太陽の光を浴びて育った、甘酸っぱさがたまらないすもも。初夏の訪れとともに、店頭に並び始める鮮やかな果実は、見た目も味も私たちを楽しませてくれます。実はすももには、「日本すもも(プラム)」と「西洋すもも(プルーン)」の2種類があるのをご存知でしょうか?それぞれ異なる風味や食感、用途があり、旬の時期には様々な楽しみ方ができます。この記事では、すももの旬の時期や選び方、美味しい食べ方など、すももの魅力をたっぷりご紹介します。
すもも(プラム)とは:概要と基本情報
甘みと酸味が調和した、みずみずしいすももは、初夏から夏にかけて旬を迎える人気の果物です。栽培されているすももは大きく2種類に分けられ、中国原産の「日本すもも(プラム)」と、ヨーロッパ・コーカサス地方原産の「西洋すもも(プルーン)」があります。これらは見た目や風味だけでなく、用途も異なります。日本すももは生で食べるのが一般的ですが、西洋すももは生食のほか、乾燥させてドライプルーンとして、またはジャムやコンポートなどの加工品として広く利用されています。ちなみに、英語ではすもものことを「プラム」、フランス語では「プルーン」と呼びます。すももの旬は6月から8月にかけてであり、この時期に主に出荷されます。2022年のすももの出荷量は全国で約17,000トンで、主な産地は山梨県、長野県、和歌山県です。
すもも(プラム)の歴史:日本と世界の歩み
すももの歴史は非常に古く、西洋すももはカスピ海沿岸のコーカサス地方で生まれたとされています。古代ローマ時代の文献にも記述があり、紀元前からヨーロッパ各地で栽培されていたことがわかります。その後、大航海時代を経てアメリカ大陸に伝わり、19世紀頃にはカリフォルニア州で大量のプルーンが生産されるようになり、世界的に有名になりました。
一方、日本には中国原産のすももが奈良時代に伝わったとされています。『古事記』や『日本書紀』、和歌にも登場し、古くから日本人に親しまれてきた果物であることがわかります。しかし、日本で本格的にすももの栽培が始まったのは明治時代以降です。それ以前は「酸っぱい桃」という意味で「酸桃(すもも)」と呼ばれ、あまり重視されていませんでした。大正時代に入り、アメリカで品種改良されたすももが日本に導入されたことで、栽培が本格化し、品質が向上しました。これが現在の多様なすもも文化の基礎となっています。
すもも(プラム)の栄養と期待される効能
すももは、甘酸っぱい味わいに加え、豊富な栄養成分を含んでおり、健康に良い効果が期待できます。可食部100gあたり、葉酸が4μg、カリウムが150mg含まれています。葉酸は、貧血気味の方や妊娠中の女性に特に推奨される栄養素です。カリウムは体内のナトリウム排出を助けるため、高血圧の予防に役立つ可能性があります。さらに、すももにはアントシアニンというフラボノイドが豊富に含まれています。アントシアニンは毛細血管を強くしたり、眼精疲労を和らげたりする効果があると言われています。また、ソルビトールという糖アルコールも含まれており、便秘の改善に効果が期待できます。これらの栄養成分により、すももは健康維持に役立つ果物と言えるでしょう。
主要なすももの種類と品種:特徴と旬
すももにはさまざまな品種があり、それぞれ特徴や旬の時期が異なります。「大石早生」「ソルダム」「太陽」「貴陽」「市成」「スイートかれん」「秋姫」「トパーズ」「ハニーローザ」「紅りょうぜん」「ホワイトプラム」「李王」「サンルージュ」「レッドビュート」「かがやき」「花螺李」「菅野中生」「月光」「ケルシー」「彩の姫」「サマービュート」「サマーエンジェル」「サンタローザ」など、代表的な品種の特徴と旬な時期について詳しく解説します。
大石早生(おおいしわせ)
日本で最もポピュラーなすももの品種といえば「大石早生」です。この品種は福島県の大石氏によって、「フォーモサ」と正体不明(有力な説として「ビューティー」)の交配によって生み出されました。果実は丸みを帯びており、重さは50~70g程度です。果肉は淡い黄色で、やわらかく、口に入れるとジューシーな甘さとさわやかな酸味が広がります。成熟するにつれて、果皮は黄緑色から鮮やかな赤色に変わります。市場に出回る最盛期は、6月下旬から7月上旬にかけてです。
ソルダム
