美味しいエビやカニ。食卓に彩りを与えてくれる甲殻類ですが、残念ながらアレルギーを持つ方も少なくありません。甲殻類アレルギーは、一度発症すると治りにくいと言われ、日常生活に大きな影響を与えることもあります。この記事では、甲殻類アレルギーの原因、症状、そして日々の生活で気をつけるべき対策を詳しく解説します。さらに、最新の研究情報もご紹介し、甲殻類アレルギーと向き合うための知識を深めていきましょう。
甲殻類アレルギーとは
甲殻類アレルギーは、エビやカニ、伊勢エビといった甲殻類に含まれる特定の成分に対して、体が過剰な免疫反応を起こすことで発生する食物アレルギーの一種です。症状の現れ方は様々で、軽い皮膚のかゆみから、生命に関わる重篤なアナフィラキシーショックまで起こりえます。また、子供の頃だけでなく、成人になってから突然発症することも珍しくありません。甲殻類アレルギーが疑われる症状が現れた場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
甲殻類アレルギーの原因
甲殻類アレルギーを引き起こす主な原因となるのは、トロポミオシンというタンパク質です。このタンパク質は、特にエビやカニといった甲殻類に豊富に含まれており、加熱調理をしてもアレルギーを引き起こす能力が失われません。さらに、甲殻類を使用したスープやエキスなどが皮膚に触れることによっても、アレルギー反応が現れることがあります。甲殻類アレルギーは、幼少期には比較的少ないものの、学童期以降になると発症率が高まる傾向にあります。一度発症してしまうと、自然に治癒することは難しく、大人になっても症状が持続することが多いとされています。
甲殻類アレルギーの主な症状
甲殻類アレルギーによって引き起こされる症状は、非常に多様であり、その現れ方には個人差があります。一般的に、甲殻類を摂取してから1時間以内に症状が出現することが多いですが、場合によっては数分以内に症状が現れることもあります。代表的な症状としては、皮膚に現れる症状、口の中の症状、呼吸器系の症状、消化器系の症状などが挙げられます。
皮膚症状:じんましん、かゆみ、赤み
甲殻類アレルギーの症状として、皮膚症状は約8割もの高い割合で現れると言われています。具体的には、じんましん、強いかゆみ、皮膚の赤み、湿疹などが挙げられます。これらの症状は、甲殻類を摂取した後だけでなく、甲殻類に直接触れた際にも発生することがあります。
口腔内の症状:口の中や喉の腫れ、かゆみ、不快感
甲殻類アレルギーを持つ人のなかには、口腔内の症状が見られると報告されています。具体的には、唇や口の中、喉の腫れ、かゆみ、異物感、チクチクするような感覚などが挙げられます。これらの症状は、甲殻類を摂取した際に、口や喉の粘膜がアレルゲンに反応することで発生します。
呼吸器の症状:鼻水、鼻づまり、咳、呼吸困難
甲殻類アレルギーの呼吸器症状は、およそ3割の人に現れるとされています。鼻水、鼻づまり、咳のほか、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴、呼吸が苦しくなるなどの症状が見られます。重度の場合には、呼吸困難に陥る危険性もあります。
消化器の症状:腹痛、下痢、吐き気、嘔吐
甲殻類アレルギー患者の約17%に、消化器系の症状が現れると言われています。腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などが主な症状です。これは、甲殻類に含まれるアレルゲンが消化器官を刺激することが原因と考えられています。
アナフィラキシー:重いアレルギー反応
甲殻類アレルギーは、重症化するとアナフィラキシーと呼ばれる全身性のアレルギー反応を引き起こすことがあります。アナフィラキシーは、複数の臓器に同時に症状が現れ、血圧の低下や意識の喪失などを伴う、生命に関わる非常に危険な状態です。特に、エビはアナフィラキシーを引き起こしやすいアレルゲンとして知られています。症状としては、全身に広がる蕁麻疹、呼吸をするのが困難になる、声がかすれる、激しい嘔吐、意識を失うなどが挙げられます。アナフィラキシーショックが疑われる場合は、直ちに救急車を呼ぶなど、迅速な対応が不可欠です。
甲殻類アレルギーの方が気を付けるべき食品
甲殻類アレルギーをお持ちの方は、直接的な甲殻類の摂取はもちろんのこと、甲殻類が使われている可能性のある食品にも細心の注意を払う必要があります。甲殻類は、食材としてだけでなく、調味料や加工食品の原料として用いられることも少なくありません。以下に、特に注意が必要な食品の例を挙げます。
甲殻類が使用されている可能性のある加工食品
かまぼこ、ちくわ、はんぺんといった練り製品、えびせん、各種スナック菓子、インスタント麺類、スープ類、ドレッシング、ソースなど、多岐にわたる加工食品において、甲殻類のエキスや粉末が使用されているケースがあります。必ず原材料表示を詳細に確認し、甲殻類が含まれていないかを確認することが重要です。また、しらすやちりめんじゃこのように小さな魚介類には、エビやカニといった甲殻類が混ざっている場合があります。これらの食品は製造過程で甲殻類を完全に除去することが難しい場合があるため、重度のアレルギーをお持ちの方は特に注意が必要です。
外食をする際の注意点
中華料理店、韓国料理店、シーフードレストランなど、甲殻類を頻繁に使用する飲食店では、他の料理にも甲殻類の成分が意図せず混入するリスクがあります。調理器具や調理油を共有している場合や、調味料に甲殻類由来のエキスが使用されている可能性などが考えられます。外食をする際には、事前にアレルギーについてお店の方に伝え、できる限り甲殻類を使用していない料理を選ぶように心がけましょう。
