近年、その希少性と美しさから注目を集めている「白いちご」。まるで宝石のような見た目と、独特の風味は、一度味わうと忘れられない魅力があります。しかし、まだまだ情報が少なく、どんな品種があるのか、どこで手に入るのか分からない方も多いのではないでしょうか?この記事では、人気の高い品種から、知る人ぞ知る珍しい品種まで、白いちごの世界を徹底的に解説。それぞれの特徴や味わい、購入方法まで、白いちごの魅力を余すところなくお届けします。
白いちごの基本情報と魅力:その正体、白い理由、そして高価なワケ
近年、静かなブームを呼んでいる「白いちご」をご存知でしょうか? 一般的なスーパーではなかなかお目にかかれない、少し特別な存在ですが、いちごのシーズンになると、デパートの高級フルーツコーナーなどでその姿を見かける機会が増えてきました。本記事では、白いちごの特徴や様々な品種、そして白いちご狩りが体験できる貴重な農園の情報まで、その魅力に迫ります。
白いちごとは、その名の通り、果皮が白い色をしているいちごの総称です。特定の品種を指すものではなく、果実が白い状態で完熟するものを指します。その色合いは、完全な「白」から、わずかに色づいた「薄だいだい色」や「淡いピンク色」まで、品種によって異なります。通常の赤いいちごが鮮やかな赤色を呈するのは、日光を浴びることでアントシアニンという色素が生成されるためです。アントシアニンはポリフェノールの一種で、ぶどうやブルーベリーなどにも豊富に含まれる天然色素ですが、白いちごは日光に当たってもこのアントシアニンが生成されにくい、あるいは全く生成されない性質を持っています。白いちごのルーツは品種によって様々で、ある種苗会社が品種改良の過程で偶然発見した突然変異種、もともと自生していた野生種の白いちご、あるいは赤いいちごが突然変異によって白くなったものなどがあります。こうして偶然発見された白いちごは、各地で品種改良が進められ、ここ20年ほどの間に多くの品種が市場に出回るようになりました。しかし、栽培が非常に難しいため、どの品種も通常の赤いいちごの2倍以上の価格で販売されており、一粒から購入できるものもありますが、1,000円程度が相場であり、中には1万円を超える高級品も存在します(2025年2月末〜3月上旬時点)。これほど高価な理由は、特定の県のごく少数の生産者しか栽培していない品種が多く、生産量が極めて少ないためです。そのため、現状では産地の近くや高級フルーツ専門店でしか見かけることが少ないのが現状です。しかし、需要の高まりを受けて、今後は生産量と流通量が増加し、価格が徐々に下がる可能性も考えられます。
白いちごの特徴:気になる甘さ、特有の香り、旬な時期は?
白いちご、と聞くと、まだ熟していないいちごを想像しがちで、見た目だけではあまり美味しそうには見えない…と感じる方もいるかもしれません。しかし、完熟した白いちごは、赤いいちごに劣らず、十分に甘いのが特徴です。特に注目すべきは「香り」で、通常のいちごに比べて、桃や洋梨のような芳醇な香りが楽しめる品種が多いと言われています。甘さに関しては、赤いいちごよりもやや控えめという評価もありますが、白いちごを栽培する農家の方からは、「白いちごの品種改良は日々進んでおり、数年後には赤いいちごにも引けを取らない甘さを持つ品種が登場するだろう」という期待の声も上がっています。
白いちごは、初期の頃は「甘くない」「美味しくない」という声も聞かれましたが、品種改良が進んだ現在では、赤いいちごにも決して劣らない、美味しいものが数多く存在します。実際に、白いちごの中には糖度が13~15度にもなる品種もあり、これは一般的な赤いいちごの平均糖度である10度前後を大きく上回る甘さです。赤いいちごと白いちごを比較すると、白いちごは全体的に酸味が穏やかで、優しい甘さ、そして果肉が柔らかいという特徴があります。しっかりとした酸味と甘味、いちご本来の王道の味わいを求める方には赤いいちごが、可愛らしい見た目と、酸味が少なく、優しくすっきりとした味わいを好む方には、白いちごが特におすすめです!
