口にした瞬間、広がる甘み、目を奪われるほどの大きさ、そしてとろけるような柔らかさ。章姫(あきひめ)は、まるでイチゴの理想を形にしたかのような存在です。この奇跡のようなイチゴは、静岡県の育種家、萩原章弘氏の情熱と不屈の精神から生まれました。「甘くて、大きくて、柔らかいイチゴを作りたい」という強い思いを胸に、彼は困難を乗り越え、約10年の歳月をかけて章姫を誕生させたのです。その開発秘話には、数々の苦難と諦めない心がありました。
育成者・萩原章弘氏の情熱と開発秘話
「章姫(あきひめ)」は、日本のイチゴ栽培に大きな足跡を残した静岡県の育種家、萩原章弘氏が「久能早生」と「女峰」という優れた品種を掛け合わせて誕生させた画期的なイチゴです。萩原氏は、章姫の親にあたる久能早生の生みの親でもあり、日本のイチゴ品種改良の歴史において重要な役割を果たしました。章姫の開発当初、萩原氏が抱いていたのは「酸っぱいイチゴではなく、甘くて大きくて、まろやかで柔らかく、艶やかな、練乳なしでも美味しく食べられるイチゴを作りたい!」という強い想いでした。理想のイチゴを追い求め、試験場からの協力を得られない状況の中、彼は独力で開発に挑むという困難な道を選びました。約10年の試行錯誤の末、ついに開発に成功したものの、試験栽培を委託していた苗を枯らしてしまうという試練に見舞われます。しかし、諦めることなく別の品種で挑戦したところ、その品質がたちまち評判を呼び、「章姫」の誕生へと繋がりました。この情熱と苦難の物語こそが、章姫の独特な魅力と美味しさの源泉となっています。
品種登録と初期の評価、名前の由来
章姫は1992年(平成4年)に正式に品種登録され、その名前は育成者である萩原章弘氏の名前に由来します。興味深いことに、出願時の名称は育成者の名前そのものである「章弘」でしたが、登録時に現在の「章姫」へと変更されました。この名前の変更は、章姫が持つ上品で繊細なイメージをより際立たせる効果があったと言えるでしょう。品種登録後、章姫はその優れた特性、特に収穫量の多さと際立つ甘さが評価され、静岡県で長らく主力品種としての地位を確立し、多くのイチゴ農家に栽培されてきました。開発当初から、摘花を行うことで果実が大きくなる傾向があったため、栽培管理によってさらなる品質向上が可能でした。一般的な品種である女峰と比較すると、章姫は果実が大きく、酸味が少ないのが特徴で、この甘みの強さが幅広い層から支持される要因となりました。育成者である萩原章弘氏は1999年(平成11年)に逝去されましたが、その息子である萩原和弘氏が育種元の後継者として章姫の育種技術と精神を受け継ぎ、その功績は今も受け継がれています。
特徴的な外観:縦長の円錐形と鮮やかな果皮色
章姫は、他の一般的なイチゴ品種とは異なる、独特な果実の形状と優れた食味が際立つ品種です。多くのイチゴが横に広がる円錐形であるのに対し、章姫は細長い円錐形をしており、その縦長のシルエットが特徴的です。この均整の取れた美しい形状は、一度見たら忘れられない章姫の個性であり、人気の理由の一つとなっています。果皮は光沢のある濃橙赤色で、適度な熟度を示す魅力的な色合いですが、一般的なイチゴと比較すると、赤色が濃すぎないのが特徴です。果肉は淡紅色で、果心は白色をしており、見た目にも美しいコントラストを描き出します。この縦長の円錐形は、他の品種と容易に見分けられるというメリットも持ち合わせています。
とろける食感と溢れる果汁
章姫の果肉は「やや柔らかめ」で、口に入れた瞬間に感じる「口当たりの良さ」と、あふれんばかりの「豊富な果汁」が大きな魅力です。その食感は非常に優しく、まさに「とろけるような」感覚を味わうことができ、この柔らかい果肉こそが章姫ならではの贅沢な食感を生み出しています。果肉の硬さは、硬すぎず柔らかすぎず、絶妙なバランスであると評されることもあり、繊細でありながらもイチゴらしい瑞々しい食感が楽しめます。このデリケートでジューシーな果肉は、生食に最適ですが、その柔らかさゆえに輸送にはあまり適していません。産地で収穫されたばかりの新鮮な章姫の美味しさは、この柔らかな果肉と豊富な果汁によって際立っています。
甘さと酸味の絶妙な調和
