柑橘界のトロと呼ばれる「せとか」。濃厚な甘みととろけるような食感は、一度食べたら忘れられない魅力を放ちます。しかし、その美味しさとは裏腹に、栽培の難しさもよく知られています。この記事では、「せとか栽培は難しい」と言われる理由を徹底的に解説し、成功のための秘訣を余すことなくお伝えします。関連キーワードも網羅し、せとか栽培の疑問を解消しましょう。
※本記事で紹介している栽培方法は、あくまで一例であり、栽培の成功を保証するものではありません。お住まいの地域の気候や土壌の条件は様々ですので、ご自身の環境に合わせて栽培方法を調整してください。栽培に関するいかなる結果についても、当サイトは責任を負いかねますのでご了承ください。
せとかとは:濃厚な甘みと香りが魅力の高級柑橘

せとかは、「清見」と「アンコールNo.2」の交配種に「マーコット」を掛け合わせて誕生した、柑橘の中でも特に人気の高い品種です。濃厚な甘みと果汁の多さから「柑橘のトロ」とも称され、高級柑橘として知られています。
果皮はなめらかで薄く、手で簡単にむくことができ、果肉はとろけるような食感。内側の薄皮(じょうのう膜)も非常に薄いため、そのまま丸ごと食べられるのが大きな魅力です。糖度は13~14度と非常に高く、酸味は穏やかで、口に入れた瞬間にジューシーな甘さと豊かな香りが広がります。
名前の由来は、育成地近くの「早崎瀬戸」や温暖な瀬戸内地域での栽培への期待、そして何よりもその華やかな香りにちなんで名付けられました。
せとかの旬の時期と主な産地
せとかが最も美味しい旬の時期は、1月から4月頃で、特に3月頃がおすすめです。ハウス栽培のせとかは1月から2月頃に、露地栽培のものは3月から4月頃に市場に出回ります。中でも愛媛県産のものが全国の約7割を占めており、その生産量の少なさから希少な柑橘として知られています。
美味しいせとかの見分け方
美味しいせとかを選ぶポイントは、まず表面がなめらかで艶があり、全体的に鮮やかなオレンジ色をしていることです。手に取った際に、ずっしりと重みを感じるものは、果汁が豊富でジューシーな味わいが期待できます。また、ヘタの部分が鮮やかな緑色をしているものは、収穫から時間が経っていない新鮮な証拠です。反対に、皮にシワが寄っているものは、鮮度が落ちている可能性があるため避けるようにしましょう。
せとかの市場価格
せとかの価格は、販売ルートによって異なります。一般的に、スーパーマーケットでは一個あたり300円から500円程度で販売されています。インターネット通販では、2kg(約10個から14個入り)で4000円程度、5kg(約25個から35個入り)で8000円程度が目安となります。特に贈答用として販売される高品質なせとかは、さらに高価になることがあります。
せとか栽培の難しさとポイント
せとかは、その濃厚な甘みとジューシーさで多くの人に愛される高級柑橘ですが、栽培は容易ではありません。生育が旺盛とは言えず、病害虫への対策や、きめ細やかな管理が求められるため、日々の丁寧な手入れが不可欠です。他の柑橘類と比較して、栽培にはより多くの注意と労力が必要となるでしょう。
せとかの苗木の選び方と植え付け時の初期剪定
せとかの苗木は、植え付け適期が3月中旬から4月中旬とされており、この時期に植え付けを行うことで根の活着が安定します。植え付け時には根や接ぎ木部分を傷つけないように注意深く扱うことが重要です。
さらに、植え付け後すぐに行うべき初期管理として切り戻し剪定があります。これは、苗木の主幹を適切な高さでカットし、その後の枝の発育を促す大切な作業です。
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一年生苗の場合は、接ぎ木部分から30〜40cm上部で切り戻すことで、強い側枝の発芽を誘導し、主幹の高さを抑えることでバランスの取れた樹形形成につながります 。
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二年生以上の苗木では、あらかじめ整った枝ぶりの状況に応じて、不要な頂芽を切り返す「枝ぶり整え剪定」を実施します。
せとかは比較的若いうちに結実しやすい性質があり、早期の結実は木の成長を妨げる可能性があります。そのため、豊かな幹や枝を育てたうえで結実させるのが望ましく、通常は植え付けから4年程度後に安定した収穫が期待されます。
せとかの剪定
若木の剪定:剪定と芽かき
せとかは、旺盛な新梢の発生が特徴的な品種です。しかし、新梢が過剰に発生すると、樹の成長が鈍化する原因となることがあります。そのため、苗木を植え付けた直後には、接ぎ木部分から上に10~15cmの位置にある枝を全て取り除く剪定を行いましょう。その上の部分は、各節から1本ずつ、5~6本を目安に枝を残し、それ以外の芽は摘み取るようにします。その後、夏から秋にかけて伸びてくる枝(夏梢・秋梢)については、先端に近い部分から分岐した枝のうち、勢いの良いものを1本だけ残し、残りはそのままにして葉の数を確保します。この際、過度に枝分かれさせないように注意が必要です。先端部分の夏梢または秋梢は、常に1本に整理し、葉が12~15枚程度になったら摘芯(芽かき)を行いましょう。
植え付け2年目の管理