白いちごの主要品種とそれぞれの魅力
大阪梅田周辺のデパートにおける白いちごの販売状況を調査したところ、白いちごは通常いちご売り場の約10%を占めており、各店舗で2〜3種類の品種が取り扱われていました(2025年2月末〜3月上旬時点)。いちご、と一口に言っても、品種によって香りや味わい、大きさも様々ですが、全体としては予想以上に多くの白いちごの品種が存在することが分かりました。ここでは、特に人気が高く、希少価値のある品種について、いちご好き編集部と、メディアでも話題の苺研究家・渡部美佳さんのコメントを交えながら、それぞれの特徴を詳しくご紹介します。
淡雪(あわゆき)
「さがほのか」の変異株として鹿児島県志布志市で誕生し、2013年に品種登録された「淡雪」は、純白というよりも、薄だいだい色、または淡いピンク色をしており、特に外側がサーモンピンク色に色づくのが特徴的な白いちごです。果実の中心部分は白く、ハリとツヤのある果肉は比較的しっかりとした食感が楽しめます。酸味はほとんどなく、上品な甘さが際立ち、白いちごの中では比較的、香りよりも甘みを重視する方に適した品種と言えるでしょう。苺研究家・渡部美佳さんは、「表皮だけでなく、中の果肉までうすいピンク色で、見た目も可愛らしいいちご。酸味はほとんどなく、ほのかな甘みが特徴です」と評価しています。渡部さんのおすすめは、常温で3時間以上置き、食べる直前に丸ごと一口で味わうこと。西日本を中心に栽培されていましたが、近年は関東地方でも栽培する農家が増えており、出荷時期は12月から4月頃までとなっています。
ミルキーベリー
栃木県生まれの「ミルキーベリー」は、白いちごの新たな潮流を牽引する品種です。「初恋の香り(和田初こい)」をルーツに持ち、その名の通り、ミルクのような色合いと、とろけるような口当たり、そして気品あふれる甘さが特徴です。栃木県が誇る「スカイベリー」との紅白セットは、贈り物としても最適です。苺研究家の渡部美佳さんは、「丸みを帯びた愛らしい姿で、白い果皮に映える赤い粒々が印象的。口にすると、シャキッとした食感とともに、パイナップルや洋梨を思わせる独特の香りと味わいが広がります。」と評しています。まだ生産量が限られており、市場に出回ることも少ない、大変貴重な白いちごです。
真珠姫
幾多の試行錯誤を経て誕生した「真珠姫」は、その名の如く、上品な香りと甘さが際立つ白いちごです。完熟した白桃や黄桃のシロップ漬け、あるいはライチのような、エキゾチックな香りと芳醇な果汁が、口の中に広がります。栽培している農家が少ないため、直売所や一部の専門店でのみ入手可能な、希少価値の高い品種です。軽井沢ガーデンファームいちご園では、「真珠姫」の摘み取り体験も楽しむことができます。
天使のいちご(AE/エンジェルエイト)
「天使のいちご」は、「AE(エンジェルエイト)」という別名でも親しまれており、甘みと酸味のバランスが絶妙な味わいが魅力です。四季なりいちごであるため、秋に植えれば翌年の4月から11月頃、春に植えればその年の7月から11月頃まで、長く収穫を楽しめます。ヘタの近くまで白く色づき、表面の種が赤みを帯びてきたら、食べ頃のサインです。大阪府にある「Berry Parkいずみの」では、このエンジェルエイトを含む、色とりどりのいちご狩りを体験できます。
天使の実(佐賀)
佐賀県唐津市で、5年の歳月をかけて開発された「天使の実」は、限られた3軒の農家でのみ栽培されている、幻の白いちごです。1粒約60gと大きく、口にした瞬間、洋梨やパイナップルのような、トロピカルな香りが広がり、独特の食感も楽しめます。苺研究家の渡部美佳さんは、「洋梨のような香りが鼻を抜け、なめらかな果肉がとろけます。酸味が少なく、優しい甘さが口いっぱいに広がります。」と、その魅力を絶賛しています。
桃薫(とうくん)