章姫の最も顕著な特徴は、その味わいにあります。「酸味が穏やか」であるため、「甘さを存分に堪能できる」点が際立っています。この絶妙なバランスが、幅広い世代、とりわけ酸味が苦手な方や小さなお子様からの支持を集める理由です。一般的に、章姫の糖度は9度から10度程度と言われ、中には12度に達するものも存在します。特別な栽培方法や品種改良によって、13度前後の甘さを誇る章姫も生まれています。この控えめな酸味と豊かな甘さの組み合わせこそが、「練乳なしでも美味しく食べられるイチゴ」という開発者の理想を具現化していると言えるでしょう。十分に熟した章姫は、甘みだけでなく深みのある味わいも感じさせ、多くの人々を魅了し続けています。
完熟章姫の豊かな香り
章姫の魅力は、その甘さと食感だけではありません。十分に熟した章姫は、口いっぱいに広がる芳醇な香りが特徴的です。この食欲をそそる香りは、口にする前から期待を高め、一口食べれば、その優しい甘さと共に、心地よい香りが口の中に広がります。この香りこそが、章姫が他の品種とは一線を画す要素であり、五感で楽しめるイチゴとしての地位を確立しています。購入する際は、甘く豊かな香りが強いものを選ぶことが、新鮮で美味しい章姫を見分ける秘訣です。
静岡県を代表するイチゴとしての時代
章姫が日本のイチゴ市場、特に静岡県において果たした役割は、その生産量の変化に明確に示されています。静岡県の詳細なデータによると、県内のイチゴ生産における品種構成は、時代と共に大きく変化しました。章姫が品種登録された1993年(平成5年)当初は、主要品種であった女峰が全体の70%を占め、章姫の生産量はわずか12%に過ぎませんでした。しかし、その後、章姫の優れた特性、とりわけ甘さと食感が消費者に広く受け入れられた結果、市場の力関係は急速に変化しました。1996年(平成8年)には、章姫が県内生産量の75%を占めるまでに成長し、女峰の18%を大きく上回る主要品種としての地位を確立しました。この時期、章姫は静岡県産イチゴの代名詞となり、その人気は確固たるものとなりました。章姫は長年にわたり静岡県の主力品種として栽培され、その影響は静岡県内にとどまらず、愛知県や滋賀県など東海地方を中心に栽培が拡大し、地域のイチゴ生産を牽引しました。
後継品種への移行と現在の流通状況
しかしながら、章姫は完熟すると果皮が非常に柔らかくなるという特性があり、この繊細さゆえに輸送には適さないという課題がありました。こうした背景から、章姫の品種登録期間が2007年(平成19年)1月に満了すると同時に、輸送性に優れ、甘みと酸味のバランスが取れた「紅ほっぺ」が2002年(平成14年)に品種登録され、本格的な栽培が開始されると、市場の重点は徐々に紅ほっぺへと移行していきました。その結果、2010年(平成22年)には、紅ほっぺが県内生産量の82%を占めるようになり、章姫の割合は18%へと大きく減少しました。さらに、2017年(平成29年)には「きらぴ香」という新しい品種も登場し、静岡県産イチゴのラインナップはさらに多様化しました。これらのデータは、章姫が一定期間、静岡県イチゴの代表格であり続けたものの、市場のニーズや品種改良の進展に伴い、その座を後継品種に譲り渡していった歴史を示しています。興味深いことに、これらの後継品種である「紅ほっぺ」と「きらぴ香」には、いずれも章姫の優れた特性が受け継がれており、章姫が現代の主要なイチゴ品種のルーツとなっていることが伺えます。現在、章姫の流通量は以前と比べて減少していますが、その独特の魅力から依然として多くのファンに愛されており、静岡県を代表するイチゴとして存在感を示しています。
年間の収穫時期と旬
章姫を最も美味しく味わうためには、その収穫時期を把握することが大切です。章姫の収穫シーズンは、一般的に「12月頃から5月頃」とされ、この期間に市場に出回ります。主にハウス栽培のため、比較的長く楽しめます。中でも、章姫が最も甘く、果肉が充実し、風味豊かな「旬は2月から4月頃」です。この時期の章姫は、最高の味と食感を誇ります。春先の暖かさとともに、イチゴの甘みは増し、香りも豊かになります。ただし、収穫時期は産地、天候、栽培技術といった要因で変動するため、記載のデータはあくまで目安としてください。
時期ごとの章姫の風味と特徴
章姫の味は、収穫時期によって変化します。旬の始まりである「12月頃から1月頃」は、まだ酸味が強い傾向があります。これは気温が低く、イチゴの成熟がゆっくり進むためです。寒さが和らぎ始める「2月頃から4月頃」が、章姫の旬です。この時期は甘味が強く、酸味が苦手な人でも食べやすいでしょう。果肉は充実し、芳醇な香りととろけるような食感を楽しめます。気温が高くなる「5月頃」も市場に出回りますが、鮮度が低下しやすいため、購入後は早めに食べることをおすすめします。新鮮で質の良い章姫を手に入れるには、地元の直売所や信頼できるスーパーで、旬を目安に探すと良いでしょう。直売所では、朝採れの新鮮な章姫を購入できることもあります。
