鳥取が誇る二十世紀梨:日本一の美味しさと歴史を紐解く
みずみずしい果汁とシャリシャリとした食感がたまらない二十世紀梨。鳥取県は、まさにその二十世紀梨の代名詞とも言える存在です。日本一の生産量を誇る鳥取の二十世紀梨は、長年の歴史と生産者のたゆまぬ努力によって育まれ、私たちの食卓を豊かに彩ってきました。今回は、その美味しさの秘密や、知られざる歴史、そして鳥取の風土が育む特別な魅力を紐解いていきましょう。二十世紀梨の奥深い世界へ、ご案内します。

鳥取県の顔「二十世紀梨」:日本屈指の生産量を誇る名品

梨と言えば鳥取県、鳥取県と言えば梨と言われるほど、両者は切っても切れない縁で結ばれています。中でも、日本有数の生産量を誇る鳥取の二十世紀梨は、熟練の生産者が愛情を込めて育てることで、鳥取の夏から秋にかけての食卓を彩る味として、多くの人々に愛されています。その優れた品質は、市場に出回る量にも如実に表れており、鳥取県産の二十世紀梨の出荷量は全国トップクラスです。農林水産省のデータによると、令和5年における二十世紀梨の主要消費地での出荷量は2096トンと、実に75%を超えるシェアを占め、全国1位を誇ります。この圧倒的な生産規模と市場での存在感は、鳥取の二十世紀梨が国内市場において確固たる地位を築いている証と言えるでしょう。国内では主に京阪神地域に出荷されていますが、その人気は海を越え、台湾、香港、アメリカ、シンガポールなど海外にも輸出されており、世界中でその高い品質が評価されています。

百有余年の歴史と卓越した技術が結実した「二十世紀梨」の歩み

二十世紀梨は、明治37年(1904年)に千葉県から鳥取県へと導入されて以来、1世紀以上にわたって栽培が続けられている代表的な品種です。その歴史を遡ると、1888年(明治21年)、当時13歳だった千葉県松戸市の松戸覚之助氏が、親戚の家で見つけた苗木を譲り受け、実家の梨園で大切に育てたことが始まりとされています。約10年の歳月を経て初めて実ったその青梨は、当初「新太白」と呼ばれていましたが、専門家による鑑定の結果、その品質の高さが認められ、1904年(明治37年)に「二十世紀」と命名されました。この名前には、「二十世紀を代表する品種として羽ばたいてほしい」という未来への大きな希望が込められています。鳥取県へは、この命名とほぼ同時に導入され、またたく間に全国的な人気品種としての地位を確立しました。栽培が開始されてから100年以上の時を経た鳥取の二十世紀梨は、その長い歴史の中で、黒星病や台風、大雪といった自然災害や病害など、幾多の困難に直面してきました。しかし、鳥取の熟練した梨農家たちは、これらの試練を乗り越え、常に美しく、そして美味しい梨を育てるための卓越した技術と、細部にまで行き届いた栽培管理を追求し続けてきました。具体的には、秋から冬にかけての丁寧な土壌づくり、枝の一本一本、芽の一つ一つまでを精査する剪定作業、確実な結実を促すための人工授粉、果実の品質を向上させるための摘果、そして病害虫や風雨から果実を守るための袋かけなど、年間を通して細心の注意を払った管理が行われています。これらの惜しみない努力と長年培われた技術によって、鳥取の二十世紀梨ブランドは確固たるものとして確立され、その変わらぬ美味しさを支える確かな基盤となっています。

二十世紀梨ならではの風味と食感:「通」をも唸らせる魅力

「二十世紀(にじっせいき)」は青梨を代表する品種の一つであり、鳥取県の名産品として全国にその名を知られています。その大きさは1個あたり約300gで、果皮は透明感のある淡い黄緑色をしており、見た目にもみずみずしさを感じさせます。一口食べると、さわやかな甘さの果汁が口いっぱいに広がり、甘みの中に程よい酸味が感じられる独特の風味が楽しめます。柔らかく、果汁をたっぷりと含んだ果肉のシャキシャキとした食感は、他の梨にはない特徴として高く評価されています。この絶妙な味わいの秘密は、長年の経験を持つ梨農家たちが丹精込めて行う栽培管理にあります。単に甘いだけでなく、酸味との調和や独特の食感が楽しめることから、ただ甘いだけの梨では満足できない「通」好みの梨とも言われています。その栽培から出荷に至るまでの様子は、動画共有サイトなどでも公開されており、生産者の情熱とこだわりが詰まった梨づくりを垣間見ることができます。二十世紀梨は、その豊かな風味と食感で、多くの梨ファンを魅了し続けています。

