甘草:自然の甘味料と漢方薬の秘密

甘草は、その独特な甘味と多彩な効能で知られる自然界の不思議です。料理の甘味料としてだけでなく、古来から漢方薬として健康維持に役立ってきたこの植物は、東西を問わず多くの人々に愛用されています。甘草に含まれる成分は、砂糖の数倍の甘さを持ちながらカロリーは低く、健康への影響も少ないため、現代の健康志向に適した選択肢として注目されています。本記事では、甘草の歴史、効能、そしてその新たな利用方法について詳しく探ります。

非常に身近な漢方「甘草(カンゾウ)」は、生薬や甘味料として食品、化粧品、入浴剤など多岐にわたって使用されています

甘草(カンゾウ)は、漢方薬に広く用いられる生薬であり、甘味料、食品、化粧品、入浴剤などにも使用されています。特に、甘草はその甘味成分であるグリチルリチンを含むことから、様々な製品に利用されており、私たちの生活において重要な役割を果たしています。甘草の健康効果や用途については多くの研究があり、漢方薬ではストレス緩和や炎症の軽減に寄与することが知られています。

漢方薬における甘草の役割

甘草は、漢方薬として非常に高頻度で処方される生薬の一つです。その効能としては消炎作用が広く認識されており、さらに他の薬剤との調和を助ける能力が特筆されます。この特性が甘草の利用頻度を高める要因の一つとなっています。日本においても古来より甘草が栽培されており、江戸時代には幕府に薬用植物として供えられた記録も残っています。特に山梨県の「高野家」は、八代将軍徳川吉宗に甘草を納めた家として知られ、その屋敷は現在、重要文化財である旧高野家住宅(別名:甘草屋敷)として保存されています。

実は私たちの身近に存在するこのような食品にも!

甘草(リコリス)は漢方薬としての利用が強く印象づけられていますが、実際には甘味料としても広く使われている植物です。甘草に含まれるグリチルリチン酸は、砂糖の約50倍から200倍の甘さを持ち、根を噛むとその甘さを感じることができます。日本では主に料理の甘味付けに利用されることがあり、特に和菓子や飲料に用いられます。また、海外では飲料やリキュールの調味料としても使用されています。

肌の弾力性やハリの低下を防ぎ、シワの予防に有効!

甘草(リコリス)は、食品から化粧品、入浴剤、シャンプーに至るまで広く使用されています。特に、甘草エキスには抗炎症作用があるとされるグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)が含まれており、数多くの外用製品で重宝されています。甘草エキスそのものが肌の弾力性低下を防ぐ効果に関しては、現時点での具体的な証拠は不足していますが、育毛剤にも使用され、頭皮環境を整え、脱毛を防ぐ効果が期待されています。

「芽甘草」とは甘草のことなのか?

春の訪れとともに見かける高級野菜のひとつに「芽甘草」(または「芽萱草」)があります。この植物はユリ科に属するノカンゾウの芽であり、甘草(マメ科)とは異なる植物です。甘草は一般的に生薬として知られていますが、芽甘草はその食用部分が珍重されており、名前からは混乱を招くことがあります。興味があれば、一度試してみる価値があります。

今日、栽培されている場所はどこ?

甘草は日本国内で幅広く使用されている成分であり、特に医薬品や食品に多く用いられています。しかし、国内で消費される甘草のほとんどは輸入品で、特に中国からの安価な甘草が多く流通しています。日本国内での甘草の生産は非常に限られており、資源の枯渇が問題視されています。近年、国内外での甘草の栽培に関する研究が進んでいますが、実現には多くの課題が残っている状況です。

砂糖は本当に悪者なのか?

最近、世界中で砂糖の摂取を控える動きが広がっています。2015年にWHO(世界保健機関)は、砂糖の摂取量を総カロリーの5%未満に抑えるよう推奨しました。これは特に肥満や生活習慣病を防ぐためのものであり、推定カロリー消費量が2000kcalの場合、1日の砂糖摂取量の上限は約25g(約6ティースプーンまたは7個の角砂糖相当)とされています。この方針に基づき、アメリカやイギリスでは「砂糖税」や「ソーダ税」が施行され、国民に摂取量の抑制を呼びかけていますが、これらの施策の効果については議論があります。甘い物の誘惑に抗うのは難しいことも多いため、今回は再び注目を集めている植物由来の高甘味度甘味料を3つご紹介します。

高甘味度を持つ甘味料とは?

商品のラベルに記載されている「甘味料(ステビア)」や「甘味料(アセスルファムK)」という表示を見たことがあるでしょうか?この世界には、砂糖の100倍以上の甘さを持つ成分が存在します。これらの成分の中には、自然由来のもの(例:ステビア)と人工的に合成されたもの(例:アセスルファムK)が含まれます。これらの甘味料は、砂糖と同じ量を使うと非常に甘くなり、場合によっては苦味が出ることもあるため、非常に少量で理想の甘さを得られるように設計されています。カロリーゼロや糖質カットを謳った商品によく利用され、砂糖の使用量を抑えつつ甘さを確保する目的で使われます。また、これらの甘味料はマスキング効果や発酵の抑制も期待できるため、さまざまな研究が行われています。

ステビアとリコリス

「ステビア」はキク科の植物から抽出される成分で、強い甘味を持つだけでなく、酸味や苦みを和らげる効果も認められています。ステビアの葉からは、砂糖の約300~450倍の甘さを持つ成分が得られ、食品の原材料として「甘味料(ステビア)」と表記されることが一般的です。

「カンゾウ」または「リコリス」は、長い歴史を持つ漢方薬の原料で、その根に含まれるグリチルリチンは砂糖の約150~200倍の甘さを有します。日本では、この成分の一日許容摂取量(ADI)が設定されており、使用される添加物はすべて安全性試験をクリアした上で厚生労働省によって認可されています。具体的なADIの数値は最新の規制に基づいて確認することが重要です。

「奇跡の果実」羅漢果

ウリ科に属する「羅漢果」から得られる成分は、砂糖の約300倍の甘さを持つことが知られています。この植物は、中国の桂林地域で古くから長寿をもたらす漢方茶として利用されており、安全性に関しては多くの研究が行われていますが、特に「ADI」が特定されていないという明確な情報は不足しています。羅漢果は中国政府によって「重点保護植物」に指定されており、日本において種を持ち込むことは法律で制限されています。そのため、栽培と加工は主に中国で行われる必要があります。収穫期は年に一度、9月から10月に限られ、甘味成分は果実の重量の約1%を占める希少なもので、後を引く強い甘さが特徴です。また、研究によると、羅漢果の甘味成分は他の自然由来の甘味成分に比べ、砂糖に近い甘さを持つとされています。製品のラベルには「甘味料(ラカンカ抽出物)」との表示が見られます。

今回取り上げた甘味料はそれぞれ異なる特性(初味、後味、苦味、渋みなど)を持っており、自分の好みに合った甘味料を見つけるためには、商品に含まれる甘味料を確認しながら試すことが重要です。

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