農研機構が開発した「桃薫」は、白いちごとして知られていますが、果皮は純白ではなく、淡いピンク色をしています。名前の通り、桃やココナッツを思わせる華やかな香りが特徴で、甘いカラメルのような独特な風味も楽しめます。果汁が豊富で濃厚な甘みを持ち、満足感のある味わいです。生産量、流通量ともに少ないため、もし見つけたらぜひ味わってみてください。苺研究家の渡部美佳さんによると、「果皮は薄いオレンジ色で、果肉は真っ白。白いちごの中で最も香りが強く、芳醇な香りと甘みが際立ついちごです」とのことです。
雪うさぎ
佐賀県唐津市でのみ栽培されている希少な白いちご「雪うさぎ」は、5年の歳月をかけて独自の品種改良を行い、2014年に品種登録されました。果肉は真っ白で、完熟すると種が鮮やかな赤色になる様子が、雪うさぎのように愛らしいことから名付けられました。一粒が通常のいちごの約3倍と大きく、1個あたり約35g。比較的硬めの果肉でありながら、酸味が少なく、上品な甘さと豊かな香りが魅力です。桃のような香りと優しい甘さが特徴で、果実が真っ白になり、種が真っ赤になった時が食べ頃です。栽培は非常に難しく、気温が高くなったり、直射日光に当たりすぎると色が変化し、白いちごとして出荷できなくなってしまいます。果実を大きく成長させるためには太陽光が必要ですが、当てすぎると赤くなってしまうため、遮光を細かく調整し、湿度や日光量を徹底的に管理する必要があります。赤い苺の何倍もの手間暇をかけて育てられている白いちごであり、山中農園の代表、山中健二さんと育成者の井手重夫さんが丹精込めて栽培されています。出荷時期は12月から5月頃で、過去には6,240円(東京都まで)で販売された実績があります。
初恋の香り
山梨県の種苗会社「三好アグリテック」と福島県の育種家が共同で開発した「初恋の香り」は、種苗会社が「いちご業界を活性化させたい!」という熱意から開発した、世界初の白いちごと言われています。名前は、甘い香りと、初恋の時の気持ちをイメージして名付けられたそうです。熟すと白から淡いピンク色に変化するのが特徴で、酸味が少なく、しっかりとした甘みと桃のような芳醇な香りが楽しめます。苺研究家の渡部美佳さんは「しっかりとした甘みがあり、まるで桃のような香りが広がるいちごです。ジューシーで、酸味はほとんど感じられません」と評しています。このいちごへの愛情から生まれた品種は、11月から3月頃までが出荷時期とされ、この期間が旬とされています。
コットンベリー
奈良県の生産者が「赤いいちごに負けない白いちごを!」という情熱を込めて開発し、2021年に品種登録出願されたのが「コットンベリー」です。丸みを帯びたきれいな三角形と、全体的に淡いピンク色の外観が可愛らしい白いちごで、甘い香りと、酸味がほとんどないにもかかわらず、赤いいちごのようなしっかりとした甘さが特徴です。実際に食べ比べてみると、他のどの白いちごよりも赤いいちごに近い甘さを感じられるでしょう。
パールホワイト
奈良県でいちごを栽培する前田光樹氏が育成し、2015年に品種登録された「パールホワイト」は、その名の通り、真珠のような光沢を放つ白いちごです。純白の果皮と鮮やかな赤い種のコントラストが美しく、最近ではカフェのデザートなどでもよく見かけるようになりました。形状は縦長の丸みを帯びた三角形で、完熟すると果皮は白から淡いピンクがかった白色へと変化し、種が赤くなるのが特徴です。上品な甘さと控えめな酸味が調和した、やさしい味わいが魅力です。苺研究家の渡部美佳氏は、「果肉はまるで21世紀梨のようにみずみずしく、しっかりとした食感。酸味が少なく、穏やかな甘さが際立ちます」と評価しています。出荷時期は12月頃から始まり、4月頃まで続きます。種が赤くなるという点は雪うさぎと共通していますが、雪うさぎの果肉が完全に白いのに比べ、パールホワイトは果肉が淡いピンク色を帯びている点が異なります。