新鮮で美味しい章姫の見分け方
章姫の美味しさを味わうには、新鮮な果実を選ぶことが重要です。章姫を選ぶ際は、色合いと形状に注目しましょう。章姫の果皮は「鮮やかな紅色」ですが、一般的なイチゴより色が薄めです。全体に均一に紅色がまわり、青みが残っていないものが良いでしょう。ヘタの近くまで色づいているものが完熟の証です。また、イチゴ本来の「香りがよい」ものを選ぶことも重要です。甘く芳醇な香りが強いほど、糖度が高く熟しています。章姫は果肉が「少しやわらかめ」なので、パックの中で果汁が漏れていないかを確認しましょう。果汁漏れがあると、傷みが進行しやすいため避けるべきです。パックの底に果汁が滲んでいないか注意深く確認し、色合い、香り、状態を総合的に見て選びましょう。
デリケートな章姫を長持ちさせる保存方法
購入後の保存では、章姫はデリケートな果物なので、適切な管理が必要です。高温での保存は避け、購入後はすぐに「冷蔵庫の野菜室」に入れるのが最適です。野菜室は温度が高めで、イチゴの保存に適しています。乾燥も鮮度を損なうため、「パックをポリ袋に入れる」などして乾燥を防ぎましょう。章姫は「日持ちがよいほうではない」ため、保存期間は短くし、「なるべく早く食べる」ことをおすすめします。新鮮な状態で食べることで、みずみずしさと甘さを楽しめます。適切な選び方と保存方法で、章姫の風味と食感を存分に味わってください。
章姫の格別な風味を堪能する方法
章姫ならではの美味しさを満喫するための、一番シンプルでおすすめの食べ方は、水で軽く洗ってそのままいただくことです。章姫は「酸味が穏やか」なため、他の品種に比べて酸っぱさをあまり感じず、イチゴ本来の甘さをストレートに味わえます。この特徴から、「酸味が苦手な方」や「お子様」にも大人気です。口に入れた時のやさしい甘さと、とろけるような果肉は、まさに極上の味わいです。朝食に、デザートに、気軽にその美味しさを堪能できます。特別な手間をかけずに、そのまま美味しくいただけるのが章姫の魅力です。もちろん、章姫の甘さとやわらかさは、そのまま食べるだけでなく、色々なスイーツやドリンクにも良く合います。例えば、「ケーキ」のデコレーションや材料に使えば、上品な甘さが全体の風味をより良くし、見た目も華やかになります。特にショートケーキやタルトに飾ると、その細長い形がとてもきれいです。また、「スムージー」の材料にすれば、たっぷりの果汁とまろやかな甘さが、飲みやすい一杯を作ります。牛乳やヨーグルト、他のフルーツと組み合わせれば、栄養満点でおいしいドリンクになります。その他、章姫の繊細な風味と食感は、「パフェ」や「アイスクリーム」のトッピングにもぴったりです。自家製「イチゴジャム」にすれば、優しい甘さのジャムになり、パンやヨーグルトにつけて楽しめます。章姫は、加熱しても美味しくいただけますが、生のまま食べるのがおすすめです。ぜひ色々な食べ方で、章姫ならではの優しい甘さと豊かな香りを楽しんでみてください。シンプルな食べ方から、華やかなスイーツまで、食卓を彩ってくれるでしょう。
韓国における品種保護問題の深刻化
章姫は日本で生まれた素晴らしい品種ですが、その人気は海外にも広がる一方で、知的財産権に関する問題も起きています。特に韓国では、育種者の萩原和弘さんの許可を得ずに、章姫がたくさん栽培されているという問題があります。韓国の市場では、日本から輸入された正規品よりも、無許可で栽培された韓国産の章姫の方が3割ほど安く売られており、この価格差が消費者の選択に大きく影響しています。さらに、韓国から日本へ韓国産の章姫が輸出されることもあり、日本の生産者にとっては深刻な問題です。2006年頃の韓国市場では、章姫と同じように日本から流出したとされるレッドパールと合わせて、日本由来のイチゴが市場の80%以上を占めていたと考えられています。このような状況に対し、育種者の萩原和弘さんは2006年に韓国の生産者団体に、「栽培許可料」を支払うように求めるとともに、日本産章姫の旬の時期に韓国産章姫を日本へ輸出しないように交渉しました。しかし、韓国の生産者からは何も返答がなく、交渉はうまくいきませんでした。