鳥取梨「旬」のバトン:二十世紀梨からオリジナル品種まで多彩な味覚

鳥取県の梨は、全国的に有名な二十世紀梨だけではありません。二十世紀梨から派生し、その特徴を受け継ぎながら、さらに優れた性質を持つ「ゴールド二十世紀」や「おさ二十世紀」、「瑞秋」といった品種も生まれています。また、袋をかけずに栽培された二十世紀梨は「サンセーキ」という名前で販売されることもあります。県内では、鳥取大学や鳥取県が独自に開発したこれらの新品種を含め、さまざまな種類の梨が栽培されており、夏から秋にかけて次々と旬を迎えることで、鳥取梨の「旬」のリレーを楽しむことができます。これにより、消費者は自分の好みに合わせて色々な風味や食感の梨を選ぶことができ、梨の多様な魅力を一年を通して味わうことが可能になっています。

鳥取県が生んだ梨の傑作:二十世紀梨と進化する品種群

鳥取県は、二十世紀梨という輝かしい伝統を礎に、味や特性に磨きをかけた新たな品種開発に情熱を注いでいます。これらの新品種は、鳥取の恵まれた自然環境と研究機関の叡智が結晶した「二十世紀梨から生まれた新たな個性」であり、その多様な魅力で人々を魅了しています。

秋栄(あきばえ)

秋栄(あきばえ)は、鳥取県で生まれた注目の梨の新品種です。その特徴は、みずみずしい甘さとあふれる果汁。比較的早い時期に収穫できるため、鳥取梨のシーズン幕開けを告げる品種として愛されています。

なつひめ

なつひめは、鳥取県で開発された梨の新品種です。名前が示すように、夏に旬を迎えるのが特徴で、強い甘みとほどよい酸味の絶妙なハーモニー、そして心地よいシャリシャリとした食感が魅力です。二十世紀梨とは一線を画す味わいは、夏の風物詩として高い人気を誇っています。

新甘泉(しんかんせん)

新甘泉(しんかんせん)は、鳥取県で生まれた梨の新品種です。際立つ特徴は、その高い糖度と豊富な果汁。口にした瞬間、気品ある甘さが広がり、思わず感動を覚えるほどの美味しさです。贈答品としても非常に喜ばれており、鳥取梨のブランドイメージ向上に大きく貢献しています。

ゴールド二十世紀

ゴールド二十世紀は、あの有名な二十世紀梨の美味しさをそのままに、長年の懸案だった黒星病への抵抗力を付与した改良品種です。二十世紀梨は黒星病に弱く、栽培には細心の注意が必要でした。そこで、この問題を解決するために、1981年(昭和56年)に放射線育種場でガンマ線を照射し、突然変異を誘発する試みが行われました。その結果、黒星病への抵抗性を持つ枝が発見され、選抜と育成を経てゴールド二十世紀が誕生し、1991年(平成3年)に品種登録されました。これにより、栽培がより安定し、消費者の皆様に変わらぬ美味しさをお届けできるようになりました。

おさ二十世紀

おさ二十世紀は、二十世紀梨から生まれた枝変わり品種で、最大の特徴は自家結実性を持つことです。この特性のおかげで、人工授粉の手間が省け、栽培管理の効率化に大きく貢献しました。しかし、残念ながら二十世紀梨と同様に黒星病に弱いという欠点も受け継いでいます。そのため、自家結実性を持ちながら黒星病にも強い品種の開発が望まれ、後に登場する「おさゴールド」や「瑞秋」の誕生へとつながりました。

おさゴールド

おさゴールドは、自家結実性を持つ「おさ二十世紀」の枝変わりから選抜・育成された品種です。この品種は、「おさ二十世紀」の自家結実性を受け継ぎつつ、二十世紀梨の弱点であった黒星病への抵抗力も兼ね備えている点が魅力です。ほどよい甘さと酸味のバランスが絶妙で、みずみずしくシャキシャキとした食感が楽しめる青梨として、1997年(平成9年)に品種登録されました。栽培のしやすさと食味の良さを両立させた革新的な品種として、鳥取県の梨栽培において重要な役割を果たしています。