「大石早生」に次いで、日本で広く親しまれているのが「ソルダム」です。その起源は定かではありませんが、明治時代末期から大正時代初期にかけてアメリカから導入されました。果実は80~150gと比較的大型で、日持ちが良いのが魅力です。甘味と酸味のバランスが絶妙で、多くの人に愛されています。果皮は緑色から赤色へと変化し、果肉は鮮やかな濃い赤色をしています。 最も食べ頃となるのは「大石早生」から約1ヶ月後の7月中旬からです。
太陽
「太陽」は、出自は不明ながらも山梨県で発見され、1969年に品種登録されました。果実はやや縦長の楕円形で、重さは100~150gと大きめです。果肉はしっかりとしており、日持ちに優れています。果皮は紫がかった赤色で、果肉は乳白色をしています。糖度が高く、酸味が控えめなので、甘さを重視する方におすすめです。収穫のピークは8月中旬頃からです。
サンタローザ
「サンタローザ」は、アメリカの育種家が日本すももと他のすももを交配させて開発した品種で、その品質の高さから世界中で栽培されています。果実は丸みを帯びており、重さは100g前後と大きめです。熟すと果皮は鮮やかな赤色に染まり、その美しさが際立ちます。果肉は黄色でしっかりとしており、素晴らしい香りを持ち、程よい甘さと酸味が調和した味です。 収穫に最も適した季節は7月中旬に始まります。
貴陽(きよう)
「貴陽」は、1996年に品種登録された、比較的新しい品種として知られています。「太陽」と「小松」が親であり、山梨県で育成されました。200g近くまで大きくなる大玉の果実で、果皮は美しい紅色から赤紫色へと変化します。際立った甘さと、それを引き立てる適度な酸味によって、果汁たっぷりの濃厚な味わいを楽しむことができます。旬は8月上旬で、比較的日持ちが良いのも魅力です。
花螺李(ガラリ/カラリ)
「花螺李」は、40gほどの小ぶりなすももで、主に奄美大島や沖縄県で栽培されています。「奄美すもも」とも呼ばれ、果皮と果肉は深い濃紅色から黒紫色を呈します。強い酸味が特徴で、果実酒やシロップ漬け、ジュースなどの加工品として利用されることが多いですが、十分に熟したものは生食も可能です。独特の風味が愛され、地域に根ざした品種として親しまれています。
秋姫(あきひめ)
「秋姫」は、秋田県で偶然発見されたすももで、1991年に品種登録されました。赤色から赤紫色の果皮を持ち、果肉は黄色で、200g前後の大きさに育ちます。甘味と酸味の絶妙なバランスが、濃厚な味わいを生み出しています。収穫時期は9月中旬から下旬と遅めで、晩生品種として知られています。袋をかけて栽培すると、果皮が黄色くなることもあります。
サマーエンジェル
「サマーエンジェル」は、「ソルダム」と「ケルシー」を親に持つ品種で、2005年に品種登録されました。鮮やかな紅色の果皮と黄色の果肉を持ち、150g前後の大きさです。豊富な果汁と強い甘味が特徴で、適度な酸味とのバランスが取れた美味しさを楽しめます。収穫時期は7月下旬頃からとなっています。
紅りょうぜん
「紅りょうぜん」は、「マンモス・カージナル」と「大石早生」という品種を掛け合わせて生まれたすももで、1987年に品種登録されました。一つあたり100~150g程度とやや大きめで、ハート形にも見える扁平な形をしているのが特徴です。熟すと果皮は美しい紅紫色に染まり、果肉は淡い黄色をしています。糖度が高く、果汁もたっぷり。ほどよい酸味とのバランスが絶妙です。収穫時期は7月中旬頃からですが、市場に出回る量は比較的少ない品種です。
サマービュート
「サマービュート」は、「ソルダム」と「ブラックビュート」を両親に持ち、山梨県で開発され、2005年に品種登録されました。果皮は鮮やかな紅色で、果肉は淡い黄色をしています。重さは170g前後と大きく、果肉は緻密で少し硬めの食感が特徴です。強い甘味とほどよい酸味が調和し、濃厚な味わいを楽しめます。市場に出回るのは7月下旬頃からです。
ハニーローザ
「ハニーローザ」は、「ホワイトプラム」の自然交雑によって生まれた実生を選抜・育成した品種で、1996年に品種登録されました。果実は丸い形をしており、重さは50g前後と小ぶりです。果皮は淡い紅色で、果肉は淡黄色をしています。酸味が穏やかで甘味が強く、果汁が豊富なすももとして人気があります。早生品種であり、熊本県など主な産地では6月中旬頃から収穫が始まります。
李王(りおう)