植え付けから2年目の剪定では、主枝(樹の骨格となる重要な枝)の先端にある、十分に生育した夏梢の先端を、1/2から1/3程度切り戻します。植え付け後、2~3年で実をつけることもありますが、若木のうちに結実させてしまうと、樹の成長が遅れてしまう可能性があります。そのため、3年目までは花が咲いても蕾を落としたり(摘蕾)、花を摘み取ったり(摘花)し、もし実がなってしまった場合には摘果(果実を落とす)を行うことが、健全な成長を促す上で非常に重要です。
せとかの肥培管理:肥料と水やり
せとかは、比較的樹勢が弱い品種であり、成熟期が年明けと遅いため、適切な肥培管理によって樹勢を維持することが非常に重要です。樹勢が弱いからといって肥料を過剰に与えようとすると、定植後に細根を枯らしてしまうリスクがあります。施肥量は、温州ミカンなどの一般的な品種に比べて約20%増やす程度が良いでしょう。また、温州ミカンなどでは、夏から秋にかけて土壌を乾燥させることで糖度を高める手法が用いられますが、せとかの場合は、この時期に乾燥させてしまうと細根が減少し、樹が弱ってしまう恐れがあります。
せとかの剪定:樹の形を整える
せとかは新梢が発生しやすい性質を持つため、他の柑橘類と比較して剪定する枝の数が多くなる傾向があります。理想的な樹形としては、1本の主枝(樹の骨格)に対し、亜主枝(主枝から水平、またはやや上向きに伸びる枝)を互い違いに2段程度配置するのが良いでしょう。若木の剪定においては、開花や結実を抑制するために、花芽のついた枝を積極的に切り落とすことが一般的です。剪定は、樹全体の風通しを良くし、十分な日光が当たるようにするために欠かせない作業です。
せとかの病害虫対策:油断大敵!黒点病、灰色かび病との戦い
みかん栽培では、一般的にそうか病やかいよう病、黒点病といった病害に注意を払う必要があります。せとかは、幸いにもそうか病、かいよう病への抵抗力は比較的高いとされています。しかし、黒点病や灰色かび病に関しては、発生のリスクが高いため、油断は禁物です。特に黒点病は、枯れ枝を通じて感染が広がるため、栽培場所は日当たりの良い場所を選び、風通しを良くするなど、樹の生育環境を良好に保つことが非常に重要となります。また、剪定作業はこまめに行い、枯れ枝は徹底的に除去し、圃場の外へ持ち出して処分することを徹底しましょう。
せとか栽培に適した環境:気温と土壌が鍵
せとかは、果実の収穫時期が3月頃となるため、冬場の最低気温がマイナス3℃を下回るような寒冷地での栽培は難しいと言えます。比較的低温に弱い性質を持ち、年間の平均気温が16.5℃以上と、年間を通して温暖な気候の地域での栽培が適しています。「アンコール」や「マーコット」といった柑橘類と比較すると、温度に対する要求水準はそれほど高くはありませんが、やはり低温には注意が必要です。もしマイナス3℃以下の気温に2時間以上さらされた場合、果実が凍結し、内部にす上がり(果肉の水分が抜けて食感が悪くなる現象)と呼ばれる現象が発生したり、果皮が柔らかくなったり、葉が巻いてしまうといった障害が発生する恐れがあります。高品質な果実を安定して生産したいのであれば、露地栽培ではなく、ハウス栽培を選択することが望ましいでしょう。また、土壌に関しては、水はけが良く、有機物を豊富に含んだ肥沃な土壌で、適度な保水性のある土地が理想的です。
せとか栽培の注意点まとめ
せとかの栽培は、決して容易ではありませんが、適切な管理をしっかりと行うことで、美味しい果実を収穫することができます。苗木の植え付けから、若木の育成、肥料の管理、剪定、そして病害虫対策まで、それぞれの段階で注意すべき点があります。温暖な気候で、水はけの良い肥沃な土壌を選ぶことが、成功への第一歩と言えるでしょう。もし手軽にせとかを楽しみたいのであれば、スーパーマーケットやオンライン通販での購入がおすすめです。

結び
せとかは、その濃厚な甘さと芳醇な香りで、多くの人々を魅了する柑橘です。栽培には難しい側面もありますが、愛情を込めて丁寧に育てることで、きっと美味しい実を結んでくれるはずです。この記事が、これからせとか栽培に挑戦しようと考えている方々、そしてせとかについてもっと深く知りたいと思っている方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
せとかとはどのような柑橘ですか?
せとかは、優れた品種である「清見」と「アンコールNo.2」を交配させたものに、さらに風味豊かな「マーコット」を掛け合わせて誕生しました。その最大の特徴は、とろけるような甘さと、果汁がたっぷりと詰まっている点で、「柑橘のトロ」と称されることもあります。
せとかの食べ頃はいつ頃ですか?
せとかが最も美味しく味わえる旬の時期は、一般的に1月から4月にかけてです。中でも、3月頃が特に最盛期とされています。温度管理されたハウスで栽培されたものは1月から2月頃に、自然の環境で育てられた露地栽培のものは3月から4月頃に市場に出回ります。
せとかの育成は難しいのでしょうか?
はい、せとかの育成は決して簡単ではありません。樹の勢いが弱い傾向があり、病気や害虫への対策、そして適切な栽培管理が求められます。そのため、入念な手入れが不可欠となります。