この権利侵害問題を広く知らせるため、静岡放送では、この問題を取り上げたドキュメンタリー番組『章姫~父が残したイチゴ~』を製作し、2007年7月23日に放送しました。この番組は、第16回のFNSドキュメンタリー大賞にノミネートされるなど、大きな反響がありました。交渉が決裂した後、韓国では章姫の遺伝子を使って新しい品種開発が進められ、章姫と他の品種をかけあわせて生まれた「錦香(クムヒャン)」、レッドパールと章姫をかけあわせた「雪香(ソルヒャン)」、章姫と栃の峰をかけあわせた「梅香(メヒャン)」などが韓国で品種登録されています。これらの品種は、章姫の優れた特徴を受け継ぎながら、韓国の気候や市場のニーズに合わせて改良されており、その結果、韓国市場における日本由来の品種、特に章姫の血を引く品種の割合がさらに高まることにつながっています。このように、章姫は海外で広く栽培される一方で、育成者の努力と権利が十分に守られていないという問題も抱えています。
中国市場での普及と「奶油草莓」としての成功
章姫の人気は韓国だけにとどまらず、中国でも広がっています。中国では、章姫は「奶油草莓(nǎiyóu cǎoméi)」、つまり「クリームイチゴ」という名前で親しまれ、たくさん栽培されています。「奶油草莓」という名前は、章姫のやわらかい果肉と濃厚な甘さが、まるでクリームのような特徴を表しており、消費者の興味を引いています。中国での章姫の栽培は、1996年に遼寧省に初めて苗木が「導入」されたことから始まりました。これは、日本の高品質なイチゴを中国の農業に取り入れようとした試みの一つでした。遼寧省から始まり、章姫は中国各地の気候に合わせて、ビニールハウスなどで栽培され、急速に広がっていきました。現在では、中国の多くの地域で章姫が栽培されており、イチゴ生産の主要な品種の一つとなっています。人気の理由としては、章姫特有の甘みが強く酸味が少ない味が、中国の消費者の好みに合っていることが挙げられます。また、やわらかい果肉はそのまま食べるのに適しており、贈答用としても人気があります。中国での大規模な栽培は、章姫という品種の優れた可能性と、海外での需要の高さを示していますが、同時に、知的財産権の管理と保護が重要であることも示しています。中国市場における「奶油草莓」としての章姫の成功は、日本の育種技術が世界に与える影響の大きさを物語るとともに、品種開発における国際的なルールと協力の必要性を示唆する事例となっています。
まとめ
章姫は、萩原章弘さんが「練乳がいらないイチゴ」を目指し、10年間かけて「久能早生」と「女峰」をかけあわせて1992年に品種登録した、静岡県生まれのイチゴです。登録する時は「章弘」でしたが、「章姫」として知られるようになりました。一番の特徴は、細長い円錐形で美しい形と、酸味が少なく甘みが際立つとろけるような果肉です。平均糖度は9~10度で、高いものでは12度、まれに13度前後にもなり、薄いピンク色の果肉と白い果心を持っています。この美味しさから、静岡県をはじめ、愛知県や滋賀県など東海地方でとても人気のある品種でしたが、完熟すると果肉がやわらかく輸送しにくいという問題があり、2007年に品種登録期間が終了したことと、輸送しやすい「紅ほっぺ」(2002年登録)や「きらぴ香」(2017年登録)などの新しい品種が登場したことで、主力品種の座を譲りました。しかし、これらの新しい品種にも章姫の優れた血統は受け継がれています。章姫を選ぶ時は、全体が均一な濃いオレンジ色で、良い香りが強く、果汁が出ていないかを確認することが大切です。保存は冷蔵庫の野菜室で乾燥を防ぎ、デリケートな果物なので早く食べるようにすると、みずみずしい甘さを楽しめます。食べる時はそのまま食べるのが一番おすすめですが、ケーキやスムージーなどにも使えます。旬は12月から5月で、特に2月から4月が一番美味しい時期です。時期によって酸味の強さや鮮度に注意が必要です。また、章姫は韓国や中国でも広く栽培されており、特に韓国では無許可栽培や現地の品種開発といった知的財産権の問題も起きており、海外での影響の大きさと課題がある品種でもあります。中国では「奶油草莓(クリームイチゴ)」として親しまれており、その甘さが中国の消費者の好みに合い、主要な品種の一つとなっています。その独自の魅力と歴史は、今も多くのイチゴファンを魅了し続けています。
章姫イチゴ、その一番の魅力とは?
