チョコレートの歴史を語る上で欠かせない四大発明のうち、ミルクチョコレートとコンチェ（攪拌機）はスイスで誕生しました。ミルクチョコレートの登場によって、チョコレートはよりまろやかで親しみやすい味に進化しました。また、コンチェの発明により、ざらつきのないなめらかな口当たりが実現し、現代のチョコレートの基礎が築かれました。豊かな自然と良質なミルクも、スイスチョコレートの美味しさを支えています。

2020年の統計によると、スイス人の1人当たり年間チョコレート消費量は9.3kgで世界トップ。日本人の約4倍にあたる量を日常的に楽しんでいます。リンツやネスレといった大手だけでなく、地元の小規模店も独自のレシピでチョコレートを製造し、豊かなバリエーションを提供しています。バレンタインだけでなく、イースターやクリスマスなど様々なイベントでチョコレートを贈り合う文化も、消費量の多さに影響しています。

現在世界中で愛されているなめらかなチョコレートは、スイスの優れた技術によって生み出されました。ここでは、スイスチョコレートの発展を支えた歴史と革新的な発明について紹介します。

1819年～　チョコレート工場が誕生する

1819年、フランソワ・ルイ・カイエがスイス初のチョコレート工場を設立し、近代的なチョコレート生産が始まりました。続いてフィリップ・スシャールが独自のカカオ磨砕機を開発し、大量生産の基礎を築きました。これらの先駆者たちの努力により、スイス国内には次々とチョコレート工場が誕生し、産業として発展していきました。

1876年～　ミルクチョコレートが発明される

19世紀後半、ダニエル・ペーターが加糖練乳とチョコレートを組み合わせてミルクチョコレートを発明しました。従来はミルクとカカオバターがうまく混ざらず製造が難しかったのですが、ペーターの工夫によりクリーミーで食べやすいチョコレートが誕生。これが現代のチョコレートのスタンダードとなりました。

1879年～　コンチェが発明される

ロドルフ・リンツが開発した「コンチェ」は、チョコレートを長時間練り上げることで粒子を細かくし、なめらかな食感を実現する画期的な機械です。この発明によって、チョコレートは一層口どけが良くなり、世界中で親しまれるようになりました。リンツの技術は今も多くのメーカーで受け継がれています。

【補足】チョコレート職人はスイスからの移民が多い？

スイスは多くの優れたチョコレート職人を世界に送り出してきました。ベルギーのノイハウスやアメリカのハーシー、フィンランドのファッツェルなど、著名なブランドの創業者にはスイス出身者が多く、スイスの技術が世界中に広がっています。

日本でも購入できるスイス産チョコレートブランドをいくつかご紹介します。どれも本場の味わいを楽しめる人気ブランドです。

リンツ／日本でも人気の老舗プレミアムチョコレートブランド

1845年創業のリンツは、ロドルフ・リンツによる「コンチング」技法で知られる名門ブランドです。看板商品「リンドール」は、とろけるフィリングが特徴の2層構造チョコレートで、定番から季節限定まで多彩なフレーバーが揃います。日本全国に直営店があり、好きなフレーバーを量り売りで楽しめる「PICK&MIX」も人気です。カフェ併設店舗ではドリンクも味わえます。

トイスチャー／「シャンパントリュフ」で世界中の食通をとりこに

1930年代にチューリッヒで創業したトイスチャーは、高級シャンパンクリームを包んだ「シャンパントリュフ」で有名です。職人が一粒ずつ丁寧に仕上げるその味わいは、世界中のチョコレートファンを魅了しています。日本では主にバレンタインシーズンに出会うことができます。

トブラローネ／100年以上の歴史。世界で知られるチョコレートバー

「トブラローネ」は、三角形のパッケージと山型のチョコレートで世界的に有名なブランドです。1908年にジャン・トブラーの息子たちによって誕生し、ハチミツとアーモンドヌガー入りの独特な味わいが特徴です。名前は創業者の姓とイタリア語の単語を組み合わせて生まれました。

スイスチョコレートは、すっきりとした甘さとまろやかな口当たりが特徴で、日本人にも親しまれやすい味わいです。広大な自然で育った乳牛のミルクを使ったミルクチョコレートは、やさしい甘さが魅力。日本では一部の商品しか手に入りませんが、催事や輸入食品店で見かけることもあるので、見つけた際はぜひ味わってみてください。スイスチョコレートの奥深い世界を、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。