である「薩摩(Satsuma)」が品種名として定着し、現在に至るまで海外で広く使われています。日本では中国の地名に由来する「温州」という名前で呼ばれ、海外では原産地であり、最初に海外に紹介された日本の地名である「薩摩」にちなんで「サツマ」と呼ばれるのは、非常に興味深い歴史の巡り合わせと言えるでしょう。
まとめ
温州みかんは、その名前の由来が中国の柑橘名産地「温州」にある一方、日本の鹿児島県が発祥の地であり、約500年前に中国から伝わった偶発実生によって誕生したと考えられています。海外では、明治時代に薩摩からアメリカへ渡った経緯から「サツマ」と呼ばれ、日本の地名が世界に広まるきっかけとなりました。温州みかんの歴史は、単なる果物の話ではなく、国際的な交流、偶然の発見、そして絶え間ない努力が織りなす、文化と農業の深い歴史を物語っています。
温州みかんの正しい読み方
温州みかんは「うんしゅうみかん」と読むのが正解です。「おんしゅうみかん」と読んでしまう方もいますが、正式には「うんしゅう」と発音し、そのように表記されます。
温州みかんの「温州」の由来
温州みかんの名前の由来は、中国の浙江省にある温州市(現在の温州府)という柑橘類の有名な産地にあります。その地で採れるみかんが非常に優れていたため、「温州のみかんのように良い」という意味を込めて名付けられました。
温州みかんはどこから来たの?
温州みかんは、日本の鹿児島県が発祥の地とされています。およそ500年ほど前に中国から渡ってきたみかんの種が、日本国内で自然に生まれた「偶発実生」が起源だと考えられています。ドイツ人医師シーボルトの記録にも、長島が発祥の地であることを示す記述が残されています。