章姫イチゴの何と言っても素晴らしい点は、その独特なフォルムです。他のイチゴと比べて、スラっとした円錐形をしており、見た目にも美しいのが特徴です。果皮はツヤのある鮮やかなオレンジがかった赤色で、果肉はほんのりピンク色、そして中心部は白い色をしています。口に含むと、とろけるような食感と共に、ジューシーな果汁が口いっぱいに広がります。酸味が控えめで、平均して9度から10度、高いものでは12度を超える甘さを誇るため、酸っぱいイチゴが苦手な方やお子様にも喜ばれています。
新鮮な章姫を見分けるコツは?
新鮮な章姫を選ぶポイントは、まず色です。果実全体がムラなく、鮮やかな赤色に染まっているかを確認しましょう。章姫は比較的色が薄い場合もありますが、全体的に色づいていれば問題ありません。次に、甘く豊かな香りが漂っているかを確認しましょう。また、章姫はデリケートで果肉が柔らかいため、パックの中で押しつぶされて果汁が漏れていないかをチェックすることが大切です。果汁が漏れている場合は、鮮度が落ちている可能性があります。
章姫のベストな保存方法とは?
章姫は傷みやすいので、購入後はすぐに冷蔵庫の野菜室で保存するのがおすすめです。乾燥を防ぐために、パックごとポリ袋に入れて保存すると良いでしょう。野菜室は、イチゴの鮮度を保つのに適した湿度と温度を保っています。あまり日持ちしないため、できるだけ早く、新鮮なうちに食べきるようにしましょう。
章姫の旬はいつ?時期によって味は変わる?
章姫の収穫時期は、おおよそ12月から5月頃までですが、特に美味しくなる旬の時期は2月から4月頃です。この時期の章姫は、甘み、香りともに最高潮に達し、最高の味わいを楽しむことができます。旬の始まりである12月から1月頃は、やや酸味が強い傾向があり、旬の終わりである5月頃は、気温の上昇とともに鮮度が落ちやすくなるため、購入後は早めに食べることをおすすめします。
章姫は他のイチゴ品種とどう違いますか?
章姫は、「久能早生」と「女峰」を両親に持つイチゴで、1992年に品種登録されました。かつては静岡県で広く栽培されていましたが、完熟時のデリケートさから、より輸送に適した「紅ほっぺ」(2002年登録)や、香り高い「きらぴ香」(2017年登録)といった後継品種が登場しました。これらの後継品種にも、章姫の優れた特徴はしっかりと受け継がれています。章姫は穏やかな酸味と強い甘さが特徴ですが、紅ほっぺは甘さと酸味の調和がとれており、きらぴ香は際立つ芳醇な香りが魅力です。
章姫の育成にはどのような背景があったのですか?
章姫は、育種家の萩原章弘氏が「練乳なしでも美味しく食べられる、甘くて大粒、まろやかで柔らかく、艶やかなイチゴを作りたい」という強い思いから誕生しました。試験場の支援がない中、単独で開発に挑み、およそ10年の歳月をかけて試行錯誤を繰り返しました。育成途中の苗を枯らしてしまうという苦難を乗り越え、別の品種での成功が「章姫」誕生のきっかけとなるなど、ドラマチックな開発秘話があります。
章姫の主な生産地はどこですか?
章姫の主な産地は静岡県です。長年にわたり、静岡県で主要な品種として栽培されてきましたが、現在も静岡県を代表するイチゴとして親しまれています。その他、愛知県や滋賀県など、東海地方を中心に広く栽培されています。