「李王」は、「大石中生」と「ソルダム」を交配して山梨県で誕生し、1990年に品種登録されたすももです。サイズは90g前後で、果皮は紅色から赤紫色へと美しく色づきます。果肉は薄い黄色をしており、酸味が少なく、とてもジューシーで豊かな香りが特徴です。甘味が強めなので、甘いものが好きな方におすすめです。収穫時期は7月上旬頃からとなります。
ケルシー
ケルシーは、150~200gほどの重さがあるハート型のすももで、緑色の果皮が目を引きます。この品種は、かつて日本からアメリカへ渡った日本すももが、大正時代に「甲州大巴旦杏」という名前で日本に再び持ち込まれたものです。果肉は黄色で、少し硬めの食感が特徴。甘みはほどほどで、酸味は控えめです。また、果実の中心部に空洞ができやすい傾向があります。現在、市場での流通量は多くありません。
すももの選び方、味わい方、鮮度を保つ保存術
甘酸っぱくて果汁たっぷりのすももは、初夏から夏にかけて店頭に並び、私たちを楽しませてくれる人気の果物です。しかし、「皮は剥くべき?」「種はどうやって取るの?」と、食べ方に戸惑う方もいるかもしれません。ここでは、美味しいすももを見分けるための熟度チェックから、まだ酸っぱいすももを美味しく変身させる追熟のコツ、基本的なカット方法、さまざまなアレンジレシピ、そして鮮度を長く保つための冷凍保存テクニックまで、野菜ソムリエの専門知識をもとに詳しく解説します。これらの情報を参考に、すももの魅力を存分にお楽しみください。
すももの熟度を見極めるコツと追熟方法
すももの美味しさを最大限に引き出すためには、適切な熟度を見極めることが不可欠です。すももの実を手に取り、ヘタの周りを指の腹で優しく触れてみてください。わずかに柔らかさを感じ、同時に甘く豊かな香りが漂ってきたら、まさに食べ頃のサインです。この状態のすももは、ジューシーで甘酸っぱい、最高の味わいを堪能できます。
もし購入したすももがまだ硬く、酸味が強いと感じる場合は、追熟させることで甘さを引き出すことができます。追熟の方法は簡単で、すももをザルなどに並べて室温で数日間保管し、様子を見てください。ただし、すももは個体差のある果物なので、追熟しても期待したほどの甘さにならないこともあります。そのような場合は、少量の蜂蜜をかけると甘みが加わり、より美味しくいただけます。また、ジャムなどに加工することで、爽やかな酸味が活かされ、新たな美味しさを発見できるでしょう。
すももの基本の切り方:種を綺麗に取り除く方法
すももをより手軽に味わうために、中心にある大きな種を取り除く方法をご紹介します。基本的な手順は以下の通りです。
1. 種に沿って切り込みを入れ、ひねって半分にする
最初に、すももの窪んだ部分を目安に包丁を入れます。刃先が種に触れるのを感じながら、種に沿って果実を一周、丁寧に切り込みます。切り込みが終わったら、両手で果実を持ち、切り込みを軸にして軽くひねるように割ります。こうすることで、種がスムーズに分離しやすくなります。
2. 好みの大きさにカットする
種がない方の半分の果肉は、そのままお好みのサイズにカットします。種がある方は、さらに種に沿って半分に切り込みを入れます。この工程は、種をきれいに取り除くための準備となります。
3. 再びひねって半分にし、種を取り除く
種がある果実を両手で持ち、切り込み部分を軸にして再びひねります。この作業により、種が果肉から完全に離れるので、包丁などを使って簡単に取り除くことができます。こうして、お子様にも安心して提供できる、種なしのすももが完成します。
多彩なすももの味わい方:そのまま、加工して
すももは、生のままでも、加熱しても美味しく、さまざまな方法で楽しむことができる果物です。
【食べ方①】丸ごと皮ごと味わう
すももの皮はとても薄いので、種を取り除けば、基本的に皮ごと美味しくいただけます。そのまま丸かじりするのも良いですし、カットする場合も皮はむかずにそのままが良いでしょう。皮にはポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。ただし、すももの甘酸っぱさは品種や個体差によって異なります。もし皮ごと食べてみて酸味が気になるようでしたら、少しだけハチミツをかけると、甘味がプラスされて美味しくなります。皮の渋みが気になる方も、ハチミツで調整してみてください。
【食べ方②】皮を剥いて、とろけるような舌触りを堪能する