瑞秋(二十一世紀梨)

瑞秋は、鳥取大学で「おさ二十世紀」の自家受粉によって生まれた実生から育成された品種です。この品種もまた、自家結実性と黒星病抵抗性の両方を持ち合わせており、栽培の安定と省力化に貢献しています。2000年(平成12年)に品種登録された瑞秋は、甘みが強く果汁が豊富でありながら、二十世紀梨に比べて酸味が控えめなのが特徴です。まろやかな甘さとジューシーな果汁が口の中に広がり、幅広い世代の方々に愛されています。ちなみに、瑞秋は「二十一世紀梨」という名称でも販売されていますが、「二十一世紀梨」は鳥取県のこばやし農園の登録商標であり、この農園で栽培された瑞秋のみがその名前で販売されています。

まとめ

鳥取県が誇る二十世紀梨は、明治21年の発見以来、百有余年の歴史の中で、熟練の生産者たちの高度な栽培技術によって磨き上げられた、日本が世界に誇る至宝です。一つあたり約300gほどの大きさで、透明感のある淡い黄緑色の果皮をまとい、みずみずしい甘さとほのかな酸味の調和、そして心地よい歯ごたえは、舌の肥えた「通」をも唸らせる、他に類を見ない魅力を持っています。また、二十世紀梨に加え、秋栄、なつひめ、新甘泉といった鳥取県独自の品種に加え、黒星病への耐性を持つ「ゴールド二十世紀」や自家受粉が可能な「おさ二十世紀」、さらにその改良品種である「おさゴールド」、加えて鳥取大学が開発した「瑞秋(二十一世紀梨)」など、バラエティ豊かな後継品種が続々と誕生し、「鳥取梨の味覚のバトン」として多くの人々を惹きつけています。梨は、甘味成分であるショ糖や果糖、酸味のリンゴ酸やクエン酸、食物繊維を豊富に含み、喉に良いとされる昔ながらの知恵も存在し、その価値は単に食卓を飾るだけではありません。鳥取県は、二十世紀梨の作付面積が全国の約35%を占める主要な産地であり、梨を県の象徴とするなど、文化的な側面からも大切に育んでいます。木の実神社での感謝の儀式の継承や、「とっとりの梨食べたいし(大使)」による積極的なPR活動を通じて、国内外へのブランド発信に尽力しています。この豊かな梨文化は、地域経済の活性化にも貢献しており、多くの人々が鳥取梨の美味しさを堪能できるよう、購入・配送システムも充実しています。ぜひ、鳥取県が誇る極上の梨を味わい、その奥深い魅力に触れてみてください。

二十世紀梨が「通」の梨と称される理由は何ですか?

二十世紀梨は、ただ甘いだけでなく、溢れるほどの果汁、甘さと酸味の絶妙なバランス、そしてあのシャキシャキとした食感が特長です。この複雑で奥深い味わいが、単なる甘さだけでなく、風味や食感の調和を求める梨好き、「通」に高く評価される理由となっています。

鳥取県で栽培されている二十世紀梨以外の新しい品種にはどのようなものがありますか?

鳥取県では、二十世紀梨の伝統を受け継ぎながら、新たな魅力を届ける新品種の研究開発・栽培にも力を入れています。「秋栄」、「なつひめ」、「新甘泉」は、鳥取県が育成した代表的な品種です。さらに、二十世紀梨から生まれた品種として、黒斑病に強い「ゴールド二十世紀」、自分で実をつけることができる「おさ二十世紀」、その改良版である「おさゴールド」、そして鳥取大学が開発した「瑞秋(二十一世紀梨)」などがあり、それぞれが異なる風味や食感で、夏の終わりから秋にかけて「鳥取梨の旬のリレー」を楽しむことができます。

二十世紀梨はどのように保存し、最も美味しく味わうにはどうすれば良いですか?

二十世紀梨は、まずは常温での保存をおすすめします。すぐに食べきれない場合は、新聞紙などで包んでからビニール袋に入れ、冷蔵庫の野菜室または日の当たらない涼しい場所で保存すると、1週間程度は新鮮さを保てます。召し上がる2~3時間前に冷蔵庫で軽く冷やすと、梨本来の甘さと爽やかな風味が際立ち、最も美味しく味わうことができます。ただし、冷やしすぎると甘みが感じにくくなることがあるので注意しましょう。

二十世紀梨