まとめ
この記事では、その希少性と独特な魅力で話題を集める白いちごについて、基本的な情報から、なぜ白いのか?という疑問、高価な理由、様々な品種の特徴、赤い苺との味の違い、実際に白いちご狩りができる農園の情報、そしておすすめの産地直送品である淡雪「アイランドベリー」について、詳しく解説していきます。
白いちごは、アントシアニンの生成を抑制する特性を持つため、特徴的な白い果皮をしています。しかし、見た目とは異なり、品種改良によって糖度が13~15度にもなる、甘くて香り高いものが増えています。特に、桃や洋梨を思わせる芳醇な香り、控えめな酸味と優しい甘さ、そして柔らかい果肉が特徴で、赤いいちごとは一線を画す魅力があります。
「淡雪(あわゆき)」、「雪うさぎ」、「初恋の香り」、「コットンベリー」、「パールホワイト」、「天使の実」など、個性豊かな品種が多数存在し、それぞれが独自の風味や食感を持っています。しかし、その栽培は非常に繊細で手間がかかるため、希少価値が高く、価格も高めになっています。産地直送の白いちごは、その繊細な香りと味わいを最大限に堪能できるため、特におすすめです。
白いちごとは?
一般的に白いちごとは、完熟しても果皮が白いものを指します。これは特定の品種名ではなく、日光を浴びても赤色の色素であるアントシアニンが生成されにくい、またはほとんど生成されない性質を持ついちごの総称です。これらの白いちごは、品種改良の過程での突然変異や、稀に野生種の中から発見されることがあります。色合いは品種によって異なり、完全に真っ白なものから、薄いオレンジ色、淡いピンク色まで様々です。
白いちごの値段が高いのはなぜ?
白いちごが高価である主な理由は、栽培の難しさにあります。限られた農家しか栽培しておらず、生産量が少ないため希少価値が高いです。温度管理や日照管理が非常に難しく、わずかな環境の変化で果皮が赤くなってしまうため、通常の赤いいちごよりもはるかに手間がかかります。その結果、価格は通常の赤いいちごの数倍になることもあり、高級な品種では10粒で1万円を超えるものもあります。
白いちごは普通のいちごより甘い?味の違いは?
十分に熟した白いちごは、赤いいちごと同様に甘みがあります。品種改良が進んだことで、糖度が13~15度にもなる非常に甘い品種も増えており、以前の「甘くない」というイメージは変わりつつあります。味の違いとしては、赤いいちごが甘みと酸味のバランスがとれた濃厚な味わいであるのに対し、白いちごは酸味が穏やかで、優しく上品な甘さが特徴です。また、桃や洋梨を思わせるような芳醇な香りを持つ品種もあります。果肉は赤いいちごに比べて柔らかい傾向があります。
白いちごの主な品種は?
白いちごには多種多様な品種が存在します。代表的なものとしては、薄だいだい色や淡いピンク色の果皮を持つ「淡雪(あわゆき)」、世界初の白いちごとして知られ、桃のような香りが特徴の「初恋の香り」、純白の果肉と大粒の見た目が魅力の「雪うさぎ」、まろやかな甘さが特徴の「ミルキーベリー」、トロピカルな香りが楽しめる「真珠姫」、酸味が少なく赤いいちごに近い甘さを持つ「コットンベリー」、そして、淡いピンク色が可愛らしい「桃薫」や「パールホワイト」などがあります。最近では、大粒でトロピカルな香りがする「天使の実」といった新品種も登場しています。
白いちご、最高の味わいを見極めるには?
白いちごの旬な時期は、種類によって少しずつ異なります。一般的に、果実全体が淡い白色になり、種類によっては、ほのかなピンク色や淡いオレンジ色を帯びてきます。例えば、「天使のいちご」や「雪うさぎ」の場合、ヘタのすぐ下までしっかりと白くなり、表面にある小さな粒(痩果)が鮮やかな赤色に変わったら、食べ頃のサインです。甘い香りがより強く感じられるようになれば、それは熟している証拠といえるでしょう。