甲殻類アレルギーの検査と診断
甲殻類アレルギーの疑いがある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが非常に大切です。主な検査方法としては、皮膚プリックテスト、血液検査(特異的IgE抗体検査)、食物経口負荷試験などが挙げられます。
皮膚プリックテスト
皮膚に微量のアレルゲンエキスを接触させ、その反応を観察する検査が皮膚プリックテストです。比較的短時間で結果が判明し、簡便に行えるのが特徴ですが、アレルギー反応が強く現れるリスクがあるため、医療機関でのみ実施されます。
血液検査(特異的IgE抗体検査)
血液検査では、特定の甲殻類に対する特異的IgE抗体の量を調べます。この検査によって、アレルギーの有無だけでなく、その程度も推測することが可能です。
食物経口負荷試験
実際に甲殻類を摂取し、その際の症状を観察する食物経口負荷試験は、医療機関の厳重な管理下で行われます。診断方法として最も精度が高いとされていますが、アナフィラキシーショックを引き起こす危険性も伴うため、専門医の指導のもと、慎重に進められます。
甲殻類アレルギーの対策と予防
甲殻類アレルギーにおいて最も重要な対策は、アレルギーの原因となる甲殻類を食事から排除することです。しかしながら、完全に除去することは容易ではないため、以下の点に留意し、アレルギー症状の発症リスクをできる限り低減させることが重要です。
食品表示の確認
市販の食品を購入する際には、必ず成分表示をチェックし、甲殻類が使用されていないかを確認しましょう。アレルギー物質の表示は法律で義務付けられていますが、ごくわずかな混入までは表示されない場合があります。特に、外食をする際や、お惣菜を買う際には、お店の人にアレルギーについて尋ねることが大切です。エビやカニは、特定原材料として表示が義務づけられています。
調理器具の共有を避ける
ご家庭で甲殻類を使った料理を作る際は、アレルギー体質の方がいる場合は、専用の調理器具を使うように心がけましょう。まな板や包丁、フライパンなどを共有すると、わずかな甲殻類が混ざってしまい、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。
接触アレルギーへの注意
甲殻類アレルギーの方は、甲殻類に触れただけでも皮膚のかゆみや炎症などのアレルギー症状が出ることがあります。甲殻類を調理する際には、使い捨ての手袋などを着用し、直接触れないように注意しましょう。また、甲殻類に触った後は、必ず丁寧に手を洗い、皮膚に付着したアレルゲンを洗い流してください。
アドレナリン自己注射薬(エピペン)の準備
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は、医師と相談し、アドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらうことを検討しましょう。エピペンは、アナフィラキシー症状が出た場合に、一時的に症状を和らげ、救急隊の到着を待つために使用するものです。エピペンの使い方を事前にしっかりと理解し、常に持ち歩くようにしましょう。
甲殻類アレルギーと混同しやすい症状
甲殻類アレルギーと類似した症状が現れるケースも存在します。例えば、ヒスタミン中毒は、魚介類に含まれるヒスタミンが原因となり、皮膚のかゆみや発疹など、アレルギー反応と見分けがつきにくい症状を引き起こすことがあります。また、アニサキスアレルギーは、魚介類に潜むアニサキスという寄生虫が原因で、激しい腹痛や嘔吐を引き起こすことがあります。これらの症状と甲殻類アレルギーを正確に区別するためには、医療機関で適切な検査と診断を受けることが重要です。
まとめ
甲殻類アレルギーは、日常生活に大きな影響を与える可能性のある食物アレルギーの一つです。正しい知識を身につけ、適切な対策を講じることで、アレルギー症状のリスクを軽減し、安全な食生活を送ることが可能です。甲殻類アレルギーの疑いがある場合は、自己判断せずに、必ず医療機関を受診し、専門医による正確な診断を受けるようにしてください。
甲殻類アレルギーは完治するのでしょうか?
甲殻類アレルギーは、一度発症すると自然に完治することは難しいとされています。しかし、成長とともに症状が緩和されたり、ごく少量であれば摂取できるようになることもあります。医師の指示のもと、経口免疫療法などの治療を検討することも可能です。
甲殻類アレルギーでも食べられる魚介類はありますか?
甲殻類アレルギーの原因となるトロポミオシンは、エビやカニなどの甲殻類だけでなく、イカやタコといった軟体動物にも含まれています。一方、一般的に魚類にはトロポミオシンは含まれていないため、甲殻類アレルギーを持つ人でも魚類は摂取できることが多いです。ただし、魚介類全般のアレルギーを併発している場合は、魚類も避ける必要があります。必ず医師に相談し、個々の状況に応じて判断してもらいましょう。
甲殻類アレルギーの場合、調味料に含まれる甲殻類エキスも除去すべきでしょうか?
甲殻類アレルギーの重症度によって判断が分かれますが、ごくわずかな甲殻類エキスでも反応が現れる方は、避けるのが賢明です。製品の成分表示を注意深くチェックし、甲殻類エキスが使用されていないか確認しましょう。レストランなどで食事をする際は、調味料に甲殻類エキスが使われていないか、お店の方に尋ねるようにしましょう。