すももの皮は、果肉に比べると少し酸味や渋みが強く感じられることがあります。もし皮の食感や酸味が気になるようでしたら、皮を剥いて食べるのがおすすめです。皮を剥く時は、種を取り除いたすももの果肉と皮の間に包丁を入れ、果肉に沿って滑らせるようにすると綺麗に剥けます。皮を剥くことで、より滑らかで上品な口当たりを堪能できます。
砂糖で煮詰めて、自家製ジャムやコンポートにする
すももは、そのまま食べるだけでなく、ジャムやコンポートに加工するのもおすすめです。加熱することで、爽やかな甘さが引き立ちます。例えば、手軽に作れるすもものコンポートは、小鍋に水300mlと砂糖50gを入れて中火で加熱し、沸騰させます。そこにカットしたすもも500gを入れ、弱火で5分ほど煮ます。煮終わったら火を止め、粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やせば完成です。皮ごとコンポートにすれば、見た目も鮮やかになり、皮に含まれる栄養も無駄なく摂取できます。
すももの長期保存方法:まるごと冷凍保存とアレンジ
すももをたくさん手に入れた時や、すぐに食べきれない場合は、新鮮なうちに冷凍保存すれば、美味しさを長く保てます。カットしてから冷凍すると、切り口から変色しやすくなるため、まるごと冷凍するのがおすすめです。
【冷凍保存の方法】
まず、プラムを丁寧に水洗いし、キッチンペーパーでしっかりと水分を拭き取ります。水分が残っていると冷凍焼けの原因となるため、念入りに行いましょう。次に、プラムを一つずつラップで丁寧に包み、空気に触れないようにします。その後、冷凍保存用の袋に入れ、中の空気をできる限り抜いて密閉します。この状態で冷凍庫で保存すれば、約1ヶ月間、プラムの風味を損なわずに保存できます。
【解凍方法と使い方】
冷凍プラムは、常温で10分ほど置いて半解凍にすると、シャーベットのような食感と甘酸っぱさが楽しめます。半解凍のプラムは、そのまま食べるのはもちろん、様々な用途に活用できます。種を取り除いてミキサーにかければ、手軽にスムージーが作れます。また、加熱してコンポートにしたり、ケーキやタルトの材料として使うのもおすすめです。冷凍することで、旬を過ぎた時期でもプラムの美味しさを楽しむことができます。
【冷凍プラムの皮を剥くコツ】
冷凍したプラムの皮を剥く際は、凍ったままのプラムの表面に浅く十字の切り込みを入れます。そして、切り込みの部分に水をかけると、簡単に皮が剥けます。これは、冷凍によって実と皮の間に隙間ができるため、水の力で皮が剥がれやすくなる原理を利用した裏技です。
まとめ
プラムは、大きく分けて「日本スモモ」と「西洋スモモ(プルーン)」の2種類があり、それぞれ生食や加工品として広く利用されています。この記事を通して、プラムの魅力をより深く理解し、日々の食生活に役立てていただければ幸いです。※当記事に掲載されている健康に関する情報は、情報提供のみを目的としており、医学的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。健康状態に不安がある場合は、必ず医師またはその他の資格を持つ医療専門家にご相談ください。
プラムとプルーン、どう違うの?
プラムとプルーンは同じバラ科サクラ属の仲間ですが、一般的にプラムと呼ばれるのは、中国をルーツとする「日本プラム(スモモ)」で、主にフレッシュな状態で食べられています。それに対し、プルーンはヨーロッパやコーカサス地方が原産の「西洋スモモ」を指し、生で食べるだけでなく、乾燥させてドライプルーンとして、またはジャムなどの加工品としても広く使われています。興味深いことに、英語ではスモモを「プラム」、フランス語では「プルーン」と呼ぶのです。
プラムにはどんな栄養があるの?
プラムには、可食部100gあたり葉酸が37mcg、カリウムが150mgも含まれています。特に注目したいのは、フラボノイドの一種であるアントシアニンと、糖アルコールの一種であるソルビトールです。これらの成分によって、貧血の予防、高血圧の予防、眼精疲労の回復、そして便秘の改善といった効果が期待できます。
日本で一番作られているプラムの種類は?
現在、日本で最も多く栽培されているプラムは「大石早生(おおいしわせ)」という品種です。農林水産省が発表した2021年の統計データによると、栽培面積は約479ヘクタールで、プラム全体の約34%を占めています。果肉は淡い黄色で、柔らかくジューシー。さわやかな甘酸っぱさが特徴で、6月下旬から7月上旬にかけてたくさん出荷されます。